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SNS上の「#Autism」と診断基準のズレ

· 約44分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事全体では、発達障害・メンタルヘルス・脳科学・社会構造をまたぐ最新研究を広く紹介しています。具体的には、ブラックコミュニティにおける自閉症スティグマと家族のレジリエンス、ASD児のきょうだい関係プロファイル、SNS上の「#Autism」と診断基準のズレ、ADHD児に対する認知課題入りランニングやゲーミフィケーション学習アプリの効果、高齢者におけるADHD症状と認知機能の関連などの臨床・教育研究に加え、プロバイオティクスやチモール、FMT、腸内細菌と精神疾患を扱う腸–脳軸関連の基礎・応用研究、48,XXYYの早期神経発達プロファイル、fMRIネットワークを用いたベイジアンSVMによる高精度分類といった神経科学・データ科学の研究、さらに大学生のセルフケアとしてのCAM利用実態や、自閉スペクトラム症の従業員が柔軟な働き方(i-deals)を得にくい職場構造の問題まで取り上げ、発達・健康・テクノロジー・働き方をつなぐ多面的な知見を俯瞰しています。

学術研究関連アップデート

The Role of Stigma in the Autism Diagnostic and Intervention Process: Perspectives of Black Families in the Southeastern US

「自閉症+ブラックであること」が診断と支援にどう影響するのか?

― 米国南東部に住むブラック家族が語る「スティグマ」とレジリエンスの実態**

論文名:The Role of Stigma in the Autism Diagnostic and Intervention Process: Perspectives of Black Families in the Southeastern US

掲載:Journal of Autism and Developmental Disorders(2025, オープンアクセス)

対象:米国南東部在住のブラックの自閉スペクトラム症児・者のケアギバー 47名(オンライン調査)


■ 研究の背景:スティグマは「診断の遅れ」を生むのか?

自閉スペクトラム症(ASD)に関するスティグマ(偏見・差別・“恥”の感覚)は、

親の自己評価の低下、ストレス増大、受診回避などと結びつくことが多く報告されています。

特に**人種・民族的マイノリティ(ここではブラックコミュニティ)**では、

  • 「ブラックであること」
  • 「障害(発達障害)をもつこと」

という 複数のマイノリティ性(double disadvantage) が重なり、

スティグマの影響がより強くなると考えられています。

これまでの研究では、ブラックの家族が

  • 早期の発達の気づきを認めたがらない、
  • 医療者側も障害診断をためらう、

といった形で、スティグマが診断の遅れやサービス利用の格差に関わっている可能性が指摘されてきました。

しかし、「いま現在、ブラックのASD児の家族はどの程度スティグマを感じているのか」「それが本当に診断・支援アクセスを遅らせているのか」は、十分に調べられていませんでした。


■ 目的:ブラック家族はどんな形のスティグマを経験しているか?

本研究の主なねらいは2つです。

  1. ブラックのケアギバー視点から、どのタイプの自閉症スティグマが、どれくらい存在しているのかを明らかにすること
    • Enacted stigma:周囲からの直接的な差別・偏見・扱い
    • Self-stigma:自分自身が内面化した「恥・自己非難」
    • Affiliate stigma:自閉症児と関わる家族として向けられるスティグマ
  2. 家族レベル・コミュニティレベルの要因(所得、家族内での診断経験、サービス利用など)と、スティグマの感じ方の関連を調べること

■ 方法:ブラックの自閉症児・者を育てる47家族へのオンライン調査

  • 調査方法:自閉症関係者(autism stakeholders)と協議して作成したオンライン質問票
  • 回答者:ブラックの自閉スペクトラム症児・者のケアギバー 47名
  • 質問内容:
    • ASDの診断までの経緯・サービス利用歴
    • ブラックコミュニティの中で感じる自閉症へのスティグマ
    • 上記 3種類のスティグマ(enacted / self / affiliate)の経験
  • 分析:記述統計、χ²検定、Kendallのτによる相関など

■ 主な結果:ほぼ全員が「コミュニティからのスティグマ」を感じていた

①約92%が「ブラックコミュニティからの自閉症スティグマ」を知覚

  • 91.9% のケアギバーが、

    「ブラックコミュニティの中に自閉症へのスティグマがある」と回答。

  • 内容としては、

    • 自閉症への理解不足

    • 親への責任転嫁(“育て方が悪い” 等)

