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ASD/ADHDの若者が子ども精神科から成人精神科へ移行する際のバリアと支援要因

· 35 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、発達障害・学習障害とそれを取り巻く医療・教育・福祉の現状を多面的に照らす最新研究をまとめて紹介しています。具体的には、①母親の関節リウマチと子どもの自閉スペクトラム症(ASD)リスクの関連を大規模コホート+メタ分析で示した疫学研究、②Knobe効果を題材にASD当事者と神経定型者の意図判断・道徳判断の違いを検証した認知心理学研究、③質問紙+感情分析+機械学習でASDスクリーニング精度を高めるフレームワークや、血液検査・体組成データからADHDを予測する機械学習モデルといったAI応用研究、④rTMSを受けるASD児の視線パターンから治療不耐リスクを予測する眼球運動研究、⑤運動介入が神経・免疫・腸内細菌を通じてASD症状に作用するメカニズムを整理したレビュー、⑥ASD/ADHDの若者が子ども精神科から成人精神科へ移行する際のバリアと支援要因、障害児と非障害児の実際のインクルーシブ外遊び行動の観察研究、⑦イングランドの学校システムが生むSEND児の違法排除の構造分析、さらに⑧ディスレクシアの定義・診断モデルに対する批判的コメントと、保護者・教師・臨床家の間に残るディスレクシアの誤解を整理したスコーピングレビューなど、医学・心理学・教育学・社会制度研究が横断的に取り上げられています。

学術研究関連アップデート

Maternal rheumatoid arthritis and the risk of offspring autism spectrum disorder: two national birth cohorts and a meta-analysis

「母親の関節リウマチ(RA)は、子どもの自閉スペクトラム症リスクをどれくらい高めるのか?」

この研究は、妊娠前〜妊娠中に母親が関節リウマチ(RA)と診断されている場合に、子どもがASDと診断されるリスクが上がるかどうかを、大規模データで検証したものです。イスラエルの2つの出生コホート(合計約56万人、追跡5.9百万人年)と、既存研究13本をまとめたメタ分析(約400万人分のデータ)を組み合わせています。その結果、「出産前までにRA診断がある母親」の子どもでは、ASDリスクが約1.8倍(HR=1.77, 95%CI 1.45–2.17)に上昇している一方、出産後になって初めてRAと診断された母親ではASDリスクは上がっていませんでした。メタ分析でもほぼ同程度の上昇(OR=1.57, 95%CI 1.31–1.87)が確認されており、結果は一貫しています。重要なのは、「RAの有無」だけでなく「診断時期」が決定的だったという点で、これにより「遺伝的にRAとASDがたまたま一緒に起こりやすい」というよりも、妊娠中の炎症状態(免疫活性化)が胎児脳発達に影響している可能性が強く示唆されます。なお、RAのタイプ(血清陰性/陽性)別の検討や、RA治療薬がASDリスクにどう関与するかまでは、データ不足で検証できていません。結論として、本研究は「出産前にRAを持つ母親の子どもではASDリスクがやや高い」ことを、時期特異的かつ大規模データ+メタ分析で裏付け、母体炎症をASDの修正可能なリスク要因候補として位置づけています。

Assessing the Knobe Effect in Autistic and Non-Autistic Individuals

「Knobe効果」は自閉スペクトラム症の人でも起こるのか

  • *Knobe効果(ノーブ効果)**とは、

「ある行為の副次的結果が“良い”か“悪い”かによって、人が“その結果を意図した”と判断する度合いが変わる」という心理現象です。

たとえば:

  • 社長が「利益のために環境破壊になるとわかっていて政策を実行した」場合、多くの人は

    “社長は環境破壊を意図した” と判断しがち(悪い結果)

  • 逆に利益のために環境保護につながった場合は

    “意図したわけではない” と判断する(良い結果)

このように、道徳的な“良い/悪い”が、意図判断に影響するという現象がKnobe効果です。


■ この研究が知ろうとしたこと

  1. ASD当事者はKnobe効果をどの程度示すのか?

    → これまでの研究は主に“有害な副作用”の場合のみを調べていた。

  2. “害ではない副作用”でも同じ効果は見られるのか?

    → 例:「誰かが得をするが害ではない」「道徳的に中立な結果」など。

  3. 自閉スペクトラム症(ASD)とニューロタイプ(非ASD)では違いがあるのか?

  4. 性別による違いはあるのか?


