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親のスティグマ感情が家族機能に及ぼす影響

· 23 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事全体では、自閉スペクトラム症(ASD)およびADHDを中心とした発達障害研究の最新動向を幅広く紹介しており、共通して「従来の中核症状モデルや単一介入にとどまらず、より多面的・横断的な視点から発達や困難さを捉え直す研究」が取り上げられています。具体的には、ASDレベル1における社会的コミュニケーション困難を説明する新たな認知特性(CDS)、成人ADHDの症状構造を再検討する心理測定モデル、親のスティグマ感情が家族機能に及ぼす影響、教師の自己効力感を強みベースで測定する教育研究、聴覚処理や視線同期といった感覚・知覚レベルの基礎研究、そして腸内環境介入(プロバイオティクス)など生物学的アプローチまでを含みます。全体として、発達障害を「個人の欠如」ではなく、認知・感覚・家族・教育・身体・環境との相互作用の中で理解し、評価や支援、介入の新たな可能性を探る研究群を俯瞰する内容となっています。

学術研究関連アップデート

Social Communication Difficulties in Children with Autism Spectrum Disorder (ASD Level 1): The Mediating Role of Cognitive Disengagement Syndrome

以下は、**「ASDレベル1(知的発達は保たれているが社会的困難が目立つ子ども)における社会的コミュニケーションの困難が、何によって説明できるのかを知りたい人」**向けに、この論文をわかりやすく整理した要約です。


この研究は、ASDレベル1の子どもに見られる社会的コミュニケーションの困難が、いわゆる“自閉症の中核症状”だけでは説明しきれないのではないかという問題意識から出発しています。とくに注目したのが、近年ADHD研究を中心に議論されている**認知的離脱症候群(Cognitive Disengagement Syndrome:CDS)**です。CDSは、ぼんやりしやすい、頭が霧がかかったように感じる、注意が内側に引きこもるといった特徴を持ち、単なる不注意とは異なる認知スタイルとして捉えられています。

研究には、**ASDレベル1の子ども58名と定型発達児49名(計107名)**が参加しました。評価には、

  • 自閉症特性の強さ(ASSQ)
  • 認知的離脱(CDS:CABI-SCT)
  • 社会的コミュニケーションの困難さ(SCQ)
  • 日中の眠気(ESS-CHAD)

といった尺度が用いられました。

まず群比較の結果、ASDレベル1の子どもは、自閉症特性・CDS特性・社会的コミュニケーション困難のいずれも、定型発達児より有意に高いことが確認されました。

次に重要なのが、「何が社会的コミュニケーションの困難を説明しているのか」という点です。回帰分析の結果、

  • 自閉症特性(ASSQ)
  • 認知的離脱(CDS)

の両方が、社会的コミュニケーション困難(SCQ)を有意に予測していました。一方で、日中の眠気は有意な影響を示しませんでした。つまり、「ぼんやりしているのは眠いから」という単純な説明ではないことが示されたのです。

さらに媒介分析(メディエーション分析)では、**自閉症特性が社会的コミュニケーション困難に影響する経路の一部を、CDSが“部分的に媒介している”**ことが明らかになりました。これは、

  • ASD特性 → 直接的に社会的困難を生む経路
  • ASD特性 → CDS傾向 → 社会的困難を生む経路

両方が存在することを意味します。

一言でまとめるとこの論文は、

「ASDレベル1の社会的コミュニケーションの困難は、自閉症の中核症状だけでなく、“認知的に引きこもる・切り離される”ようなCDS特性が独立して関与している可能性がある」

ことを示した研究です。

著者らは、この結果から、ASDレベル1の評価や支援において、診断基準に含まれる症状だけを見るのでは不十分であり、CDSのような“横断的・修正可能な認知特性”に目を向ける必要があると提案しています。CDSは、適切な支援や介入によって改善が期待できる可能性があるため、ASDレベル1の子どもにおける新たな介入ターゲットとしても重要な示唆を与える論文と言えるでしょう。

Applications of the bifactor S-1 model to adult ADHD symptoms: evaluating the role of hyperactivity/impulsivity and associations with emotional regulation

