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ASDやADHDを持つ子どもたちにおけるいじめの実態を把握するための評価方法の違い

· 21 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

本記事では、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害に関連する最新の研究を幅広く紹介しています。具体的には、AIや音楽療法を用いた介入の効果、家族や学校における支援の課題と可能性、評価方法の違いが与える影響、パンデミックが子どもたちに与えた長期的影響、性別や診断年齢による医療利用の違い、さらにはスティグマや社会的排除の実態まで、国際的かつ多角的な視点から発達障害支援の現状と今後の展望を浮き彫りにしています。

社会関連アップデート

Opinion | AI Helps Me Defeat Dyslexia

この記事「AI Helps Me Defeat Dyslexia(AIは私をディスレクシアから解放してくれた)」では、読み書き障害(ディスレクシア)を抱える筆者が、AIの登場によってどのように学び・表現の可能性を広げられたかを語っています。筆者は、AIを使うことで複雑な文章を理解しやすくなり、語彙や表現の幅も広がったと述べています。「AIは思考を奪う存在ではなく、むしろ自分の思考を初めて自由に表現する手段を与えてくれた」とし、AIを「支え」ではなく「解放者」と捉える視点が印象的な一文です。障害のある当事者による前向きな技術活用の実例として、多くの読者に示唆を与える内容です。

学術研究関連アップデート

Community-Based Treatment of Families with Adolescents with an Autism Spectrum Disorder (Level 1): Two Single Case Experimental Design Studies on the Effects of Multisystemic Therapy

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)レベル1を持ち、深刻な行動問題を抱える思春期の子どもを支援する家族に対して、「マルチシステミック・セラピー(MST)」という包括的・柔軟な家庭ベースの介入がどのような効果を持つかを検証したものです。14家族を対象に2つの単一事例実験デザイン(SCED)を用いて実施されました。

結果として、MSTを受けた家族の一部(22人中8人の親)には有意な改善が見られたものの、統計的には治療効果は限定的であり、全体的な効果は認められませんでした。Tau-Uという効果量分析では、全体的な効果はほぼゼロで、母親に対してのみ小さな効果が示されました。一方で、インタビューでは多くの家族がMSTを肯定的に捉えており、主観的な満足度と客観的な効果の間にギャップがあることも浮き彫りになりました。

このことから、MSTが必ずしもASDを持つ思春期の子どもを持つ家庭に効果的とは言い切れず、より大規模で頑健な研究が必要であると著者らは結論づけています。今後は、ASD家庭への最適な支援方法を明らかにするためのさらなる研究が求められます。

Including Students with Disabilities within School-Based Mental Health Multi-Tiered Systems of Supports

この論文は、学校におけるメンタルヘルス支援の枠組み(School-Based Mental Health Multi-Tiered Systems of Supports:SMH-MTSS)の中で、障害のある生徒の包括的な支援がいかに不足しているか、そしてどのように改善できるかを検討したレビュー論文です。

ここ数年でSMHは急速に拡大し、多くの生徒のメンタルヘルスや学業成果に好影響を与えていますが、障害を持つ生徒は支援の議論から除外されがちであり、実際にはメンタルヘルス上の問題を抱える割合が高いことが指摘されています。にもかかわらず、学校現場ではこうした生徒への対応方法が分からず、準備不足なケースが多いのが現状です。

著者らは、学校メンタルヘルスの歴史的な変遷を概観した上で、特別支援教育の視点から支援をどう統合・適応・修正すべきかを提案しています。具体的には、障害特性に応じた柔軟なサービス提供、個別支援計画(IEP)との連携、教員研修の強化、ユニバーサルデザインを活用したアプローチなどが有効だとしています。

この研究は、障害のある生徒を学校メンタルヘルス支援の中心に含めることの重要性を強調し、包括的で公平な教育・福祉支援体制の構築に向けた具体的な方策を示しています。

Different Tools, Different Results: Comparing Methods for Bullying Assessment in Autistic and ADHD Youth