■ 研究方法の概要

  • ASD群と神経定型(NT)群を比較

  • “害をもたらす副作用”に加えて、

    害にならない副作用のケースも新たに検証

  • 以下を評価:

    • 意図の判断(intentionality)
    • 賞賛・非難(praise/blame)
    • 性別差

■ 主な結果(ポイントだけ)

① Knobe効果自体は、両群に存在する

  • ASDの人も、NTの人も

    悪い結果(harming side-effect)の場合には「意図した」と判断しやすい

    → Knobe効果は“ASDでは起きにくい”という以前の見解を修正する結果

② ただし「どのくらい強いか」は ASD と NT で差がある

  • ASD群では

    判断がより一貫して論理的(道徳的影響が小さい)

  • NT群では

    道徳的価値(良い/悪い)の影響を強く受けやすい

つまり、ASD当事者の方が、

“道徳的な感情に左右されにくい意図判断” を示す傾向があった。

③ 「害ではない副作用」でも、集団差が現れた

  • NTでは “良い/悪い” で意図判断が揺れ動きやすい
  • ASDでは ケースに関係なくより中立的な判断 をしやすい

④ 性別差も明確だった

  • ASD群・NT群のどちらでも、性別によって

    意図判断や賞賛・非難の傾向に有意差 が見られた

    (詳細は論文内だが、女性の方が道徳的価値の影響を受けやすい傾向)


■ 結論(この研究の意味)

  • Knobe効果はASDでも存在する

    → 過去研究(ASDでは弱い?)より議論を進めた点が重要。

  • ただし、ASDの人は

    道徳的な“良い・悪い”に引きずられず、筋道立った判断をしやすい

    → 認知スタイルの違いとして解釈できる。

  • “害ではない副作用”も含めたことで、

    ASDとNTにおける判断の違いがより明確に可視化された

  • 性別差の存在は、

    倫理判断は「神経発達 × 性別 × 文脈」で変わる複合的現象

    である可能性を示している。


■ 一言まとめ

Knobe効果(道徳判断が“意図したかどうか”に影響する現象)は、

自閉スペクトラム症の人でも起こるが、影響のされ方が異なる。

ASDの人はより一貫した中立的判断を示し、

NTの人は道徳的感情に左右されやすい傾向があった。

Predicting autism spectrum disorder using intelligent framework

AIと心理検査を統合した“次世代スクリーニング”で自閉スペクトラム症(ASD)を予測する新手法

近年、ASD(自閉スペクトラム症)の診断は「遅れるほど支援開始も遅れる」という問題があり、

より正確で、自分で実施できる(self-administered)早期スクリーニングツールが求められています。

本研究はその課題に対し、

心理質問票 × 感情分析(sentiment analysis) × 機械学習(ML)

を組み合わせた “知能的スクリーニングフレームワーク(intelligent framework)”

を提案したものです。


■ この研究が取り組んだ課題

  • 既存のASDスクリーニング(AQ-10、Q-CHAT-10など)は

    シンプルで使いやすい反面、精度が十分でない場合がある

  • 医療専門職が判断する前段階で、

    現場(学校・一次医療)で利用できる高精度スクリーニングが必要

  • 多くの機械学習研究は

    従来の数値データのみで、回答の“質的な特徴”を活かしていない


■ 研究の新しいアプローチ(重要ポイント)

本研究の特徴は、以下の4点に集約されます。

① 4種類のASD質問票データを利用

  • AQ-10(子ども版・青年版・成人版)
  • Q-CHAT-10(幼児用)

年齢帯を超えたスクリーニング可能性を検証。


② 回答を“感情極性(sentiment polarity)”に変換する独自手法

  • 多肢選択式の質問回答を**感情スコア(ポジティブ〜ネガティブ)**に変換
  • 「社会的関わり」「共感性」などの心理的ニュアンスを数値化

通常の質問票では捉えにくい特徴をMLモデルが学習できるようにする。


③ 数値データ × 感情特徴の“特徴融合(feature fusion)”

  • 従来の数値(例:項目得点)
  • 新規の感情スコア(sentiment features)

これらを統合し、より豊かな特徴空間を構築。


④ PCAとハイブリッドMLで高精度化

  • *PCA(主成分分析)**で最適な特徴を抽出

    → 過学習を防ぎ、汎化性能を向上

  • ハイブリッドML分類器(複数モデルの組み合わせ)と

    グリッドサーチによるハイパーパラメータ最適化

→ 従来研究より高い精度を達成。


■ 主な結果:従来のASD判定モデルより高精度

  • 既存の機械学習研究を上回る分類精度
  • 一貫した再現性と信頼性を示す
  • 早期スクリーニングツールとして一次医療・学校現場で利用できる可能性

研究者は

「医療者の紹介判断(referral decision)をサポートできる」

と結論づけています。


■ まとめ:この研究の意義

  • 従来の質問票だけでは得られない“心理的ニュアンス”をデータに取り込んだ点が革新的
  • 実用化しやすいモデル構造
  • 0〜成人まで幅広い年齢群でのスクリーニングにも応用可能
  • 一次医療・学校・保健領域での早期介入につながる新たなAI技術となりうる

■ 一言まとめ

質問票(AQ/Q-CHAT)の回答を感情スコアに変換し、

数値データと統合して機械学習モデルに学習させた結果、

従来より高精度のASD早期スクリーニングAIが誕生した。

医療現場の「初期判断」を支援する可能性を持つ実用的なフレームワークである。

Frontiers | Unveiling Heterogeneous Gaze Patterns in Autistic Children Undergoing rTMS: Insights from Latent Profile Analysis

ASD児は“どの視線パターン”だと rTMS を受けにくい?

