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ASD診断における説明可能AI(XAI)の活用

· 36 min read
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事は、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD、知的障害に関連する最新の学術研究を幅広く紹介しており、主に以下のようなテーマが取り上げられています:自然由来物質(プランバギンやCBD)を用いたASD症状の改善効果、当事者視点からの反復行動の再評価、拡大家族の支援の実態、腸内環境や微量アミンを通じたASDの新たな治療ターゲット、笑われることへの恐怖(gelotophobia)やSNS依存と孤独感の関係、プロテオミクスによる知的障害の分子解析、ASD診断における説明可能AI(XAI)の活用、名称変更における当事者と専門家の力関係など、発達障害をめぐる支援・理解・診断・介入の最前線を多角的に伝える内容となっています。

学術研究関連アップデート

Plumbagin Alleviates Social Behavior Deficits in a Valproic Acid Model of Autism by Reducing Glial Activation and Oxidative Stress in the Cerebellum

プランバギンが自閉スペクトラム症モデルの社会性障害を改善:小脳の炎症と酸化ストレスを軽減

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)モデルのラットにおいて、天然成分「プランバギン(PLB)」が社会性の問題を改善し、脳(特に小脳)における炎症や酸化ストレスを軽減する効果を調べたものです。


🔬研究の概要

  • モデルの作成: 妊娠中のラットに**バルプロ酸(VPA)**を投与し、ASD様の行動を示す子どもラットを作成
  • 介入: 生後7〜35日まで、PLBを3段階の用量(0.25, 0.5, 1 mg/kg)で経口投与
  • 評価方法:
    • 3部屋テストで社会性行動を評価
    • 小脳の組織観察(H&E染色)
    • グリア細胞(アストロサイト・ミクログリア)の活性化を免疫染色で確認
    • 炎症・抗酸化・神経保護に関わる遺伝子発現の変化をqRT-PCRで測定

✅主な結果

  • PLB投与によって社会性の障害(対人交流の少なさなど)が大幅に改善
  • 小脳でのプルキンエ細胞(運動・認知に関与する神経細胞)の減少が抑えられた
  • 活性化したグリア細胞(=炎症マーカー)の数も減少
  • 遺伝子レベルでは:
    • *抗酸化・神経保護関連遺伝子(Nrf2, HO-1, BDNF, SIRT1, TGF-β1)**が上昇
    • 炎症性サイトカイン(IL-6)の発現が低下

💡総括

この研究は、天然化合物「プランバギン」が自閉スペクトラム症の症状を改善する可能性があることを、動物実験で示唆しています。特に、小脳における炎症と酸化ストレスの抑制が、社会的行動の改善につながるという新たな視点を提供しており、今後の自然派治療や補助療法の開発に向けた貴重な知見です。

Expanded Descriptions of Autistic Repetitive Behaviours: a Constructivist Grounded Theory Review Exploring the Perspectives of Autistic Young People and Other Stakeholders

自閉スペクトラム症の反復行動を当事者視点から再定義:臨床基準だけでは捉えきれない意味と価値

このレビュー論文は、自閉スペクトラム症(ASD)の特徴の一つである**反復的・制限的行動(RRBs)**について、当事者や家族、支援者の視点からその意味と役割を再評価したものです。従来の診断基準では捉えきれない個別性や主観的体験に注目し、構成主義的グラウンデッド・セオリーの手法を用いて分析されています。


🔍研究の背景と目的

  • ASDの診断では、「反復的・儀式的な行動」が重要な指標とされているが、具体的な行動例や当事者の意味づけが不十分
  • このレビューは、若い当事者・家族・専門家の語りを通じて、反復行動の本質的な理解を深めることを目的としている

💬主な発見

  • 反復行動は単なる「問題」ではなく、多くの場合
    • 不安をやわらげるコーピング手段
    • 社会的・感覚的・認知的負荷から解放される「安心できる時間」
  • 行動の「目立ち方」「過剰さ」「柔軟性のなさ」は、環境のストレスや要求に対する反応である
  • 臨床的診断基準だけでは、個々の行動の意味や価値は見逃されやすい

