過去20年のASD傾向特性(autistic traits)研究の可視化分析
· 約17分
この記事では、自閉スペクトラム症(ASD)に関する最新の学術研究を幅広く紹介しています。具体的には、ASDの子どもに見られる「社会的アネドニア」とうつ症状の関係(縦断的研究)、スト レス軽減薬プロプラノロールによる胃腸症状の改善と心拍変動との関係(バイオマーカー研究)、ニコチンによるマウスモデルでの炎症抑制効果、Shank3変異犬を用いた顔認識異常の観察、さらに過去20年のASD傾向特性(autistic traits)研究の可視化分析など、多様なアプローチからASDの理解と支援に資する知見がまとめられています。それぞれの研究は、ASDの症状理解、予測、介入の新たな視点や可能性を示しており、支援者・研究者双方にとって有用な内容となっています。
学術研究関連アップデート
Longitudinal relationships between social anhedonia and internalizing symptoms in autistic children: results from the Autism Biomarkers Consortium for Clinical Trials
この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもたちに見られる「社会的アネドニア(social anhedonia)」と、うつや不安などの内在化症状との関係を、6か月にわたって追跡調査したものです。
🔍 社会的アネドニアとは?
→「人と関わることに喜びを感じにくい状態」を指し、ASDのある子どもによく見られます。
これは単なる「人見知り」や「内向的」とは異なり、社会的な関わりそのものに楽しさや満足感を感じづらい傾向です。
🧪 研究の方法
- 対象:8歳前後のASD児276人(IQ60以上)
- 測定項目:
- ASDの重症度(ADOS-2)
- 保護者による症状評価(CASI-5):
- 社会的アネドニア
- 社会不安
- うつ
- ADHD
- 期間:ベースライン、6週間後、6か月後の3回でデータ収集
📊 主な結果
- 社会的アネドニアは6か月の間に安定していた(ICC=0.763)
- 一時的に6週間後には軽減(β=-0.52)する傾向があった
- 社会的アネドニアとうつ症状は双方向の影響を及ぼしていた
- アネドニアが強い → 後のうつが強まる
- うつが強い → 後のアネドニアが強まる
- 社会不安とは「同時期の関連」はあったが、時間を超えた影響はなかった
- ADHD傾向とも「同時期の関連」は見られた