— 目線データから3つのタイプを発見した最新研究**

rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)は、近年ASD(自閉スペクトラム症)の社会性改善などに役立つ可能性が注目されている治療法です。

しかし 「刺激が不快で途中で続けられない=rTMS intolerance」 を示すASD児が一定数おり、

その予測指標(バイオマーカー)はこれまでほとんどありませんでした。

本研究は、

rTMS を受けている ASD 児の“視線(gaze)パターン”を分析し、

どのタイプが rTMS 不耐(intolerance)につながるのか?

を世界で初めて詳細に調べたものです。


■ 研究の方法

● 参加者:ASD児 104名

  • rTMS耐性あり:56名
  • rTMS不耐:48名

刺激は 左DLPFCに高頻度、右DLPFCに低頻度という一般的な臨床プロトコル。

● 眼球運動計測(Eye-tracking)

  • Tobiiデバイスを使用
  • 喜び・怒りなど情動顔画像への視線の当て方を測定(preferential-looking課題)

● 統計解析

  • 潜在プロファイル分析(LPA)

    → 視線パターンを“隠れたクラス”として分類


■ 見つかった視線パターンは 3タイプ

① 中程度・非選択的注視タイプ(80.76%)

  • 情動顔に“特に長くも短くもない”バランス型
  • rTMS不耐率:38.1%

② 低多様性注視タイプ(9.62%)

  • 見る範囲が狭く、全体的に注視時間が短い
  • rTMS不耐率:60.0%

③ 高注視・軽い変動タイプ(9.62%)

  • 情動顔を長くじっと見る傾向
  • 注視のバラつきも小さい
  • rTMS不耐率:100%(全員が不耐)

👉 情動顔に“強く引きつけられるタイプ”は、rTMSが耐えにくい可能性が極めて高い。


■ どんな子がどのタイプに入りやすい?

  • CARS(ASD重症度):タイプ間で差があり、

    重症度が高いほど、耐性リスクの高いタイプ(②③)に入りやすい

  • 性別:タイプ間で差があった(詳細非記載)

  • 年齢:有意差なし


■ 最重要ポイント:視線プロファイルは rTMS intolerance を予測する

論文では、視線パターンが不耐性を予測できると報告。

  • OR = 0.210(95% CI: 0.079–0.557)

    → 特定プロファイルの存在が rTMS 不耐の統計的に強い予測因子となる。

特に③タイプは“ほぼ確実に不耐”となるため、個別プロトコルが必須。


■ 研究の意義

  • rTMSが合う子・合わない子を事前に推定できる可能性
  • 眼球運動という非侵襲・低コストのバイオマーカー候補を提示
  • ASD児の視線パターンの違いが、治療プランに直接影響することを初めて明示

個別化医療(precision medicine)としての rTMS に向けた重要な一歩。


■ 一言まとめ

ASD児には“情動顔を見るときの視線パターン”に3タイプがあり、

そのタイプは rTMS(経頭蓋磁気刺激)の不耐性を強く予測できる。

特に 情動顔をじっと見続ける子どもは rTMS を継続しにくく、

治療前に眼球運動を調べることで、より個別化した刺激条件を設計できる可能性がある。

Frontiers | Progress in Exercise Interventions for Autism Spectrum Disorder: Exploring Underlying Mechanisms

運動はASDにどんな効果があり、なぜ効くのか?

