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ASDとIDを併せ持つ子どもの「不安」への理解と支援を、教育現場全体でどう整えるべきか

· 38 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しています。主な内容は、ASD児に多く見られる慢性の身体的痛みや遺伝子検査教育への保護者の関心、感覚過敏と食の偏りの関係、行動療法(ABA・ESDM)の効果、教師による不安対応の視点など、当事者の生活の質や支援方法に直結する実践的テーマが中心です。また、ADHDにおける視線追跡技術の応用、ポジティブメンタルヘルスの測定、新たな行動概念「own-time space」の提案など、従来の病理中心の理解にとどまらない、当事者理解を深める多面的な研究が取り上げられています。全体として、支援者・教育者・家族にとって、発達障害の支援をより実践的かつ包括的に考えるための示唆に富んだ内容となっています。

学術研究関連アップデート

Chronic Physical Pain in Children With and Without Autism Spectrum Disorder in the United States: Findings from the 2016 – 2021 National Survey of Children’s Health

この研究は、アメリカの3〜17歳の子ども約17万人を対象に、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとない子どもで「慢性的な身体の痛み」の経験に違いがあるかを調べたものです。データは2016〜2021年の全米子ども健康調査に基づいています。


🔍 主なポイント

  • ASDのある子どもの14.4%が慢性的な身体の痛みを経験しており、特に
    • 頭痛:4.9%
    • 背中や体のその他の痛み:9.6%
  • ASDのない子どもと比べて、ASDのある子どもは痛みを抱える確率が高く、とくに
    • 頭痛のリスクは1.78倍
    • その他の身体の痛みのリスクは1.62倍
  • 特に頭痛の頻度が目立って高く、ASD児における大きな負担のひとつと考えられます。

✅ 結論と意義

ASDのある子どもは、コミュニケーションの特性などから痛みをうまく伝えられないことがある一方で、実際には慢性的な身体の痛みに苦しんでいる割合が高いことが明らかになりました。研究者らは、ASD児のケアにおいて「痛みの評価と対応」をもっと重視すべきと提言しています。


この研究は、ASDの子どもの身体的な不調が見過ごされやすい現状への警鐘であり、質の高い生活を支えるには、行動面だけでなく身体の痛みにも目を向けた支援が必要であることを示しています。

Seizure-like behavior and hyperactivity in napb knockout zebrafish as a model for autism and epilepsy

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)とてんかんの両方に関係する可能性のある遺伝子「NAPB」に注目し、その働きを調べるためにゼブラフィッシュ(シマウオ)を使った実験モデルを作成したものです。


🔍 研究の背景

  • カタールの一卵性三つ子が、NAPB遺伝子の機能喪失変異を持ち、幼少期に重度のてんかんと自閉症様症状を示したことが発見のきっかけ。
  • NAPBは神経細胞の情報伝達に関わるタンパク質を作る遺伝子であり、神経の興奮・制御に重要と考えられています。

🧬 実験内容

  • CRISPR-Cas9技術を使い、ゼブラフィッシュのnapb遺伝子(ヒトのNAPBに相当)を壊した「napbクリスパント魚(napb CR)」を作成。
  • そのゼブラフィッシュの運動行動と脳の神経活動を詳しく観察。

📊 主な結果

  • 運動神経の軸索が短くなり、異常な動きが増えた
    • 泳ぐ距離が増加
    • スピードが上昇
    • 回転運動の頻度も増加(=てんかん様の行動)
  • *脳の電気活動(MEA計測)では、神経の過剰な興奮状態(過活動)**が確認された。

✅ 結論と意義

  • NAPBの機能が失われると、てんかん様の神経過活動と、自閉症関連の運動・行動異常が出現することがゼブラフィッシュモデルで示された。
  • このモデルは、ASDとてんかんの両方に関係するメカニズムを研究するのに役立つだけでなく、将来的な治療薬のスクリーニング(探索)にも使える可能性がある。

この研究は、遺伝子NAPBがASDとてんかんの鍵を握る候補であることを動物モデルで示した、先駆的な成果です。

Genetic testing education needs among parents of children with autism spectrum disorder in Taiwan: a qualitative investigation