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)を持つ子どもたちにおけるいじめの実態を把握するための評価方法の違いに注目したものです。これらの子どもたちは同年代からのいじめ被害を受けるリスクが高く、それが学業不振やメンタルヘルスの悪化につながることが知られていますが、従来のいじめ介入策が十分に効果を上げていない背景には「評価方法の不一致」があるのではないかという問題意識から本研究が行われました。

🔍 研究概要

  • 対象:516名の自閉症・ADHD・定型発達の子どもの保護者
  • 使用した3種類のいじめ評価法:
    1. 単一項目評価(簡易な「いじめられたか」の質問)
    2. オルヴェウスいじめ質問票(OBQ)(一般的な多項目尺度)
    3. 障害特化型いじめ体験評価(ABE)(ASDやADHD特有の被害を評価)

🧪 主な結果

  • 単一項目評価は、いじめの有病率を過小評価し、ASD・ADHD間の差も検出できませんでした。
  • OBQとABEの一致率は中程度でしたが、ASD・ADHD群では一致が弱まりました。
  • ADHDのある子どもは、一般の子どもよりも約3倍いじめられやすいと、ABE・OBQともに判定しました。
  • ASDとADHDを併せ持つ子どものリスク増加は、ABEでのみ明確に検出されました(OR=2.34)。

📌 意義と示唆

  • いじめ評価には、障害特有の視点が不可欠であることが明らかにされました。
  • 一般的な評価尺度や単一項目の質問では、ASDやADHDの子どもに特有ないじめの形態(例:感覚過敏へのからかい、社会的排除など)を見逃す可能性がある。
  • 障害特化型の理論に基づく評価法(ABE)を用いることで、より的確な把握と支援が可能になります。

この研究は、ASD・ADHDの子どもに対するいじめ支援の出発点として、「適切な評価の導入」が必要不可欠であることを強調しており、教育現場や支援機関にとって非常に実践的な示唆を与えるものです。

Longitudinal patterns of attention-deficit/hyperactivity disorder children in Shanghai, China

この研究は、中国・上海において注意欠如・多動症(ADHD)を持つ児童の感情・行動問題が、時間とともにどのように変化したかを、コロナ禍という特殊な社会的文脈の中で追跡した縦断研究です。特に、パンデミックの影響と長期的な隔離措置が、ADHDの子どもたちにどのような影響を与えたかを明らかにしようとしました。


🔍 研究の概要と手法

  • 対象:ADHDの診断を受けた児童1,102人(平均年齢9.2歳、83%が男児)
  • 期間:2022年3月〜(上海ロックダウンを含むパンデミック期)
  • 手法:縦断的イベントベースの調査(介入なし)、Generalized Additive Model による非線形変化の分析
  • 測定項目:不注意、多動・衝動、反抗挑戦、抑うつ、不安などの感情・行動問題

📈 主な結果

  • 行動面の問題(不注意・多動・行動障害)は隔離260日頃にピーク → その後一度低下するも、ロックダウン解除後に再上昇
  • 感情面の問題(不安・抑うつ)は二峰性パターン
    • 第1のピーク:パンデミック初期
    • 第2のピーク:約400日後(社会的適応ストレス増加時期)
  • 性差分析
    • 男児:多動性・反抗挑戦が有意に高い
    • 女児:行動問題は比較的低いが、感情問題では差が見られず
  • ADHDサブタイプ別
    • 不注意優勢型(ADHD-PI):感情問題が多い
    • 多動性・衝動性優勢型(ADHD-HI):行動問題が顕著

📝 結論と意義

この研究は、長期にわたるコロナ対応(特にロックダウン)がADHD児の情緒・行動問題に持続的影響を与えたことを示しています。感情・行動の悪化は一過性ではなく、社会復帰後にも長期にわたり残存していた点が重要です。したがって、時期ごとのリスクを見極めた柔軟かつ個別化された支援の必要性が強調されました。


この知見は、今後の公衆衛生危機時におけるADHD支援体制の設計や、学校・医療現場における継続的支援の枠組み作りにおいて、実践的な指針となる内容です。

Male and Female Healthcare Trajectories in Autism: Are There Any Differences Considering Age at Diagnosis and Intellectual or Developmental Disabilities Status?

