Skip to main content

韓国全国調査でADHD当事者のいじめの被害・加害に性差

· 23 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

本日のまとめは、発達・教育・臨床を横断する最新研究を俯瞰しています。DCD児ではWii-Fit型エクサゲームが運動技能とバランスを中等度に改善し得る一方、ADHD領域では①韓国全国調査でいじめの被害・加害に性差(女子は言語的被害/加害リスク上昇、男子は言語的加害傾向)を確認、②成人ADHDで情動的摂食がBMI・ダイエット歴・婚姻状況・併存症と関連、③ニュージーランド成人で未診断群は診断群よりQOLが有意に低いことが示され、診断アクセスの重要性が浮き彫りに。サービス提供面では、言語療法テレヘルスでラポール形成は患者(ASD/年少)特性と臨床家の年齢・経験・デジタルリテラシーに左右される知見が得られ、スクリーニング面では成人ASRSの設問配置・シェーディング変更は陽性率に影響しないことがRCTで示されました。総じて、介入の実装条件・ジェンダー/生活因子・診断/支援アクセス・デジタル活用がアウトカムを規定するという実務的示唆が共通テーマです。

学術研究関連アップデート

Effects of Wii-Fit games training on motor skills, balance, and agility in children with developmental coordination disorder: a systematic review and meta-analysis - BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation

研究紹介・要約(BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation, 2025/11/11、システマティックレビュー&メタ解析/オープンアクセス)

論文タイトルEffects of Wii-Fit games training on motor skills, balance, and agility in children with developmental coordination disorder: a systematic review and meta-analysis

著者:Jindong Chang, Zhuoling Lei, Pengwei Ma, Juan Cui, Wenbing Zhu

研究種別:RCTに基づくシステマティックレビュー&メタ解析(登録:PROSPERO CRD420251073789)


背景

発達性協調運動障害(DCD)の子どもに対し、家庭でも取り組みやすい**Wii-Fit等のゲーム型運動介入(exergame)**が運動機能を改善しうるかが注目されています。本研究は、その有効性をRCTエビデンスで統合評価しました。

方法

  • データ源:PubMed/Embase/Web of Science/Cochrane(データベース創設~2025/6/12)
  • 対象:DCD児を対象にWii-Fitトレーニングを行ったランダム化比較試験(RCT)
  • 解析:RevMan 5.4.1で効果量(標準化平均差:SMD)を統合、バイアス評価はCochrane RoB 2.0、出版バイアスはStata 16で検討
  • 包含研究6件、計162名

主要結果

  • 運動技能(motor skills):SMD = 0.54(95%CI 0.06–1.02, p=0.03)→ 有意な改善
  • バランス:SMD = 0.69(95%CI 0.36–1.01, p<0.0001)→ 中等度の改善
  • アジリティ:SMD = 0.65(95%CI 0.00–1.30, p=0.05)→ 境界的有意(効果がある可能性に留まる)

解釈

  • Wii-Fitベースの介入は、運動技能とバランスの向上に有望
  • アジリティは改善傾向だが、結論は保留
  • 介入はゲーム性・視覚フィードバック・反復練習を通じて動機づけと課題特異的学習を促す点が実装上の強み。

限界

  • サンプル規模が小さい、アウトカムの 測定法が多様、方法論的質は中等度
  • 介入プロトコル(頻度・期間・難易度調整)にばらつき
  • 長期フォローや転移効果(学校・日常生活への一般化)の検証不足

実装のヒント(現場向け)

  • 週2–3回×6–8週間程度から開始し、バランス系ミニゲーム(片脚立位・重心移動)と手足協応課題をレベル漸増で構成。
  • 理学療法・作業療法の補助として併用し、目標行動(姿勢制御・反応時間・二重課題)を明示してフィードバック。
  • 家庭導入時は安全確保(転倒予防)と親の簡易モニタ(回数・成功率)をセットで。

要約一文

Wii-FitトレーニングはDCD児の運動技能とバランスを有意に改善し、アジリティにも改善傾向──ただしエビデンスは小規模・異質性あり。標準化されたプロトコルでの大規模RCT長期転移の検証が次の課題です。

ADHD and Sex Differences in School Bullying Victimization and Perpetration Based on Inverse Probability Treatment Weighting

