Skip to main content

小集団でも利用可能!認知行動療法に関して紹介【CBT準備編】

· 22 min read
Tomohiro Hiratsuka

今回は認知行動療法に関して、そもそも認知行動療法とは何か?というところから認知行動療法に取り組むにあたって必要な準備、既存のカリキュラムなどに関して簡単にご紹介します。

今回は認知行動療法に関して、そもそも認知行動療法とは何か?というところから認知行動療法に取り組むにあたって必要な準備、既存のカリキュラムなどに関して簡単にご紹介します。

認知行動療法とは?

認知行動療法は社会性やコミュニケーション、認知、協調性、感情、メンタルヘルスを整える上で有効な行動療法の一つです。

自閉症児の多くは自身の感情、思考、行動を理解することに困難を示すことがあります。そして心と体がつながっていることを理解することも同様に困難である場合があります。認知行動療法では、思考や内在的な行動が、観察可能な行動(外部行動)をコントロールするという原則に基づいて思考プロセスの再構築、情操教育、認知行動スキルの学習支援を行います。

また認知行動療法は集団にも適応できる為個別療育以外の場面でも実施することができます。

認知行動療法のターゲットになる目標

認知行動療法を利用する際にターゲットになるものや目標としては下記のようなものが例として挙げられます。

  • 不適切思考の認知と矯正
  • 自身の行動のメタ認知、や他者の行動理解を通じた社会的相互作用へのよりより理解
  • 反応に対する応答行動の最適化を通じた社会性の向上と協調性の向上。精神疾患のリスク低減や不安抑うつ状態の解消
  • 強迫的、常同的行動の改善
  • 誇大妄想や恐怖への対処
  • 不安症状
  • うつ
  • 怒り、癇癪
  • 柔軟性、適応力
  • 思考の停止、息抜き
  • 代替行動および協調行動の発達
  • 嫌悪刺激への段階的暴露
  • 感情理解

https://afirm.fpg.unc.edu/node/591

認知行動療法に取り組む前に確認すべきこと

認知行動療法は取り組むにあたりいくつか前提となる事項があります。

  • 認知機能、能力のレベルがだいたい6歳以上ある
  • 表出、受容言語ともに6歳レベル
  • 使用する教材に記載されているワードを理解できるレベルの読み能力
  • 集団で行う場合には集団生活能力が対応可能か

グループワークやコミュニケーションを含むカリキュラムが多いため、基本的には上記の事項を満たしていないと実行するのも効果を得るのも難しいという形になりますが、より詳細な部分は使用するカリキュラムに応じたり、以下で紹介するような部分を確認した上で精査する必要があります。

ここからは認知行動療法位取り組むにあたり必要となるステップをいくつかご紹介します。

1.学習スタイルの把握

介入をしていく上で、児童の学習においてどのような点が強みまた弱みとなるか事前に確認しておくことが必要です。また、どのような学習のタイプに特に注目すべきかという点に関しては下記に記載します。

2パターンの学習スタイル

暗黙的学習 この学習タイプは、無意識的に偶発的で複雑な情報を学習します。例えば早期言語を獲得する際の学習がこれに該当します。自閉症児にとっては苦手なことが多い学習タイプです。


明示的学習  算数など努力や経験が必要な意識的な学習タイプです

強み、弱味の現れる部分

注意 自閉症児の場合には、細部に注目したり注意を別のものに移すのが困難である場合があります。


視覚 視覚で学習することが得意な場合もあります、見たものから学習していくことが可能です。


音声言語 音声言語で学習することが得意な場合があります。


実行機能 自閉症児の中には、複雑な課題の遂行に際し、課題ルールの維持やスイッチング、情報の更新などを行うことが困難である場合があります。


他者視点取得 他者から見たときの物の見え方や、他者の意図の推測などが困難である場合があります。


感覚処理 感覚過敏による嫌悪や回避といった行動が生じている可能性があります。

弱みや強みを把握したり、どのような学習スタイルが使えそうか判断するためには、過去の検査記録や個別支援計画を振り返ることも有効です。構造化面接や非構造化面接、直接的なアセスメントや行動観察も有効です。またフォーマルアセスメントを再度実行することも有効です。