🧩意義と提案

  • 当事者視点の反復行動の再定義を提示
  • 診断・支援において、行動の「なぜそうするのか」に耳を傾ける重要性を強調
  • 「正常/異常」という分類ではなく、状況に応じた反応・自己調整の一形態として理解する枠組みの必要性を示唆

✅総括

この研究は、自閉スペクトラム症における反復行動を、一律な診断基準で測るのではなく、当事者がどのようにそれを経験し、どのような意味を持たせているかを重視すべきだと提言しています。**反復行動は「問題行動」ではなく、「適応行動」であり、「安心の時間」である場合もある」**という視点は、教育・医療・福祉の支援において非常に重要な示唆となります。

The Role of Extended Family Members in the Lives of Autistic Individuals and Their Parents: A Systematic Review and Meta-Synthesis

自閉スペクトラム症の家庭における「拡大家族」の役割:支援の可能性と課題を整理するレビュー研究

この系統的レビューは、祖父母・叔父叔母・いとこなどの「拡大家族」が、自閉スペクトラム症(ASD)のある人とその親に対して果たしている役割について、過去の定性的研究を統合・分析したものです。家族支援政策では見落とされがちな拡大家族の貢献や課題を可視化し、今後の臨床・制度的支援のあり方を示しています。


🔍レビューの概要

  • 対象研究: 定性的研究40本+混合研究2本(合計42本)
  • 参加者データ: 親1,048名、祖父母2,140名(叔父・叔母・いとこは語りの中でのみ登場)
  • 分析手法: テンプレート分析(テーマに基づく定性的統合)

🧩抽出された3つの主要テーマ

  1. 支援のかたち(positive roles)
    • 情緒的支援(気持ちの支え)
    • 経済的支援
    • 実務的支援(送迎、世話など)
    • 情報的支援(情報共有、相談相手)
  2. 支援の不足・困難(negative or lacking roles)
    • 自閉症に対する無理解
    • ケアの協力が得られない
    • 当事者や親への偏見・否定的態度
  3. 関与を左右する要因
    • 個人の知識や価値観
    • 核家族との関係性や力動
    • 時間をかけた「受容」へのプロセス
    • 文化的背景(家族間の相互依存や“家の名誉”に重きを置く文化では、支援が厚い一方で偏見も根強い)

💡重要な知見と示唆

  • 家族システム理論の視点から、ASDの子を育てる家族は核家族だけではなく拡大家族全体を巻き込んだ支援モデルが必要
  • 特に文化によって支援のあり方が大きく異なり、文化に配慮したアプローチ設計が不可欠
  • 拡大家族との関係を強化する支援(教育・対話の場など)の開発が、介護者の孤立防止やASD当事者の包摂に寄与する可能性

✅総括

このレビューは、自閉症支援における拡大家族の果たしうる多面的な役割と、そこにある現実的な葛藤や文化的ハードルを明らかにし、今後の介入プログラムや臨床実践において家族全体を視野に入れた支援が必要であると提言しています。社会的孤立を防ぎ、多様な支援の可能性を広げる上で、極めて重要な示唆を含む研究です。

Modulating autism spectrum disorder pathophysiology using a trace amine-focused approach: targeting the gut - Molecular Medicine

自閉スペクトラム症の病態に「微量アミン」を介した腸からのアプローチを提案:腸脳相関と神経機能の新たな治療ターゲット

このレビュー論文は、自閉スペクトラム症(ASD)における腸と脳の関係(腸脳相関)に注目し、特に「微量アミン(trace amines)」という神経伝達物質様の物質に着目した新たな治療アプローチを提案しています。


🧠背景:ASDと腸の関係

  • ASDは人口の約1%に影響を及ぼし、**不安症状や消化器トラブル(便秘・過敏性腸症候群など)**を伴うことが多い
  • 既存の治療は神経症状に偏りがちで、腸の健康は十分に考慮されていない
  • さらに、多くの精神薬は腸内環境や腸-脳のバランスをむしろ悪化させることがある

💡微量アミンとは?