研究紹介・要約(Child Psychiatry & Human Development, 2025/11/11, 原著論文/全国疫学調査分析)

論文タイトルADHD and Sex Differences in School Bullying Victimization and Perpetration Based on Inverse Probability Treatment Weighting

著者:Donghyeon Kim, Yoon Hee Choi, Joonbeom Kim

掲載誌Child Psychiatry & Human Development(Springer Nature)

研究種別:全国調査データによる疫学的研究(IPTW補正ロジスティック回帰分析)


背景

注意欠如・多動症(ADHD)のある思春期の生徒は、いじめ被害・加害の双方に巻き込まれやすいことが知られている。

しかし、これまでの研究は性差を十分に考慮しておらず、**女子と男子で異なる「いじめの形態」や「社会的脆弱性」**がどのように現れるかは明確でなかった。

本研究は、韓国全国規模の青少年メンタルヘルス調査(2021年版)を用いて、

ADHD傾向のある生徒におけるいじめの被害・加害パターンと性差の関係を定量的に分析した。


目的

  1. ADHD症状を有する思春期生徒におけるいじめ被害・加害リスクを明らかにする。
  2. その関係が**男女でどのように異なるか(性差)**を明確化する。
  3. 社会的スキルや情動調整の問題を考慮した性差対応型介入設計の基盤を示す。

方法

項目内容
データソース韓国全国青少年メンタルヘルス調査(Korean National Survey on Mental Health of Youth, 2021)
対象者中高生 6,689名(年齢12〜18歳、男子50.9%)
分析手法ADHD傾向群と対照群の背景差を補正するため、**逆確率重み付け法(Inverse Probability of Treatment Weighting: IPTW)**を適用
最終有効サンプルADHD傾向群 3,178名、対照群 3,511名
解析ロジスティック回帰により「被害(victimization)」および「加害(perpetration)」のオッズ比を性別ごとに算出

結果

■ ADHDといじめ被害・加害の関連(性別別)

特徴的傾向
女子のADHD傾向群- 全体的ないじめ被害のオッズが有意に高い。 - 特に**からかい/言葉による挑発(teasing, verbal provocation)**が顕著。 - 言葉の暴力(verbal abuse)による加害リスクも上昇。
男子のADHD傾向群- 社会的排除(social exclusion)と性的ハラスメント被害のオッズはむしろ低下傾向。 - ただし言語的攻撃による加害リスクは上昇。

考察

  • ADHD傾向の生徒は、感情制御困難(emotional dysregulation)や社会的スキルの未熟さにより、

    いじめの加害・被害の両側面に巻き込まれやすい。

  • 特に**女子のADHDでは「攻撃と被害が同時に存在する複雑な関係構造」**が示唆され、

    人間関係上の言語的応酬や集団内ストレスの影響が強い。

  • 一方、男子は身体的いじめよりも言語的加害傾向を示すが、社会的排除の被害は少ない。

    これは集団内ポジションの違い文化的ジェンダー役割に関連する可能性がある。


臨床・教育的意義

領域示唆
学校教育ADHD生徒の「いじめ関係」を単純な被害/加害の二分法で捉えず、相互的・動的関係性として理解する必要。
心理支援性別に応じた情動調整・社会スキルトレーニングが効果的。女子では共感的対応、男子では衝動抑制支援を強化。
政策・福祉学校いじめ対策において、ADHD特性とジェンダー要因を踏まえた包括的支援プログラムの構築が求められる。

限界

  • ADHD症状は臨床診断ではなく自己報告尺度による推定。
  • 横断的データのため、**因果関係(ADHD→いじめ or 逆方向)**は確定できない。
  • 韓国文化特有の学校環境・性役割が影響している可能性があり、他文化での再検証が必要

要約一文

全国6,600名超の中高生データ分析により、ADHD傾向の女子は言葉によるいじめ被害・加害の双方でリスク上昇、男子は社会的排除リスクは低いが言語的加害傾向を示すことが判明──ADHDといじめ行動の関連は性差により大きく異なり、性別に応じた社会的スキル・情動調整支援が不可欠であることを示した。

Implications of nutritional and marital status on emotional eating in adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder

研究紹介・要約(Nutrire, 2025/11/11, 原著論文/栄養・精神健康学)

論文タイトルImplications of nutritional and marital status on emotional eating in adults with Attention Deficit Hyperactivity Disorder