以下は、**「成人ADHDの症状構造はどう理解すべきか」「多動・衝動性や感情調整の問題は、成人ADHDの中でどのような位置づけなのかを知りたい人」**向けに、この論文をわかりやすく整理した要約です。


この研究は、成人ADHDの症状をどのような構造で捉えるのが最も妥当かを検討した心理測定研究です。とくに近年注目されているのが、ADHDを「不注意(IA)」「多動性/衝動性(HY/IM)」という並列の下位症状としてではなく、共通する中核因子(一般因子)と、そこから派生する特異因子として捉える「バイファクター・モデル」です。本研究では、その中でもS-1バイファクターモデルを用い、「衝動性(IM)」をADHDの一般因子の基準(参照指標)として設定する点が特徴です。

対象は、**18〜65歳の成人539名(地域サンプル)**で、ADHD症状尺度(Current Symptom Scale)と、感情調整困難(Emotion Dysregulation: ED)を測定する尺度(DERS-36)が用いられました。

分析の結果、まずモデル適合度の観点から、

  • 衝動性(IM)を基準とした一般因子
  • 不注意(IA)の特異因子

は、構造的にも信頼性の面でも明確で安定した因子として成立していました。一方で、

  • 多動性(HY)の特異因子

は、因子としての信頼性や独立性が低く、成人ADHDの症状構造の中で明確な位置づけを持ちにくいことが示されました。

次に、これらの因子と感情調整困難(ED)との関連を検討したところ、

  • 一般因子(衝動性を中核とするADHD因子)
  • 不注意(IA)因子

は、いずれもEDと有意な関連を示しました。一方で、

  • 多動性(HY)因子は、EDとの有意な関連を示しませんでした。

つまり、成人ADHDにおける感情調整の問題は、「衝動性」と「不注意」と強く結びついているが、「多動性」とはほとんど結びついていないという結果です。

さらに著者らは、ADHD症状に加えて感情調整困難(ED)を独立した特異因子として組み込んだ拡張S-1モデルも検討しました。その結果、EDはADHDの一般因子にも一定程度関連するものの、それ以上に「ED独自の因子」として強く成立していました。これは、EDがADHDの「中核症状」ではなく、しばしば併存する関連特徴(associated feature)として理解する方が妥当であることを示しています。

一言でまとめるとこの論文は、

「成人ADHDを理解するうえで中核となるのは、衝動性を軸とした一般因子と不注意であり、多動性は成人期では診断・臨床的有用性が限定的である可能性が高い。感情調整困難は重要だが、ADHDそのものの中核というより“関連する別次元の問題”として捉えるべきである」

ことを示した研究です。

成人ADHDの評価や研究において、小児期モデルをそのまま当てはめることの限界を示し、診断基準・アセスメント・支援の焦点を再検討する必要性を示唆する、理論的にも実践的にも重要な論文と言えるでしょう。

Parental External Shame and Family Functioning in Households of Children With Autism Spectrum Disorder

以下は、**「自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもを育てる家庭で、親(特に母親)が感じる“恥”やスティグマが、家族全体の関係や機能にどのような影響を与えるのかを知りたい人」**向けに、この論文をわかりやすく整理した要約です。


この研究は、ASDのある子どもを育てる家庭において、母親が感じる「外的恥(external shame)」──他者から否定的に見られている、劣っていると評価されていると感じる感情──が、家族の機能にどのように影響しているかを大規模データで検証した実証研究です。ASD児の養育では、ケア負担だけでなく、社会的スティグマや周囲の視線が親の心理に影響を与えることが知られていますが、それが家族システム全体にどう波及するかを定量的に示した研究は多くありません。

本研究では、ギリシャ全土のASD児を育てる517家庭を対象に、母親が回答する質問紙調査を実施しました。用いられたのは、**外的恥尺度(External Shame Scale)**と、家族機能を測定する複数の下位尺度(家族内コミュニケーション、問題解決、個人目標の共有など)です。相関分析と重回帰分析により、両者の関連が検討されました。

その結果、母親の外的恥の高さは、家族機能の低下と一貫して関連していることが明らかになりました。具体的には、外的恥が強いほど、

  • 家族内のコミュニケーションがうまく機能しにくい
  • 問題が生じた際の協力的な問題解決が難しくなる
  • 家族や個人としての将来目標を共有・追求しにくくなる