  • 脳内で微量に作られる神経調節物質様の物質
  • しかし実は、腸内細菌(マイクロバイオーム)が大量に生成することが知られている
  • 微量アミンは、体内の調節システムの安定性(ホメオスタシス)を保つ上で中心的な役割を持つ

🔍本論文の主張と提案

  1. ASDではこの「微量アミン系」が乱れている可能性が高い
  2. 腸内環境の改善というと通常「菌の種類(構成)を整える」ことに注目されがちだが、
    • 本質的には「機能(=微量アミンの産生やシグナル伝達)」の異常を整えることが重要
  3. 治療ターゲットとしては:
    • 微量アミンの受容体活性や分解酵素などの分子機構

    • 腸内での産生と脳への影響の全体像

      を統合的に捉える必要がある


🧪将来的な展望と研究課題

  • 微量アミンに関連した新薬の開発や既存薬の再活用(ドラッグ・リポジショニング)
  • 腸脳軸における微量アミンの役割に関する基礎研究の充実
  • ASD治療において腸を起点とした神経機能の調整戦略の構築

✅総括

この論文は、ASDにおける「腸の機能的異常」と「微量アミンのシグナル異常」に着目し、従来の脳中心のアプローチとは異なる、新しい治療戦略の必要性を提唱しています。腸内環境の“構成”ではなく“機能”に焦点を当てた視点は、今後のASD治療の重要な方向性となる可能性があります。

Gelotophobia in adults with and without autism spectrum disorder

大人の自閉スペクトラム症と「笑われることへの恐怖(Gelotophobia)」:感情調整や性格特性との関連を検証

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)のある成人と定型発達の成人を比較し、**「笑われることへの恐怖(Gelotophobia)」**がどの程度見られるのか、またそれに関係する心理的要因(愛着、感情調整、社会的機能、外向性)を調べたものです。


😟Gelotophobiaとは?

  • 他人に笑われることを強く恐れる心理状態
  • 単なる恥ずかしがり屋とは異なり、軽度〜極度までの不安感や回避行動を伴う場合がある

🔬研究の概要

  • 対象者:
    • ASD成人:230名
    • 定型発達(NT)成人:272名
  • 使用された質問票:
    • GELOPH(15)(笑われる恐怖の測定)
    • 自閉傾向(Autism Spectrum Quotient)
    • 親・友人との愛着(Inventory of Parent and Peer Attachment)
    • 感情調整(Emotion Regulation Questionnaire)
    • 社会的機能(Social Functioning Questionnaire)
    • 性格(NEO-FFI-3:特に外向性)

📊主な結果

  • 笑われる恐怖が閾値を超えていた割合:
    • ASD群:72.2%
    • 定型群:25%
  • Gelotophobiaに関係する要因(両群共通):
    • 愛着の質(特に友人との関係)
    • 感情調整の困難
    • 外向性の低さ
  • 一方で、社会的機能(客観的な日常生活能力)はGelotophobiaと有意な関連なし

💡総括と意義

この研究は、ASDのある成人が「笑われること」に対して非常に高い不安や恐怖を抱く傾向があることを明確に示しました。また、その背景には対人関係の不安定さ、感情調整の難しさ、内向的性格などが影響している可能性が示唆されました。

今後、ASDの心理的支援においては、社会スキル訓練や外部からの支援だけでなく、「自己肯定感」や「感情調整スキル」を育む介入が、笑われることへの過度な恐怖の軽減に繋がる可能性があります。

Exploring Proteomic Alterations in Intellectual Disability: Insights from Hyperlipidemia and Hyperphosphatasia Subgroups

知的障害における「タンパク質の変化」から病態を探る:高脂血症・高アルカリホスファターゼ血症サブグループの解析からの示唆

この研究は、**知的障害(Intellectual Disability: ID)**のある人々のうち、高脂血症(HLD)および高アルカリホスファターゼ血症(HPP)という血液の異常な特徴を持つサブグループに注目し、血液中のタンパク質の変化(プロテオーム)を分析することで、神経発達障害(NDD)の分子メカニズムの解明を目指したものです。


