Skip to main content

日本におけるASDの長期的な有病率と負担予測

· 23 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事は、2025年6月時点で発表・公開された複数の最新研究を紹介し、発達障害(主にASDおよびADHD)に関連する知見のアップデートを総覧的にまとめたものです。主なトピックには、ASDと社会不安の共感プロファイルの違い、授乳中の母親に対するADHD薬物治療の可能性、日本におけるASDの長期的な有病率と負担予測、マイノリティストレス理論からみた自閉スペクトラム女性の経験、知的障害のある子どもの私的発話の役割、学校ベースのADHD介入の効果、青年期以降のASD者にみられる行動課題、そして宗教的対処とマインドフルネスが家庭生活の質に与える影響などが含まれています。これらの研究はいずれも、発達障害に対する理解を深化させると同時に、当事者や家族のQOLを高めるための具体的な支援の方向性や評価指標の提案を含んでおり、臨床・教育・福祉・家族支援など多様な実践領域において示唆に富む内容となっています。

学術研究関連アップデート

自閉症児と親の対話支援AIアプリ開発、意味のあるやり取りを共有 韓国KAIST|韓国科学技術ニュース|Science Portal Korea 韓国の科学技術の今を伝える

韓国KAISTは、最小限の言語能力しか持たない自閉症児(MVA)とその親との間で意味のある対話を実現するためのAIコミュニケーションアプリ「AAcessTalk」を開発しました。従来の固定カード型AACツールとは異なり、子どもの関心や状況に応じてAIが語彙カードをリアルタイムで提案し、親には会話を深めるための文脈ガイドを提供します。子どもが主導権を持てるよう設計された「ターンパスボタン」などを備え、双方向的な対話を支援します。2週間のパイロット研究では、11家族すべてが「初めて意味のあるやり取りができた」と回答し、子どもの新たな発話も見られたとのことです。研究を主導したホン・ファジュン教授は、本アプリが家族のつながりを育むAIの可能性を示したと述べており、今後は神経多様性を尊重する人間中心のAIとしての改良と普及を目指すとしています。

ADHD and Suicidality in Adolescents: A Systematic Review of Moderators and Mediators

本論文は、ADHD(注意欠如・多動症)を持つ10〜19歳の青少年における自殺リスクの関連性と、その関係に影響を与える要因(媒介因子や修飾因子)を体系的にレビューした研究です。アメリカでは10〜14歳の死因第2位、15〜24歳の第3位が自殺であり、ADHDを持つ青少年は特に自殺リスクが高いとされています。本レビューでは、2024年12月にPRISMAガイドラインに従って文献検索が行われ、最終的に28件の研究が対象とされました。その結果、ADHDが青少年の自殺リスクを高める独立した要因であることが確認されました。また、心理的要因、家族関係、仲間や社会的要因、主観的な幸福感、トラウマや逆境などが、この関係性に影響を与える媒介・修飾因子として特定されました。自殺予防にはこれらの要因への介入が重要であり、今後の研究では、特にウェルビーイングを高めるようなポジティブな要因に焦点を当てた検討が求められています。

Scrolling Through ADHD: College Students’ Engagement with ADHD Digital Media

この研究は、ADHDの診断を受けていないが症状を自覚している大学生が、SNSなどのデジタルメディアを通じてADHD関連の情報にどのように関与しているかを明らかにし、その利用とADHD症状・スティグマ(偏見)の関係を調べたものです。対象は平均年齢19.09歳の大学生490人で、多くが日常的にADHDに関連するコンテンツ(特に人物やキャラクターが登場する動画)を視聴していました。分析の結果、ADHD関連メディアの使用頻度はADHD症状との間に有意な正の関連がありましたが、スティグマとの関連は認められませんでした。また、一般的なSNS使用とADHD関連メディアの使用量の間にも明確な関連はありませんでした。これらの結果は、ADHDに関連するSNSコンテンツの影響が無視できない一方で、その受け止め方や影響にはさらなる検証が必要であることを示しています。ADHD症状がメディア使用を促すのか、逆にメディアの影響で自己認識が高まるのか、その双方向的な関係の解明が今後の課題です。

A mixed-methods study of autistic and non-autistic community member participation in autism research

