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ASD児保護者がどのように子どもの独自のアタッチメント行動を理解し、関係性を築いているか

· 6 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

本記事では、自閉スペクトラム症(ASD)に関する最新の学術研究として、親子関係と行動支援に焦点を当てた2つの研究を紹介している。1つ目は、ASD児を育てる親がどのように子どもの独自のアタッチメント行動を理解し、関係性を築いているかを質的に分析した研究で、従来のアタッチメント理論では捉えきれない多様な親子の結びつきと、親の高度な調整努力が明らかになった。2つ目は、台湾の文化・言語環境に合わせてローカライズしたソーシャルストーリー®を用い、自閉症児の問題行動を軽減した介入研究で、バイリンガル環境や文化的背景を踏まえた調整がASD支援の効果に大きく寄与することが示された。いずれも「自閉症児の行動は理解の仕方が違うだけで、適切な関わりによって豊かな関係や改善が可能である」という共通の視点を提示している。

学術研究関連アップデート

Understanding Attachment Behaviors in Parents Raising Autistic Children: An Interpretative Phenomenological Analysis

研究紹介・要約(Contemporary Family Therapy, 2025/自閉症児のアタッチメント行動を親の視点から理解する)

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを育てる親が「子どものアタッチメント行動をどのように理解し、どのように関わっているか」を深く探ることを目的とした質的研究です。米国の自閉症児を育てる10名の主要養育者に半構造化インタビューを行い、その語りを解釈的現象学分析(Interpretative Phenomenological Analysis: IPA)で整理した結果、三つのテーマが浮かび上がりました。

第一に、ASD児のアタッチメント行動は従来の理論で想定されるような「分かりやすい接近行動」とは異なるものの、親はその子特有のサインや感覚的ニーズを理解し、応答しようとする積極的な関わりを行っていること。第二に、分離・再会場面においても、ASD児は典型的な反応とは違った方法で安心を求めることがあり、親はその違いに合わせた再会の仕方を工夫していること。第三に、感覚過敏、学校や医療システムとの摩擦、社会的誤解など、家族外の要因がアタッチメントの実践に大きな影響を与えている点です。

本研究は「自閉症児はアタッチメントが弱い」という誤解を否定し、親子関係は形は違えど豊かに成立していると示しています。臨床的には、親のリフレクティブ・ペアレンティング(子どもの内面を想像しながら関わる姿勢)の支援、社会的サポートの強化、そしてアタッチメント理論そのものを神経多様性を前提に再解釈することの重要性が示唆されています。

一文要約:自閉症児のアタッチメント行動は「見え方」が違うだけで親との関係性は十分に築かれており、親は子どもの独自のニーズに合わせて関わりを工夫していることが明らかになった質的研究です。

Using Social Stories with Three Taiwanese Children Diagnosed with Autism Spectrum Disorder


研究紹介・要約(Contemporary School Psychology, 2025/台湾の自閉症児へのソーシャルストーリー介入)

この研究は、Social Stories®(ソーシャルストーリー)を台湾の文化・言語環境に合わせてローカライズし、自閉スペクトラム症(ASD)と知的障害のある幼児に適用したときの効果を検証したものです。参加したのは、教師への叫び声(授業妨害行動)が課題となっていた台湾南部の3名の幼児男子。多重ベースラインデザインを用い、それぞれの児童に対して 中国語(マンダリン)で作成した個別化ストーリーを提示し、台湾特有のバイリンガル環境(家庭では台湾語が話される地域)を考慮した表現調整を行いました。

教師はトレーニングを受けて介入を実施し、介入忠実度と観察一致率(IOA)はいずれも 88%以上と高水準。結果、3名全員で叫ぶ行動が顕著に減少し、授業中の社会的に適切な関わりが増加しました。また、ストーリー内の言語表現(マンダリンと台湾語の語感の違い)が児童の理解や反応に影響することが確認され、ASD支援では「言語的・文化的な微調整」が重要であるという示唆が得られました。

本研究は、一部の児童が同時に他の介入も受けていたなどの制限があるものの、ソーシャルストーリーは非西洋文化圏でも、言語・文化に合わせて調整すれば十分に効果を発揮できることを示す貴重な実証研究です。特に、教師の関与、個別化された内容、家庭・学校における言語状況への配慮が成功要因として強調されています。今後は、長期的維持や他場面への般化効果を含む国際比較研究が期待されます。

一文要約:台湾の自閉症児3名に文化・言語に合わせたソーシャルストーリーを用いたところ問題行動が明確に減少し、ソーシャルストーリーは非西洋・バイリンガル環境でも十分に適応可能であることが示された研究です。

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