— 神経・免疫・腸内環境の3方向からメカニズムを総整理した最新レビュー**

本論文は、

「運動(Physical Activity)が ASD(自閉スペクトラム症)にどう効くのか?」

について、最新の研究知見をまとめた総説(レビュー)です。

ASDでは社会性・コミュニケーションの困難、反復行動、感覚過敏など多様な症状がありますが、

研究が進むにつれ 運動がこれらの症状改善に寄与することが明確になってきました。

本レビューは、その効果を

*① 神経メカニズム

② グリア細胞・免疫

③ 腸内細菌

の3つの観点で総合的に整理**しています。


■ 運動が ASD に効く “3つのメカニズム”

① 神経(Neuronal)メカニズム

運動により、脳の可塑性や神経発達に関わる物質が増える:

  • BDNF(脳由来神経栄養因子)

    → 神経の成長・シナプス可塑性を促進

  • ニューロトランスミッター(GABA、ドーパミンなど)

    → ASDで乱れやすい神経伝達のバランス改善

  • 軸索発達関連タンパク(axonal protein families)

    → 神経回路の成熟を促す

② グリア細胞・免疫系 (Glial pathways)

  • ミクログリアやアストロサイトを介した

    神経炎症の抑制

  • 酸化ストレス・炎症性サイトカインの低下

  • 神経保護効果の向上

→ ASDの一部は炎症反応が関係するため、運動の抗炎症効果が症状改善に寄与。

③ 腸内細菌(Gut microbiota)

  • 運動により腸内環境が改善し、
    • *腸−脳軸(gut–brain axis)**を通じて行動・感情面に好影響
  • 研究では、運動で
    • 良性菌の増加
    • 有害菌の減少
    • 短鎖脂肪酸(SCFA)の変化

などが確認され、ASDの不安・過敏性軽減に関連する可能性が示唆。


■ 行動面での改善ポイント

レビューによると、運動は ASD 児・者に以下の効果をもたらす:

✔ 反復・常同行動の減少(stereotyped behaviors)

✔ 不安や情緒の安定化

✔ 社会的コミュニケーションの向上

✔ 体の健康(肥満/心血管リスク)の改善

特に有酸素運動・協働型スポーツ・コグニティブな運動(判断・切り替えが必要な活動)などが効果的とされている。


■ 論文の意義

  • 運動の効果は気分改善だけではなく、神経科学的根拠がある
  • ASD支援としての運動介入を“補助療法”から“科学的根拠に基づく手法”へと押し上げる内容
  • 脳・免疫・腸内細菌という多角的な視点からメカニズムをつなげている点が新しい

■ 一言まとめ

運動は ASD の行動症状を改善するだけでなく、

脳の可塑性・免疫調整・腸内環境など多方面に作用する“総合的な介入手段”であることが、最新レビューで明確に示された。

特に BDNF、グリア細胞、腸内細菌は、運動の ASD への効果の鍵となる要素である。

Frontiers | Machine Learning–Guided Feature Selection and Predictive Model Construction for Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD)

“血液検査+身体データ”から ADHD を高精度で予測

— 8,598人の大規模データで構築した機械学習モデル**

本研究は、日常的に取得できる低コストの臨床データ(血液検査・体組成)を使い、ADHDを予測する機械学習モデルを構築した最新の大規模研究です。

ADHD は行動観察に依存した診断が主で、客観的バイオマーカーがありません。

そこで本研究は、**「機械学習を使って、日常検査から ADHD をスクリーニングできないか?」**を検証しました。


■ 研究の規模:驚異の 8,598 名を分析

被験者は 3 群に分類:

  • ADHD:3,678名
  • サブ閾値ADHD(s-ADHD):1,495名
  • 健常群(HC):3,425名

収集されたデータは 40項目

  • 血液検査(血球系、炎症マーカーなど)
  • 血液生化学(糖代謝、脂質、アルブミン等)
  • 身体組成(BMI、体脂肪率)
  • 基本属性(年齢・性別など)

■ ADHD 児の“身体データの特徴”が明確に現れた

統計解析(ANOVA+事後検定)で、ADHD群は健常群に比べ明確な差を示した:

✔ 炎症マーカーが高い

  • NLR(好中球/リンパ球比)
  • PLR(血小板/リンパ球比)
  • SII(Systemic Immune-Inflammation Index)

✔ 代謝バランスの偏り

  • 血糖値が高い
  • アルブミンが低い
  • 総コレステロールが低い

✔ 身体組成の差

  • BMI高い
  • 体脂肪率高い

興味深いことに、

サブ閾値ADHD(s-ADHD)もほぼ同じパターンを示した。

→ ADHDと同じ“生物学的傾向”を持つ可能性。


■ 特徴量選択:LASSOで「11項目」に絞り込む

LASSO回帰(λ.1se=0.038)で抽出された重要特徴は:

  • 年齢
  • RDW-SD(赤血球分布幅)
  • 性別
  • カルシウム
  • 血糖
  • アルブミン
  • 他 5 項目

日常検査で取得できる項目だけでも、十分情報量があることが判明。


■ 5つの機械学習モデルを比較

構築した ML モデル:

  1. 決定木
  2. ランダムフォレスト
  3. MLP(ニューラルネット)
  4. XGBoost
  5. LightGBM

→ 最も高精度だったのは LightGBM

  • ADHD vs 健常の識別

    AUC = 0.924(36特徴)