この研究は、「参加型研究(participatory research)」に対する自閉症研究者の態度や実践状況を明らかにするために行われた混合研究(量的調査+質的インタビュー)です。参加型研究とは、自閉症当事者やその関係者(親や教師など)が研究の全過程に積極的に関与する手法で、当事者の声を反映した実践的で有意義な研究を目指すものです。

本研究では、査読済みの自閉症研究論文の責任著者215名へのアンケートと、そのうち21名へのインタビューを実施しました。結果、参加型アプローチの実施率は全体的に低く、多くの研究者が「参加型研究には価値がある」と中程度に評価しながらも、実際にはさまざまな障壁(リソース不足、時間、専門性のギャップなど)によって実践が難しい状況があることが明らかになりました。

また、言語使用に関する設問では、約30%の研究者が「アイデンティティ・ファースト言語(例:自閉症者)」を一切使用しないと回答しており、研究における言葉選びも当事者参加と深く関係していることが示唆されました。

さらにインタビューでは、参加型研究がもたらす「変革的な力(transformative power)」、すなわち研究そのものの質や意味づけを当事者とともに再構築する可能性についても語られました。特に「インサイダー研究(insider research)」──自閉症の当事者が研究者として、自らの経験と専門性を活かして行う研究──の重要性も強調されました。

この論文は、自閉症分野における参加型研究の現状と課題、そして今後の実践に向けた指針を提供する重要な資料となっています。

'Picking the best of a bad bunch': Exploring stakeholder perspectives of self-harm assessment tools for autistic adults

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の成人における自傷行為(self-harm)の評価ツールに関するステークホルダーの視点を探るものです。現在、自閉症の人々に特化した自傷評価ツールは存在せず、一般的な評価ツール(NSSI-AT、ISAS、QNSSI)を代用している状況がありますが、それらが本当に適切かどうかは検証されていません。

研究チームは、自傷経験のある自閉症成人5名と、自閉症の人々を支援する専門家4名を対象に、2つのフォーカスグループを実施しました。その結果、いずれのツールにも多少の長所はあるものの、「仕方なく選ぶ」レベルであり、真に自閉症者に適したツールとは言えないという共通認識が示されました。

主な課題としては、以下の点が挙げられています:

  • 認知的な負荷:質問の複雑さや長さ、記憶力や内省を必要とする内容が多く、自閉症の特性に合っていない
  • 重要な要素の欠如:自傷の背景にある感覚過敏・社会的ストレス・支援環境などが問われていない
  • 意図性やスティミング(自閉症特有の自己刺激行動)との混同:自傷と自己調整行動の区別が困難であることに十分配慮されていない
  • スティグマや共存症への配慮不足:ADHDや知的障害などの併存症、また社会的偏見が考慮されていない

両グループとも、既存ツールの修正ではなく、新たに自閉症の人々とともに作る評価ツールの必要性を強く訴えています。そのようなツールがあれば、自傷の早期発見や適切な支援につながる可能性があると示唆されました。

本研究は、自閉症成人における自傷支援の質を高めるための重要な一歩であり、当事者視点に基づいた新たなアセスメント開発の方向性を明確に示したと言えるでしょう。

Distinct Empathy Profiles in Autism and Social Anxiety: A Comparative Study

この研究は、自閉スペクトラム症(ASC)と社交不安(SA)を持つ人々が、それぞれどのように**共感(empathy)**を経験しているのかを比較し、共感プロファイルの違いを明らかにしようとしたものです。

🔍 研究概要

  • 対象者:大学生105名を3グループに分けた
    • ASC群(n=34)
    • SA群(n=38)
    • 健康な対照群(n=33)
  • 評価方法
    • SRS-2:自閉傾向の測定
    • LSAS:社交不安の測定
    • IRI(Interpersonal Reactivity Index):共感の4側面を測定
      • 認知的共感:空想(Fantasy)・視点取得(Perspective Taking)
      • 情動的共感:個人的苦痛(Personal Distress)・共感的配慮(Empathic Concern)
    • RMET(目から心を読む課題):瞬間的な心の読み取り能力

