ASD診断における説明可能AI(XAI)の活用
このブログ記事は、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD、知的障害に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しており、主に以下のようなテーマが取り上げられています:自然由来物質(プランバギンやCBD)を用いたASD症状の改善効果、当事者視点からの反復行動の再評価、拡大家族の支援の実態、腸内環境や微量アミンを通じたASDの新たな治療ターゲット、笑われることへの恐怖(gelotophobia)やSNS依存と孤独感の関係、プロテオミクスによる知的障害の分子解析、ASD診断における説明可能AI(XAI)の活用、名称変更における当事者と専門家の力関係など、発達障害をめぐる支援・理解・診断・介入の最前線を多角的に伝える内容となっています。
学術研究関連アップデート
Plumbagin Alleviates Social Behavior Deficits in a Valproic Acid Model of Autism by Reducing Glial Activation and Oxidative Stress in the Cerebellum
プランバギンが自閉スペクトラム症モデルの社会性障害を改善:小脳の炎症と酸化ストレスを軽減
この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)モデルのラットにおいて、天然成分「プランバギン(PLB)」が社会性の問題を改善し、脳(特に小脳)における炎症や酸化ストレスを軽減する効果を調べたものです。
🔬研究の概要
- モデルの作成: 妊娠中のラットに**バルプロ酸(VPA)**を投与し、ASD様の行動を示す子どもラットを作成
- 介入: 生後7〜35日まで、PLBを3段階の用量(0.25, 0.5, 1 mg/kg)で経口投与
- 評価方法:
- 3部屋テストで社会性行動を評価
- 小脳の組織観察(H&E染色)
- グリア細胞(アストロサイト・ミクログリア)の活性化を免疫染色で確認
- 炎症・抗酸化・神経保護に関わる遺伝子発現の変化をqRT-PCRで測定
✅主な結果
- PLB投与によって社会性の障害(対人交流の少なさなど)が大幅に改善
- 小脳でのプルキンエ細胞(運動・認知に関与する神経細胞)の減少が抑えられた
- 活性化したグリア細胞(=炎症マーカー)の数も減少
- 遺伝子レベルでは:
- *抗酸化・神経保護関連遺伝子(Nrf2, HO-1, BDNF, SIRT1, TGF-β1)**が上昇
- 炎症性サイトカイン(IL-6)の発現が低下
💡総括
この研究は、天然化合物「プランバギン」が自閉スペクトラム症の症状を改善する可能性があることを、動物実験で示唆しています。特に、小脳における炎症と酸化ストレスの抑制が、社会的行動の改善につながるという新たな視点を提供しており、今後の自然派治療や補助療法の開発に向けた貴重な知見です。
Expanded Descriptions of Autistic Repetitive Behaviours: a Constructivist Grounded Theory Review Exploring the Perspectives of Autistic Young People and Other Stakeholders
自閉スペクトラム症の反復行動を当事者視点から再定義:臨床基準だけでは捉えきれない意味と価値
このレビュー論文は、自閉スペクトラム症(ASD)の特徴の一つである**反復的・制限的行動(RRBs)**について、当事者や家族、支援者の視点からその意味と役割を再評価したものです。従来の診断基準では捉えきれない個別性や主観的体験に注目し、構成主義的グラウンデッド・セオリーの手法を用いて分析されています。
🔍研究の背景と目的
- ASDの診断では、「反復的・儀式的な行動」が重要な指標とされているが、具体的な行動例や当事者の意味づけが不十分
- このレビューは、若い当事者・家族・専門家の語りを通じて、反復行動の本質的な理解を深めることを目的としている
💬主な発見
- 反復行動は単なる「問題」ではなく、多くの場合:
- 不安をやわらげるコーピング手段
- 社会的・感覚的・認知的負荷から解放される「安心できる時間」
- 行動の「目立ち方」「過剰さ」「柔軟性のなさ」は、環境のストレスや要求に対する反応である
- 臨床的診断基準だけでは、個々の行動の意味や価値は見逃されやすい
🧩意義と提案
- 当事者視点の反復行動の再定義を提示
- 診断・支援において、行動の「なぜそうするのか」に耳を傾ける重要性を強調
- 「正常/異常」という分類ではなく、状況に応じた反応・自己調整の一形態として理解する枠組みの必要性を示唆
✅総括
この研究は、自閉スペクトラム症における反復行動を、一律な診断基準で測るのではなく、当事者がどのようにそれを経験し、どのような意味を持たせているかを重視すべきだと提言しています。**反復行動は「問題行動」ではなく、「適応行動」であり、「安心の時間」である場合もある」**という視点は、教育・医療・福祉の支援において非常に重要な示唆となります。