BTSシュガ、自閉症の子どもたちのために50億ウォンを寄付
この記事では、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)を含む神経発達症に関する最新の研究成果を取り上げ、個別の課題と支援の可能性について幅広く紹介しています。ASDの子どもにおける読解理解と脳のプラグマティックネットワークの関連や、自閉スペクトラム症の女性が子ども期・成人期に診断された場合の違い、さらには神経発達症のある若者の自殺リスクと心理的要因、学校におけるCBT介入の効果、ASDにおける内受容感覚の特性、ADHDの子どもにおけるfNIRSによる前頭前野の活動評価、そして栄養補助とCBTの併用によるADHD症状改善効果など、多角的な観点から分析された研究を通して、それぞれの特性理解とより良い支援の方向性が示されています。これらの研究は、当事者の多様な困難に対して個別化された支援アプローチの必要性を強調するとともに、今後の臨床実践や教育現場、家族支援の在り方に重要な示唆を与えるものとなっています。
社会関連アップデート
21日に除隊したBTSメンバーのシュガ(32、本名ミン·ユンギ)がセブランスに50億を寄付した。 自閉症スペクトラム障害患者のための治療センターの設立に乗り出す。23日、所属事務所のビッグヒットミュー.. - MK
BTSシュガ、自閉症スペクトラム障害の子どもたちのために50億ウォンを寄付し「ミン・ユンギ治療センター」を設立
BTSのシュガ(ミン・ユンギ)は、除隊後の2025年6月、セブランス病院に50億ウォンを寄付し、自閉症スペクトラム障害(ASD)患者のための専門治療センター「ミン・ユンギ治療センター」設立に乗り出しました。これは延世医療院におけるアーティストの寄付として過去最高額です。
本センターでは、言語・心理・行動治療のほか、シュガ自身が開発に関わった音楽を活用した社会性訓練プログラム「MIND」を提供。MINDは、Music, Interaction, Network, Diversity の頭文字を取ったもので、音楽を通じた感情表現や対人関係スキルの育成を目指します。
シュガは実際に楽器を演奏しながら子どもたちと交流し、プログラム開発に参加。今後は専門家の育成や研究活動も進め、プログラムの効果検証と継続的な発展を目指します。センターの本格稼働は2025年9月を予定しています。
学術研究関連アップデート
Effects of virtual reality-based exercise intervention in young people with attention-deficit/ hyperactivity disorder: a systematic review - Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation
この論文「Effects of virtual reality-based exercise intervention in young people with attention-deficit/hyperactivity disorder: a systematic review(ADHDの若年者におけるVR運動介入の効果:システマティックレビュー)」は、バーチャルリアリティ(VR)を活用した運動プログラムが、ADHDを持つ若者に与える効果について、既存の研究を整理・評価したものです。
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🔍 背景と目的
ADHD(注意欠如・多動症)は、注意力、行動制御、実行機能(EFs)に困難を抱える神経発達症であり、学業や生活の質に大きな影響を及ぼします。最近では、VR技術を用いた運動介入がADHD支援として注目されています。
このレビューは、以下の2点を検証することを目的としています: • VR運動がADHDの実行機能(EFs)に与える影響 • ADHDの症状軽減への効果
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🧪 方法 • 対象研究: 2010年〜2024年に発表された文献のうち、**VRベースの運動介入をADHDの若者に対して実施した6件の高品質な研究(計192名)**を分析。 • 評価指標: 実行機能の下位領域(抑制制御、注意、ワーキングメモリ、切り替え、計画力)と臨床的ADHD症状。 • VRの種類: 完全没入型・半没入型の両方を含む。