    AUC = 0.885(11特徴)

→ 高精度かつ低コストの予測が可能。

ただし:

  • ADHD vs s-ADHD の区別は困難

    → 行動症状・生物学的特徴の重なりが大きいため。


■ SHAP による“解釈できるAI”

SHAP解析では、予測に寄与した要因の可視化が可能に:

  • 年齢
  • RDW-SD
  • 性別
  • 血糖
  • アルブミン

などが強くモデルに影響していた。

ブラックボックスになりがちなAIの“説明可能性”を確保。


■ 結論:日常検査データで ADHD を高精度にスクリーニングできる

  • 血液検査や身体データの組み合わせだけで AUC 0.92 と非常に高い識別精度
  • 低コストで導入可能
  • 医療機関や学校健診での 早期スクリーニングの実用化に期待
  • サブ閾値ADHDでも類似パターンが見られ、臨床の境界群の理解にも貢献

■ 一言まとめ

8,598名の大規模データから、炎症・代謝・体組成をもとに ADHD を高精度で予測する機械学習モデル(LightGBM)が構築され、

日常検査だけで早期スクリーニングが可能になる未来が示された。

Barriers to and Enablers of the Transition From Child to Adult Mental Health Services for Autistic Young People and/or Those With Attention Deficit Hyperactivity Disorder: A Scoping Review

子ども精神科 → 大人の精神科への移行は“壁が多い”

— ASD/ADHD 若者の移行支援に必要なポイントを整理したスコーピングレビュー**

多くの 自閉スペクトラム症(ASD)注意欠如多動症(ADHD) の若者は、うつ・不安・パニックなどのメンタルヘルス問題を併せ持ちます。しかし、子どもの精神科サービス(CAMHS)から大人の精神科サービス(AMHS)に移る時期はサポートが途切れがちで、世界中で大きな課題になっています。

本スコーピングレビューは、「ASD/ADHD の若者が CAMHS → AMHS に移るとき、何が障壁で、何が助けになるか?」 を体系的にまとめたものです。


■ 研究の概要

  • 検索対象:Medline, PsycINFO, CINAHL, Scopus, ProQuest
  • 対象:ASD または ADHD の若者と、その移行に関する研究
  • 最終的に採択された研究:10本(1677件 → 66 → 10)
  • 分析方法:社会生態学的モデルに基づく整理(個人・家族・組織・政策・コミュニティ)

■ 見つかった“主な障壁(Barriers)”

最も多かったのは 「制度・組織レベルの障壁」

1. CAMHSとAMHSの連携不足(最も多い指摘)

  • 情報共有が不十分
  • どちらが移行支援の責任を持つかあいまい
  • 違う文化・違う基準のサービスに“突然移される”感覚

2. 移行プロセスの不透明さ

  • 若者・家族が「何を、いつ、どう準備するか」がわからない
  • 卒業時期が突然訪れる

3. ニーズに合わない“画一的”支援

  • ASD/ADHD向けに調整されていない面談・説明・環境
  • 感覚過敏・コミュニケーション特性が配慮されない

4. 当事者視点が不足

  • 66本のうち、若者本人の声が反映されていたのは わずか5本

“本人抜きで決められる移行” になっているのが現状。

5. コミュニティ・政策レベルの障壁が研究されていない

  • 待機リストの長さ

  • 移行年齢の法律差

  • 社会保障や学校制度との連携の弱さ

    これらは重要だが、既存研究ではほとんど扱われていなかった。


■ 見つかった“支援要因(Enablers)”

レビューで明確に支持された有効な支援は以下の2点。

1. 若者本人の意思決定への参加

  • 自分の治療、移行のタイミング、希望する支援スタイルを話し合える
  • “本人中心(person-centered)”の支援が移行の成功と関連

2. ASD/ADHDに合わせた個別調整(テーラリング)

  • わかりやすい説明
  • セッション環境の調整(静かな部屋、短時間など)
  • 感覚特性・コミュニケーション特性への配慮
  • 固定した担当者との関係継続

個別化(パーソナライゼーション)が成功の鍵。


■ このレビューが示す重要ポイント

✔ ASD/ADHDの若者は CAMHS → AMHS で多くの障壁に直面する。

✔ 既存研究は“制度の問題”に偏っており、当事者・家族・コミュニティ・政策の視点が圧倒的に不足している。

✔ 特に本人の声が十分に反映されていない点が最大のギャップ。

*✔ 移行を成功させるには、

「本人中心」「個別調整」「組織間の連携改善」が不可欠。**


■ 一言まとめ

自閉症・ADHD の若者が子ども精神科から成人精神科へ移行する際には、

“連携不足”と“本人不在の意思決定”が最大の障壁となる。

一方で、

本人が主体的に関われる支援と、特性に合わせた個別調整が行われれば、

移行は大きく改善する。

これらを踏まえ、今後は 当事者の声と政策レベルの課題に焦点をあてた研究が求められる。

Can You See Us Play? Observing Inclusive Outdoor Play Behaviour Among Children With and Without Disabilities: A Mixed Methods Study

“見えていない現実”に光を当てる:障害児と非障害児は実際の外遊びでどう関わっているのか?

