自閉スペクトラム症児に対する「第一印象」の偏り ― 同年代児童の認知を探る研究
本稿は、自閉スペクトラム症(ASD)をめぐる最新研究を「人・学び・技術・治療・医療体験」の5軸で概観します。①子ども同士の第一印象では、非ASD児がASD児を“ぎこちない/好ましくない”と捉えやすい認知バイアスが示され、早期の偏見是正教育の必要性が浮上。②実用スキル支援では、等価性に基づく指導法(EBI)が時計読み習得に有効で、般化には追加支援が要ることが判明。③テクノロジー介入では、VR/AR/MRを含むXRが社会性・行動・感情認識・認知を中等度以上改善するメタ分析結果と、ResNet-50を用いた高精度の感情認識AIの有用性が報告。④基礎〜創薬的知見では、ローズマリン酸がShank3B−/−マウスの反復行動・認知をCREB/BDNF経路とコリン作動性調節を介して改善(社会性は非改善)。⑤医療・メンタルヘルス現場では、ASD+BPD当事者の入院体験から「個別化・統合的ケア」への転換が求められ、臨床家側も診断反応の多様性理解、コミュニケーション適応、QOL・自律重視、家族連携の重要性を強調――総じて、偏見低減と実践的支援、テクノロジー活用、分子標的の探索、そして神経多様性アファーミングなケア体制の構築が鍵となることを示しています。