    • 自閉症の子ども・家族への否定的な視線

      など、既存研究で指摘されてきたものと整合的。


②所得が高いほど「スティグマを強く感じる」傾向

  • SES(社会経済的地位)が高いほど、スティグマ知覚が強いという相関が見られた(τ = 0.36, p = 0.01)。
  • これは、
    • 医療・教育現場に関わる機会が多く、「差別・偏見にさらされる場面」を多く目撃している

    • あるいは、情報量が多い分、「構造的な不公平さ」を認識しやすい

      といった可能性が考えられます(因果関係までは断定できない)。


③家族で“初めて診断された子”ほど、スティグマ知覚が高かった

  • 子どもが「家族の中で最初のASD診断」である場合、スティグマ知覚が高いことが有意に関連(χ²(3) = 13, p = 0.005)。
  • 初めての診断は、
    • 家族内での受け止め・葛藤

    • 親戚・コミュニティの反応

      がより強く、スティグマを意識させられやすい状況ともいえる。


④ただし、スティグマは「診断のタイミング」「サービス利用」を妨げてはいなかった

重要なポイントとして:

  • スティグマの強さと
    • 診断の早さ・遅さ

    • サービスアクセスの有無

    • ピアサポート利用

      との間に有意な関連は見られなかった。

つまり、

スティグマを強く感じているにもかかわらず、

ブラックのケアギバーたちは診断や支援利用を諦めていない

ことが示されました。

これは、著者らが強調する**「レジリエンス(逆境の中でのしなやかな適応力)」**の証拠でもあります。


■ 研究の意義:スティグマの“存在”だけでなく、ブラック家族の“強さ”にも光を当てる

このパイロット研究が示したのは、単に

  • ブラックコミュニティに自閉症スティグマが多い

    という「ネガティブな現状」だけではありません。

同時に、

  • 高いレベルのスティグマの中でも
  • 親たちは子どもの診断・支援を積極的に求め続けている

というポジティブなレジリエンスの側面も明らかにしました。

著者らは、この知見を出発点として:

  • 医療・療育システム側の構造的改善(家族中心・文化的にインフォームされた支援)
  • コミュニティベースのスティグマ低減プログラム
  • ブラック家族のレジリエンスを前提にした、対等なパートナーシップ型支援

などを提案しています。


■ 一言まとめ

この研究は、米国南東部のブラック家族の約9割が自閉症スティグマを感じている一方で、そのスティグマが診断やサービス利用を“止めているわけではない”ことを示し、ブラックのケアギバーが高い逆境の中でも子どものために積極的に動き続けているレジリエンスに光を当てた。

Sibling Relationship Profiles of Autistic Youths in a Social-Ecological Context

きょうだい関係は ASD の子どもの“社会性の鏡”?

― 2,142名の大規模調査が明らかにした「自閉スペクトラム症児のきょうだい関係プロファイル」とその特徴

論文名Sibling Relationship Profiles of Autistic Youths in a Social-Ecological Context(2025)

掲載:Journal of Autism and Developmental Disorders

対象:ASD児 6〜17歳のきょうだい関係について回答した保護者 2,142名

方法:潜在プロファイル分析(LPA)


■ 研究の目的

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、家族・友人・学校環境など周囲の要因の影響を受けやすいとされます。

本研究は、

  • ASD児ときょうだいの関係がどのようなタイプに分かれるのか?
  • それらの関係性は、家族機能や友人関係など他の社会生態学的要因とどう関連するのか?

を明らかにすることを目的に実施されました。


■ 3種類の“きょうだい関係プロファイル”が判明

潜在プロファイル分析(LPA)の結果、次の3タイプが抽出されました:

① ポジティブ型(18.2%)

  • 情緒的サポートが強い
  • 仲が良い・一緒に過ごす時間が多い
  • 衝突も少なく、批判も少ない

② ネガティブ型(17.2%)

  • きょうだい間の衝突や批判が多い
  • 支援や仲の良さは低い

③ 低関与型(64.5%) ← 最も多い

  • 一緒に過ごす時間が少なく、相互作用が薄い
  • ポジティブでもネガティブでもない「距離のある関係」

👉 ASD児のきょうだい関係の6割以上は“低関与”であるという点が最も特徴的。


■ ASD特性の重さや年齢・性別は関係なし

プロフィール間で比較した結果:

  • 年齢
  • 性別
  • ASD症状の重さ
  • 知的障害の有無

のいずれも きょうだい関係のタイプと有意な関連はなかった

➡ きょうだい関係は、本人の特性よりも家庭環境や周囲との関わりの方が影響しやすいことを示唆。


■ では何がきょうだい関係を左右しているのか?

