ASDの早期発見や介入に対して学術的知見が現場に反映されない課題
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このブログ記事では、2025年5月に公開された最新の学術研究から、自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD、発達性協調運動障害(DCD)、ダウン症、重度の学習障害を含む多様な発達障害に関する研究を紹介しています。内容は、行動療法(ABA)の効果や親主導介入の有効性、顔認識・自己語りの特性、感覚障害と認知の関連、性の多様性との交差性、医療・政策とのギャップ、生活習慣がADHDに与える影響など多岐にわたり、発達障害の支援と理解に必要な最新知見を実践・制度・研究の各側面から整理しています。
学術研究関連アップデート
Comorbid Developmental Coordination Disorder and ADHD: The Effects on Emotional and Behavioural Problems in Young Children
この研究は、発達性協調運動障害(DCD)と注意欠如・多動症(ADHD)が併存する子どもたちが、どのように感情面や行動面の問題(内在化・外在化症状)に影響を受けるのかを調べたものです。対象は6〜9歳の子ども532人で、**運動能力の評価(MABC-2)**により、以下の3グループに分類しました:
- 通常の運動発達(TMD)
- DCDリスクあり(DCDr)
- DCDの可能性が高い(pDCD)
また、ADHD症状は保護者の記入による質問票(Conners)で評価し、情緒・行動面の問題はCBCL(Child Behavior Checklist)で測定しました。
🔍 主な発見:
- pDCDの子どものうち28%、DCDrの子どものうち19%に、臨床的に意味のあるADHD症状が見られた。
- pDCDかつADHD症状がある子どもは、CBCLのスコア(=感情・行動の問題)が特に高かった。
- つまり、DCDとADHDの両方を持つ子どもは、心の問題や行動上の課題も抱えやすいことが示された。
✅ 結論:
DCDのある子どもに対しては、ADHDや心の健康に関するスクリーニングも同時に行うべきであると、研究者は提言しています。複数の発達特性が重なることで、感情や行動の問題がより深刻になる可能性があるため、早期発見と包括的な支援が重要だと強調されています。