🔑 主な発見

  1. ASC群の特徴
    • 「共感的配慮(Empathic Concern)」と「視点取得(Perspective Taking)」が有意に低い
    • 「個人的苦痛(Personal Distress)」は高め(SA群と同様)。
  2. SA群の特徴
    • 「共感的配慮」は正常範囲。
    • しかし「個人的苦痛」は高い(ASCと共通)。
  3. 対照群の特徴
    • 全体的にバランスの取れた共感プロファイルを示す。
  4. 新指標:PD/EC(個人的苦痛 ÷ 共感的配慮)比率
    • ASCとSAを判別する新たな指標として提案。
    • 0.83以上でASCを示す可能性が高い(感度良好、特異度は中程度)。
  5. RMET結果
    • 全グループとも平均的なスコアで、有意差なし
    • 状態的共感(その場で他人の感情を読み取る力)はグループ間で顕著な違いは見られなかった。

💡 意義と活用

この研究は、ASCとSAが異なる共感プロファイルを持っていることを示し、診断や支援方針の検討に役立つ知見を提供しています。特に「PD/EC比」は、臨床や研究で使える簡便な判別ツールとして注目されます。


📝 まとめ

ASCは「他者への思いやりや視点取得が苦手」であり、SAは「他者に共感しつつも不安や苦痛を強く感じやすい」傾向があります。それぞれに合った支援には、こうした共感の質的違いを理解することが重要です。

Managing attention-deficit/hyperactivity disorder in a breastfeeding mother: A case report

この論文は、授乳中の母親におけるADHD治療に関するケースレポートであり、現時点でほとんど確立されていない臨床ガイダンスの課題に光を当てています。


🍼 要約:

ADHDは成人女性にも広く認識されつつありますが、授乳中の治療法に関する明確なガイドラインは乏しいのが現状です。このケースでは、出産後3週目の25歳の母親(完全母乳育児中)において、ADHD症状が残存しており、抗うつ薬のブプロピオンでは効果不十分かつ高用量に耐えられない状況でした。

そこで、医師は**即効性メチルフェニデート(リタリン)を慎重に導入し、後に徐放性製剤(長時間作用型)**へ切り替えました。6か月間の経過観察では、母親の衝動性・多動・集中力・気分・日常機能が改善。母乳量や乳児の発達にも悪影響は認められませんでした。


🧠 意義:

この報告は、授乳期であっても適切なモニタリングと調整のもとでADHD治療が可能であることを示しています。同時に、産後の母親に対するADHD治療の指針が不足しているという課題も明らかにしており、今後の臨床研究とガイドライン整備の必要性を訴えています。


💡 ポイントまとめ:

  • 授乳中のADHD治療は慎重に行えば可能。
  • メチルフェニデートが選択肢となりうる。
  • 乳児に影響は見られず、母親の機能は改善。
  • 今後は、妊産婦に特化したADHD治療ガイドラインの整備が重要。

授乳を継続したい母親にとって、治療と育児の両立は切実な課題であり、本報告はその現実的な可能性と道筋を示しています。

Frontiers | Burden of Autism Spectrum Disorder in Japan from 1992 to 2021 and its prediction until 2050: results from the GBD study

この研究は、1992年から2021年までの日本における自閉スペクトラム症(ASD)の負担の推移と、2050年までの将来予測を示したものであり、日本のASD対策における重要な指針を提供するものです。


🇯🇵 要約:

本研究は、「Global Burden of Disease(GBD)2021」のデータを用いて、1992年から2021年までのASDの有病率障害調整生命年(DALYs)、および年齢標準化率(ASR)の変化を解析し、さらにARIMAモデルによって2050年までの将来予測を行いました。

その結果、年齢標準化有病率(ASPR)は有意に上昇傾向(年平均増加率=0.2744%、95%CI: 0.2606–0.2882)を示し、特に男性の影響が大きく、男女比は4:1でした。2050年には、粗有病率は14.2%減少する一方で、ASPRは18.0%上昇すると予測されており、人口構造の変化(高齢化等)が影響していると考えられます。

また、日本のASDに関する負担は世界平均を上回っており、全年代にわたる継続的な支援策が急務とされています。


💡 補足ポイント:

  • ASDの認知や診断の精度向上も有病率上昇の一因と考えられます。
  • 粗有病率の減少とASPRの増加の乖離は、人口減少・高齢化による統計的影響を反映しています。
  • ライフステージを通じた介入策(乳幼児から成人・高齢者まで)と、医療・教育・就労支援の一体化が求められます。

📌 結論:

日本ではASDの社会的・医療的負担が増大しており、今後の保健医療政策や福祉施策において、ASDをいかに包括的に支援するかが問われる時代に入っています。本研究は、長期的視点に基づいたリソース配分と制度設計の必要性をデータで裏付けるものです。