この研究は、台湾に住む自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを持つ親が、遺伝子検査についてどのような情報を求めているかを明らかにするために行われた質的調査です。


🔍 背景と目的

  • ASDには遺伝的な要因が関与することが多いとされますが、台湾では親向けの遺伝子検査教育に関する研究が不足していました。
  • 本研究では、台湾の保護者がどんな情報を知りたいのか、どんな方法で学びたいのかを把握することを目的としています。

🗣 方法

  • 39人の親(うち31人は母親)にインタビューを実施(平均年齢42歳、92.3%が既婚、61.5%が大卒以上)。
  • 内容分析によって、保護者のニーズや希望する教育スタイルを整理。

📊 主な結果

保護者が関心を示した教育内容

  1. 遺伝子検査の費用、手順、精度、信頼性、メリットとリスク、科学的根拠
  2. 検査結果の読み方
  3. 他の親の体験談

望まれた教育の提供方法

  • 対面での講演やセミナー
  • 印刷された教材
  • オンライン教材

信頼できる情報提供者として望まれたのは:

  • 医療従事者
  • ASD関連団体
  • 学校

✅ 結論と意義

  • 台湾の保護者は、ASDの遺伝子検査に強い関心があり、正確で信頼できる情報をさまざまな形で受け取りたいと考えている。
  • 今後は、親のニーズに応じた、科学的根拠に基づいた教育プログラムの開発が必要であると示唆されます。

この研究は、親が「何を、どのように学びたいか」に焦点を当てた実用的な視点から、ASD支援における教育の在り方を改善するヒントを提供しています。

Exploring the potential of virtual reality for motor skills training in children with special educational needs: Perspectives from experts from five countries

この研究は、特別な教育的ニーズ(SEN)を持つ子どもたちにおける運動スキルトレーニングへのバーチャルリアリティ(VR)の活用可能性について、5か国の専門家の視点を通して探った質的ケーススタディです。


🔍 背景と目的

  • 運動スキルの発達は、SEN児にとって重要な課題の一つ。
  • VR技術は近年、個別最適化された繰り返し練習ができるツールとして注目されています。
  • 本研究では、特別支援教育や作業療法の専門家20名へのインタビューを通じて、
    • VRの利点

    • 課題

    • 実用性

      を明らかにしました。


💡 主な発見(テーマ別)

  1. VRの利点
    • 子どもが楽しく関われる没入型・個別化された学習環境
    • 安全な繰り返し練習が可能
    • 興味やモチベーションを引き出す手段として有効
  2. 課題
    • 高コストと機材アクセスの難しさ
    • 教員や療法士のトレーニング不足
    • 使用環境や子どもの状態に応じた柔軟なカスタマイズが必要
  3. 実装への鍵
    • 教育者・療法士・技術開発者の連携が成功のカギ
    • SENの多様性に対応するため、柔軟な設計とサポート体制が必要

✅ 結論と意義

この研究は、VRがSEN児の運動スキル支援において有望な手段であることを示す一方で、効果的な導入には人的・技術的な準備と連携が欠かせないことを強調しています。今後、教育現場での実用化に向けたプロフェッショナル支援体制の整備が求められます。

“I Do not have ADHD When I Drive My Truck” Exploring the Temporal Dynamics of ADHD as a Lived Experience

この研究は、ADHDを持つ人の「時間との関係」や「日常の体験」をより深く理解するために、新たな視点「own-time space(自分時間空間)」を提案したものです。


🔍 背景と目的

  • ADHDは「常に同じように症状が出るもの」と思われがちですが、実際には場面や時間帯、状況によって大きく変化します。
  • 本研究は、デンマークでの家族の民族誌的フィールドワークに基づき、**“トラックを運転しているときはADHDがないように感じる”**という言葉から出発して、
    • *ADHD症状が目立たなくなる瞬間や状況(=own-time space)**を探りました。

🧠 「own-time space(自分時間空間)」とは?

