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障害児のスクリーンタイム実態

· 20 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

本記事では、発達障害に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しています。機械学習や脳波を活用した自閉スペクトラム症(ASD)の高精度診断技術、家庭犬を対象としたADHD類似行動のスクリーニング手法、成人ADHD・うつ病・パーソナリティ障害における生活の質と介護者負担の比較、成人ADHD当事者の薬物治療体験、ディスレクシア支援に向けたギリシャ語フォントの開発、障害児のスクリーンタイム実態、ASDとADHDの併存が認知機能に与える影響、脳刺激法tDCSによるASDの社会的認知支援、そしてダウン症成人におけるアミロイド蓄積の遺伝的要因の解析など、多様なテーマを取り上げており、支援の個別化や社会実装、将来的な応用可能性についても示唆を与える内容となっています。

学術研究関連アップデート

A recent advances on autism spectrum disorders in diagnosing based on machine learning and deep learning

このレビュー論文「A recent advances on autism spectrum disorders in diagnosing based on machine learning and deep learning(機械学習および深層学習に基づく自閉スペクトラム症の診断における最新の進展)」は、EEG(脳波)信号を用いたASD(自閉スペクトラム症)の診断手法において、機械学習(ML)と深層学習(DL)の活用がどのように進んでいるかを包括的に整理したものです。


✅ 要約

ASDの早期診断は本人の生活の質の向上に直結しますが、現行の診断方法は観察や面接に依存しており、主観的・時間的コストが高いという課題があります。EEGは非侵襲的かつ安全に脳の活動を測定でき、ASDに関連する神経的な異常の検出に有望な手法とされています。

本レビューでは、過去の関連研究200件以上(Elsevier, IEEE, MDPI, Springer発表)を対象に、EEG信号の特徴抽出と機械学習・深層学習によるASD診断アプローチを比較・整理しています。用いられた代表的手法には、以下のようなものがあります:

  • SVM(サポートベクターマシン):Cubic SVMで95.8%の高精度
  • CNN(畳み込みニューラルネットワーク):最大95%の精度
  • ResNet5099.39%の最高精度
  • ANFIS(適応型ファジィ推論システム)98.9%の精度
  • その他:KNNなどのモデルも用いられています

データセットとしては KAU、BCIAUT-P300、ADOS-2 などが活用されており、評価指標として 精度(Accuracy)・感度(Sensitivity)・特異度(Specificity) が用いられました。モデル間では感度・特異度が85〜100%と非常に高く、これらのAI技術がASD診断において大きな可能性を秘めていることが示されています


🎯 結論と今後の展望

本研究は、AIを活用した脳波ベースのASD診断技術が既存の方法よりも高精度かつ非主観的であることを裏付けるエビデンスを多数提示しています。ただし、データセットの代表性や、医療現場での臨床検証が今後の課題であり、早期診断と汎用性のある実装に向けたさらなる研究が求められています。


🧠 補足

ASD診断にAIを導入する取り組みは、人手不足や診断の地域格差を補完する可能性があり、教育・福祉分野への応用も今後期待されます。特に、日本のような評価者リソースが限られる環境では、早期スクリーニング支援ツールとしての導入価値が高いと考えられます。

Development of a human analogue ADHD diagnostic system for family dogs

この論文「Development of a human analogue ADHD diagnostic system for family dogs(家庭犬に対する人間類似のADHD診断システムの開発)」は、注意欠如・多動性(ADHD)に類似した行動特性を持つ犬を評価・スクリーニングするための初の再現可能な診断手法を開発した研究です。


✅ 要約

研究チームは、**注意欠如・多動・衝動性の特性にばらつきがある犬(N=1872)**を対象に、人間のADHD診断法を参考にした質問紙を開発・使用しました。この質問紙は2部構成で:

  1. 症状セクション
    • 不注意、過活動、衝動性の3領域に関するスコアを算出。
  2. 機能障害セクション
    • 各症状が日常生活にどの程度支障をきたしているかを評価。
    • 7問中4問以上で支障が見られる領域が1つでもある場合、その犬は「機能的に障害あり」と分類(n=116、全体の6.2%)。