著者:Gabriela Grillo da Silva, Júlia Ferreira Aquino, Rayane Borges Neves, Fabíola Lacerda Pires Soares

掲載誌Nutrire(Springer Nature)

研究種別:横断研究(成人ADHDにおける情動的摂食行動の関連因子分析)


背景

注意欠如・多動症(ADHD)の成人は、衝動性や感情調整の困難から、

ストレスや情動に反応して過食・間食を行う「情動的摂食(emotional eating)」の傾向を示すことが知られている。

しかし、その行動に影響する**身体的・社会的要因(例:BMI、結婚歴、ダイエット習慣)**は十分に検討されていない。

本研究は、成人ADHD者における情動的摂食スコアに関連する栄養・生活要因を明らかにすることを目的とした。


方法

項目内容
研究デザイン横断研究(Cross-sectional study)
対象者18〜59歳のADHD診断済み成人151名(ブラジル大都市圏在住)
評価指標「Three-Factor Eating Questionnaire」短縮版(21項目)による情動的摂食スコア
主要変数BMI、ダイエット実践の有無、婚姻状況、併存疾患(comorbidities)の有無
解析回帰分析による各因子の独立効果の検証(p<0.05を有意水準とする)

結果

■ 情動的摂食に関連する主な因子

要因影響方向・強度p値
BMI(体格指数)1ポイント上昇ごとに情動的摂食スコアが**+1.179ポイント増加**0.005
ダイエット実践経験ダイエット経験者は非経験者よりスコアが有意に高い0.010
婚姻状況結婚・離婚・同棲など「パートナー関係の変化」がある群でスコア上昇0.031
併存疾患の有無他の精神・身体疾患を併存する群で顕著に高スコア<0.001

考察

  • ADHD成人では、身体的(BMI)・心理社会的(結婚歴)・行動的(ダイエット)要因が複合的に情動的摂食を促進している。
  • 高BMIおよび過去のダイエット経験は、体重管理に対する心理的ストレスや制限後のリバウンド行動と関連する可能性。
  • 婚姻状況の影響は、人間関係ストレスや生活リズムの変化を介して感情的摂食を引き起こしていると考えられる。
  • ADHDに併存しやすいうつ、不安、睡眠障害などの精神的併存症が、情動的摂食の背景にある「情動制御の脆弱性」を強めている。

臨床・実践的意義

領域示唆・活用の方向性
栄養指導・行動療法ADHD成人の食行動支援では、体重管理だけでなく感情面・生活環境要因を包括的に評価すべき。
心理療法マインドフル・イーティングや情動調整スキル訓練を組み合わせることで、過食リスクを軽減できる。
医療連携精神科・栄養士・心理士による多職種協働支援モデルが効果的。

限界

  • 横断研究のため、**因果関係(例:肥満→情動的摂食 or 逆方向)**は不明。
  • サンプルが地域限定(ブラジル都市部)であり、文化的背景の影響を受ける可能性。
  • 自己報告式の尺度であり、主観的バイアスのリスクがある。

要約一文

ブラジルの成人ADHD151名の分析により、BMIの上昇・ダイエット経験・婚姻歴・併存疾患の存在がいずれも情動的摂食スコアの上昇と有意に関連──ADHD成人の食行動支援には、体重管理と感情・生活背景の統合的アプローチが不可欠であることを示した。

Suspected and diagnosed ADHD quality of life differences: an investigative study of New Zealand adults

研究紹介・要約(Discover Psychology, 2025/11/11, 原著論文/オープンアクセス)

論文タイトルSuspected and diagnosed ADHD quality of life differences: an investigative study of New Zealand adults

著者:A. J. Murray

掲載誌Discover Psychology(Springer Nature, オープンアクセス)

研究種別:成人ADHDにおける診断有無別QOL比較研究(横断調査)