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✅ 主な結果 • 中〜高強度のVR運動は、以下に効果があることが示されました: • 実行機能の多くの下位領域(特に抑制制御、注意、ワーキングメモリなど)の改善 • ADHDの臨床症状(例:多動・不注意)の軽減 • 完全没入型と半没入型のVR介入の効果に大きな差は見られませんでした。 • 30分以上のセッションで年齢を問わず効果が確認され、実施の実現可能性も高いとされました。
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📝 結論と今後の課題
本レビューは、VR運動がADHDの若者の実行機能と症状改善に有効であることを示す初期的エビデンスを提供しています。特に、「楽しさ」や「没入感」による動機づけの向上も期待されます。
ただし、今後は以下の点が求められます: • 他の介入(例:伝統的な運動や薬物療法)との比較研究 • より厳密な実験デザインによる再検証
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この研究は、VR技術を活用した新しい非薬物的アプローチとして、教育・医療・リハビリテーション現場におけるADHD支援の選択肢を広げる重要な一歩といえるでしょう。
Retrospective analysis of potential sex differences in naturally emerging psychiatric comorbidities over time in Turkish children and adolescents with attention deficit/hyperactivity disorder - Middle East Current Psychiatry
この論文「トルコのADHD児童・青年における自然に現れる精神的併存症の性差に関する後ろ向き分析」は、ADHDを持つ子どもと青年における精神的併存症(併発障害)の出現時期・頻度・分布に性差があるかどうかを調査した研究です。特に女児・女性のADHDに注目しています。
🧠 背景と目的
ADHD(注意欠如・多動症)を持つ子どもたちは、他の精神的障害を併発することがよくありますが、そのパターンは性別や年齢によって異なるとされています。
本研究の目的は:
- トルコのADHD児童・青年322名(6〜18歳)の診療記録をもとに、
- 精神的併存症の出現頻度やタイミングに性差があるかを明らかにすることです。
🧪 方法
- 大学病院の診療記録をもとにした後ろ向き研究(既存データの分析)。
- 使用された主な評価ツールはConners’ 保護者/教師評価尺度(CP/TRS)。
- ADHDの重症度や行動傾向(衝動性、反抗性、感情不安定性など)も評価しました。
🔍 主な結果
- 女児の方が男児よりも精神的併存症の率が有意に高い(83.5% vs. 62.7%、p < .001)。
- 特に神経発達症(例:学習障害、自閉症など)が女児で多い(p < .001)。
- ADHDや衝動性、反抗性、情緒不安定性のスコアは、併存症が出現する時期とわずかに負の相関があった(スコアが高いほど早く併発する傾向)。
- 併存症の出現を予測する要因として、年齢と限局性学習障害(SLD)が有意であることが判明。
- 治療薬の選択にも性差:女児ではアトモキセチン(ストラテラ)が選ばれる傾向があり、男児では精神刺激薬(例:メチルフェニデート)がより高用量で使用される傾向があった。
📌 結論と示唆
- 女児のADHDは見逃されやすく、併存症が多い傾向があるため、より注意深い評価と対応が必要。
- 年齢や行動特徴(反抗性・衝動性・情緒不安定性)、学習障害の有無が、併存症出現のリスク要因。
- 治療選択にも個別性と性差の理解が重要であり、診断・介入の最適化のためには性別を考慮したアプローチが求められるとしています。
この研究は、ADHD支援において女児特有のリスクにもっと注目すべきであるという臨床的・実践的な示唆を与えています。特に「見えにくいADHD」に対する理解と配慮が、今後の診断・支援の質を高める鍵となるでしょう。