次に、これらの「障害あり」「障害なし」の分類を症状スコアに対応させ、**ROC解析(受信者動作特性曲線)**を用いてカットオフ値(ADHD疑いの基準)を設定。

  • AUCは0.861と非常に高く、信頼性の高いスクリーニング手法であることが示されました。
  • カットオフスコアは26点と定められ、感度と特異度のバランスがとれた基準とされました。
  • 両セクションの基準を満たす犬(n=79、全体の4.22%)は「ADHDリスクあり」と判定されました。

🎯 意義と展望

この研究は、家庭犬を対象にADHD類似の行動特性を標準化された手法で評価できる初の枠組みを提示したもので、以下のような意義があります:

  • ADHDリスクのある犬の早期支援や生活の質の向上に役立つ
  • 人間のADHDとの比較研究が可能になり、犬を自然なモデル生物として活用する研究基盤となる
  • 今後は行動テストや専門家の評価と組み合わせることで、より精密な診断も目指せる

🐾 補足

この研究は、犬と人間の行動神経科学の橋渡しをする意欲的な取り組みです。ADHD的傾向のある犬は「しつけができない犬」ではなく、認知的な特性によって困難を抱えている可能性があるという理解を促し、人間と同様に「配慮と支援の対象」として犬をとらえる新たな視点を提示しています。

Quality of Life and Caregiver Burden in Adult ADHD, Major Depressive Disorder, and Personality Disorders: A Cross-Sectional Study

この論文「Quality of Life and Caregiver Burden in Adult ADHD, Major Depressive Disorder, and Personality Disorders(成人ADHD・うつ病・パーソナリティ障害における生活の質と介護者負担)」は、精神疾患を持つ成人患者の生活の質(QoL)と、それに伴う介護者の負担(Caregiver Burden)を疾患別に比較した横断的研究です。


✅ 要約

研究では、ADHD(成人期注意欠如・多動症)・うつ病(MDD)・パーソナリティ障害(PD)の3つのグループから各80人(計240人)の患者とその介護者を対象に、生活の質(WHOQOL-BREF)と介護者負担(Zarit Burden Interview)を調査しました。

主な結果:

  • *患者の生活の質(QoL)**は、
    • aADHDが最も高く(平均73.11)
    • MDDが最も低い(平均54.81)(p < 0.0001)。
  • 介護者の負担は、
    • PD(パーソナリティ障害)患者の家族で最も高く(平均59.53)
    • aADHD患者の家族で最も低い(平均12.46)(p < 0.0001)。
  • 介護者負担の増大には以下の要因が関係:
    • 低学歴(p = 0.037)
    • 失業状態(p = 0.022)
    • 低所得(p < 0.001)
  • うつ病患者では
    • 本人が高学歴であるほど(p = 0.045)
    • *治療非遵守(p = 0.016)**により介護者負担が増加。
  • PDでは男性患者の方が介護者への負担が大きい(p = 0.040)。
  • うつ病での入退院の頻度が高いほど生活の質が低い(p = 0.006)。
  • 全体的に、患者のQoLが低いほど、介護者の負担は高くなる傾向(逆相関、r = -0.204, p = 0.001)。

🎯 意義と補足

この研究は、疾患の種類によって患者本人の生活の質と介護者の負担に大きな差があることを示しており、aADHDは比較的QoLが高く、介護者の負担も低いことがわかりました。一方で、PDやMDDは本人・家族双方に強い影響を及ぼしている実態が浮き彫りとなっています。

また、経済的・教育的背景といった社会的要因が介護者負担に大きく影響することから、支援の設計には診断名だけでなく、家庭や生活の状況を含めた包括的な視点が必要であると強調されています。

今後は、**家族を含めた個別最適な支援・介入(family-centered intervention)**の重要性がさらに高まると考えられます。

What Are the Experiences of Adults With ADHD of Engaging in ADHD Medication Treatment? A Systematic Review and Meta-Ethnography