といった、より不全的な家族パターンが見られました。これは、母親個人の感情が、親子関係や夫婦関係を含む家族全体の相互作用に影響していることを示唆しています。

著者らは、これらの結果を家族システム理論の観点から解釈し、ASD支援においては子ども本人への介入だけでなく、

  • 親、とくに母親の心理的負担やスティグマ体験へのケア
  • 家族全体を対象とした包括的・家族中心型の支援
  • アクセスしやすい専門的メンタルヘルス支援や政策的支援

が不可欠であると結論づけています。

一言でまとめるとこの論文は、

「ASD児の養育において、母親が感じる“外からの恥や評価への恐れ”は、個人の問題にとどまらず、家族全体の機能低下と深く結びついている。家族支援には、スティグマと親のメンタルヘルスへの介入が欠かせない」

ことを示した研究です。

ASD支援を子ども中心から家族全体のウェルビーイングへと広げて考える重要性を、実証的に裏づけた論文と言えるでしょう。

Reliability and validity of strength‑based language modifications to the autism self‑efficacy scale for teachers (ASSET)

以下は、**「自閉症のある子どもを教える教師の“自己効力感”を、欠点ではなく“強み”に着目した言葉で測定したい人」「インクルーシブ教育に向けた教師評価ツールの最新動向を知りたい人」**向けに、この論文をわかりやすくまとめた要約です。


この研究は、自閉症のある児童・生徒を教える際の教師の自己効力感(自分はうまく支援できるという感覚)を、強みベースの言語で適切に測定できるかを検証した研究です。オーストラリアでは近年、インクルーシブ教育を重視する制度的転換が進んでおり、現職教師(in-service)だけでなく、教員養成課程にいる学生(pre-service)にも、自閉症のある子どもを含む多様な学習者に対応する力が求められています。しかし、「自閉症のある子どもを教えること」に特化した教師自己効力感尺度は少なく、特に“強み志向”の視点を取り入れたものは限られていました。

本研究では、既存の Autism Self-Efficacy Scale for Teachers(ASSET) をもとに、

自閉症を「困難の集合」としてではなく、「特性や強みをもつ存在」として捉える表現へと言語修正を行い、その信頼性・妥当性を検証しました。対象は、現職教師161名と教職課程の学生652名、計813名という大規模サンプルです。

分析では、因子構造が両グループで同様に機能しているかを調べる測定不変性分析と、**確認的因子分析(CFA)**が行われました。その結果、

  • 完全な尺度水準での不変性(full scalar invariance)は得られなかったものの
  • 現職教師・教員志望者のいずれにおいても、修正後の項目は一貫した因子構造を示し
  • 高い内的一貫性と構成概念妥当性が確認された

ことが示されました。つまり、強みベースの言語に置き換えても、ASSETは「自閉症のある子どもを教える自信」を安定して測定できる尺度として機能することが示されたのです。

著者らは、この修正版ASSETが、

  • 教員養成機関における教育効果の可視化
  • 学校現場での教員の支援ニーズ把握
  • 研修内容の設計や政策立案の根拠

として実用的であると指摘しています。特に、「何ができていないか」ではなく、「教師がどのような力を持ち、それをどう伸ばせるか」を測る視点は、インクルーシブ教育の理念と整合的です。

一言でまとめるとこの論文は、

「自閉症のある子どもを教える教師の自己効力感は、“強みベースの言語”でも信頼性高く測定できる。その測定は、インクルーシブ教育の質を高めるための実践的な基盤になる」

ことを示した研究です。

教師評価や研修を欠如モデルから強み志向モデルへ転換する流れを、測定ツールのレベルから後押しする、教育実践・政策の両面に示唆を与える論文と言えるでしょう。

Differential Associations of Pitch Discrimination and Rapid Auditory Processing With Emotional Prosody Recognition in Autistic and Non-autistic Children

以下は、**「自閉症のある子どもが感情のこもった話し方(感情プロソディ)をどのように聞き取り、何がその理解を支えているのかを知りたい人」「聴覚処理の特性と社会的理解の関係を整理した研究を探している人」**向けに、この論文をわかりやすくまとめた要約です。