  • 空間(どこで)
  • リズム(どんなテンポで)
  • イメージ的思考(頭の中でどんな感覚か)

この3つが組み合わさることで、ADHDの人が自分らしく動ける・落ち着ける瞬間を生み出す空間や時間のことです。


🧩 主な発見

  • ADHDの人は、他者の存在や社会的な時間のルール(スケジュールや効率性)とどう付き合うかによって、症状の感じ方が変わる。
  • たとえば、1人で自由なリズムで動ける場面では、集中しやすくADHD的な困難が薄れることがある。
  • これは単に「刺激が少ない環境に避難する」こととは異なり、意味や関係性、リズムの調和が重要であると著者たちは述べています。

✅ 結論と意義

この研究は、「ADHDを持つ人の生きづらさ」を固定的に捉えるのではなく、時間や空間の条件次第で症状の感じ方が変わるということを示し、本人のリズムを尊重した支援や環境調整が有効である可能性を提案しています。ADHDの理解をより柔軟で人間的なものへと広げる視点を提供する意義ある内容です。

Measuring positive mental health in children with attention-deficit/hyperactive disorder

この研究は、ADHD(注意欠如・多動症)のある子どもたちの「ポジティブな心の健康(well-being)」をどう測定するかを探ったものです。ADHDは一般的に「問題行動や症状」に注目されがちですが、本研究では**「ネガティブ面」と「ポジティブ面」を同時にとらえる二重連続モデル(Two-continua Model of Mental Health)**を用いて、より全体的な心の健康の理解を目指しました。


🔍 研究のポイント

  • ADHDの子どもたちの心の健康は、単に「症状があるかどうか」では測りきれない
  • 本研究では、心の健康を次の2つの軸で測定:
    • 病理的な症状(不注意、多動・衝動性)
    • ポジティブな健康指標(快楽的幸福感=楽しい気分、心理的幸福感=自己肯定感など、社会的幸福感=他者との関係)

📊 主な結果

  • ADHDの子どもは、心理的・社会的幸福感が症状と関連して低下する傾向があった。
  • しかし、快楽的幸福感(楽しい気分など)とは症状との関連がみられなかった
  • つまり、「ADHDの症状があるからといって、楽しいことを感じられないわけではない」。

✅ 結論と意義

  • ADHDの子どもの心の健康を理解するには、症状だけでなく“良い状態”も一緒に測る必要がある
  • 支援や評価では、「できないこと」だけでなく「感じられている幸福」や「関係性の良さ」にも注目することで、よりバランスの取れたアプローチが可能になる。

この研究は、ADHDの子どもたちを「問題のある存在」としてだけでなく、「幸福感や強みを持つ存在」として捉える視点を広げるものであり、教育・医療現場での実践に大きなヒントを与えてくれます。

Malay translation, adaptation, and validation of the pediatric Khalfa Hyperacusis Questionnaire for children with autism spectrum disorder

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを育てるマレー語話者の保護者向けに、「音に敏感すぎる状態(聴覚過敏)」を測定する質問票をマレー語に翻訳・適応・検証したものです。


🔍 背景

  • 聴覚過敏(Hyperacusis)は、大きな音に対して不快感や恐怖、痛みを感じる状態で、ASDの子どもによく見られる特性のひとつです。
  • 保護者が回答する**「カルファ聴覚過敏質問票(P-HQ)」の子ども向け版**は2023年に発表されましたが、マレー語版はこれまで存在しませんでした

🧪 研究の進め方

  • 翻訳と検証は以下の6段階で実施:
    1. 翻訳(5人の翻訳者による前方・後方翻訳)
    2. 専門家(6人)による内容の妥当性評価
    3. 顔の妥当性評価(保護者11名によるわかりやすさの確認)
    4. 内的一貫性の検証(54名の保護者)
    5. 再テストによる信頼性確認(23名が2回回答)
    6. 他の感覚評価ツールとの関連性検証(54名)

📊 結果と意義

  • 専門家の評価ですべての項目が非常に妥当とされ(妥当性指標 = 1.0)、1つの項目のみ影響が薄く削除。
  • 全10項目のマレー語版M-P-HQが完成
  • この質問票は:
    • 高い内的一貫性(α = 0.884)
    • 安定した再テスト信頼性(ICC = 0.62〜0.96)
    • 他の聴覚感覚評価ツールとの強い関連性(rs = -0.648)

