ASD児の学校での排除要因になるものは何か?(カナダ)
本記事では、ADHDや自閉スペクトラム症(ASD)など発達障害に関連する最新の研究成果をもとに、支援の在り方を多角的に検討しました。AIによる臨床意思決定支援ツール「TDApp」は、従来のガイドラインよりも柔軟かつ個別化された治療提案を可能にし、実臨床への応用が期待されています。また、マインドフルネス介入が注意力の神経指標を改善し、不注意傾向の強い人ほど効果が高いことから、個別特性に応じた心理的支援の有効性が示唆されました。さらに、ASD傾向をもつ精神疾患リスク者に対し、脳波指標(MMN)の活用により注意機能の違いが可視化され、主観的評価だけでは捉えにくい特性の理解に貢献しています。うつ病とADHDを併発する若者の深刻な機能障害や自殺リスクにも注目が集まり、早期・多面的な支援の必要性が強調されました。加えて、ASD児の学校での排除には、教職員支援の不足やいじめの存在が深く関わっており、保護者との連携や包括的な支援体制の強化が急務です。これらの知見は、教育・医療・家庭が連携し、科学的根拠に基づいた個別最適な支援を実現するための示唆を多く含んでいます。
学術研究関連アップデート
Effects of Syntactic Complexity on the Comprehension of Passive Clauses and wh-questions in Children with Developmental Language Disorder and Autism Plus Language Impairment
この研究は、**発達性言語障害(DLD)と自閉スペクトラム症に言語障害を併せ持つ子ども(ALI)**が、文の複雑さ(構文的複雑性)によってどのように文の理解に違いが出るかを、**中国語の受動文(受け身)とwh疑問文(誰が・どの〜)**を使って比較したものです。
🔍 研究の背景と目的
- DLDとALIはどちらも言語の理解・使用に困難を持ちますが、両者の違いははっきりしていません。
- 本研究では、「構文の複雑さ(句の移動や介入要素の有無)」に着目し、どのような文が理解しにくいのかを比較。
👧 研究対象
- DLD児:15名(平均5歳0か月)
- ALI児:16名(平均5歳4か月)
- 定型発達児(TDA):25名(平均5歳2か月)
🧪 方法
- 絵を選ぶ課題とキャラクター-絵のマッチ課題の2種類で、子どもたちの受動文とwh疑問文の理解を測定。
- 例:
- 受動文:「犬が猫に追いかけられている」
- wh疑問文:「誰が猫を追いかけてる?」 vs 「どの犬が猫を追いかけてる?」
📊 主な結果
- DLDとALIの両群とも、定型発達児よりも正答率が低く、似た間違い方をしていた。
- 受動文では、短い構文より長い構文が苦手という共通傾向が見られた(short-long asymmetry)。
- しかし、wh疑問文に関しては、ALI群のみが「誰」よりも「どの〜」の理解に大きな困難を示した(who-which asymmetry)。
- 両群に共通する困難は、文中の移動構造(例:主語や目的語が前に出る)において、移動後の要素と元の場所との関係性(意味のつながり)を理解するのが難しいという点。
🔍 考察と示唆
- DLDとALIは一見似たような言語障害の特徴を持つが、完全には同じではない。特にALIの子どもは「参照性(どれを指しているのか)」の理解に問題を抱えやすい可能性がある。
- テストの不正解の仕方(非標的反応)に注目することで、より正確な言語障害の診断につながる。
📝 要約
この研究は、中国語を話すDLD児とALI児が、構文の複雑さによってどのように受動文やwh疑問文の理解に影響を受けるかを調べ、両群は定型発達児よりも成績が低く、文中で要素が移動する構文で意味を正しく理解するのが難しいことが共通して確認された。一方で、ALI児は特に「どの〜」といった参照性の高い疑問文に顕著な困難を示し、DLDとは異なる特徴も見られた。これにより、DLDとALIは似て非なる言語障害であり、誤答の内容分析が診断において重要であることが示唆された。
Effects of a school-based physical activity intervention on children with intellectual disability: a cluster randomized trial - International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity
この研究は、知的障害のある子どもたち(8〜11歳)を対象にした学校ベースの身体活動介入プログラムが、運動スキルや身体活動の改善に効果をもたらすかを検証したクラスターランダム化試験です。
🔍 背景
- 障害のある子どもは、定型発達の子どもに比べて運動量が少なく、慢性疾患のリスクが高いことが知られています。
- 教員主導の全校的な身体活動プログラムは有望視されていますが、障害のある子どもへの有効性はこれまでほとんど検証されていません。
🏫 研究デザイン
- オーストラリアの公立小学校20校(合計238名)を対象に、10校を介入群、10校を対照群(待機群)にランダムに割り当て。
- 介入群では、教員に対してオンライン+対面形式の研修(教師の専門性向上プログラム)を実施し、学校全体でFMS(基本的運動スキル)と身体活動を促す授業を展開。
- 主な測定項目はFMSの熟達度(Test of Gross Motor Development-3)、副次的に自己概念、運動の楽しさ、幸福感、300ヤード走タイム、加速度計による身体活動量などを測定。
📊 結果
- FMSスコアにおいて介入群と対照群で有意な改善差は見られませんでした(b = 1.07[95% CI -3.70〜5.84], p = .658)。
- 副次的指標(楽しさや身体活動量など)にも、有意な改善効果は確認されませんでした。
💡 考察
- 効果が出なかった理由としては、COVID-19による中断の影響や、教員研修の内容が十分でなかった可能性が考えられます。
- より集中的で質の高い支援や実地サポートが必要であることが示唆されます。
✅ 要約
本研究は、知的障害のある小学生を対象に、教員向けのオンラインと対面を組み合わせた研修を通じて全校的に身体活動を促す介入を行い、その効果を検証しましたが、基本的運動スキルや身体活動量において有意な改善は見られませんでした。COVID-19の影響や研修の強度不足が要因と考えられ、今後はより集中的で実践的な支援体制の必要性が示唆されました。
Feeding, dysphagia, weight, and sleep in pediatric patients: mediation analysis and comparison of autism and non-autism - Sleep Science and Practice
この研究は、小児の睡眠障害と関連する要因として、摂食障害・嚥下障害・体重異常がどのように関係しているかを調査し、自閉スペクトラム症(ASD)児と非ASD児の比較を行ったものです。特に、ASD児では摂食や体重問題が睡眠障害とどのようにつながっているかを明らかにしようとしています。
🧪 研究の概要
- 対象データ: 全米小児病院(Nationwide Children’s Hospital)の睡眠データバンク(2017〜2019年)
- 年齢範囲: 2歳超〜18歳未満の3,053名
- 分析項目:
- 摂食障害(Feeding difficulties)
- 嚥下障害(Dysphagia)
- 体重異常(肥満・異常な体重増加)
- 睡眠障害(Polysomnography検査を受けた子ども)
📊 主な結果
- ASD児のほうが非ASD児よりも、
- 摂食障害が 3.83倍 発生しやすい
- 嚥下障害が 2.19倍 発生しやすい
- 摂食障害・嚥下障害はいずれも、睡眠障害と有意な関連があった。
- ASD児では、肥満や異常な体重増加が媒介要因となり、摂食・嚥下障害と睡眠障害との関係を強めていた。
💡 意義と提案
- ASD児の睡眠問題の背景には、摂食・嚥下・体重の問題が複雑に絡み合っている可能性がある。
- こうした因果関係を明らかにするためには、今後は前向きな縦断研究が必要とされています。
✅ 要約
この研究は、睡眠検査を受けた小児3,053人を対象に、摂食障害・嚥下障害・体重異常と睡眠障害の関係を分析し、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもではこれらの問題が特に顕著であることを明らかにしました。ASD児は非ASD児に比べ摂食・嚥下障害のリスクが高く、睡眠障害との関連も強い傾向が見られました。特に、肥満や体重増加がこの関連を媒介していることが示され、今後は因果関係を明らかにするための縦断研究が求められています。
Occupational Therapy Using Sensory Integration for Enhancing Occupational Performance in Children with Autism: A Randomized Controlled Trial