この研究は、話し声に含まれる感情(怒り・喜び・悲しみなど)を聞き分ける力=感情プロソディ認知が、

  • 音の高さを聞き分ける力(ピッチ弁別
  • 短い音の変化を素早く処理する力(迅速聴覚処理:RAP

とどのように関係しているのかを、自閉症児と非自閉症児で比較した実験研究です。自閉症では聴覚処理の特性がよく知られていますが、それが「感情の聞き取り」にどう影響するのかは、まだ十分に整理されていませんでした。

研究には、自閉症のある子ども28名と、年齢を揃えた非自閉症児28名が参加し、以下の課題が実施されました。

  • 迅速聴覚処理(RAP)
  • ピッチ弁別
  • 社会的認知(SC)
  • 単語・文レベルでの感情プロソディ認知(EPR)

その結果、まずグループ比較として、

  • 自閉症児はRAP(音の時間的変化の処理)がむしろ得意
  • 社会的認知(他者の心や意図を理解する力)は低い
  • ピッチ弁別能力や、感情プロソディの正答率そのものには群差はない

ことが示されました。つまり、自閉症児は「感情を聞き取れない」わけではなく、全体的な正確さは非自閉症児と同程度だったのです。

一方で重要なのは、「どの能力が感情プロソディを支えているか」という関係性の違いです。

  • RAPは、自閉症児・非自閉症児の両方で、感情プロソディ認知と正の関連
  • ピッチ弁別は、自閉症児においてのみ、かつ「感情が弱く表現された単語」の認知と関連

していました。つまり、自閉症児では、微妙な感情表現を聞き取る際に、音の高さの違いをより強く手がかりとして使っている可能性が示唆されたのです。

この結果は、感情理解の困難さを「社会性の問題」だけで説明するのではなく、

感情知覚の入り口にある“聴覚処理の使い方の違い”として捉える必要性を示しています。

著者らは結論として、

  • RAPはすべての子どもにとって感情プロソディ理解の基盤である
  • 自閉症児では、ピッチ処理が特に重要な補助的役割を果たしている可能性がある
  • 将来的には、ピッチ弁別やRAPを対象とした聴覚トレーニングが、感情理解支援につながる可能性がある

と述べています。

一言でまとめるとこの論文は、

「自閉症のある子どもは、感情のこもった話し方を理解する際に、音の時間的変化や高さといった“聴覚的手がかり”を独自の形で活用している。その特性を踏まえた支援や介入の可能性がある」

ことを示した研究です。

感情理解を「社会性の訓練」だけでなく、感覚処理の特性から再設計する視点を与えてくれる、基礎と実践をつなぐ重要な研究と言えるでしょう。

Reduced Gaze-Stimulus Synchrony to a Rhythmic Children’s Song in Young Children With Autism: A Recurrence Quantification Analysis Approach

以下は、**「自閉スペクトラム症(ASD)の幼児が、音楽や動きに対して“視線をどのように同期させているか”を知りたい人」「視線計測を用いた早期評価・客観指標の研究動向を把握したい人」**向けに、この論文をわかりやすく整理した要約です。


この研究は、リズムのある子ども向けの歌と動きを見るとき、ASDの幼児が刺激(歌・拍手・身体の動き)にどれだけ視線を“同期”させているかを詳しく調べたものです。従来の「どこを見ているか(注視割合)」だけでなく、時間的にどれだけ安定して刺激に視線を合わせ続けているかという動的な側面に注目し、**再帰定量化分析(Recurrence Quantification Analysis:RQA)**という手法を用いて評価しました。

対象は、18〜48か月の幼児で、

  • ASD児 52名
  • 全般性発達遅滞(GDD)児 58名
  • 定型発達(TD)児 55名

が参加しました。課題は、女の子が歌に合わせてリズミカルに拍手や身体運動をする動画を視聴するもので、**視線計測(アイトラッキング)**により行動を記録しました。

分析は2段階で行われました。

1つ目はAOI(注視領域)分析で、顔全体、口・鼻領域などへの注視量を評価。

2つ目はRQAにより、視線が刺激のリズムや動きにどれだけ持続的・安定的に同期しているかを評価しました。

主な結果は次のとおりです。

  • ASD児は、定型発達児に比べて「顔全体」や「口・鼻」への注視が有意に少ない
  • RQAの指標から、ASD児は刺激との視線同期が持続しにくい(=視線がリズムや動きに合わせて安定しない)
  • これらの注視指標(AOI)と同期指標(RQA)は、ASD児において発達水準と有意に関連していた