✅ 結論

この研究により、マレー語話者の保護者がASD児の聴覚過敏を的確に把握できる信頼性の高いツール(M-P-HQ)が完成しました。今後、マレーシア国内の支援や研究で幅広く活用できる基盤になると期待されます。

The use of eye-tracking technology in supporting children and adolescents with attention deficit/hyperactivity disorder: a comprehensive review

この研究は、注意欠如・多動症(ADHD)のある子どもや青年を支援するために「アイトラッキング技術(視線追跡)」がどのように活用されてきたかを、74件の先行研究をもとに総合的にレビューしたものです。


🔍 研究の背景と目的

  • ADHDの子どもは視覚的な注意や集中に課題があることが知られており、視線の動きを測定することで、行動特性や注意の偏りを客観的に把握できる可能性があります。
  • アイトラッキングは、非侵襲的(体に負担をかけない)で信頼性の高い手法として注目されています。

📊 主な内容と発見

  • アイトラッキング技術は以下のような目的で活用されてきました:
    • 視覚処理特性の評価
    • ADHDの早期発見
    • 支援・介入法の効果測定
  • ADHDの子どもでは、視線が逸れやすい、注目すべき対象に集中しにくいなどの特性が見られ、これがアイトラッキングのデータから明らかになります。
  • 一部の研究では、アイトラッキングを活用したゲームや訓練による介入効果も報告されています。

✅ 結論と意義

  • アイトラッキングは、ADHDの特性を客観的に捉え、個別化された支援に活用できる有望なツールです。
  • 今後は、より実用的で教育・医療現場に適応しやすい研究・技術開発が必要とされています。

このレビューは、ADHD支援におけるアイトラッキング技術の現状と可能性をまとめ、今後の研究や実践への道筋を示す重要な一歩となっています。

Frontiers | Patterns of Needs among Iraqi Families Caring for Children with Autism Spectrum Disorder: A Cross-sectional Study

この研究は、イラクに住む自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを育てる家族がどのような支援ニーズを抱えているのかを明らかにするために実施されたものです。ASDの子どもを支える家庭は、日常生活の中でさまざまな困難に直面しており、限られた支援資源をより効果的に活用するには、家族が何を求めているかを正確に把握する必要があります。


🔍 調査の概要

  • 対象者:イラク国内のASD児を育てる249名の保護者(うち78.7%が母親)
  • 期間:2024年1月〜9月
  • 調査方法:標準化された質問票を使い、以下の4つの領域でニーズを評価
    1. 情報へのアクセス
    2. 周囲への説明支援
    3. 育児に関する支援
    4. 専門家からの支援

📊 主な結果

  • 80%以上の保護者が「子どもに関する情報を見つける支援」を必要としており、特に利用可能な支援サービスに関する情報へのニーズが強い。
  • 特に希望された内容:
    • 同じ境遇の家族についての読み物(40.6%)
    • 他の家族と話す機会(18.1%)
  • 併存症(合併症)のある子どもを育てる保護者ほど、育児支援や専門的サポートのニーズが高いことが示された。

✅ 結論と意義

  • 情報アクセスの向上(特に利用可能なサービスに関する情報)が最重要課題。
  • 教師やセラピスト、他の保護者とのつながりが、保護者の孤立感の軽減に有効。
  • 今後は、保護者が必要な情報を容易に得られ、共感的なつながりを持てる仕組みの整備が求められる。

この研究は、ASD支援の国際的な視点からも貴重な知見を提供しており、文化的・社会的背景を考慮した家族支援の在り方を考えるうえで示唆に富んだ内容です。

Frontiers | Food selectivity in Autism Spectrum Disorder: implications of eating, sensory and behavioural profile

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の人に多く見られる「食の偏り(フードセレクティビティ)」が、感覚の敏感さや行動の特徴、知的能力、自閉症の症状の強さなどとどのように関係しているかを調べたものです。


🔍 実施内容

  • 対象:ASDのある52人
  • 評価ツール:
    • 感覚の過敏さ:Short Sensory Profile(SSP)
    • 問題行動:Aberrant Behaviour Checklist
    • 食の好み:Food Preference Inventory
  • 自閉症の症状の強さ、知的障害の有無、性別との関連も検討されました。

