ASDとIDを併せ持つ子どもの「不安」への理解と支援を、教育現場全体でどう整えるべきか
このブログ記事では、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しています。主な内容は、ASD児に多く見られる慢性の身体的痛みや遺伝子検査教育への保護者の関心、感覚過敏と食の偏り の関係、行動療法(ABA・ESDM)の効果、教師による不安対応の視点など、当事者の生活の質や支援方法に直結する実践的テーマが中心です。また、ADHDにおける視線追跡技術の応用、ポジティブメンタルヘルスの測定、新たな行動概念「own-time space」の提案など、従来の病理中心の理解にとどまらない、当事者理解を深める多面的な研究が取り上げられています。全体として、支援者・教育者・家族にとって、発達障害の支援をより実践的かつ包括的に考えるための示唆に富んだ内容となっています。
学術研究関連アップデート
Chronic Physical Pain in Children With and Without Autism Spectrum Disorder in the United States: Findings from the 2016 – 2021 National Survey of Children’s Health
この研究は、アメリカの3〜17歳の子ども約17万人を対象に、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとない子どもで「慢性的な身体の痛み」の経験に違いがあるかを調べたものです。データは2016〜2021年の全米子ども健康調査に基づいています。
🔍 主なポイント
- ASDのある子どもの14.4%が慢性的な身体の痛みを経験しており、特に
- 頭痛:4.9%
- 背中や体のその他の痛み:9.6%
- ASDのない子どもと比べて、ASDのある子どもは痛みを抱える確率が高く、とくに
- 頭痛のリスクは1.78倍
- その他の身体の痛みのリスクは1.62倍
- 特に頭痛の頻度が目立って高く、ASD児における大きな負担のひとつと考えられます。
✅ 結論と意義
ASDのある子どもは、コミュニケーションの特性などから痛みをうまく伝えられないことがある一方で、実際には慢性的な身体の痛みに苦しんでいる割合が高いことが明らかになりました。研究者らは、ASD児のケアにおいて「痛みの評価と対応」をもっと重視すべきと提言しています。
この研究は、ASDの子どもの身体的な不調が見過ごされやすい現状への警鐘であり、質の高い生活を支えるには、行動面だけでなく身体の痛みにも目を向けた支援が必要であることを示しています。
Seizure-like behavior and hyperactivity in napb knockout zebrafish as a model for autism and epilepsy
この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)とてんかんの両方に関係する可能性のある遺伝子「NAPB」に注目し、その働きを調べるためにゼブラフィッシュ(シマウオ)を使った実験モデルを作成したものです。
🔍 研究の背景
- カタールの一卵性三つ子が、NAPB遺伝子の機能喪失変異を持ち、幼少期に重度のてんかんと自閉症様症状を示したことが発見のきっかけ。
- NAPBは神経細胞の情報伝達に関わるタンパク質を作る遺伝子であり、神経の興奮・制御に重要と考えられています。
🧬 実験内容
- CRISPR-Cas9技術を使い、ゼブラフィッシュのnapb遺伝子(ヒトのNAPBに相当)を壊した「napbクリスパント魚(napb CR)」を作成。
- そのゼブラフィッシュの運動行動と脳の神経活動を詳しく観察。