🔬 研究概要

  • 対象者: 800名(ID患者と健常者)
    • うち、特徴的な血液プロフィールを持つ105名のID患者を抽出:
      • ID-HLD(高脂血症型):77名
      • ID-HPP(高アルカリホスファターゼ血症型):28名
    • 比較群として健常者(HC)65名
  • 手法: nLC-MS/MS(質量分析)によるラベルフリー定量プロテオミクス分析

🧬 主な発見

  • 同定されたタンパク質数: 全体で354種
  • 差異のあるタンパク質数(健常者との比較):
    • ID-HPP群:28種(うち9種はこの群だけに特有)
    • ID-HLD群:85種(うち66種はこの群だけに特有)
    • 共通するタンパク質:19種

🧠 経路解析の結果(Pathway Analysis)

  • 共通して乱れていた経路:
    • 補体系(immune complement system)
    • リポタンパク質代謝
  • 群ごとの特徴的な経路の乱れ:
    • ID-HPP: Toll様受容体シグナル、インテグリンシグナル(炎症・細胞接着に関与)
    • ID-HLD: 血液凝固関連(止血経路)の異常

✅ 総括

この研究は、知的障害を伴う子どもたちの中にも生化学的に異なるサブタイプが存在することを示し、それぞれで血中タンパク質と関係する生体経路の異常が異なるという重要な知見を明らかにしました。特に、免疫・代謝・炎症応答などの経路が関与していることが示唆されており、将来的に個別化医療や早期介入に向けたバイオマーカーの探索に貢献する研究といえます。

Application of Explainable Artificial Intelligence in Autism Spectrum Disorder Detection

自閉スペクトラム症(ASD)診断における「説明可能AI(XAI)」の活用:信頼性と臨床応用への道筋

このレビュー論文は、自閉スペクトラム症(ASD)の診断支援に使われる人工知能(AI)モデルのうち、**「説明可能性(Explainability)」を持つAI=XAI(eXplainable AI)**に焦点を当て、その現状と今後の課題・可能性を包括的に整理したものです。


🤖背景:なぜXAIが必要か?

  • 機械学習(ML)や深層学習(DL)モデルは、ASDの高精度な診断を可能にする技術として注目されています。
  • しかし、こうしたAIモデルはしばしば**「なぜその判断に至ったのか」が分からないブラックボックス**であり、臨床現場での導入には信頼性の課題がありました。
  • そこで、モデルの予測根拠を説明可能にするXAIの活用が重要となっています。

📚レビューの内容と方法

  • 対象文献: PRISMA(系統的レビューの国際基準)に基づき、IEEE、PubMed、Springer、ScienceDirect、ACMから収集
  • 分析対象: 初期検索1,551本から、最終的にXAIとASD診断に関する38本の研究を選定
  • 評価項目:
    • 6種類の入力データ(例:画像・行動データなど)
    • 20種の分類アルゴリズム(AIモデル)
    • 5種のXAIフレームワーク(例:SHAP、LIMEなど)

🔍主な知見

  • XAIは、AI診断モデルの透明性や信頼性を大幅に高める効果がある
  • 一部のXAI手法は、医師や研究者が「なぜその診断になったのか」を直感的に理解できる説明を提供
  • しかし、**説明性と予測精度のトレードオフ(片方を重視するともう片方が犠牲になる)**という課題も

🔮今後の展望と課題

  • XAIのさらなる臨床応用には、「見やすく、使いやすい説明方法」の開発が必要
  • 精度と説明性のバランスをどう取るかが、今後の研究のカギ
  • 個別のAIモデルに最適なXAI手法の選定と評価基準の確立が求められる

✅総括

このレビューは、AIによるASD診断支援を臨床現場で実用化するために、XAIが不可欠な要素であることを明確に示しています。「なぜそう診断したのか」を説明できるAIは、医療従事者の信頼を得やすく、診断の精度と納得感を両立させる可能性を秘めています。今後は、XAIの設計・評価手法の洗練によって、より広範な導入が期待されます。