この論文「ADHD薬物治療に関わる成人当事者の体験:系統的レビューとメタエスノグラフィー」は、成人期ADHD当事者が精神刺激薬による治療をどのように体験し、どのような要因が服薬の継続に影響しているかを質的研究の視点から包括的に整理・分析したものです。


✅ 要約

本研究は、ADHDの成人当事者による薬物治療(特に精神刺激薬)に関する質的体験の証拠を系統的にレビュー・統合し、服薬行動に影響を与える要因を明らかにすることを目的としています。13件の質的研究(計263名の参加者)を対象にメタエスノグラフィー手法で分析を行い、以下の**4つの主要テーマ(第三次構成)**が導出されました:

  1. 社会に「適応」することとパフォーマンス向上

    (学業や仕事の成果を出すための薬の使用)

  2. ADHDの症状による困難と薬の副作用との天秤

    (薬の恩恵と副作用のバランスをどう捉えるか)

  3. 社会に「適応」することと対人関係機能

    (家族・友人との関係性維持における役割)

  4. 医療アクセスの困難さ

    (薬の入手や専門医のフォローに関する障壁)

これらのテーマは、服薬を継続するか否かの**「行動のきっかけ(stimuli)」と捉えることができ、特に調整可能な投薬支援をしてくれる専門医の存在が大きな影響を与える**ことが明らかになりました。


💡 補足と意義

参加者はおおむね、薬物がADHD症状の軽減に有効であると感じていた一方で、副作用や周囲の偏見、服薬によって「本来の自分」が失われるような感覚に葛藤を抱いていました。さらに、「社会に適応するため」というモチベーションが、服薬を促す一方で拒む動機にもなりうるという二面性が浮き彫りになっています。

本研究は、ADHD成人当事者の服薬体験が、単なる薬の効果や副作用の問題ではなく、社会的文脈・対人関係・自己認識と密接に関係していることを示しており、今後の治療設計においては、医学的対応だけでなく、当事者の語りや社会的背景を重視した個別対応の重要性を強調しています。特に、柔軟な投薬調整を行う専門医との継続的な関係構築が、服薬継続の鍵であることが示唆されました。

Frontiers | Greek font design: Identifying preferable fonts for readers with dyslexia

この論文「Greek font design: Identifying preferable fonts for readers with dyslexia(ギリシャ語話者のディスレクシア読者に適したフォントの特定)」は、ディスレクシア(読字障害)を持つギリシャ語話者にとって読みやすいフォントの開発と評価を目的とした研究です。


✅ 要約

本研究では、ディスレクシアを持つ読者のために設計されたギリシャ語フォント「GreekDyslexic」を開発し、その可読性を検証しました。GreekDyslexicは、読みやすさに関する既存文献のガイドラインに基づき、形状の単純化と文字間の均質化を意識して設計されています。

研究の背景には、AIチャットボットなどを通じた読書の重要性の再認識があり、特にディスレクシアを持つ人にとっては、美的観点ではなく機能性を重視したフォント設計が求められています。

このフォントは以下のような利用を想定して作られました:

  • ギリシャ語ネイティブ話者向けの教育
  • 古代・現代ギリシャ語の学習者支援
  • 数学・物理などで使用されるギリシャ文字の可視性向上
  • デジタル博物館資料での活用

テストにはギリシャ語を母語とする成人98名(うちディスレクシアと自己申告したのは19名)が参加し、GreekDyslexicと一般的なサンセリフ体(読みやすいとされるフォント)とを比較評価しました。

その結果、少数派ではあるものの、ディスレクシアと診断された参加者の一部がGreekDyslexicを好意的に評価し、一定の効果が示唆されました。また、今後のデザイン改良の方向性についてもいくつかの提案が行われています。


この研究は、ギリシャ語環境におけるディスレクシア支援の第一歩として、フォントデザインが可読性に与える影響の実証と、より包括的な教育環境整備への貢献が期待されます。

Screen Time Among and Youth Children With Disabilities: A Systematic Review and Meta‐Analysis

この論文「Screen Time Among Children and Youth With Disabilities: A Systematic Review and Meta-Analysis(障害のある子ども・若者のスクリーンタイム:システマティックレビューとメタ分析)」は、障害のある児童・青少年におけるスクリーンタイムの実態を明らかにすることを目的とした研究です。