✔「家族関係の質」が大きく関連

  • ポジティブ型:家族・ケアギバーの関係もより良好
  • 低関与型:そこそこ
  • ネガティブ型:家族関係の適応度が最も低い

➡ 家庭全体の雰囲気やケアギバーの安定性が、

ASD児のきょうだい関係にも反映される。

✔ 友人関係の充実度とも関連

  • ポジティブ型のASD児は、

    友達が多く、友人との親密さも高い

➡ きょうだい関係の質は、

子どもの広い社会性(peer relations)にもつながる指標になる可能性。


■ 研究の示唆

  • “きょうだいとあまり関わらない(低関与)”が最も一般的なパターンである点は、支援設計において重要。

  • ポジティブなきょうだい関係は、

    家庭内の安定・友人関係の良さ・社会性全体の適応と結びつく。

  • ネガティブ型では家族機能の低下がより顕著であり、

    家庭全体への支援が必要になる可能性が高い。


■ 一言まとめ

ASD児のきょうだい関係は、おおむね「低関与型」が多数を占める一方、ポジティブな関係が築けている子どもは、家庭環境や友人関係など他の社会領域でも良好な機能を示すことがわかった。きょうだい関係は ASD児の社会性を理解する重要な窓として機能し、家族支援の指標にもなり得る。

How Diagnostically Accurate are #Autism Portrayals? A Latent Space Item Response Modeling Approach

SNS上の「#Autism」は本当に診断基準と一致している?

― TikTok・X(Twitter)1,000件以上を分析した結果、判明した“ズレ”とは

論文名How Diagnostically Accurate are #Autism Portrayals? A Latent Space Item Response Modeling Approach(2025)

掲載:Journal of Autism and Developmental Disorders

対象:TikTok 597件、Twitter(X)596件

手法:内容分析+潜在空間IRTモデル


■研究の目的

近年、TikTokやXで「自分の自閉特性を語る投稿」が急増し、

診断の入り口として SNS が機能するケースも増えています。

しかし、

SNSで語られる“自称・自覚的なASD像”が、臨床の診断基準とどれだけ一致しているのか?

という問題はほとんど検証されていません。

本研究は、SNS発の「オート診断的コンテンツ」が

どの程度、医学的・診断的な正確性を持つのかを調べました。


■方法:TikTokとXの1,193件を精査

  • テキスト、音声、映像内容をすべて抽出
  • 自閉症の診断基準(DSM-5)のどれに該当するかを人手でコード化
  • 診断と無関係な“一般的な困りごと”も分類
  • 潜在空間IRTモデルで、どの特徴が投稿で最も語られやすいかを可視化

■驚きの結果:診断基準と完全に一致した投稿はたった20.4%

  • 約80%は「診断基準に当てはまらない特徴」または「混在」
  • 特に多かったのは以下の“非診断的項目”
    • 感情の起伏・過敏
    • 人間関係の疲労
    • 日常のストレスやバーンアウト
    • 雑音や疲れやすさなどの「一般的経験」
  • 診断基準と一致しやすかったのは「社会・コミュニケーションの困難」だけ

👉 SNS上の「#Autism」は、医学的ASDではなく、より広い“ニューロダイバーシティ的困難”のラベルとして使われているという傾向が示唆。


■ 潜在空間分析で見えた“発信されるASD像”の偏り

可視化された潜在空間では、

  • 多くの投稿が 診断外の困りごとを中心にクラスター化
  • 本来必須である「反復行動」「限定的興味」などはほぼ出現せず
  • “ASDの臨床像”よりも “ASDコミュニティの文化的語り” が強調されていた

SNSで語られるASD像は、臨床診断とは別の意味世界にあることが明確に。


■結論:SNSのASD情報は、臨床診断と大きくズレている

  • オンラインで拡散されているASD像は、医学的定義と一致しない部分が圧倒的多数
  • 診断の必要条件ではない困りごとが「ASDの特徴」と誤って扱われている
  • これは診断の遅れ・誤解・セルフミス診断につながる可能性もある

■ 一言まとめ

TikTokやXで語られる「#Autism」の約80%は、診断基準とは一致していなかった。

SNS上で共有されるASD像は、科学的定義よりも“個人の困りごと”や“文化的ナラティブ”が中心であり、臨床的自閉症とは大きく異なる可能性がある。

Cognitively engaging running enhances inhibitory control and prefrontal activation in children with ADHD: the moderating role of physical self-efficacy


“考えるランニング”がADHD児の実行機能を底上げする?