📊 主な結果

  • 触覚、味覚、嗅覚の過敏さがある人ほど、食べ物の好みに偏りがある傾向がある(統計的に有意)。
  • これらの感覚の過敏さは、フードセレクティビティの予測因子にもなっている。
  • 一方で、以下との関連は見られなかった
    • 問題行動
    • 知的能力(IQ)
    • 自閉症の症状の強さ
    • 性別

✅ 結論と意義

  • ASDにおける食の偏りは、主に感覚の過敏さと関係しており、他の行動的・認知的要素とは直接関係しない可能性がある。
  • しかし、ASDの多様な特徴を総合的に評価し、個別化された支援方針を立てることの重要性も強調されています。

この研究は、ASDのある人がなぜ特定の食べ物を避けるのかを理解するうえで、感覚的な敏感さが鍵であることを示しており、支援の際に「無理に食べさせる」のではなく感覚への配慮を重視すべきという実践的なヒントを与えてくれます。

Frontiers | Klinefelter Syndrome and ADHD: a short systematic review

この研究は、性染色体の異常であるクラインフェルター症候群(KS)と注意欠如・多動症(ADHD)の関連について、過去の研究をまとめた短いシステマティックレビューです。


🔍 背景と目的

  • *クラインフェルター症候群(KS)は、男性に余分なX染色体(47,XXY)**が存在する遺伝的疾患で、500~1000人に1人の割合で発生。
  • KSのある人には、ADHDなどの神経発達特性が多く見られるという報告があり、本研究はこの関連性を文献から整理することを目的としています。

📚 方法

  • 1959年~2024年の間に発表された研究をPRISMAガイドラインに従って検索・選定。
  • MedlineとWeb of Scienceを使用し、15件の研究をレビュー対象として選出。

📊 主な結果

  • *KSの人におけるADHDの有病率は25〜63%**と、一般よりも高い傾向。
  • 特に、「不注意型ADHD」が目立つとの報告が複数あり。
  • 一部の研究では、自閉スペクトラム症(ASD)や気分障害との併存も指摘。
  • 脳画像研究では、実行機能・作業記憶・注意調整に関わる脳領域に構造的・機能的な違いが報告されている。
  • ADHDの薬物療法(例:メチルフェニデートなど)は、KSの人にも効果的かつ安全とされている。

✅ 結論と意義

  • KSとADHDの関連は複雑かつ多様性が高く、まだ因果関係は明らかではない
  • 研究間の対象者や手法の違いが大きく、結論には限界がある。
  • 今後は、より統一された手法による研究と、KSに特化した臨床支援の開発が求められている。

このレビューは、遺伝的な背景を持つ発達特性(KS)とADHDとの関係に注目し、個別化医療の必要性を示唆する重要な資料です。

Frontiers | Longitudinal Changes in Children with Autism Spectrum Disorder Receiving Applied Behavior Analysis or Early Start Denver Model Interventions Over Six Months

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもに対して実施される2つの行動療法「ABA(応用行動分析)」と「ESDM(早期スタート・デンバーモデル)」が、半年間でどのような発達的変化をもたらすかを調べたものです。


🔍 研究の目的と背景

  • ASDの中核症状(社会的コミュニケーションの困難、こだわり行動など)には薬物療法がないため、早期の行動療法が重要。
  • 本研究では、ABAまたはESDMを6か月間受けた子どもたちの発達的変化を比較しました。

🧪 実施内容

  • 対象:30人ずつ(計60人)のASD児
  • 実施期間:2021年12月〜2023年12月
  • 介入内容:
    • ABA群:1日4回×40分、週5日
    • ESDM群:1日2時間の個別+30分の集団セッション、週5日
  • 評価方法:**PEP-3(発達評価スケール)**にて、治療前後で各領域を測定

📊 主な結果

  • 両グループともPEP-3の全項目で有意な改善が見られた
    • 改善があった項目:
      • 認知(言語前・言語的)
      • 表出・理解言語
      • 社会的やりとり
      • 細かい運動
      • 模倣、情緒表現
      • 言語的・非言語的行動特性 など