背景

成人期のADHDは、学業・職業・人間関係など多方面に影響し、生活の質(Quality of Life: QOL)を低下させることが知られている。

しかし、**正式な診断を受けていない「自己疑い群(suspected ADHD)」**の生活実態は、十分に把握されていない。

特にニュージーランドでは、成人のADHD診断機会が限られており、支援や治療へのアクセス格差が課題とされている。

本研究は、ニュージーランドにおける成人ADHD当事者を対象に、

正式診断群と自己疑い群のQOLの違いを明らかにすることを目的とした。


目的

  1. ADHDの症状重症度と生活の質の関連を明らかにする。
  2. 診断の有無・薬物治療の有無によるQOL差を比較する。
  3. 成人期ADHDにおける診断アクセスの社会的意義を検討する。

方法

項目内容
対象者ニュージーランド在住の成人329名(18歳以上)
群分け- Diagnosed Group(診断済み群):232名(うち薬物治療あり183名/なし49名)- Suspected Group(自己疑い群):97名
調査手法オンライン調査(Qualtrics)
評価尺度- ADHD症状:ASRS-5-RS Scale(成人ADHD自己評価)- 生活の質:Adult ADHD Quality of Life Scale (AAQoL)
統計解析Spearman相関、Mann–Whitney U検定、Kruskal–Wallis検定による群間比較

結果

■ ADHD症状と生活の質の関係

  • ADHD症状の重さとQOLの低さには中程度の負の相関(p < 0.001)。

    → 症状が重いほど、生活の質は低下。

■ 診断の有無による比較

比較項目結果
ASRS-5-RSスコア(症状の重さ)診断群と疑い群で有意差なし(p = 0.573)
AAQoLスコア(生活の質)疑い群のQOLが有意に低い(p < 0.001)
薬物治療有無を考慮した比較診断+治療群・診断のみ群ともに、疑い群よりQOLが有意に高い(p < 0.001)

■ サンプル特徴

  • 診断群の方が平均年齢が高い(p = 0.018)。

  • 女性およびジェンダー・ダイバーシティの高い構成が特徴的。

    → ADHD支援を求める層の変化を反映。


考察

  • ADHDの症状自体は診断有無で大差ないにもかかわらず、

    診断を受けていない人々は有意に生活の質が低い

  • 診断によって、

    • 自己理解・環境調整・治療へのアクセスが可能になる

    • 支援制度や社会的承認が得られる

      ことが、心理的安定やQOLの向上に寄与している可能性がある。

  • 一方、診断が遅れた成人や未診断群では、

    自己否定感・孤立感・日常機能の低下が強く、支援格差が深刻。


社会的・臨床的意義

観点示唆
医療・制度早期診断と治療アクセスの改善が、成人ADHDのQOL格差を是正する鍵。
心理支援診断を受けていないが症状を自覚している層へのスクリーニング・教育的支援が重要。
社会政策ADHD支援をジェンダー包摂的に設計し、診断未アクセス層への橋渡し施策を整備すべき。

限界

  • 横断研究であるため、診断がQOL向上を直接的に引き起こすかは不明。
  • サンプルはオンライン自己選択参加者に偏り、社会的に支援を求めやすい層が多い可能性。
  • ニュージーランド特有の医療制度が結果に影響している可能性。

要約一文

ニュージーランド成人329名の調査により、診断済み群と自己疑い群で症状の重さは同等ながら、自己疑い群の生活の質は有意に低いことが判明──ADHD診断を受けること自体が、支援・治療・自己理解への扉となり、QOL向上に寄与することを示す重要な疫学的知見である。

Frontiers | Digital Bonds: Patient and Therapist Factors Influence Telehealth Rapport Building in Speech-Language Services

研究紹介・要約(Frontiers in Rehabilitation Sciences, 2025/—, 原著論文/テレヘルス・発達支援研究/査読通過済)

論文タイトルDigital Bonds: Patient and Therapist Factors Influence Telehealth Rapport Building in Speech-Language Services

著者:Ying Hao(ミシシッピ大学・南京師範大学)、Jaret Webb(バプティスト・ヘルス・メディカルセンター)

掲載誌Frontiers in Rehabilitation Sciences(掲載予定・査読受理済)

研究種別:定量調査研究(遠隔言語療法におけるラポール形成の影響因子分析)