✅ 要約

本研究では、障害のある子どもと若者における**スクリーンタイム(テレビ、スマートフォン、タブレット、ゲームなどの視聴・操作時間)に関する81本の先行研究をレビュー・統合し、メタ分析を実施しました。対象はASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、CP(脳性まひ)**などの診断を受けた子どもたちで、使用された文献は英語・フランス語で書かれたものに限定されました。

分析の結果、1日の平均スクリーンタイムは以下の通りです:

  • ASD(自閉スペクトラム症):3.70時間
  • ADHD(注意欠如・多動症):3.28時間
  • CP(脳性まひ):3.39時間

なお、全体ではスクリーンタイムは0.5~7.27時間/日と幅があり、障害の種類によって大きく異なっていました。

研究チームは、過度なスクリーン使用が発達・健康に及ぼす悪影響を防ぐためにも、障害のある子どもたちを対象としたスクリーンタイムの制限支援が必要であると結論づけています。


🔍 実務・政策への示唆

  • 個別の障害特性に応じた介入設計が求められる
  • 公共保健政策や教育現場でのガイドライン整備に資するエビデンス
  • スクリーン利用の「質」に着目した支援(単なる時間制限ではなく、内容やインタラクティブ性も考慮)

この研究は、デジタル環境における障害児支援の課題を浮き彫りにし、今後の保健・教育政策、家庭・施設での支援実践に重要な示唆を与える成果となっています。

JCPP Advances | ACAMH Child Development Journal | Wiley Online Library

この論文「Assessing cognition in autistic youth with and without attention-deficit/hyperactivity disorder using the NIH Toolbox Cognition Battery」は、自閉スペクトラム症(ASD)のある若者における認知機能の特徴を、ADHD(注意欠如・多動症)の有無によって比較・分析した研究です。全米規模のECHOコホートプログラムからのデータを活用し、NIH Toolbox Cognition Battery(NTCB)を用いて、流動性知能と結晶性知能の両面から検討されています。


✅ 要約

本研究では、12~18歳の1,035人の子どもを対象に、NIH Toolbox Cognition Battery(NTCB)を用いて認知機能を評価し、**ASDのみ(AUT)、ADHDのみ、ASD+ADHD(AUT+ADHD)、いずれの診断もない群(noAUTADHD)**の4グループ間で比較を行いました。その結果、AUTおよびAUT+ADHD群は、流動性認知(Fluid Cognition)において有意に低いスコアを示した一方で、結晶性認知(Crystallized Cognition)では有意差は見られませんでした

また、ASDにADHDが併存していても、流動性・結晶性のいずれの認知指標においてもパフォーマンスに大きな差は見られませんでした。潜在プロファイル分析(LPA)では4つの認知プロファイルが抽出され、ASD群の19%が「結晶性認知が流動性認知より高い」クラスに分類されるなど、診断カテゴリを超えた重なりが見られました。

これらの結果は、ASDのある若者の中にも平均以上の認知能力を持つ個人がいることを示しており、診断ラベルにとらわれない強みに着目したアプローチや個別化支援の重要性を示唆しています。


🔍 実務・教育・支援への示唆

  • ADHDの併存がASDの認知課題をさらに悪化させるとは限らない
  • ASDの若者の中にも認知的強みを持つ人が一定数存在する
  • 診断名にとらわれず、個々の認知プロファイルに基づいた支援の設計が重要

今後は、認知の多様性を前提とした介入方法の開発や、流動性認知に課題を持つ若者への具体的なトレーニングプログラムの設計などが期待されます。

Transcranial Direct Current Stimulation of the Temporoparietal Junction in Autism Spectrum Disorder: Results of a Phase‐IIa Randomized, Double‐Blind, Sham‐Controlled Feasibility Study

この研究「Transcranial Direct Current Stimulation of the Temporoparietal Junction in Autism Spectrum Disorder」は、自閉スペクトラム症(ASD)のある10~17歳の若者に対して、側頭頭頂接合部(TPJ)への経頭蓄電刺激(tDCS)が社会的認知機能に与える効果と安全性を検討した第IIa相の無作為化・二重盲検・偽刺激対照試験です。