Multiple Hypovitaminoses Presenting as Optic Disc Swelling in a Child with Autism Spectrum Disorder and Restrictive Eating

自閉スペクトラム症のある子どもに見られた「多重ビタミン欠乏」と視神経の腫れ:偏食による深刻な影響に注意

この症例報告は、**自閉スペクトラム症(ASD)回避・制限性食物摂取症(ARFID)**をもつ6歳男児が、**視神経乳頭浮腫(optic disc swelling)**や視力低下、目の乾燥症状(xerophthalmia)などの眼の異常とともに、ビタミンA・B1・鉄の欠乏を呈していた事例を紹介しています。


🧠ポイントの整理

  • 視神経乳頭浮腫(視神経の腫れ)は、通常はビタミンAの過剰摂取で見られますが、今回は逆にビタミンAの欠乏が原因でした。
  • 子どもは極端な偏食(主にARFIDに起因)により、複数の栄養素が欠乏していました。
  • *行動上の問題(情緒の不安定さなど)**が、検査や治療を難しくする要因となりました。

⚠️なぜ重要か?

  • ASDのある子どもには、偏食傾向や食に対する感覚過敏があるケースが多く、栄養欠乏が見逃されやすいという背景があります。
  • 栄養不足が視覚障害や神経症状など深刻な問題につながる可能性があるため、早期の気づきと介入が極めて重要です。

✅まとめ

この報告は、**ASD+ARFIDの子どもにおける多重ビタミン欠乏の重篤な影響(特に視覚機能)**に警鐘を鳴らすものです。臨床の現場では、視神経の異常が見られたとき、ビタミン不足も鑑別診断として考慮すべきであり、行動上の困難がある子どもにも適切な評価・介入を行う体制づくりが求められます。

A systematic review of digital activity schedule use in individuals with autism spectrum disorder and intellectual disability

自閉スペクトラム症・知的障害のある人への「デジタル活動スケジュール」の効果に関する系統的レビュー

この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)または**知的障害(ID)**のある人々に対して、**デジタルで提示される活動スケジュール(例:タブレットやスマホの画面上の手順表示)がどのような効果をもたらすかを調べた系統的レビュー(systematic review)**です。


🔍研究の内容

  • 対象: デジタル形式の活動スケジュールを使った介入研究(視覚的な一斉提示や単一課題の手順分析は除外)
  • 参加者: ASDまたはIDのある計58人、17の研究が分析対象に
  • 対象スキル: 余暇活動、自立生活スキル、学習スキルなど

✅主な発見

  • 実施の多くは幼児期対象であり、余暇活動の習得支援に重点が置かれていた
  • 多くの介入では、他の支援方法(例:言語支援や身体的サポートなど)と併用されていた
  • *導入手順の正確さ(実施忠実度)**についての報告が82%に見られた
  • 研究の質の観点では、41%が「What Works Clearinghouse(教育介入の評価指標)」の基準を満たしていた

💡今後の課題と提言

  • 研究対象が乳幼児に偏っており、思春期や成人期での活用が不足
  • 自立生活スキルの訓練や中等教育以降の応用に関する研究が必要
  • *研究方法の質向上(対照群の設定、データの一貫性など)**も今後の課題

🧩まとめ

このレビューは、デジタル活動スケジュールがASD・知的障害のある人々の自立支援に有望であることを示しつつも、対象年齢層や研究の質に偏りがあることを指摘しています。今後は、思春期以降の生活支援や教育現場での活用に向けた、より実用的かつ信頼性の高い研究が求められています。

この研究は、ADHD(注意欠如・多動症)と自閉スペクトラム症(ASD)に関するSNS上の議論の変化を明らかにすることを目的とし、2012年〜2022年のRedditデータを用いて、両者がどのように結びついて語られるようになったかを分析しています。