― 認知的負荷を組み込んだランが前頭前野の働きを強く促進

論文名Cognitively engaging running enhances inhibitory control and prefrontal activation in children with ADHD(2025)

掲載:Scientific Reports(オープンアクセス)

対象:ADHD児36名(ラン3条件をランダム化比較)

測定:Go/No-Go課題(抑制機能)+ fNIRS(前頭前野の酸素化Hb)


■研究の背景

ADHDの子どもは「抑制機能(Inhibitory Control)」に弱さがあり、

運動が実行機能を改善することは知られているものの、

  • *どのような運動が“最も脳を活性化できるか”**は十分にわかっていません。

この研究は、

  • 普通のランニング
  • 認知課題を混ぜた“考えるランニング”(例:順番判断、合図でルート変更など)
  • 座位活動

の3条件を比較し、脳の前頭前野がどれだけ活性化するかを調べました。

さらに、**“運動がうまくできる”という自己効力感(physical self-efficacy)**が

効果に影響するかも検証しています。


■方法:30分×3条件のランダム化比較

  • 対象:ADHD児 36名(6〜12歳)
  • 条件:
    1. 認知的ラン(Cognitively engaging running)
    2. 伝統的ラン(普通のジョギング)
    3. 座って活動(コントロール)
  • 強度:中強度(心拍数管理)
  • 前後でGo/No-Go課題とfNIRS計測

■結果:認知的ランだけが“抑制機能”を強く改善

✔ 両方のランニングで反応時間は速くなった

→ つまり運動自体で注意覚醒は上がった。

✔ しかし

No-Go正答率(衝動の抑制)は認知的ランのみ改善

✔ fNIRSでは、左背外側前頭前野(左DLPFC)の酸素化Hbが有意に増加

認知的ランが前頭前野を強く働かせていることを示唆。

✔ 実行機能の改善量と前頭前野の活性増加量は相関

→「脳がより働いた子ほど、抑制機能も良くなっていた」


■“運動の自己効力感”が効果の分かれ道だった

  • 自己効力感が高い子

    → 認知的ランの効果が大きい

  • 自己効力感が低い子

    → 認知的ランの効果が小さい or ほぼなし

👉 心理特性(できると思える力)が、運動介入の効果を左右する


■結論:ADHD支援には“脳を使う運動 × 自己効力感”が鍵

  • 普通のランニングより

    “判断・切り替え・記憶”などの認知負荷を含むランニングが有効

  • 前頭前野を活性化し、抑制機能の向上につながる

  • 個々の自己効力感を高めながら運動を設計する必要がある


■ 一言まとめ

ADHD児には、ただ走るだけより、

“考えながら走る”運動のほうが前頭前野を強く働かせ、

抑制機能(衝動のコントロール)がより改善する。

効果を最大化するには、子どもの運動自己効力感も重要である。

Self-Reported ADHD Symptoms and Cognitive Performance in a National Sample of US Older Adults

高齢期の「ADHD傾向」と認知機能の関係は?

― 米国全国サンプル1,400名で確認された“加齢に左右されない関連”

論文名Self-Reported ADHD Symptoms and Cognitive Performance in a National Sample of US Older Adults

著者:Marrium Mansoor ほか

掲載:2025(HRSデータ使用)

対象:米国全国代表 40〜80代超 約1,400名(平均年齢 66.9歳)


■研究の背景

ADHD症状(特に不注意)は若年層で記憶力・計算能力の低下と関連することが知られています。

しかし、

中高年〜高齢者でも同じ関連が続くのか?

