ASDの子どもにおける「末梢の神経伝達物質(血液・尿)」と症状の重さとの関係
このブログ記事は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもにおける「末梢の神経伝達物質(血液・尿)」と症状の重さとの関係を検討した最新の探索的研究を紹介しています。中国のASD児と定型発達児を比較し、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、GABAなどの濃度差と、ADOS-2による重症度との関連を分析した結果、血漿GABAは症状の軽さと関連し、尿中ノルアドレナリン関連指標は症状の重さと関連すること、さらに一部の物質では「多すぎても少なすぎても重症化する」という非線形な関係が示されました。全体として本記事は、ASDを脳内だけでなく全身的な神経化学バランスの問題として捉え直し、将来的な重症度評価の補助バイオマーカーの可能性を示した初期的研究を分かりやすく解説しています。
学術研究関連アップデート
A pilot study of the plasma and urinary neurotransmitters in Chinese children with autism spectrum disorder
この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)のある中国の子どもにおいて、血液(血漿)や尿中の神経伝達物質の量が、症状の重さとどのように関係しているのかを探索的に調べたパイロット研究です。ASDでは脳内の神経伝達物質のバランス異常が指摘されていますが、本研究はそれを身体から比較的簡単に測定できる「末梢(血液・尿)」の指標として捉えられるかに焦点を当てています。
研究では、3歳以上のASD児と、年齢・性別・民族を一致させた定型発達児(TD)40名を比較し、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、GABAなど複数の神経伝達物質や代謝物を測定しました。その結果、ASD児では、血漿中のGABA・ドーパミン・セロトニンなどが高く、ノルアドレナリンやチロシンが低い一方、尿中ではノルアドレナリンや関連代謝物が高いといった、複雑な変化パターンが見られました。
さらに重要なのは、症状の重さ(ADOS-2の重症度スコア)との関連です。統計解析の結果、
- 血漿GABAが高いほど、ASD症状は軽い
- 尿中ノルアドレナリン(NE)やノルメタネフリン(NMN)が高いほど、ASD症状は重い
という関係が示されました。また、血漿中のノルアドレナリンやチロシンについては、**少なすぎても多すぎても症状が重くなる「U字型の関係」**が示唆され、単純な「高い・低い」では説明できないバランスの重要性が示されています。
この研究が示すメッセージは、ASDでは神経伝達物質の調節が全身レベルで乱れており、その一部は症状の重さと定量的に関連している可能性があるという点です。著者らは、これらの指標が将来的にASDの重症度を補助的に評価するバイオマーカーになり得ると述べつつ、サンプル数が少ないため、現時点では予測や診断に使える段階ではないと慎重な姿勢も強調しています。
一言でまとめると、この論文は、
「ASDの子どもでは、血液や尿中の神経伝達物質バランスが症状の重さと関係しており、末梢神経伝達物質は将来の補助的バイオマーカー候補になり得る」
ことを示した、基礎と臨床をつなぐ初期的研究です。