🔍 主な内容と結果

  • *ADHD関連のサブレディット(r/ADHD)ASD関連のサブレディット(r/autism)**における投稿を分析。
  • 特に、r/ADHDで「autism(自閉症)」という語が言及される頻度が2021年に急増し、他の精神疾患(OCDや双極性障害など)を上回った。
  • 同様に、r/autismでもADHDの言及が年々増加。
  • 両コミュニティのユーザー重複数も2020年以降大幅に増加
  • 単語の意味的な関連性を評価した結果、ADHDとASDは2019年以降、他の疾患よりも意味的に近接して扱われるようになった
  • テーマ別分析(BERTによるトピックモデリング)では、成人の診断経験、対人関係の困難、診断アクセスの課題など、ADHDとASDの議論内容が共通化してきたことが明らかになった。

💡 意義

この研究は、SNS上でのADHDとASDの語られ方がここ数年で大きく近づいていることを示し、**診断学的な枠組みとは異なる「社会的理解の変化」**が起きていることを浮き彫りにしています。特に、大人の当事者同士の経験共有や共感的議論が共通テーマとなっている点が特徴的です。


🧩 まとめ

SNSではADHDとASDの境界が曖昧になりつつあり、「診断」よりも「経験」に基づいた理解が進んでいる——この研究は、そうした変化の実態をデータで裏付けるものであり、今後の精神医療や支援の在り方を考えるうえでも示唆に富んでいます。

The relationship between autistic traits, social media addiction, and loneliness in adolescents with ADHD

この研究は、**ADHDのある思春期の若者(14〜18歳)**において、自閉スペクトラム的傾向(自閉傾向)・SNS依存・孤独感の関係性を明らかにすることを目的としています。ADHD群50名と健康な対照群40名を対象に調査が行われました。


🔍 主な発見

  • ADHDのある若者は、自閉傾向(社会的スキル、コミュニケーション、想像力、注意の切り替えなど)が、対照群より有意に高いスコアを示しました。
  • また、SNS依存傾向(Social Media Disorder Scale)と孤独感(UCLA Loneliness Scale)も、ADHD群で有意に高くなっていました。
  • ADHD群においては、自閉傾向とSNS依存、孤独感の間に正の相関があり、「孤独感」がSNS依存のリスク要因となっていることが示唆されました。

💡 意義とまとめ

この研究は、ADHDを持つ思春期の若者が自閉的傾向による社会的困難を抱えやすく、孤独感を感じやすいこと、そしてその孤独感がSNS依存に繋がるリスクを高めている可能性を明らかにしています。支援においては、単にADHDの行動面だけでなく、社会的つながりの質や孤独感への介入が重要であることが示唆されています。

The Power of Naming: Discursive Politics From the Perspective of Expertise in an Intellectual Disability Advocacy Field

この論文は、「知的障害(Intellectual Disability)」という呼称の歴史的な変遷と、それに伴う言葉の政治性を検討しています。著者のElise Wolff氏は、アメリカにおける障害支援分野の75年にわたる資料を分析し、専門家と当事者・活動家の間で行われてきた名称変更をめぐる議論を掘り下げています。


🔍 要点

  • 呼称の変更(例:「精神薄弱」→「知的障害」)は単なるスティグマの解消アイデンティティ政治の表現ではなく、専門家と当事者による「専門性の主張」のせめぎ合いとして理解すべきだと著者は述べています。
  • 専門家の中には、変更が「混乱を招く」として反対する声もありましたが、**草の根の活動家たちが「当事者としての専門性」**を掲げて反論し、最終的に新たな呼称を浸透させることに成功しました。
  • ただし、このような「当事者の専門性の承認」は、全ての場面で平等に認められているわけではなく、時期や議題によって力関係が変化することが示されています。

💡 結論

本研究は、名称をめぐる言語的な争いが、単なる言葉選びを超えた権力関係の反映であることを明らかにしています。また、「誰が専門家なのか」という問いが、障害支援のあり方や社会的理解の形成に深く関わっていることを示し、他分野の議論にも応用できる視点を提供しています。