という点は、これまでほとんど研究されていませんでした。


■目的

  • 50代〜80代の一般人口において

    自己申告のADHD症状と認知パフォーマンスがどう関係するかを検証

  • その関連が

    年齢層(中年 / 若老 / 旧老)で異なるかどうかを確認


■方法

  • データ:米国の大規模縦断研究 Health and Retirement Study (HRS) 2016年Wave
    • 約1,400名
    • 自己申告式 ADHD症状(不注意/多動・衝動)
    • 認知課題:
      • Serial 7s(連続7引き算:注意・作業記憶)
      • Immediate Recall(即時記憶)
    • うつ症状も共変量として調整
  • 分析:3つの年齢群での多群パス解析
    • 中年
    • young-old(前期高齢)
    • middle-old(中後期高齢)

■結果:不注意症状は“加齢に関係なく”認知低下と関連

✔不注意症状が強いほど、以下が低下:

  • Serial 7s(注意・作業記憶)
  • Immediate Recall(即時記憶)

→ 若年成人で見られる傾向と同様の関連が、高齢層でも再現。

✔ 多動・衝動症状は有意な関連を示さず

✔ 年齢群による違いはなし

制約モデル(=年齢差なし)が最適なモデルと判断。


■結論

高齢になっても、「不注意症状」と認知機能(記憶・注意)は関連する。

これは、ADHDが“子どもの障害”ではなく、

生涯にわたり機能に影響する可能性を示す。


■臨床・実務への示唆

  • 高齢者でもADHD傾向を考慮する必要がある

    → 認知症との鑑別にも重要

  • 不注意症状を持つ高齢者は

    → 認知的脆弱性を持つ可能性

  • 若年〜高齢まで一貫した関連があるため、

    生涯発達的な ADHD 評価・支援モデルの必要性を示唆


■ 一言まとめ

高齢期になっても、不注意症状が“注意力・記憶力の低下”と関連する。

ADHDの影響は加齢によって消えるわけではなく、

生涯にわたり認知機能に作用し続ける可能性がある。

Frontiers | Therapeutic effects of Lactobacillus rhamnosus and/or thymol against neurotoxicity in propionic acid (PA)-induced autistic rats: Insights for the role of Nrf2/HO-1, Wnt3/β-Catenin/GSK3β BDNF/p-TrkB/CREB, pI3K/Akt/mTOR, AMPK/SIRT-1 and PERK/CHOP/Bcl-2 pathways

プロバイオティクスとチモールは“自閉症様症状”を改善できるのか?

― PA誘導モデルラットで確認された多経路的な神経保護作用

論文名:Therapeutic effects of Lactobacillus rhamnosus and/or thymol against neurotoxicity in propionic acid (PA)-induced autistic rats

著者:Hoda A. Salem ほか

掲載:Frontiers(2025, 掲載予定)


■研究の背景

  • 自閉スペクトラム症(ASD)は多因子的な神経発達症で、

    酸化ストレス、炎症、神経伝達物質異常、ERストレス、シナプス可塑性低下などが関与。

  • プロバイオティクス(例:Lactobacillus rhamnosus)や植物由来成分(例:チモール:Thy)が

    腸内環境・脳炎症・神経保護にポジティブに作用する可能性が指摘されている。

  • 本研究は、PA(プロピオン酸)で ASD 様症状を誘発したラットを用い、

    L. rhamnosus および Thymol の効果を脳レベルと行動レベルの両面から検証。


■方法(ざっくり)

  • 3週齢の雄ラット 50匹を5群に分ける

    ①正常対照

    ②PA誘導ASDモデル

    ③PA + L. rhamnosus

    ④PA + チモール

    ⑤PA + 両方併用

  • PA 投与(250 mg/kg × 3日)で ASD 様症状を誘導

  • 介入後、

    • 行動(学習・記憶・注意・空間探索・運動)

    • 脳組織の化学・炎症・酸化ストレス・ERストレス・アポトーシス

    • 神経可塑性・生存経路の分子マーカー

      を包括的に評価。


■主要な結果

✔行動面:ASD様の認知・行動異常が大幅に改善

  • 記憶・学習
  • 注意
  • 空間記憶
  • 運動活動
  • 文脈情報の処理

いずれも PA誘導群より明確に改善

特に**併用(L. rhamnosus+チモール)**が最も強い改善効果。


✔脳の生化学的異常が幅広く改善

① 酸化ストレス/炎症

  • Nrf2 / HO-1 の上昇(抗酸化経路活性化)
  • TLR4 / NF-κB の抑制(神経炎症の低下)

② アポトーシス(細胞死)と ER(小胞体)ストレス

  • Bcl-2 上昇(抗アポトーシス)
  • PERK/CHOP経路の抑制(ERストレス改善)