2.カリキュラムの選択・作成

認知行動療法に関してはすでにたくさんのプログラムが作成されています。プログラムによっては発達障害の有無に関わらず利用できるようなものや特化したもの、特化した上で効果検証がしっかりとされているものなどがあります。

すべての子どもたちに対して使用可能なプログラムの例 Coping Cat C.A.T. Project Coping Power Fast Track Program and Promoting Alternative Thinking Strategies (PATHS) Second Step Adolescents Coping with Depression Linking the Interests of Families and Teachers Early Risers: Skills for Success Skills for Academic and Social Success FRIENDS Program for Children Cool Kids Child and Adolescent Anxiety Social Effectiveness Therapy for Children Interpersonal Psychotherapy for Depressed Adolescents ACTION treatment ACT and ADAPT program

自閉症児向けに特化されたプログラムの例

Facing Your Fears: manualized group therapy for managing anxiety in learners with ASD by Judith Reaven, Audrey Blakeley-Smith, Shanna Nichols, and Susan Hepburn Exploring Depression and Beating the Blues: cognitive behavior therapy to understand and cope with depression by Tony Attwood and Michelle Garnett Exploring Feelings: series by Tony Attwood

自閉症児向けに特化されたプログラムでかつエビデンスのあるものの例

Modified Building Confidence CBT program: for anxiety in learners with ASD by Jeff Wood and colleagues Cool Kids ASD Program Kit: program addressing anxiety in learners with ASD by Anne Chalfant, Heidi Lyneham, Ronald Rapee, and Louisa Carroll Coping Cat program: for children with anxiety and ASD examined by McNally Keehn and Kristina Hedtke Multi-Component Integrated Treatment: for adolescents with ASD developed and examined by Susan White and colleagues

いずれのプログラムを使用する場合においてもフォーマル、インフォーマルアセスメントの結果をもとに、それぞれの児童に合わせてカスタマイズが必要です。

プログラムによってはSVや事前研修を必要とする場合もありますが、これらの学習を通じてより最適な支援を提供しやすくなるため、受けられる場合には積極的に学習機会として活用していくことが重要です。

3.個別・集団いずれのタイプを使用するか

CBIは1対1の場合も集団の場合もいずれの状況下でも使用することができます。どちらの方法を使用するかについては、児童の発達状態やスキル、特性を考慮するのはもちろんのこと、支援者のスキル、教室の広さ、時間とうも同じように考慮して決めます。

グループワークは支援者にとっては最も効率の良い方法になりますが、その集団のメンバーがスキル獲得段階や特性などが類似していることまた、それぞれのメンバーが集団生活をする上での準備段階がすんでいることをしっかりと確かめないと機能しません。 またグループで行う場合に保護者の方と協力して一緒に取り組むように設計することも有効です。グループワークに保護者の方に参加していただくことで、保護者の方からお子さんにプロンプトを出したり、適応行動を促進することができる為、支援者にとってもグループワークをする上で非常にやりやすい状態にすることができます。

4.プログラム内容のすり合わせ

プログラムを実施するにあたり、支援者、保護者、学校の先生など様々な人が参加する場合には、認知行動療法を実施するに至った背景や実施する内容等に関してそれぞれがきちんと理解している必要があります。特に認識をすり合わせておく必要のある項目は下記の通りです。

  • なぜ認知行動療法を用いるのか
  • 認知行動療法の原理原則は何か
  • 利用するプログラムや行動計画に関して理解と合意がなされているか
  • 強化計画に関して理解と合意がなされているか
  • 般化計画やプロンプトに関して理解と合意がなされているか

5.場所と時間の設定

児童、関係者、それぞれにとって利用しやすい場所を選択します。場所はいくつか用意しておくことも可能です。複数の場所でサービス提供できると般化の促進にもつながります。

サービス提供時間はグループワークにおいては10分〜90分で、個別の場合には大抵45〜60分です。今回のプログラムで達成したい目標や、また児童の状態からどれだけ活動可能かという点をしっかりと把握してそれらに基づいて時間設定を行います。