Maternal thyroid dysfunction and stress during pregnancy on ADHD risk in preschoolers: a retrospective study
この論文「妊娠中の母体の甲状腺機能異常とストレスが就学前児のADHDリスクに与える影響:後ろ向き研究」は、妊娠中の母親の健康状態が子どものADHDリスクに与える影響を明らかにすることを目的とした大規模な中国の後ろ向きコホート研究です。
🎯 研究の目的
- 就学前の子どもにおけるADHDの有病率を推定するとともに、
- 母親の妊娠中の甲状腺機能異常とストレスが、子どものADHD発症リスクにどのように関連するかを調査。
🧪 方法
- 中国・深圳市の20の幼稚園から5602組の母子ペアを対象にした後ろ向きコホート研究。
- 子どもは3~7歳で、ADHD診断の有無を確認。
- 母親の妊娠中の甲状腺機能とストレスレベルを、妊娠初期・中期・後期に分けて分析。
- Cox比例ハザードモデルを用いて、ADHD発症との関連を統計的に評価。
📊 主な結果
- 妊娠中に甲状腺機能異常があった母親の子どもは、ADHD診断リスクが54.1%高い(HR = 1.541, 95% CI: 1.050–2.262)。
- 妊娠初期のストレスが特に重要:
- 母親が高ストレス状態だった場合、子どものADHDリスクが有意に上昇。
- 対照的に、中程度または軽度のストレスだった場合、それぞれ36.3%・42.9%リスクが低下。
- 妊娠中期・後期のストレスは、ADHDリスクと有意な関連なし。
✅ 結論と臨床的示唆
- 妊娠中の母親の甲状腺ホルモン異常と初期ストレスは、子どものADHD発症リスク因子となる可能性がある。
- よって以下が重要:
- 妊娠中の定期的な甲状腺機能のチェック、
- 妊娠初期におけるストレスマネジメントの介入、
- 就学前の早期ADHDスクリーニングの実施。
この研究は、妊娠中の母体ケアが子どもの発達的健康に直結することを強調しており、予防的介入の重要性を裏付ける実証データを提供しています。特に妊娠初期のストレス管理がADHD予防につながる可能性を示しており、妊婦への包括的支援の必要性を示唆しています。
ADHD medication dispensing trends in Dutch youth before and after the implementation of the Youth Act (2010–2022)
この論文「オランダにおける青年のADHD薬処方動向:ユース法(Youth Act)導入前後の変化(2010–2022)」は、2015年にオランダで施行された**ユース法(Youth Act)**が、ADHD薬の処方実態にどのような影響を与えたかを検証したものです。
🎯 研究の目的
- ユース法の導入前後で、オランダの0〜19歳の若者に対するADHD薬の処方傾向にどのような変化があったのかを評価すること。
ユース法は、
子どもへのケアの効率化・医療化の抑制・地域主導の支援強化
🧪 方法
- IADB.nl薬局データベースを用いた回顧的コホート研究。
- 2010〜2022年にADHD薬を使用した13万7,684人の若者(0〜19歳)を対象に、処方の有病率(prevalence)・発生率(incidence)・使用期間・性別差などを分析。
📊 主な結果
- ADHD薬の全体的な処方率は2015年(ユース法導入年)から2022年にかけて有意に減少
- 1,000人あたり:45.7件(2015年) → 35.2件(2022年)へ(p < 0.001)
- メチルフェニデートが全処方の約87%を占める。
- 7〜12歳の子どもにおける新規処方率は有意に減少(9 → 7.3、p < 0.001)。
- 一方で、**思春期の若者(特に女子)**では新規処方率が増加
- 思春期女子:3.5 → 5.3(p < 0.001)
- 女子の方が使用期間は短く、処方頻度も低いが、1日あたりの用量に差はなし。
✅ 結論と解釈
- ユース法導入後、オランダの若者におけるADHD薬の処方率は全体的に減少。
- ただし、この傾向には他にも要因が関与していると考えられる:
- DSM-5の診断基準の変更(2013年)
- COVID-19のパンデミック
- 薬の供給不足など
これらを踏まえると、処方率の変化はユース法の影響だけでなく、
複合的な要因
🔍 補足ポイント
- ユース法の目的:「医療依存を減らし、個別ニーズに合った地域中心の支援体制を整えること」