③ 神経可塑性の主要経路(学習・記憶の鍵)

  • BDNF

  • p-TrkB

  • CREB

    がいずれも 有意に増加

    → シナプス可塑性(学習のしやすさ)改善を示唆

④ 神経生存・代謝経路

  • PI3K/Akt/mTOR

  • Wnt3/β-catenin/GSK3β

    が正常方向へ調整

    → 神経細胞の生存・成長をサポート

⑤ 自食作用(オートファジー)・エネルギー代謝

  • AMPK / SIRT-1 経路の活性化

    → 損傷細胞のクリア、代謝改善


■結論

L. rhamnosus とチモールは、PA 誘導 ASD モデルラットにおいて、

行動・認知・脳の炎症/酸化ストレス/神経可塑性/細胞生存経路など多方面にわたって改善をもたらした。

特に、以下の多経路を同時に調整した点が重要:

  • Nrf2/HO-1(抗酸化)
  • BDNF/TrkB/CREB(可塑性)
  • Wnt3/β-catenin(発達・成長)
  • PI3K/Akt/mTOR(細胞生存)
  • AMPK/SIRT-1(代謝)
  • PERK/CHOP(ERストレス)

これらは ASD 症状の背景にある病態の多くをカバーしており、

両物質が ASD の補助療法候補になりうる可能性を示す。


■ 一言まとめ

プロバイオティクス(L. rhamnosus)とチモールは、

自閉症様ラットにおける行動・脳炎症・酸化ストレス・神経可塑性の異常を

複数経路で是正し、症状改善に寄与できる可能性がある。

Frontiers | The Gut–Brain Connection: Microbes' Influence on Mental Health and Psychological Disorders

腸内細菌は心の健康を左右するのか?

― 腸–脳軸が作る“メンタルヘルスの新しい地図”を総整理した最新レビュー

論文名The Gut–Brain Connection: Microbes’ Influence on Mental Health and Psychological Disorders

著者:Pegah Ataei ほか(Frontiers, 掲載予定)


■この論文が扱うテーマ

近年、「腸内細菌がメンタルヘルスに影響する」という研究が急速に増えています。本レビューは、

腸内微生物がどのように脳と心の働きを左右するのか

を最新のエビデンスから体系的に解説したものです。


■腸–脳軸とは?

腸と脳は、次のような多層的ネットワークで双方向に情報を交換しています:

  • 迷走神経(腸の刺激が直接脳へ)
  • 免疫系(炎症性サイトカインなど)
  • 腸内細菌の代謝物
    • 短鎖脂肪酸(SCFA)
    • セロトニン前駆体
    • 神経伝達物質様物質
  • 内分泌系(ストレスホルモン)

腸内細菌の変化が情緒や行動に影響しうる理由は、これらの多経路の存在にあります。


■どんな精神疾患と関連があるのか?(レビューの結論)

本論文では、腸内細菌の乱れ(ディスバイオシス)と関連が指摘されている主要な精神・発達疾患を整理しています:

  • うつ病
    • 特定の細菌の減少と炎症の増加が関連
  • 不安症
    • 微生物由来代謝物とストレス反応系の変調
  • 統合失調症
    • 微生物–免疫相互作用が病態に関与する可能性
  • 自閉スペクトラム症(ASD)
    • 腸内細菌組成の変化、短鎖脂肪酸の関与
  • 双極性障害
    • メタボリック系・炎症系を介した関連が示唆

いずれも共通して、

腸の炎症・代謝物・免疫システムの異常が脳機能に影響する

という点が注目されています。


■治療として使えるのか?(現状の評価)

レビューは、以下の介入が「可能性はあるがまだ決定的ではない」と総括します:

● 有望な介入

  • プロバイオティクス(乳酸菌など)
  • プレバイオティクス(腸内菌を増やす食物繊維など)
  • 食事改善(地中海食など)
  • 発酵食品の摂取
  • 便微生物移植(FMT)
    • 一部疾患で有望だが、標準治療にはまだ遠い

● なぜ決定打にならない?