外遊びは、子どもの発達にとって欠かせない活動です。しかし、多くの障害のある子どもは、物理的な環境や周囲の関わり方の問題から、外遊びに十分参加できていないのが現状です。

オランダでは、インクルーシブな外遊び環境そのものがまだ少なく、

「実際に混ざって遊ぶとどうなるのか?」

という行動データはほとんどありませんでした。

本研究は、実際の遊び場での“観察”を通して、

障害のある子とない子がどのように遊び、どこに壁があるか

を明らかにした、非常に貴重な探索的研究です。


■ 研究デザイン

  • 対象:4〜12歳の子ども 63名(障害の有無混在)
  • 場所:インクルーシブ遊び場(6セッション)
  • 方法:
    • 量的評価
      • Test of Playfulness(ToP):遊びやすさ・遊びの自発性
      • TOES:環境がどれだけ遊びを支援しているか
    • 質的観察:実際の関わり方や遊びの様子を詳細に記述

■ 主な結果(量的)

① 障害のある子と男児は「遊びやすさ」が低く出た(ToPスコア)

  • 男の子

  • 障害のある子

    で一致して「遊びの柔軟性・自発性」が低く評価された。

② 男児は“環境からの支援”も低い(TOESスコア)

  • 周囲の状況や遊具が、男の子には十分支援的でない傾向。

性別と障害の有無が、遊びやすさや環境の感じ方に影響。


■ 主な結果(質的:6つのテーマ)

観察から、インクルーシブな外遊びを左右する6つの要素が浮かび上がった。

1. 多様な遊びの種類

  • 役割遊び、追いかけっこ、探索など。
  • 遊びが単調だと参加が偏る。

2. “知り合い同士”でグループが固定されやすい

  • 障害の有無に関係なく、

    子どもは見知った相手と遊ぶ傾向が強い。

  • 除外ではなく「知らないから関わらない」が多い。

3. 最初の接触(Making contact)の難しさ

  • 会話のきっかけ

  • 遊びに誘うタイミング

  • やり方の合意

    これらが障壁になりやすい。

4. 一緒に遊んでいる時の相互作用

  • お互いのペースやルール理解の違いが摩擦になる場合も。

5. 周囲の大人・同年代の影響

  • 支援者の介入、見守り、促し方が決定的。
  • 同年代の子が橋渡し役になることも。

6. 物理的環境の影響

  • 遊具の配置や種類

  • アクセスしにくい場所

  • 感覚が刺激されすぎる場所

    などが遊び参加に影響。


■ この研究が示すポイント

✔ 障害のある子も幅広い遊びをしているが、物理的・社会的障壁で参加が限定されやすい。

*✔ インクルーシブ遊びには“物理的バリアフリーだけでは不十分”。

社会的サポート(関係構築、仲介、理解)が不可欠。**

✔ 子ども同士の“馴染みバイアス”が、参加格差を生む大きな要因。

*✔ リハビリ専門職(作業療法士など)の役割は非常に重要。

遊びの橋渡し、環境調整、子ども同士の関係づくりを支援できる。**


■ 一言まとめ

インクルーシブな外遊びは、

“遊具を整えれば実現する”ものではない。

必要なのは、

  • 子ども同士の関係づくりの支援
  • 遊び方の橋渡し
  • 社会的・物理的環境の調整

といった “人と環境の両面からの働きかけ” である。

この研究は、障害のある子どもの外遊び支援に関わる専門家、保育者、自治体、家族にとって重要な示唆を提供している。

British Educational Research Journal | BERA Journal | Wiley Online Library

“完璧な子どもだけを並べたい”学校システムが生む、SEND児の違法排除**

イギリスで、特別支援ニーズ(SEND)を持つ子どもが

法律で認められていない形で学校から排除される「違法除外(off-rolling)」

が社会問題になっています。

本論文は、教師・支援専門職・保護者へのインタビューから、

「なぜ、どのように、違法な排除が行われるのか?」

という構造的メカニズムを明らかにした研究です。


■ 背景:排除は“最終手段”のはずなのに、現場では日常化

本来:

  • *永久除籍(permanent exclusion)**は“最後の手段”
  • *一時的な停学(suspension)**は「行動改善のためのメッセージ」

として定められているはず。

しかし、実際には次のような理由で排除が行われています:

  • 学校の“業績”が下がるのを防ぎたい
  • Ofsted(学校評価)が悪くなるのを避けたい
  • テスト結果に影響しそうな子は早くいなくなってほしい

制度上は認められていない動機での排除が横行

特に影響を受けやすいのは、

  • SEND児(特別支援ニーズ)
  • 社会・情緒・精神保健上の困難を抱える子
  • Black(黒人)の子ども

という、すでに脆弱性の高い集団。


■ 研究手法

  • 場所:イングランド西ミッドランドの小学校
  • 参加者
    • 学校職員、支援者
    • 排除を経験したSEND児の保護者
  • 分析視点
    • Childism(子ども差別):大人中心の権力構造により子どもが不利益を受ける構造

    • Care Ethics(ケア倫理)

      表向き「子のため」と言いながら、実際は学校都合の“ケアのねじれ”を読み解く


■ 主な発見

✔ 排除は“制度の穴”ではなく、学校システムそのものが生み出している

インタビューから見えたのは、

学校文化・教育市場・高い競争圧力が排除を促進している現実。

学校がこうした理由で排除を正当化:

  • 「子ども本人のため」
  • 「学校の安全を守るため」
  • 「できない子より、できる子を優先すべき」

“ケア(配慮)”の言葉が、排除のために利用される

✔ SEND児は特に標的になりやすい

学校は

  • 学力テスト結果
  • 行動管理
  • Ofsted評価

を強く意識し、

「手がかかる/点数が下がる」子が排除対象にされやすい。

✔ 排除は個人の問題ではなく“構造問題”

  • 高リスクの子を受ければ学校の評価が下がる

  • だから校長や管理層は排除に向かう

    → 教員も圧力を受けてその方針に従わざるを得ない

つまり、

排除は“悪い学校”の問題ではなく、“排除を促す仕組み”の問題。


■ 本論文が示す重要なポイント

① “必要な指導”として語られる排除は、多くが制度の本来の意図から外れている

*② SEND児の違法排除を理解するには、

個別事件ではなく「教育市場」「評価制度」の構造を見る必要がある**

③ 子ども中心ではなく、大人中心の価値観(Childism)が排除を正当化している

④ 真にインクルーシブな教育実践には、制度改革と文化変革が不可欠


■ 一言まとめ

“完璧な子どもだけを並べたい”という学校システムの圧力が、

SEND児の違法排除を生み出している。

これは個々の学校の問題ではなく、

競争と業績を重視する教育制度がつくり出す構造的な不平等である。

保護者、教育者、政策担当者にとって重要な問題提起となる研究。

Consensus Without Clarity for Dyslexia Identification: A Commentary on Holden et al.

“合意はあるが、明確さはない” ─ ディスレクシア識別の混乱を指摘する重要コメント論文**

2025年、Holdenらは「ディスレクシアの定義・識別・評価方法」について専門家の合意形成(Delphi研究)を行いました。しかし、このコメント論文(Metsalaら)は、

「その合意は実務的にも科学的にも問題が多く、かえって識別を複雑にしている」

と厳しく批判しています。


■ 背景:ディスレクシアの“何をどう測るか”は長年の論争テーマ

本来、ディスレクシア評価はシンプルに

  • 単語読字の正確さと流暢さの困難

    を中心にすべきという流れが近年強まっています。

しかしHoldenらのDelphi研究では、

  • 認知処理の弱さ
  • IQと学力の乖離
  • 家族歴
  • 認知能力
  • 介入への反応

など、多くの周辺要素を含めた複雑な識別モデルを「合意」として提示。

この点に対して、本コメント論文は明確に異議を唱えています。


■ 本論文の主張(4つの主要な批判ポイント)

① 認知処理(音韻処理など)を診断の中心に据えるのは科学的根拠が弱い

  • 認知処理テストは読字介入の方針決定にも診断にもあまり寄与しない
  • 実際には「読めないかどうか」を直接測る方がはるかに妥当

→ 認知検査中心のモデルは無駄に複雑で、誤診や過少診断を生む


② IQテストや“能力–到達度の乖離モデル”を復活させるのは時代遅れ

Delphi研究ではIQの使用に肯定的意見が残ったが、著者らはこれを批判。

  • IQ差はディスレクシアの本質ではない
  • 低IQだとディスレクシアと認められにくいなど、不公平を助長
  • 国際的にはすでに淘汰されつつある手法

③ 家族歴・指導への反応を“中心基準”にするのは不適切

これらはあくまで補助的情報であり、

  • 家族歴がなくてもディスレクシアはあり得る
  • 指導環境の質によって反応が変わり、診断に使うと教育格差を拡大する危険がある

と指摘。


④ “仮説検証型モデル”は臨床家の主観バイアスを増やす

Delphi研究の結論では、専門家が複数情報を統合して判断する

“臨床判断依存モデル”