Frontiers | Experiences of Females on the Autism Spectrum Through the Perspective of Minority Stress Theory: a Review

この論文は、「マイノリティ・ストレス理論」の観点から、自閉スペクトラム症(ASD)の女性が直面する精神的・社会的困難を整理したレビュー研究です。


🔍 要約:

本レビューは、ASDの女性が抱えるメンタルヘルスのリスク(共存する精神疾患、自殺念慮、精神科入院のリスクなど)を、**性別と発達障害の交差点にある「社会的ストレス」**という視点から分析しています。

特に、ASD女性は以下のような独自の社会的プレッシャーや差別的な構造にさらされています:

  • 「女性らしさ」への社会的期待との不一致(例:共感性や対人スキルの圧力)
  • 典型的な「自閉症像」(男性中心のイメージ)からの逸脱による誤解や診断の遅れ
  • ASDと女性という二重のマイノリティ属性がもたらすストレスの相乗効果

これらのストレスは、単なる性別または自閉症由来の困難とは異なり、「交差性(intersectionality)」によって増幅され、精神的な健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。


💡 補足ポイント:

  • マイノリティ・ストレス理論とは、社会的少数者が経験する**継続的で構造的なストレス(差別、孤立、スティグマ)**が健康格差の原因となるという理論です。
  • 女性のASD特性(カモフラージュ傾向、内在化しやすい苦悩など)は、しばしば見過ごされやすく、支援の機会を失うリスクがあります。

📌 結論:

ASD女性は、**性別と発達特性が交差することによって生まれる「社会的な見落とし」と「期待との不一致」**に起因する、特有のストレスにさらされています。著者らは、今後の研究においてはこうした交差的ストレスの視点を持ち、より精緻な方法論と理解に基づいた支援体制の構築が不可欠であると強調しています。臨床家・支援者もまた、ASD女性の特性と脆弱性をより深く理解する必要があるとしています。

Frontiers | Private Speech among Children with Intellectual Disabilities

この研究は、**知的障害のある子どもたちのプライベート・スピーチ(独り言)**が、課題解決の場面でどのように使われているかを明らかにしたものです。


🔍 要約:

知的障害のある子ども(20名)を対象に、選択的注意課題に取り組んでもらい、その中での**プライベート・スピーチ(他者には向けられていない自分自身への語り)**を観察しました。

その結果、

  • *70%**の子どもが課題中にプライベート・スピーチを使用し、
  • *60%**は課題解決に関連した内容を話していたことが確認されました。

また、自閉スペクトラム症(ASD)の傾向が強い子どもほどプライベート・スピーチが多いという傾向も見られました。


💡 補足ポイント:

  • プライベート・スピーチは、注意のコントロール、計画、自己調整などの認知的スキルを支えるものとされ、通常発達の子どもだけでなく、ADHDや高機能ASDの子どもにも観察されてきました。
  • これまで知的障害を持つ子どもにおけるプライベート・スピーチの実態は不明でしたが、本研究はその初のデータを提供しています。

📌 結論:

知的障害のある子どもたちもまた、課題解決の過程で自分に語りかけるようにして思考を整理し、行動を導いていることが明らかになりました。特にASD傾向の強い子どもではその傾向が顕著であり、プライベート・スピーチが認知的サポートとして有効に機能している可能性が示唆されました。

この結果は、教育や療育の現場で、子どもたちの**「独り言」への理解と活用を見直すきっかけ**になると考えられます。

Frontiers | School-based randomised controlled trials for ADHD and accompanying impairments: A systematic review and meta-analysis

この研究は、ADHDのある子どもや若者を対象とした学校ベースのランダム化比較試験(RCT)が、どのような効果を持つかを初めてメタ分析で統合的に検証した系統的レビューです。


🔍 要約:

ADHDの子どもたちは、不注意や多動・衝動性によって学業・社会的・行動的な困難に直面しています。こうした課題に対応するため、多くの学校ベースの介入が行われてきましたが、その全体的な効果を定量的にまとめた研究はこれまで存在しませんでした。

本研究では、26件のRCTを精査し、22件(計2102人の参加者)をメタ分析に含めました。その結果、以下の点で有意な改善が見られました:

  • ADHD全体症状の改善(d = -0.28, p < .0001)
  • 不注意症状の改善(d = -0.33, p < .0001)
  • 学業成績の向上(d = +0.37, p < .0001)
  • 社会スキルの向上(d = +0.28, p < .001)
  • ✅ **外在化問題行動(例:反抗・攻撃性)**の減少(d = -0.32, p = .001)

一方で、

  • 多動・衝動性には有意な改善が見られませんでした(d = -0.09, p = .22)。

💡 補足:

  • *効果量(d値)**は小〜中程度ながらも一貫しており、学校ベースの介入が実用的に意義のある支援手段であることを示唆しています。
  • ただし、多動・衝動性に対するアプローチが不十分であることが課題として浮き彫りになりました。
  • さらに、研究間の**異質性(heterogeneity)**が高く、報告者バイアスの可能性も議論されています。

📌 結論:

学校現場での介入は、ADHD児の不注意や学業・社会性・問題行動への対処に有効である一方、多動・衝動性への対応が今後の研究と実践での改善ポイントです。ADHDの子どもたちを包括的に支援するには、よりバランスの取れた介入設計が求められています。

Behavioral problems in adolescents and young adults with neurodevelopmental disorders

この研究は、発達障害(NDD)を持つ15歳以上の若者の行動上の問題について、特に**自閉スペクトラム症(ASD)**を中心に明らかにしたものです。舞台は、京都府の福知山市民病院が市と連携して2010年に設置した「発達障害専門外来」で、2023年1月から12月までに通院した68名の診療記録をもとに分析されました。


🔍 要約:

本研究では、15歳以上の発達障害のある若者68名を対象に、診断名、言語コミュニケーション能力、行動上の問題などを調査しました。そのうち約3分の2(45名)はASDと診断されており、31.1%は十分な発話によるコミュニケーションが困難でした。

観察された行動問題には以下が含まれます:

  • 不適応行動(例:こだわり行動、反抗など)
  • 不注意、多動、衝動性
  • 他者への有害な行動(暴力など)
  • 自傷行為

また、発達指数(DQ)が低いほど問題行動が多い傾向が見られた一方で、他害や自傷といった有害行動はIQやDQとは独立して発生していました。


💡 補足:

  • 発達障害のある思春期以降の若者では、医療・福祉支援の隙間が生まれやすく、行動問題が深刻化しやすい時期といえます。
  • 本研究は、応用行動分析(ABA)のような科学的介入を早期に導入する重要性と、家族・支援者が行動理解に基づいた対応をする必要性を強調しています。

📌 結論:

発達障害をもつ思春期〜若年成人における重篤な行動問題は、IQや言語能力だけでは説明しきれない多面的な要因に基づいており、早期かつ行動科学に基づいた支援体制の構築が求められます。特に、有害行動への対応は本人だけでなく周囲の理解と連携が鍵となります。

Religious Coping and Family Quality of Life Among Parents of Children With Intellectual Disabilities: Testing the Mediating Role of Mindfulness

この研究は、中国本土に住む知的障害のある子どもの親189人を対象に、**宗教的対処(religious coping)・マインドフルネス・家族の生活の質(Family Quality of Life)**の関係を調査したものです。


🔍 要約:

親が困難に直面したときに信仰や宗教的な行動を通して対処する「宗教的対処」が、家族全体の生活の質にどのように影響するかを検討し、「マインドフルネス(今この瞬間に注意を向ける心の在り方)」が仲介(媒介)する役割を果たすかどうかが分析されました。

  • 宗教的対処は、直接的に家族の生活の質を高める効果がありました。
  • さらに、宗教的対処がマインドフルネスを高め、それが間接的に生活の質の向上に寄与するという媒介効果も確認されました。

💡 補足:

  • 中国のように宗教的実践が一般的ではない地域でも、宗教的信仰が精神的回復力や家族関係の質にポジティブな影響を持つことが示された点は重要です。
  • マインドフルネスを高めることが宗教の有無に関わらず有効である可能性も示唆され、支援介入の一環として検討する価値があります。

📌 結論:

この研究は、知的障害のある子どもを育てる親において、宗教的な支えとマインドフルな心の姿勢が、家族全体の幸福感や生活の質の向上につながることを明らかにしました。支援者にとっては、宗教やマインドフルネスの活用を含めた包括的な家族支援の設計が示唆される結果です。