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)と診断された後2年間の医療利用の軌跡(ヘルスケア・トラジェクトリー:HCT)を、性別・診断年齢・知的または発達障害(IDD)の有無によって比較した、カナダ・ケベック州の大規模な後ろ向きコホート研究です。


🔍 研究の概要

  • 対象者数:5,289人(うち76.6%が男性、26.3%が成人診断)
  • 期間:2012年4月〜2015年3月に初めて医師からASDと診断された人
  • 分析方法:診断後2年間の医療データをもとに、性別・診断年齢(子ども/成人)・IDDの有無で層別し、状態遷移列分析(State Sequence Analysis) を用いて、医療機関の種類、診療科、受診理由などを追跡

🧩 主な発見

  1. 全体傾向
    • 医療利用は診断後2年間でわずかに減少
    • しかし、女性の方が医療利用の強度(intensity)は高い傾向が見られた。
  2. 性別の違い
    • 性差はIDDの有無と診断年齢に強く依存
    • 成人診断かつIDDありの群では、男女差は目立たなかった
    • 一方で、精神疾患に関連する受診パターンには男女で明確な違いがあった。
  3. 診断年齢・IDD別の特徴
    • 子ども期に診断された女性は、男性よりも入院日数が約2倍に。
    • 子ども期診断かつIDDのない男性、または成人診断かつIDDのない男性は、身体的疾患の受診が少なかった

📝 結論と意義

  • 精神・身体両面のケアは、子ども期には外来中心で比較的うまく管理されているが、
  • 成人期に診断された人(特に女性やIDDを併発する人)では入院率が高く、継続的なケアの不足や予防可能な入院のリスクが示唆された。
  • よって、性別・診断年齢・IDDの有無に応じた個別対応や、医療の継続性の確保が重要であると提言されています。

この研究は、ASD診断後の医療支援体制を見直す上で、特に成人期診断者と女性に対する包括的な支援の必要性を示す貴重なデータを提供しています。

Screening for developmental delay at 18 months using the Infant Toddler Checklist: A validation study

この研究は、18か月健診で使用される「Infant Toddler Checklist(ITC)」が、発達遅延の早期発見に有効かどうかを検証したバリデーション研究です。対象はカナダ・トロントのプライマリケアを受診した平均的なリスクの乳幼児1,460人で、ITCのスクリーニング結果とその後の医療利用(特に神経発達相談)との関連を長期にわたって追跡しました。


🧪 研究概要

  • 対象:平均18か月時点でITCを実施した乳幼児1,460人
  • 追跡期間:平均8年間
  • 主な評価指標:神経発達相談を受けたかどうか(医師の診療報酬コードをもとに判断)

📊 主な結果

  • ITC陽性(発達遅延の疑い)と判定された子どもは11%

  • 実際に神経発達相談を受けたのは全体の2.6%

  • ITCの診断特性(神経発達相談を基準とした場合):

    • 感度(見逃しを防ぐ力):40%(低い)
    • 特異度(誤判定を避ける力):90%(高い)
    • 偽陽性率:10%
  • ITC陽性児は、神経発達相談を含む7つの医療利用のうち6つで利用率が有意に高かった

    (例:神経発達相談の調整リスク比 aRR = 2.78, p = 0.005)


📝 結論

  • ITCは特異度が高く、誤って「問題あり」とされるケースが少ないため、不要な不安や医療資源の浪費を避けるのに有効。
  • しかし、感度が低いため、「問題なし」とされた子どもの中にも後に問題が現れるケースがある
  • よって、ITC単体でのスクリーニングに依存せず、継続的な発達観察(サーベイランス)が重要であると指摘しています。

この研究は、ITCが発達遅延の「除外」に有用である一方、「発見」に関しては補完的な観察が必要であることを明らかにしており、小児健診の現場でのスクリーニング戦略設計に重要な示唆を与えています。

Knowledge and stigma of autism spectrum disorders in Chinese university students in the context of inclusive education