時間を有効に活用するためにプログラムテンプレートやアジェンダを利用することも有効です。

1.入室 - 10:00 2.アジェンダの確認 - 10:05 3.前回から今回までの間で起きた変化や出来事に関する共有 - 10:10 4.宿題の確認 - 10:20 5.セッション目的の共有 - 10:30 6.既存・新規の学習コンテンツの実施 - 10:35 7.宿題の共有 - 10:55 8.振り返り - 11:00 アジェンダの例

6.プランをカスタマイズする

すでにあるプログラムを利用する場合には、児童に合わせてプログラムを変更する必要があることがあります。特に、それぞれのプログラムで目標設定されているものに関して、どのような過程で学習を進めるのかという部分を、児童の実態に合わせて変更していく必要があります。

標的行動 クラスのみんなの前で話す ステップ 1.たかしの心の中にある、みんなの前で話すことに対する不安を言語化し、自己認識を促す 2.人前で話すことのポジティブな側面を特定し言語化する 3.必要スキルの習得(自分の意見をノートに書くための書字訓練等) 4.落ち着くための方法やルーティンを使用することを推奨、プロンプトする 5.実践練習として、みんなの前で話す練習を段階別に提供する。まずは先生の前で、スピーチをするところから等。 6.それぞれの各学習段階において強化子を強化計画に準じて使用する ステップのカスタマイズ例

以上1〜6のステップが認知行動療法を実施するにあたって必要な前準備になります。現在の状態を加味した上でプログラムを選択し、関係者同士の相互理解を深めた上で、プログラムを実施する場所や機会を選定し、必要であれば既存のプログラムをより児童の状態にあったものに変更する、という流れになります。

以下では、認知行動療法を検討する、実践する際に役立つ知識に関してご紹介します。

Tips

心理教育

****心理教育とは、受容しにくい問題を持つ人たちに、正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え、病気や障害の結果もたらされる諸問題 ・諸困難に対する対処法を習得してもらう事によって、主体的に療養生活を営めるように援助する方法です。

多くの場合、児童の中の感情を理解していくプロセスは講義形式ではなくディスカッション形式であることが多いです。口頭で直接質問して噛み砕いてく方法や、可能性のある選択肢をかいた紙を使用して自身の感情やその機能に関して理解を深めていきます。

アフェクトリコグニション

****感情は抽象的で理解しにくい概念であるため、感情表現を適切に言語化すること、また定義することで混乱を避ける方法です。

また感情を言語的に定義するという点に関して、支援者側が適切だと思う単語を使用して理解していくアプローチもありますが、一方で児童の持つワードの定義が少し異なれど適切であればそちらを使用しても良いです。

【怒りに関して】 支援者が提示するワード→ムカムカ 児童が提示するワード→メラメラ

ワードチョイスの例

口頭で上記のような作業をすることも有効ですが、視覚を活用した感情理解も有効です。例えば温度計を自分のストレスメーターとして示した時に、今どのくらいストレスがかかっているのか、児童と支援者の間で視覚的に相互理解をすることができます。

認知的再構築

認知的再構築は、認知の歪みや機能不全から自動的に生じている不安や怒り、自尊感情の欠如を、認識し矯正するための方法です。

段階的暴露

****児童の抱える不安や恐怖を解消していく方法の一つとして、不安や恐怖の対象に段階的に接触し慣れていく方法です。ただししっかりと経験や訓練を積んだ支援者が実践に当たる必要があります。

学習戦略

****より日常生活の中で児童の学習機会を確保し、また般化を補助するために周囲の大人が児童の前でどのように活動するか戦略的に実行することがあります。普段使用するものの複数の使い方を児童の前でやって見せて、そのものの本来の機能や、応用的機能に関して児童が想像できるようにします。

スケジューリング

****視覚的に1日の流れを見えるようにして、児童にとって予期せぬ変更によるパニックを回避する方法です。

リラクゼーション

休むというスキルの獲得

児童の好きなものと感情レベルの一致

火山が噴火する様子と自身のストレス値を照らし合わせて理解できるようにする方法です。

時間の可視化

****より時間という概念を理解しやすくするために、視覚的にカウントダウンするような仕組みを導入する方法です。

まとめ

認知行動療法とは?という点から、実践するにあたって必要な準備に関して簡単にご紹介しました。実践編では、あるプログラムをベースにした時の具体的な実践方法に関してご紹介します。