背景

近年、遠隔(テレヘルス)による言語療法(Speech-Language Pathology: SLP)が拡大している。

しかし、特に発達障害や構音障害のある子どもを対象とする際、

対面とは異なり「信頼関係(ラポール)の構築が難しい」という課題が指摘されている。

本研究は、オンライン療法におけるラポール形成に影響を与える要因を、

患者(児童)側と臨床家(セラピスト)側の両面から検証した初の大規模調査である。


目的

  • 小児言語療法におけるテレヘルスでのラポール形成の実態を把握する。

  • *患者要因(診断特性・年齢)および臨床家要因(年齢・経験・デジタルリテラシー)**が

    ラポールの「重要性認識・戦略使用・達成感」にどのように影響するかを明らかにする。


方法

項目内容
対象者207名の言語聴覚士(Speech-Language Pathologists: SLP)
調査対象- 対象児の診断:自閉スペクトラム症(ASD)または構音障害(SSD)- 対象児の年齢:0〜3歳および4〜8歳
分析項目ラポールに関する3側面:①重要性(importance)②戦略使用(strategy use)③達成感(achievement)
臨床家側の要因年齢・テレヘルス経験の有無・デジタルリテラシー水準
分析手法多変量分散分析(ANOVA)および相関分析による要因間比較

結果

■ 患者要因の影響

比較軸結果概要
ASD vs SSD- SLPはASD児の方が「ラポールの重要性」を高く評価。- より多くの戦略を用いていたが、達成感は低いと回答。
年齢(0–3歳 vs 4–8歳)- 幼児(0–3歳)では戦略使用は多いが、達成感は低下。- 年齢による「重要性」の違いは有意ではなし。

■ 臨床家要因の影響

要因結果概要
年齢年長のSLPほど「ラポールの重要性」を重視し、戦略も多く用い、達成感も高い
テレヘルス経験経験者はASD児への関わりでより多くの戦略を使用。未経験者はASD・SSD間で戦略使用に差がなかった。
デジタルリテラシー高いSLPほど「ラポール形成の成功感(achievement)」が高い。

考察

  • ASD児との遠隔支援では、重要性認識が高い一方で成果を感じにくいというジレンマが明確化。

    → 感情表現や非言語的手がかりが掴みにくいテレヘルス特有の課題。

  • 年長のセラピストは経験値を活かして柔軟な関わり方を実践しており、

    臨床経験・デジタルスキルの双方が成功の鍵となる。

  • 一方で、若手SLPや経験の浅い臨床家にとっては、

    テレヘルス環境での「対話の間合い・感情共有の難しさ」が壁となっている。


臨床・実践的意義

領域示唆
教育・研修若手SLPに対して、テレヘルスでのラポール形成スキル訓練を体系化すべき。
技術支援高いデジタルリテラシーが成果に直結するため、ICT教育・ツール整備の充実が必要。
多職種支援ASD児支援では、心理士や家族との連携を通じた間接的ラポール形成が効果的。
他領域への応用リハビリ・発達支援・特別支援教育など、他の遠隔支援職種への転用可能性が高い。

限界

  • 自己報告式調査であり、実際の臨床成果との乖離がある可能性。
  • 対象が主に米国・中国の専門家で、文化的要因の影響を排除できない。
  • 定量データ中心であり、**質的データ(面接・観察)**を用いた補足研究が望まれる。

要約一文

207名の言語聴覚士への調査により、ASD児や低年齢児ではラポールの重要性は高いが達成感は低いこと、

さらに臨床家の年齢・経験・デジタルリテラシーがオンラインでの信頼関係形成を左右することが判明──

テレヘルス時代の発達支援において、「技術 × 人間関係スキル」の両立が不可欠であることを示した。

Frontiers | Does the Format of the Adult ADHD Self-Report Scale Influence Screen-Positive Rates? A Randomized Controlled Trial in Primary Care

研究紹介・要約(Frontiers in Psychiatry, 2025/—, 原著論文/ランダム化比較試験・成人ADHDスクリーニング研究/査読通過済)

論文タイトルDoes the Format of the Adult ADHD Self-Report Scale Influence Screen-Positive Rates? A Randomized Controlled Trial in Primary Care

著者:Roni Y. Kraut, Christian Ono, Scott Garrison, Omar Kamal, Marissa Doroshuk, Ben Vandermeer, Gerard Amanna, Oksana Babenko

所属:アルバータ大学(カナダ)・ウェスタン大学(カナダ)

掲載誌Frontiers in Psychiatry(掲載予定/査読受理済)

研究種別:2×2要因ランダム化比較試験(成人ADHD自己報告尺度の設計効果分析)