✅ 結論と意義

  • ABAとESDMはどちらも半年間の継続で、ASD児に多面的な発達的改善をもたらす可能性がある。
  • 今後の支援選択において、子どもの特性や家庭の環境に合わせて柔軟に取り入れる価値がある2つの療法であると示唆される。

この研究は、ASD児への早期介入が効果的であることを改めて実証しており、支援法選びの参考となる実践的なエビデンスを提供しています。

‘Anxiety floods the entire system’: A qualitative study exploring teacher perspectives regarding how anxiety impacts autistic pupils with co‐occurring intellectual disabilities

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)と知的障害(ID)を併せ持つ児童の「不安」が、特別支援学校の教育現場でどのように現れ、どのように対応されているかについて、教師の視点から掘り下げた質的研究です。


🔍 研究の目的と方法

  • ASD+IDの子どもにおける「不安」の現れ方や対応法について、これまで十分な研究がなされていないことを背景に実施。
  • 8名の特別支援学校の教師に半構造化インタビューを実施し、「不安のサイン」「引き金」「支援戦略」などについて意見を収集。
  • データは**テーマ別に整理(リフレクシブ・テーマ分析)**されました。

📊 主な発見と教師の見解

  1. 不安は「自閉症の特性」と誤解されやすい
    • 不安による行動(例:パニック、固執、回避)がASDの症状と見なされやすく、感情のケアが後回しになることがある
  2. 環境要因が大きな引き金
    • 騒音・光などの感覚刺激
    • 予定外の変化やスケジュールの乱れ
    • 感覚調整のための空間がないなどが不安を増幅。
    • 職員の入れ替わりや相性の悪い児童グループも影響。
  3. 有効とされる対応策
    • 事前の移行サポート(例:スケジュール提示)
    • 信頼関係の構築
    • 低刺激で安心できる環境の整備
    • これらは教師の工夫に依存しており、一貫した学校全体の取り組みが必要とされた。
  4. 課題:リソースと支援の不足
    • 専門家(心理士・医師等)との連携が不十分
    • 教師が支援の限界に直面し疲弊しているケースも

✅ 結論と意義

  • ASD+IDの子どもの不安は見逃されやすく、環境要因への配慮が不可欠
  • 教師は多職種連携、家族支援、学校全体での一貫した対応体制の必要性を強調。
  • 「不安は個人の問題ではなく、環境との相互作用で生じるもの」というニューロダイバーシティを前提とした支援の重要性が再確認されました。

この研究は、ASDとIDを併せ持つ子どもの「不安」への理解と支援を、教育現場全体でどう整えるべきかについて、教師の実感を通じた具体的な示唆を与える貴重な知見となっています。

Early Years teachers' knowledge and perceptions about autism in Greece

この研究は、ギリシャの幼児教育(0〜6歳)に携わる教師たちが「自閉スペクトラム症(ASD)」についてどれほど理解し、どのような認識を持っているかを調査したものです。


🔍 調査の概要

  • 対象:ギリシャ国内の幼児教育に関わる教師276人
  • 方法:オンラインアンケートによる回答を収集

📊 主な結果

  1. ASDの主な特徴についての認識はある
    • 教師たちは、以下のような特徴を「自閉症によく見られる困難」として認識している:
      • 反復的な思考や行動
      • 社会的コミュニケーションの難しさ
      • 感情理解の困難
      • 感覚過敏などの感覚処理の問題
  2. 利用される支援方法の認識
    • 作業療法(OT)

    • 言語療法(SLT)

    • 心理士による介入

      が、ASD支援において広く活用されていると報告されている。

  3. 知識や支援スキルには大きな不足感
    • 大多数の教師が、
      • ASDについての理解が不十分

      • ASD児への具体的な教育方法がわからない

        と感じており、関連する研修の緊急的な必要性を訴えている。

  4. インクルーシブ教育への強い支持
    • 多くの教師が、ASDのある子どもも通常学級で学ぶべきだと考えている(主流教育への賛同)。

✅ 結論と意義

この研究は、ASDに対する基本的な理解はあっても、現場での実践的な教育方法や支援スキルが大きく不足しているという現状を明らかにしました。

「インクルーシブ教育」を実現するためには、より専門的かつ継続的な教員研修が不可欠であることを示唆しています。