✅ 要約

本研究では、ASDの若者における社会的認知の困難に対して、側頭頭頂接合部(TPJ)に対する経頭直流刺激(tDCS)の可能性を検討しました。tDCSは、脳の特定部位に微弱な電流を流すことで機能を調整する非侵襲的な神経調節法です。

ドイツや他のヨーロッパ地域の研究拠点を含む本試験では、ASDの10〜17歳の若者24名(tDCS群12名、偽刺激群12名)が参加し、1回20分、計10回のtDCSを社会的認知トレーニングに追加する形で実施されました。

🔍 主な結果

  • 安全性は高く、副作用も重篤なものは確認されませんでした
  • 技術的実施やデータ収集、介入の継続率も非常に良好でした。
  • 主要評価指標(介入直後の社会的反応性)はtDCS群と偽刺激群で有意差なし(効果量ES = 0.098)。
  • しかし4週間後のフォローアップでは偽刺激群にわずかな改善傾向(ES = 1.106)も見られました。
  • 副次的評価では、強迫的行動の改善や生活の質(QOL)の向上がtDCS群で示唆されました

✳️ 結論と今後の課題

  • tDCSの安全性・実施可能性は高く、ASDへの適用に向けた前向きな兆しがあると評価されました。
  • 一方で、効果のばらつきや一部でのマイナス傾向も認められたため、刺激条件(強度・位置・回数など)と効果との関係を精査する必要があります
  • 将来の研究では、より多様な参加者・長期的な効果・個別化された刺激条件を含む設計が求められます。

この研究は、ASDにおける脳刺激を用いた補助的介入の実現可能性とその複雑性を示しており、今後の臨床応用に向けた貴重な一歩といえます。

Genome‐wide association analyses identify candidate loci for amyloid imaging and plasma biomarkers in adults with Down syndrome

この研究は、ダウン症(Down syndrome: DS)を持つ成人におけるアミロイド蓄積の遺伝的要因を明らかにするために行われた**ゲノムワイド関連解析(GWA)です。DSでは21番染色体のAPP(アミロイド前駆体タンパク質)遺伝子のトリプレット(3コピー)**により、アミロイドβ(Aβ)の過剰産生が起こり、若年期から脳内アミロイドの蓄積が進行することが知られています。


✅ 要約

本研究では、**ダウン症のある成人の脳内アミロイド蓄積や血漿中アミロイドバイオマーカー(Aβ40、Aβ42、Aβ42/40比)に関連する遺伝的要因を探索するため、ゲノムワイド関連解析(GWA)**を実施しました。対象は、**Alzheimer’s Biomarker Consortium–Down Syndrome(ABC-DS)**の参加者と、独立したDSコホートのデータです。

血漿バイオマーカーに関するメタ解析の結果、以下の**4つの新規遺伝子座(loci)**が有意に同定されました:

  • Aβ42関連
    • PFKFB3 遺伝子領域の rs147647642(p = 2.83×10⁻⁸)
    • DLX3–PICART1 領域の rs12952028(p = 9.31×10⁻⁹)
  • Aβ40関連
    • LINC01941–GYPC 領域の rs78338676(p = 9.33×10⁻⁹)
    • PDE4D 遺伝子の rs146261781(p = 9.97×10⁻⁸)

また、ABC-DSコホートのアミロイドPETデータからは、5つの候補遺伝子座が脳内アミロイド蓄積と関連していることが示されましたが、これらは今後、独立したDSデータセットでの検証が必要です。


✳️ 意義と今後の展望

この研究は、サンプル数の制限がある中でも、DS特有のアミロイド蓄積の遺伝的構造に光を当てた貴重な報告です。将来的には、こうした知見が、アルツハイマー病リスク評価や介入法の開発にもつながる可能性があります。また、マルチトレイト解析により、複数のバイオマーカーと関連する遺伝子変異も特定され、複雑な生物学的メカニズムの一端が解明されつつあります。