が強調されている。

しかし著者らは、

  • これは専門家の経験や信念によるばらつきを増やし、
  • 特にマイノリティや低所得層の子どもに不利に働く

と警告。


■ 著者らの提案する「よりシンプルで公平な識別モデル」

✔ 中心に据えるべきは“読字の困難そのもの”の測定

以下を基本とすることを提案:

  • 単語読字の正確さ
  • 読字の流暢さ
  • 読字課題の成績が、年齢・学年基準から明確に下回るか

これだけでディスレクシアの識別は十分であり、

  • 認知検査
  • IQテスト
  • 家族歴
  • 指導への反応

必須基準にする必要はないと主張。


■ 本コメント論文の意義

  • “専門家の合意”=“科学的に正しい”わけではない
  • 複雑化されたモデルは実務者を迷わせ、不平等を生む
  • ディスレクシア識別はもっとシンプルで公平にできる

という重要なメッセージを投げかけています。


■ 一言まとめ

Delphi研究による“合意”は、ディスレクシア識別をむしろ複雑化しており、

科学的にも公平性の観点からも問題がある。

本来の中心は「読字困難の直接評価」であるべきだ。

What Parents, Teachers and Clinicians Know About the Features of Developmental Dyslexia and Its Intervention: A Scoping Review

“保護者・教師・臨床家でも誤解は依然として残る”

ディスレクシア理解の実態を整理したスコーピングレビュー**

近年、ディスレクシア研究は大きく前進しているにもかかわらず、現場(学校・家庭・医療)ではいまだに誤解が根強いと言われています。

このスコーピングレビューは、

「教師・保護者・臨床家が実際にどんな理解を持っているのか」

を体系的にまとめたものです。


■ 研究の概要

  • 対象研究数
    • 特徴に関する研究:95本
    • 介入(支援方法)に関する研究:56本
  • 対象者:教師、保護者、臨床家
  • 手法:テーマ分析 + 統計比較

目的は、

  • どの誤解が広がっているのか

  • どの正しい知識が共有されているのか

  • グループ間の理解の違い

    を可視化すること。


■ 判明したこと(ポイントまとめ)

① 正しい理解もあるが、誤解・不完全な理解が広く存在

✔ 正しい理解(17項目)

例:

  • ディスレクシアは生まれつきの“神経学的”特性である
  • 早期介入が効果的
  • 読み書きに特化した困難で、知能の問題ではない

これらは多くの研究で共通して支持されていた。


✔ 誤解(4項目)

代表例:

  • 「ディスレクシア=視覚の問題(文字が動いて見える)」
  • 「成長すれば自然に治る」
  • 「努力が足りない」(動機づけや環境の問題と誤解される)

→ 非科学的だが、教師・保護者・臨床家すべてで一定数存在。


✔ 部分的に正しいが誤った理解につながりやすいもの(18項目)

例:

  • 「書字が汚い=ディスレクシア」
  • 「タブレット・色付き眼鏡で治る」
  • 「読書量が少ないから起こる」

→ ある側面は関係するが、中心的特徴ではない


■ ② 教師・保護者・臨床家の間で、“誤解の多さ”に有意差はない

驚くべきことに、

教師だから正確で、保護者は誤解が多い…

といった傾向は“統計的には存在しなかった”。

つまり、

誤解は職種や立場とは無関係に、広く共有されている問題

であることが示された。


■ ③ 誤解の背景に「研究知識のアップデートの難しさ」がある

著者らは、なぜ誤解が残るのかを考察し、

  • ディスレクシア研究分野が急速に発展し続けている
  • 過去の学説(例:視覚説、治る説)が一般向け資料に残っている
  • 情報源が多様で質がまちまち
  • エビデンスが教育現場に届きにくい

といった構造的要因が影響していると指摘。


■ ④ 今後必要なこと(論文が強調するポイント)

✔ 専門家向けの体系的な研修・更新教育の強化

教師・医療者の初期研修だけでなく、

定期・継続型の専門性アップデートが必要。

✔ エビデンスベースの情報発信の整備

誤解を招きやすい一般向け資料の改善が求められる。

✔ 誤解研究そのものの促進

誤解がどこから生じ、どのように定着するかの研究が不十分。


■ 一言まとめ

ディスレクシアについては、教師・保護者・臨床家の間に、

科学的知見と異なる“共通の誤解”が今も広く残っている。

制度的な研修・情報共有の仕組みを整え、

エビデンスに基づく正しい理解を広げることが急務である。

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