- この研究は、政策が実際の医療行動に及ぼす影響を示す貴重な実証研究として位置づけられます。
Sleep in Infants with Down Syndrome or Familial Likelihood of Autism in the First Year of Life
この論文「生後1年におけるダウン症または自閉スペクトラム症の家族歴を持つ乳児の睡眠」は、乳児期における睡眠の問題がいつ・どのように現れるか、またそれが発達障害のリスク群でどう異なるかを調査した研究です。
🧪 研究の概要
- 対象者は以下3グループの乳児(生後6か月・12か月時点)
- ダウン症(DS)
- 自閉スペクトラム症(ASD)の家族歴がある乳児(HL)
- 家族歴のない乳児(LL)
- 方法:保護者による**簡易乳児睡眠質問票(BISQ)**を使用し、睡眠の特徴を調査
- 6か月:DS 59名, HL 173名, LL 54名
- 12か月:DS 58名, HL 129名, LL 30名
- 両時点にわたる縦断分析:DS 33名, HL 100名, LL 23名
📊 主な結果
生後6か月時点:
- DSの保護者:LLと比べて夜間の覚醒が少なく、睡眠への心配も少ない
- HLの保護者:寝つきの時間(SOL)が長い
生後12か月時点:
- DSとHLの乳児:
- 夜間の睡眠時間が短く
- 夜間の覚醒回数が多く
- 寝つきにも時間がかかる傾向
縦断的変化(6→12か月):
- DS・HLともに:
- 夜間の覚醒が増加
- 夜間の睡眠時間が短くなる
- 特にDS群では、寝つきの時間が増加した乳児の割合がLL群より多い
✅ 結論と意義
- ダウン症児およびASDリスクのある乳児では、睡眠の問題が生後1年以内にすでに現れている
- これらの早期の睡眠の変化は、発達の指標または介入のターゲットとして重要な可能性がある
- よって、乳児期からの睡眠モニタリングと早期支援の検討が望まれる
🔍 補足ポイント
- 寝つきの遅れ(SOL: Sleep Onset Latency)や夜間覚醒は、発達障害児に多くみられる問題行動の予兆となることが過去の研究でも指摘されています。
- この研究は、多施設共同・縦断的デザインである点からも信頼性が高く、乳児の睡眠と発達障害との関連性の早期把握に貢献するものといえます。
Communication in Autistic Adults: An Action-Focused Review
このレビュー論文は、2020~2024年に発表された研究を中心に、自閉スペクトラム症(ASD)の成人におけるコミュニケーションの特徴と課題について整理し、実践的な対応策を提示しています。
■ 背景と目的:
多くの自閉症の成人は、流暢な言語を十分に獲得できないまま成人期を迎えます。その結果、人間関係、就労、健康管理などの場面で深刻なコミュニケーションの困難に直面することが多いです。こうした課題の多くは、個人の特性だけでなく、環境や他者の理解不足によっても引き起こされます。
■ 注目された4つのテーマ:
- 文字通りと比喩的な言語(例:冗談や皮肉の理解の難しさ)
- 拡大代替コミュニケーション(AAC)(例:文字盤やアプリなどを使った補助的手段)
- 非言語的コミュニケーション(例:表情、ジェスチャー、視線の使い方)
- ダブル・エンパシー問題(自閉症者と非自閉症者の間で、相互の誤解が起きやすいこと)
■ 結論と提言:
自閉症の成人のコミュニケーションを支援するには、多角的な理解と個別の配慮が必要です。特に、専門家や支援者は「自閉症者の特性を変える」のではなく、特性に合わせた環境や接し方を整えることが重要です。論文ではそのための**具体的なアクション(提案や配慮方法)**も紹介されています。
このレビューは、「コミュニケーション能力の欠如」という見方を超えて、多様な表現方法や相互理解の重要性を再確認させてくれる内容です。支援や研究の実践にすぐに生かせる視点が詰まっています。
A Component-Based Leisure Activity Assessment for Adults with Autism Spectrum Disorder: A Preliminary Investigation
🔍 論文要約|自閉スペクトラム症(ASD)の成人におけるコミュニケーションの特徴と支援
■ 概要
このレビュー論文は、2020〜2024年に発表された最新の研究に基づき、自閉スペクトラム症(ASD)の成人に特有のコミュニケーションスタイルと、支援者・研究者が取るべき実践的な対応策に焦点を当てています。