この研究は、中国の大学生を対象に、自閉スペクトラム症(ASD)に関する知識とスティグマ(偏見・差別意識)との関連を調査したものです。全国25の省から2,081人の学生がオンライン調査に参加し、**中国語版のAutism Stigma and Knowledge Questionnaire(ASK-Q)**を用いて評価が行われました。


🔍 主な発見

  • ASDの知識が高く、スティグマが低かった学生の特徴
    • 女性
    • 学年が上の学生
    • 教員養成課程の学生(特に特別支援教育専攻)
    • インクルーシブ教育(共生教育)関連の授業を履修した学生
    • 自閉症の人と接した経験がある学生
  • スティグマの軽減に関連する要因としては、実際の接触経験と教育を通じた知識の獲得が鍵となっていました。

📘 結論と示唆

この研究は、大学教育におけるASDに関する正しい知識の普及と質の高い交流の機会の提供が、スティグマの軽減に有効であることを示しています。今後のインクルーシブ教育の進展においては、特別支援教育に限らず一般教育課程においても神経多様性への理解を深める内容を取り入れることが重要とされ、将来の教育者の養成においても実践的な対応力を育む視点が求められると結論づけています。

Motor Affordances of Children with Autism Spectrum Disorder in Southern Brazil

この研究は、ブラジル南部に住む6〜9歳の自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちが日常生活の中でどれだけ運動の機会(モーター・アフォーダンス)を得ているかを調査したものです。研究者たちは、ASDの子どもは定型発達の子どもに比べて運動の機会が少なく、特に保護者の学歴や家庭の社会経済的地位が低い場合に、その傾向が顕著になると仮定して調査を行いました。


🔍 研究概要と方法

  • 対象:ASDと診断された男女52名の子どもの保護者
  • 使用尺度:
    • Childhood Autism Assessment Scale:ASDの重症度評価
    • AMBS(Affordances for Motor Behavior of Schoolchildren):主な生活環境での運動機会の評価
  • 分析手法:単変量・多変量分析およびロジスティック回帰モデル

📊 主な結果

  • ASDの子どもは、運動刺激の機会が全体的に少ないことが明らかになりました。
  • 家庭の収入が低い場合、その傾向はより強くなることが多変量分析で示されました。
  • 家庭内にある玩具や教材の多くが、粗大運動(体全体を使った動き)を促すものではないことも指摘されました。
  • その結果、座りがちで運動不足になりやすい生活習慣が形成されやすいリスクがあるとされています。

✅ 結論と示唆

この研究は、ASDの子どもが日常的にどのような運動機会を持っているかを可視化し、それに応じた支援戦略を個別に設計する必要があることを示しています。特に、家庭の経済状況や保護者の理解が運動環境に大きく影響することから、家庭支援や地域支援の介入ポイントとして「運動のアフォーダンス向上」が重要であると結論づけています。

Masked-Speech Recognition and Self-Reported Functional Listening in Autistic Young Adults

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の若年成人が、**雑音の多い環境での音声理解(マスクドスピーチ認識)**にどのような困難を抱えているかを明らかにしたものです。ASDのある人は、**社会的コミュニケーションや参加に関連する場面での「聞き取りにくさ」**をよく報告しますが、実験的にその能力を評価した研究は限られていました。


🔍 研究の目的と方法

  • 対象:正常な聴力をもつASDの若年成人20名と非ASDの対照群20名
  • 評価内容
    • 雑音環境下での音声認識能力(speech-in-speech / speech-in-noise)
    • 実生活での聞き取り困難さ(functional listening)と聞き取りによる疲労(listening-related fatigue)
    • ASD特性と社会的コミュニケーション経験

📊 主な結果

  • ASD群は「他人の声が重なった状況(speech-in-speech)」での聞き取り能力が有意に低かったが、環境音ベースの雑音(speech-in-noise)では差がみられませんでした。
  • ASD群は、日常生活での聞き取り困難や疲労感が高いと自己報告していました。
  • これらの困難さは、ASD特性や社会的コミュニケーションスコアと強く相関していました。
  • ASDに限らず、ASD特性が強い人ほど機能的な聞き取りに困難を感じる傾向がありました。