つまり、ASDの幼児では、

「どこを見るか」だけでなく、「どれだけ時間的に刺激に視線を合わせ続けられるか」も発達と深く結びついていることが示されたのです。

著者らは、この結果から、

  • 視線の**同期性(gaze–stimulus synchrony)**は、社会的刺激への関与の質を捉える重要な指標である
  • RQAのような時間構造を捉える解析手法は、従来の平均値的指標では見えにくい特性を明らかにできる
  • 視線ベースの指標は、ASDにおける発達機能の客観的マーカーになりうる可能性がある

と述べています。

一方で今後の課題として、非社会的刺激(物体や抽象的動き)でも同様の同期低下が見られるのかを検討する必要があり、同期の低下が「社会特異的」なのか「一般的な視覚処理の特性」なのかを見極める必要があると指摘しています。

一言でまとめるとこの論文は、

「ASDの幼児は、リズムある社会的刺激に対して視線を時間的に同期させ続けることが難しく、その同期の弱さは発達水準と関連している。視線の“時間構造”は、早期評価の新たな手がかりになりうる」

ことを示した研究です。

ASDの早期理解を、“どれだけ見たか”から“どう見続けたか”へと拡張する重要な視点を提供する論文と言えるでしょう。

Kefir-derived probiotic mixture for children with autism spectrum disorder: a double-blind randomized clinical trial

以下は、**「自閉スペクトラム症(ASD)に対するプロバイオティクス(とくにケフィア由来菌)の臨床効果を、ランダム化比較試験で確認した研究を探している人」「腸内環境介入が行動や適応機能に与える影響を知りたい人」**向けに、この論文をわかりやすく整理した要約です。


この研究は、ケフィア(発酵乳)由来のプロバイオティクス混合物(K11、K11-TMAX)が、ASDのある子どもの適応機能や自閉特性、炎症・代謝指標、腸内細菌叢にどのような影響を与えるかを検証した、二重盲検・ランダム化・プラセボ対照の臨床試験です。近年、ASDにおいて腸内環境と行動・消化管症状の関連が注目されており、科学的に厳密な試験での検証が求められていました。

対象は3〜11歳のASD児182名で、

  • プラセボ群
  • K11群
  • K11-TMAX群

の3群に1:1:1で無作為割り付けされ、90日間介入を行いました。主要評価項目はVineland-3(適応行動)総合得点の変化、副次評価項目としてADOS-2、CARSなどの自閉特性指標、炎症・代謝バイオマーカー(インスリン、CRP、コルチゾール等)および便中細菌(乳酸菌・大腸菌)が測定されました。参加者・保護者・評価者はいずれも割り付けを知らない完全なブラインドで実施されています。

結果として、90日後にK11およびK11-TMAX群では、Vineland-3の適応機能が群内で有意に改善し、コミュニケーションや日常生活など各領域でも一貫した改善が見られました。また、ADOS-2やCARSのスコア低下インスリン・CRP・コルチゾールの低下(K11-TMAXでは便中カルプロテクチンも低下)、乳酸菌の増加と大腸菌の減少といった生物学的変化も確認されました。副作用は軽度で群間差はなく、安全性に大きな問題は認められませんでした

一方で重要な点として、主要評価項目において群間(プラセボとの)有意差は検出されませんでした。つまり、改善は見られたものの、本試験の規模・期間では「プラセボを上回る効果」を統計学的に確定できなかったという結果です。

著者らは結論として、ケフィア由来プロバイオティクスは安全で、適応機能や自閉特性、炎症・腸内環境の改善と整合的な変化を示したが、確定的な有効性判断には、より大規模・長期で群間差を検出できる試験が必要としています。

一言でまとめるとこの論文は、

「ケフィア由来プロバイオティクスは、ASD児において適応機能や関連指標の改善と整合する変化を示したが、決定的な治療効果を示すには今後の大規模試験が不可欠である」

ことを示した、腸内環境介入研究の次の段階を示唆する臨床試験です。

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