📌 主なポイント
1.成人期のコミュニケーション課題
- 多くの自閉症の成人は、流暢な言語を十分に獲得しないまま成人期を迎える。
- 人間関係、職場、医療の現場などで深刻なコミュニケーションの障壁が生じる。
2.障壁の要因
- 言語や非言語の違い(例:比喩の理解、視線・ジェスチャーなど)
- 環境やコミュニケーション相手が非対応(自閉症の特徴への理解不足)
🎯 注目される4つのテーマ
テーマ | 内容 |
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① 文字通り/比喩的言語の理解 | 冗談や皮肉、暗黙のルールなど、間接的な表現が誤解を招くことが多い。 |
② 拡大代替コミュニケーション(AAC) | 話し言葉の代わりにタブレットや絵カードを用いる手段の活用が重要。 |
③ 非言語的コミュニケーション | 表情や身振り・視線などが自閉症成人では異なる場合があり、誤解を生む。 |
④ ダブル・エンパシー問題 | 自閉症者と非自閉症者の相互理解の難しさが問題の本質。片側の問題ではない。 |
✅ 推奨アクション(研究者・支援者向け)
- 成人に特有のASD特性を理解し、尊重する
- 「普通の会話」に合わせるのではなく、相手に合ったスタイルで支援
- 環境の整備(静かな場所、明確な指示、視覚的サポートなど)
- 対話における前提の違い(ダブル・エンパシー)への理解を深める
💡 結論
自閉症の成人におけるコミュニケーションは「欠如」ではなく、「多様性」として理解する必要があります。配慮ある環境と柔軟なアプローチが、当事者の自信と生活の質の向上につながります。
The Role of the Brain's Pragmatic Language Network in Reading Comprehension in Autistic Children
🧠自閉スペクトラム症の子どもにおける「読み取り理解」と脳の「語用論ネットワーク」の関係とは?
🔍 研究の背景と目的
自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、言語発達の遅れや語用論(言葉を文脈に応じて使う力)の困難さを抱えることが多く、これが読解力の問題につながると考えられています。
これまでの研究では、読解力と語用論に相関があるという指摘はあったものの、それを支える**脳の仕組み(神経基盤)**はほとんど分かっていませんでした。
この研究では、語用論ネットワーク(Pragmatic Network:PN)と呼ばれる脳の領域が、ASDと定型発達(NT)の子どもでどのように読解時に働くかをfMRI(脳機能画像)で調べました。
👩🔬 方法
- 対象:8〜13歳の子ども
- ASD群:26人(VA課題)、25人(MS課題)
- NT群:各15人
- 課題:2種類の読解課題(文脈理解のレベルが異なるもの)を実施
- 測定:fMRIによるPNの活動量と読解力との関係
🧪 主な結果
-
両グループともPNを活性化させて読解を行っていたが、
ASDの子どもはより広範囲にPNを使っていた。
-
ASD群では、PNの中でも特に以下に関連する領域がより強く活動:
- 言語処理
- 文脈的統合
- 他者の意図や感情の理解(Theory of Mind)
-
ASD群では、PNの活動量が読解力と相関していたが、
NT群にはその相関は見られなかった。
🧠 意義と考察
この結果から、ASDの子どもは読解中に文脈を理解しようとする際、より多くの脳リソースを使って補っていることが示唆されます。
特に語用論ネットワーク(PN)の活発な動員が、ASDの読解における特徴と関係している可能性があります。
📝 まとめ
ASDの子どもは、読解中に語用論ネットワークをより広く使う傾向があり、その活動量は実際の読解力と関係していました。
この知見は、ASD児への読解支援の際に語用論能力や社会的文脈理解を重視すべきことを示唆しています。
Comparative Analysis of Autistic Women Across the Lifespan: Childhood vs. Adulthood Diagnosis
👩🦰女性の自閉スペクトラム症(ASD)に関する大規模調査:子ども時の診断 vs. 成人後の診断
🎯 研究の目的