✅ 結論と示唆

この研究は、ASDの若年成人が「声の重なり」の中での会話理解に特に困難を感じやすいことを示し、こうした困難が社会的なやりとりや疲労感の増加に直結している可能性を示唆しています。今後は、ASDのある人が抱える「聞き取りの違い」への社会的理解や支援の重要性が高まることが期待されます。

Frontiers | Implementation of generative AI for the assessment and treatment of autism spectrum disorders: a scoping review

この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)の評価・診断・支援における生成AI(GenAI)の応用状況を体系的に整理したスコーピングレビューです。臨床専門家に依存していた従来の支援体制に対し、GenAIの導入が効率性やパーソナライズの向上につながる可能性がある一方で、技術的・倫理的な課題も指摘されています。


🔍 概要と方法

  • 対象データベース:Embase、PsycINFO、PubMed、Scopus、Web of Science
  • 検索期間:2014年1月〜2025年2月
  • 対象:GenAIがASDのスクリーニング、診断、介入に使われた研究(10件が最終的に選定)

📊 主な応用分野と技術

  1. スクリーニング・診断
    • トランスフォーマー系の分類器
    • GAN(敵対的生成ネットワーク)によるデータ拡張
  2. 評価・介入
    • マルチモーダルな感情認識とフィードバックシステム
  3. 保護者支援
    • 大規模言語モデル(LLM)を活用したチャットボット

⚠️ 課題と限界

  • サンプルサイズの小ささ
  • データバイアスの存在
  • 妥当性検証の不足
  • 「幻覚(hallucination)」のリスク(生成AIが事実と異なる情報を出力)

✅ 結論と意義

本レビューは以下を明らかにしました:

  • ASDケアにおけるGenAIの活用範囲の地図化
  • 従来技術との比較と差異
  • 研究上・倫理上の課題の洗い出し
  • 今後の研究の方向性の提案

特に、ASDにおけるGenAIの臨床的応用には、倫理性・透明性・検証の確立が不可欠であることが強調されています。今後は、より標準化された評価指標と大規模な実証研究が求められます。

Frontiers | Effect of music therapy on children with autism spectrum disorders in the Chinese population: A systematic review and meta-analysis

この論文は、中国の自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを対象とした音楽療法(Music Therapy: MT)の有効性を評価したシステマティックレビューおよびメタアナリシスです。PRISMAガイドラインに基づき、PubMed、Web of Science、CNKI、万方など5つのデータベースから2024年9月までに公表された23件の研究を分析しています。


✅ 主な結果と効果の大きさ(標準化平均差 SMD)

音楽療法は以下の点で統計的に有意な改善効果を示しました:

  • 総合評価の改善
    • ATECスコア:SMD = -2.52
    • ABCスコア:SMD = -1.07
    • CARSスコア:SMD = -1.50
  • 個別スキルの改善
    • コミュニケーション能力:SMD = -1.10
    • 社会的相互作用スキル:SMD = -1.69
    • 言語能力:SMD = -1.15
    • 認知機能:SMD = -1.80

※SMDが負の値であるのは、スコアが低いほど症状が改善していることを意味します。


💡 意義と結論

この研究は、音楽療法がASDの子どもたちの社会的・言語的・認知的発達を幅広く促進する有効な介入手段であることを示しています。特に中国の臨床現場における科学的根拠として貢献し、音楽療法の導入や活用の後押しとなる可能性があります。


📝 補足

  • 使用された評価指標(ATEC, ABC, CARS)はすべてASDの重症度や行動特徴を評価する標準的ツールです。
  • 分析はStata 16.0で実施され、95%信頼区間付きで結果が提示されています。
  • すべての効果量でp < 0.001の高い有意性が確認されました。

このように、本研究は中国におけるASD支援においてエビデンスに基づいた音楽療法の有効性を明確に示した重要な成果と言えるでしょう。