この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもたちに対する**感覚統合を用いた作業療法(Occupational Therapy using Sensory Integration, OT-SI)の効果を検証するために実施されたランダム化比較試験(RCT)**です。日常生活動作や役割に関わる作業遂行能力に課題を抱えるASD児に対して、OT-SIがどのような影響を与えるかを明らかにしました。
🧪 研究の概要
- 対象:3〜10歳のASD児35名
- グループ分け:
- 介入群(n = 16):感覚統合を用いた作業療法+ホームプログラム
- 対照群(n = 19):ホームプログラムのみ
- 期間:週1回×16回(4ヶ月間)
🧰 評価方法
- COPM(Canadian Occupational Performance Measure):個別化された作業目標の達成度と満足度を測定
- Goal Attainment Scaling(GAS):目標到達度の定量化
- Sensory Profile:感覚処理パターンと情緒・行動的反応の評価
これらの評価により、介入は子どもの感覚処理の特性に合わせて構成され、エビデンスに基づく個別化アプローチがなされました。
📊 主な結果
- COPMスコア:
- 介入群は**作業遂行能力(p = .036)と満足度(p = .034)**の両面で有意な改善を示した。
- GASスコア:
- 介入群の31.3%(5名)が「+1」スコア(目標達成以上)を記録。
✅ 要約
本研究では、自閉スペクトラム症の子どもに対する感覚統合を用いた作業療法(OT-SI)の効果を検証した結果、OT-SIと構造化されたホームプログラムを併用した介入群は、作業遂行能力と満足度の両面で有意な向上を示しました。特に、感覚特性と行動反応に基づいた個別化目標の設定と評価(COPMおよびGAS)により、より多くの子どもが目標を達成または上回る成果を得ており、本研究は感覚統合に基づく作業療法の有効性と、個別ニーズに即した支援の重要性を支持しています。
"Being Integrated Does Not Mean Being Included": What Factors Contribute to School Exclusion for Autistic Children?
この研究は、カナダ・オンタリオ州における**自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもたちの学校からの排除(exclusion)**の要因を明らかにすることを目的としています。「統合されていることが、必ずしも包摂(インクルージョン)されていることを意味しない」というタイトルが示すように、表面的な受け入れではなく、真に包摂的な教育環境の実現に向けた課題が探られています。
🧪 研究の概要
- 対象:オンタリオ州在住の保護者412名(調査期間:2018年4〜7月)
- 調査方法:オンライン調査(英語・フランス語)
- 主な目的:
- IEP(個別教育計画)への保護者満足度と学校からの排除リスクの関係を定量的に検証
- 排除の要因を保護者視点から特定する(自由記述の質的分析)
🔍 主な結果と考察
1. IEP満足度と排除リスクの関係(量的分析)
-
IEPに対する満足度が高いほど、学校からの排除の可能性が有意に低い(b = -0.297, OR = 0.743, p < .001)
→ 適切なIEP運用が、排除リスク軽減に寄与していることが示唆されました。
2. 排除に寄与する要因(質的分析)
保護者の自由記述から抽出された2つの主な要因:
- いじめ(peer bullying):同級生からのいじめにより、不登校や孤立につながるケースが多い
- スタッフの訓練・支援不足:教師や補助職員の理解や対応スキルが不足しており、支援が機能していない
✅ 要約
本研究は、オンタリオ州における自閉スペクトラム症のある子どもたちの学校排除の要因を、保護者412名の調査を通じて明らかにしたものです。IEP(個別教育計画)に対する保護者の満足度が高いほど、子どもの排除リスクが低くなることが定量的に示され、また質的分析では、排除の主な要因として「同級生からのいじめ」と「学校スタッフの訓練不足」が浮かび上がりました。これらの結果から、より効果的ないじめ対策、IEPの協働的な策定・実行、スタッフの専門性向上、支援体制の強化が、自閉症のある児童を真に包摂する教育環境の実現に向けて不可欠であることが示されています。