これまで自閉スペクトラム症の研究は「子ども」や「男性」に偏っており、自閉スペクトラム症の成人女性は十分に研究されていませんでした。この研究は、ASDと診断された成人女性1424人を対象に、診断年齢(子ども vs. 大人)による違いや、教育、就労、人間関係、精神的健康などの特徴を比較分析しました。
👩🔬 対象と方法
- 対象:ASDと診断され、自分で同意できる成人女性(n = 1424)
- 子ども時に診断:平均診断年齢 9.6歳
- 成人になってから診断:平均診断年齢 31.8歳
📊 主な結果
🔹 教育・就労・人間関係
- 全体の80%以上が大学・専門学校などの高等教育を受けていた
- 成人診断群の3分の1以上が4年制大学卒以上
- 半数以上が何らかの職に就いており、成人診断群の31.7%がフルタイム就労
- 半数以上が結婚または恋愛関係にあると回答
🔹 精神的健康・併存症(成人診断群に多い)
- 不安障害:約70%
- うつ病:約62%
- 摂食障害:約17%
- 物質使用障害:約9%
- 自殺念慮:全体の34%
- 自傷行為歴:全体の21%
🔹 その他の傾向
-
成人診断群は、内向化・外向化問題、物質使用のリスクが高く、
自己の強みに対する認識が低い傾向があった
📝 結論と示唆
- 成人女性のASD診断は遅れる傾向があり、精神的な困難も多い
- それでも、多くの女性が教育、就労、人間関係などの発達的マイルストーンを達成している
- 著者らは、ASD女性のニーズに合わせた、より個別的な支援策の開発が必要だと提言しています
この研究は、ASD女性の多様な人生経験と課題に光を当て、「早期診断・介入」だけでなく、成人期の支援体制の強化の重要性を示しています。
Frontiers | Suicidal Risk and Psychopathological Profiles in Adolescents with Neurodevelopmental Disorders: An Italian Multicentric Study
🧠発達障害のある若者における自殺リスクと心理的プロフィール:イタリア多施設研究
🎯 研究の目的
本研究は、発達障害(NDD:神経発達症群)を持つ11~18歳の若者のうち、**自殺関連行動(SSB)**がある群とない群を比較し、自殺リスクと関連する心理・環境的要因を明らかにすることを目的としています。
※SSB(Suicidal Spectrum Behaviors):自傷行為、希死念慮、自殺企図、死亡に至る自殺などの連続体
🧪 研究の方法と対象
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対象:イタリア国内4都市(メッシーナ、パドヴァ、リミニ、カリアリ)の小児神経精神科外来に通う
NDDのある若者127名(男性67名・女性60名)
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比較内容:
- 感情調整の困難さ(emotional dysregulation)
- 衝動性
- 易刺激性(イライラしやすさ)
- 環境的リスク(特に有害な幼少期経験=ACE)
🔍 主な結果と発見
✅ リスク要因
- 感情調整の困難さが最も顕著なリスク要因(p < .001)
- *有害な幼少期経験(ACE)**も明確に自殺リスクと関連(p = .002)
✅ 考察ポイント
- ASD(自閉スペクトラム症)やADHDなどの神経発達症を持つ若者は、一般より自殺リスクが高い
- 自殺を未然に防ぐには、定期的なフォローアップ時に、内面的な感情の扱い方や過去のトラウマに注目することが重要
📝 結論と臨床的意義
- 発達障害を持つ若者の自殺行動に対して、感情のコントロール力や過去のトラウマ経験への対応がカギとなる
- 医療者・支援者は、早期の心理的支援や予防的介入を通じて、自殺リスクを軽減できる可能性がある
この研究は、NDDを持つ若者における自殺予防の必要性を明確に示し、感情調整支援とトラウマケアの導入の重要性を訴えています。
Frontiers | Facing Your Fears in Schools: Using the ADIS/ASA to characterize anxiety and intervention outcomes in students with autism or suspected autism