背景

成人期ADHDのスクリーニングツールとして世界的に最も広く用いられているのが、

  • *Adult ADHD Self-Report Scale(ASRS)**である。

ASRSは質問項目の配置(Part Aの6項目)や、

「陽性回答を強調するグレーシェーディング(視覚的誘導)」といったフォーマットを特徴とする。

しかし、この設計が**過剰な陽性率(false positives)**を生む要因になっているのではないかという懸念があり、

実際の陽性判定率にどの程度影響するかは未検証であった。

本研究は、**ASRSのデザイン(質問のグルーピングとシェーディング)**が

陽性スクリーニング率に与える影響を検証する初のランダム化比較試験である。


目的

  • *ASRSの形式的特徴(質問の配置・シェーディング)**が、

    ADHD陽性スクリーニング率を上昇させているかを検証する。

  • 現行フォーマットが高陽性率を生む一因であるかを明らかにし、

    一次医療におけるスクリーニングの精度改善に資する知見を得る。


方法

項目内容
研究デザイン2×2因子ランダム化比較試験(2024年7〜10月実施)
対象者プライマリ・ケア外来を受診した19〜65歳の成人595名
介入群(ASRSフォーマット)①標準版(グルーピング+シェーディング)②グルーピングのみ③シェーディングのみ④どちらもなし(統一版)
分析手法ロジスティック回帰により陽性スクリーニングのオッズ比を算出
主要アウトカムADHDスクリーニング陽性率(ASRS陽性)
登録情報ClinicalTrials.gov:NCT06530758

結果

■ サンプル概要

  • 平均年齢:39歳(SD=12)
  • 性別:女性79%
  • 学歴:85%が高等教育歴あり
  • 民族構成:白人54%、アジア系33%、その他13%
  • 既往:14%がADHD診断歴あり、23%が「未診断だが自覚あり(self-suspected)」

■ 陽性スクリーニング率とフォーマット効果

  • 全体の陽性率:32%
  • フォーマット要因は有意差なし:
    • グルーピングあり vs なし → OR 1.25(95% CI: 0.98–1.58)
    • シェーディングあり vs なし → OR 0.88(95% CI: 0.69–1.12)
  • つまり、質問の並び順やシェーディングは陽性率に影響しなかった。

■ ADHD既往・自己疑いによる影響

  • 既診断ADHD者:陽性となるオッズが47倍(OR 47.4, 95% CI: 23.1–97.0)

  • 自己疑い群(未診断だが自覚あり)16倍(OR 16.2, 95% CI: 9.7–27.2)

    → 実際の症状認識や既往の方が、設問デザインよりはるかに強く結果を左右。


考察

  • ASRSの形式的特徴(グルーピング・シェーディング)は、誤陽性率を高めないことが明らかになった。

    → 過剰スクリーニングの要因は設計ではなく、一次医療での使用文脈や人口特性にある可能性。

  • それでも全体で3割以上が陽性判定という高率は、

    スクリーニングとしての「感度の高さ」と「特異度の低さ」の両面を示す。

  • 既診断群・自己疑い群での高陽性率は、自己認識とASRSの一致性を支持する一方、

    未診断群の誤判定リスクも示唆。

  • 著者らは、一次医療での実用性を損なわずに精度を改善する新規スクリーニングツールの開発を提言している。


臨床・研究的意義

領域示唆
一次医療・プライマリケアASRSは依然として有効だが、**補完的評価手法(臨床面接・機能評価)**が必要。
診断支援ツール開発高感度だが特異度の低いASRSの限界を踏まえ、AI・症状重み付け型質問票などの開発が今後の方向。
研究デザイン的貢献フォーマット操作を実験的に検証した初のRCTとして、評価バイアスの実証的検討を行った意義は大きい。

限界

  • *サンプルの偏り(女性・高学歴層が過半)**により一般化には注意が必要。
  • ADHD診断は自己申告に依存。
  • 臨床面接との比較検証が行われていない。

要約一文

カナダの595名を対象としたRCTの結果、ASRSの質問配置やシェーディングは陽性率に影響せず

高い陽性率(32%)はむしろ既診断・自己疑い層の多さとスクリーニングの特性によるものであった──

本研究は、成人ADHDスクリーニングの精度向上と診断アクセス改善の必要性を示す実証的エビデンスである。

関連記事