ADHD in Youth With Major Depressive Disorder in the Texas Youth Depression and Suicide Research Network (TX-YDSRN): Clinical Correlates and Moderators
この研究は、うつ病(MDD)を抱える若者におけるADHDの併存が、臨床的にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的としたものです。対象は、アメリカ・テキサス州のうつ病・自殺研究ネットワーク(TX-YDSRN)に参加した8〜20歳の若者797名で、そのうち**ADHDを併発している群(MDD+ADHD)とそうでない群(MDD−ADHD)**の比較が行われました。
🔍 主な結果
- MDD+ADHD群は、以下の点でより深刻な困難を示しました:
- より重度の抑うつ症状
- 自殺念慮・衝動性・易刺激性の高さ
- 学業成績の悪化
- 一方で、ADHDの診断が「うつ症状の重さ」と以下の関係を調整(モデレート)する効果は見られませんでした:
- 自殺傾向
- 友人関係
- 学校での適応状況
✅ 要約
この研究は、うつ病を抱える若者の中でもADHDを併発しているケースに注目し、その特徴と影響を検討しました。その結果、ADHDを併発している若者は、うつ病の症状がより重く、自殺念慮や衝動性、学業成績の低下といったリスクが高いことが明らかになりました。ただし、ADHDの有無が、うつ病の重さと自殺リスク・人間関係・学校生活との関係性に影響するわけではないことも示されました。これらの知見は、ADHDを伴ううつ病の若者に対して、より早期で個別化された支援が必要であることを示唆しています。
Frontiers | Features of mismatch negativity in an at-risk mental state with the traits associated with the autistic spectrum
この研究は、**統合失調症スペクトラム障害(SSD)のリスク状態にある人(ARMS: At-Risk Mental State)**の中で、自閉スペクトラム症(ASD)に関連する特性を持つ人々が、神経生理学的に異なる反応を示すかどうかを調べたものです。具体的には、**聴覚の変化に対する脳の自動的な反応「ミスマッチ陰性電位(MMN)」**を指標として比較が行われました。
🧠 研究の背景と目的
- ARMS状態にある人々は、将来的に精神病(統合失調症など)に移行する可能性がありますが、その中にはASD的な特性を併せ持つ人もいます。
- ASDとSSDは症状が重なることも多く、**客観的な指標(バイオマーカー)**によって区別する手法が求められています。
- 本研究では、**MMNの反応(特に周波数変化に対するMMN:fMMN)**がASD特性の有無によって異なるかを調査しました。
🧪 方法
- 対象:ARMSの若者49名と健常者45名
- ASD特性の評価:AQ-J(自閉スペクトラム指数・日本語版)を使用し、スコア33以上を高ASD群(AQ+)、それ未満を**低ASD群(AQ−)**と分類
- 実験:標準音と変化音(長さ・周波数)を聞かせてMMNを記録
- 比較:MMNの振幅・潜時(反応の早さ)を群間で比較し、AQスコアとの相関も分析
🔍 主な結果
- ARMS群と健常者群の間ではMMNに有意差はなし
- しかし、ARMS群の中でAQ(+)群は、AQ(−)群よりもfMMNの潜時が短かった
- また、AQスコア(特に「コミュニケーション」下位尺度)が高いほど、fMMNの潜時が短いという相関が見られた
✅ 結論と意義
ARMS状態の若者のうち、ASD特性が強い人は、脳が音の変化を検出するタイミング(fMMN潜時)が早いことが示されました。これは、ASD特性に関連する神経認知的な違いを客観的に捉える手がかりとなる可能性があります。
症状だけでは区別が難しいARMSとASDを、MMNという神経生理学的な指標を用いて分類することは、より適切な支援や介入につながる可能性があり、臨床的にも意義深い成果と言えます。
Frontiers | Assessing TDApp: an An AI-Based Clinical Decision Support System for ADHD Treatment Recommendations
この研究は、**ADHD(注意欠如・多動症)治療の意思決定を支援するAIベースの臨床支援システム「TDApp」の有効性を評価したものです。従来の臨床診療ガイドライン(CPGs)**の限界を補い、より個別化された、最新かつ説明可能な治療提案を提供することを目的としています。
🔍 背景と目的
- 一般的な診療ガイドライン(CPGs)は、以下の課題を抱えています:
- 情報の陳腐化
- 患者一人ひとりへの適合性の不足
- 患者の意思反映の不十分さ
- APPRAISE-RSという仕組みは、GRADE方式(医学的推奨手法)をAIに応用し、上記の課題を解決しようとするものです。
- 本研究では、APPRAISE-RSを搭載したTDAppが、既存のCPGsと比較してどれだけ有用かを検証しました。
🧪 研究方法
- *臨床試験2件(各33人・32人のADHD患者)**を実施し、治療開始または大きな治療変更が必要な患者を対象にTDAppを使用。
- TDAppの推奨内容と、5つの主要なCPGs(アメリカ、イギリス、スペイン、カナダ、オーストラリア)との一致度や多様性を評価。
分析項目:
- Blau指数による推奨の多様性(スコアが高いほど多様)
- 一致度(concordance):TDAppの推奨とCPGsで共通して支持された薬剤の割合
- *デンドログラム(類似度ツリー図)**で推奨パターンの距離を視覚化(NbN分類を使用)
📊 主な結果
- TDAppは**10種以上の薬剤(最近発売された薬も含む)**を検討対象とし、アンフェタミン系薬剤を最も多く推奨。
- 1患者あたり8~12種類の治療提案を生成し、Blau指数0.70~0.88とCPGsより高い多様性を示した。
- TDAppとCPGsで少なくとも1つの薬剤が一致した患者の割合は21.9%〜100%。
- デンドログラムの分析では、TDAppはCPGsとは異なる位置にあり、より独自性の高い判断を示すことが視覚的に確認された。
- 第2回試験では、50〜75%の患者において、TDAppが「望ましい治療提案」を出すことに成功。
✅ 結論と意義
TDAppは、自動化され、個別化され、患者参加型で説明可能な治療推奨を行う、先進的なAI型臨床支援システムです。
従来のガイドラインに比べて以下のような利点があります:
- より多様で柔軟な選択肢を提示
- 患者や医師の希望を取り入れた提案が可能
- 新しい薬剤もカバーし、情報更新が早い
- 臨床判断の補助として実用性が高い
今後、医師と患者が協働して治療を決定する場面で、TDAppのようなAI支援ツールが大きな役割を果たすことが期待されます。
Frontiers | A Brief Mindfulness Intervention Improves Electrophysiological Markers of Attention in Meditation-Naïve Individuals: the Moderating Role of Inattention Symptoms
この研究は、**瞑想未経験の大学生に対して、短時間のマインドフルネス介入(10分間の呼吸瞑想)が、注意力に関連する脳波指標(P3b振幅)**を改善するかどうかを検証したものです。さらに、**もともとの不注意傾向(ASRSスコア)**がこの効果にどう影響するかも調べられました。
🔍 背景と目的
- マインドフルネスは注意の自己調整を促すとされますが、**元々の注意力の差(特に不注意傾向)**がその効果にどう関係するかは十分に明らかにされていません。
- 本研究では、不注意傾向の強さが、マインドフルネスによる注意改善効果の大きさを左右するかを実験的に検証しました。
🧪 方法
- 対象者:瞑想未経験の大学生121名(18〜31歳、女性69%)
- グループ分け:
- マインドフルネス群:10分間のガイド付き呼吸瞑想を実施
- 対照群:10分間の「グリーンな暮らし」に関する講話を聴取
- 測定内容:
- 不注意症状:ASRS(成人ADHD自己報告スケール)で測定
- 注意の脳波指標:視覚ノベルティ・オッドボール課題中にP3b振幅(注意リソースの割り当てに関係)をEEGで測定(前後比較)
📊 結果
- 全体的にP3b振幅は増加しましたが、マインドフルネス群の増加は対照群よりも有意に大きいものでした。
- 不注意傾向が強い参加者ほど、マインドフルネスによるP3bの改善効果が大きかった一方、対照群では逆にP3b振幅が減少傾向を示しました。
✅ 結論と意義
本研究は、たった10分間のマインドフルネス介入でも、注意力(脳の情報処理効率)を改善できる可能性があることを示しました。特に、不注意傾向が強い人ほどその効果が大きく、以下のような示唆があります:
- 注意機能に課題を抱える人(例:ADHD傾向)にとって、マインドフルネスは有効な介入手段となりうる
- マインドフルネス介入は「一律」ではなく、個人の特性に応じて最適化すべき
今後は、不安や抑うつなど他の臨床的特性も含めた個別最適化の可能性について研究を進めることが重要とされています。