🏫 自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもたちの不安に学校で対応する取り組み:「Facing Your Fears in Schools(FYF-S)」の効果を検証
🎯 研究の背景と目的
自閉スペクトラム症(ASD)のある児童は、不安症を併発するリスクが高く、約40%が臨床的な不安を経験すると言われています。
しかし、変化への恐怖や独特なこだわりに基づく恐怖など、ASD特有の不安は一般的な診断基準では見逃されがちです。
この研究では:
-
*ADIS/ASA(不安症状インタビュー:ASD特化版)**を用いてASD児の不安の特徴を明らかにすること
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*学校内で実施される認知行動療法(CBT)プログラム「FYF-S」**の効果を測定すること
を目的としています。
🧪 方法と対象
- 対象:ASDまたはその疑いがある7~14歳の児童37名
- グループ分け:FYF-S(学校内CBT) vs. 通常ケア(Usual Care)
- 測定:介護者がADIS/ASAを介して、介入前後の不安の診断状況を報告
- 評価者:訓練を受けた臨床家が、評価内容を知らずに面接を実施(バイアス回避)
📈 主な結果
- FYF-Sを受けた子どもたちは、介入後に不安の診断数が減少し、全体の不安スコアも有意に改善
- ASDの児童はDSM-5に基づく典型的な不安だけでなく、ASDに特有の不安症状も併せ持っていることが明らかに
📝 結論と意義
- FYF-Sは、学校で提供可能な有望な不安介入プログラムであり、ASDの子どもたちのメンタルヘルス支援において重要な手段となりうる
- ADIS/ASAのようなASDに特化した評価ツールの導入が、より適切な支援につながる可能性がある
この研究は、**「ASDの子どもたちに対する学校内メンタルケアの可能性」**を示す初の取り組みの一つであり、現場でのアクセス性向上と早期支援の促進につながると期待されています。
Frontiers | Interoception in Individuals with Autism Spectrum Disorders - A Systematic Literature Review and Meta-Analysis
🧠 自閉スペクトラム症(ASD)における「内受容感覚(インターオセプション)」の研究を総まとめ
— 系統的レビューとメタ分析から見えたこと
🔍 研究の目的
「内受容感覚(interoception)」とは、自分の体の内部感覚(空腹・心拍・呼吸・感情の変化など)を感じ取る力です。
ASDの人々はこの感覚に特異性があるとされてきましたが、一貫した結論が出ていないのが現状です。
この研究では、子どもから大人までのASD当事者の内受容感覚に関する研究31件を対象に、レビューとメタ分析を行いました。
🧪 調査内容と分析項目
内受容感覚は以下の3側面に分けて調査:
- cIA(interoceptive accuracy):心拍を正確に数えられるなど、客観的な精度
- IS(interoceptive sensibility):自分で感じる体調や感覚の自己報告的な感度
- IAW(interoceptive awareness):主観と客観の感覚の一致度(メタ認知的な側面)
📊 主な結果
✅ メタ分析(大人5研究)
- cIA(正確性)において、ASDと定型発達者に有意差は見られなかった
- 効果量:−0.21(p = 0.06) → わずかな違いがあるが統計的に有意ではない
⚠️ 子ども・思春期の研究
- 一貫性に欠ける結果:内受容感覚が「低い」「高い」「変わらない」など研究ごとに異なる
- 要因のばらつきが影響:
- 測定方法(質問紙や心拍検知課題など)
- 年齢、IQ、併存疾患(不安症やうつなど)
📝 結論と今後の課題
- ASDと内受容感覚の関係は明確ではなく、特に正確性(cIA)では大きな差がない可能性がある
- ただし、ASDの人の情緒調整や社会的機能には内受容感覚が関与している可能性があり、臨床的意義は大きい
- 今後は:
-
標準化された測定法
-
発達的変化を追う縦断研究
-
感覚と情緒・社会性との関係性
などの研究が求められている
-
このレビューは、ASDにおける「体の内側を感じる力」の理解を深め、将来的な感情調整支援やソーシャルスキルトレーニングの改善に役立つ可能性があります。
Frontiers | Verbal Fluency Tasks and Attention Problems in Children with ADHD: Evidence from fNIRS
🧠 子どものADHDと前頭前野の活動をfNIRSで可視化
— 言語流暢性課題(VFT)を通じた注意力との関係性の検証
🔍 背景と目的
注意欠如・多動症(ADHD)の子どもは、注意力の持続や実行機能に困難を抱えやすく、**前頭前野(特に背外側前頭前野:DLPFC)**の活動異常が指摘されています。
本研究では、fNIRS(近赤外分光法)という脳機能を可視化できる非侵襲的な手法を使い、7〜9歳のADHDの子どもが言語流暢性課題(VFT)を行っているときの脳活動を分析し、注意力との関連を調べました。
🧪 方法
- 対象者:ADHD群13人、定型発達群13人(年齢・性別をマッチング)
- 課題:Verbal Fluency Task(制限時間内に特定の文字やカテゴリから単語を思い出す)
- 測定:fNIRSを用いてDLPFCの活動を測定(平均振幅・重心・初期傾斜)
- 評価尺度:SNAP-IVおよびDSM-5ベースの評価による不注意スコア
📊 主な結果
-
ADHD群では、DLPFCの活動が有意に低下し、より広範囲にわたるネガティブな活性パターンが観察された(p < 0.05)
-
特に平均振幅の低さが、SNAP-IVおよびDSM-5による不注意スコアと有意に相関していた
→ 前頭前野の活動低下は、注意の問題と強く関係している可能性を示唆
🧠 結論と意義
- fNIRSを使ったこの研究は、小児ADHDにおける注意力の問題と前頭前野の神経活動の関係を初めて実証的に示した数少ない研究の一つ
- 言語流暢性課題中のDLPFC活動の低下は、ADHDの客観的な評価指標として有望
- 将来的には、診断補助や介入効果の可視化といった臨床応用への可能性が期待される
この研究は、「子どもに負担をかけずに注意の問題を脳活動レベルで把握する方法」として、fNIRSの有用性を裏付ける重要なステップといえるでしょう。
Frontiers | The Impact of a Multi-Micronutrient Nutritional Formula Combined with Cognitive Behavioral Therapy in Managing Symptoms of Children with Attention Deficit Hyperactivity Disorder
🧠 栄養補助と認知行動療法の併用がADHDの子どもに与える影響
— 多栄養素サプリ+CBTの統合的アプローチによる効果を検証
🔍 背景と目的
注意欠如・多動症(ADHD)は、不注意・多動・衝動性を主症状とする発達障害であり、学業や人間関係、生活全体に大きな影響を及ぼします。本研究では、**マルチミクロン栄養素(MNF:複数の微量栄養素)と認知行動療法(CBT)**を組み合わせたアプローチが、ADHDの症状管理にどのような効果をもたらすかを検証しました。
🧪 方法
- 対象:6〜14歳のADHDの子ども220名
- グループ分け:
- MNF群(112名):栄養補助のみ
- MNF+CBT群(108名):栄養補助と認知行動療法を併用
- 期間:3か月間の介入
- 評価指標:
- コナーズ親用質問票(PSQ)
- SNAP-IV 教師評価版
- Dundee Difficult Times of the Day Scale(D-DTODS:日常生活の困難さ)
📊 主な結果
- 両群とも治療前の状態に差はなし(年齢や症状の重さなど)
- 治療後:
- 注意欠如、衝動性・多動性、反抗的行動が、MNF+CBT群でより大きく改善
- 学習面や問題行動スコアも、MNF+CBT群でより低下
- D-DTODSにより評価される日常生活における機能障害の軽減も、MNF+CBT群の方が顕著
- 安全性:有害事象なし。副作用も報告されなかった
🧠 結論と臨床的意義
- ADHD治療において、脳の神経化学的な要因(栄養)と行動的な要因(CBT)を両面からアプローチすることが効果的である可能性が示されました
- 特に、学業や生活場面での機能改善にも寄与しており、臨床現場での応用が期待されます
- 薬物治療の代替または補完として、副作用の少ない統合的ケアの選択肢として注目されます
この研究は、「栄養+心理支援によるADHD支援」の可能性を示す貴重なエビデンスとなっています。