  • 研究デザインが小規模
  • 相関関係が多く、因果は不明
  • 測定方法が研究ごとにバラバラ
  • 精神疾患は多因子で、腸内細菌だけでは説明しきれない

■レビューの核心メッセージ

✔ 腸内細菌は、脳とメンタルヘルスに大きな影響を及ぼしうる。

✔ 多くの精神疾患で腸内細菌の乱れが観察されている。

✔ しかし、因果はまだ明確ではなく、治療としての位置づけは発展途上。

✔ 大規模・厳密な臨床試験が必要。


■一言まとめ

腸内細菌はメンタルヘルスの鍵を握る有力候補だが、治療利用には“未来の可能性”の段階。

腸–脳軸の理解が進めば、精神医療のパラダイムが大きく変わる可能性がある——これが本論文の示す展望です。

Frontiers | Parental concerns correspond to earliest age of autism diagnosis in increased likelihood infant cohort

親の「気になるサイン」は診断の早さと深くつながっていた

― ASDリスク乳児72名を追跡した最新研究が示す、診断時期の違いと早期発見への重要な示唆

論文名Parental concerns correspond to earliest age of autism diagnosis in increased likelihood infant cohort

著者:Kal Clintberg ほか(Frontiers, 掲載予定)

対象:ASD 兄姉を持つ乳児(生後6〜24ヶ月)72名

目的

  • 乳児期の“親の気になる点”が、後の ASD 診断時期とどう関係するか
  • 診断が早い乳児と遅い乳児の行動特徴の違いを明らかにすること

■研究が行ったこと:6〜24ヶ月の親レポートを縦断分析

親が記録した 10領域の早期行動(言語、遊び、社会性、感覚、言語退行など) を、6点の時系列で収集し、

  • 18ヶ月で診断された乳児
  • 24ヶ月で診断された乳児
  • 36ヶ月で診断された乳児

の3つのグループを比較しました。


■主な結果(最重要ポイント)

✔18ヶ月診断群は、生後6ヶ月からすでに“気になる点”が多かった

  • どの時点でも 最も多くの領域で親が懸念を報告
  • 他の2群(24・36ヶ月)より明確な特徴の強さが見られた

特に差が大きかったのは:

  • 遊び(Play)
    • 反復的/限定的な遊び方、社会的なやり取りの乏しさ
  • 言語(Language)
    • 発語の遅れ、ジェスチャーの乏しさ
  • 言語退行(Language regression)

これらは 早期診断の重要なサインになりうる と示唆。


✔24ヶ月と36ヶ月診断群は“ほぼ同じプロファイル”だった

  • 行動特徴は似通っており、

    2歳時点で診断に至らなくても、その後診断されることは十分あり得る

    ということを示している。


✔早期の親の気づきは診断差につながる“有力情報源”

研究チームは次のように結論付けています:

  • 親が気づく違和感は、臨床家が見逃すサインを補完する
  • 乳児期のヘルスチェックで親の懸念を丁寧に拾うことが、診断格差縮小に役立つ

■研究が示す3つの重要メッセージ

① ASDの乳児期の姿は非常に多様(heterogeneous)

全員が同じ経過をたどるわけではない。

② “診断されなかった=発達の懸念が解消した”ではない

特に2歳時点で診断に至らなくても、3歳で診断される例が多数。

③ 親自身の観察は早期発見に極めて価値がある

臨床判断の補助材料として、乳児期からの懸念記録は有用。


■一言まとめ

「診断の早さ」は、乳児期の“親の気になるサイン”の量や種類と強く関係していた。

親の声は、早期発見の最も重要な手がかりの一つである。

Frontiers | Protocol for the Efficacy and Safety of Fecal Microbiota Transplantation in Children with Autism Spectrum Disorder: A Prospective Single-Center, Single-Arm Interventional Study


ASD児に対する“腸内細菌移植(FMT)”は効果があるのか?

― 中国・深セン小児病院による前向き介入試験プロトコル

論文名(掲載予定)

Protocol for the Efficacy and Safety of Fecal Microbiota Transplantation in Children with Autism Spectrum Disorder

研究機関:Shenzhen Children’s Hospital(中国)

研究デザイン:前向き・単施設・単群(オープンラベル)介入試験

対象:ASD(中等度〜重度)児 30名(2〜12歳)


■研究の背景

自閉スペクトラム症(ASD)の約 90% は、

  • 便秘、下痢、腹痛、膨満感 などの消化器症状(GI symptoms)を持つと言われています。

近年、

腸内細菌 × 免疫 × 中枢神経を結ぶ “マイクロバイオーム−腸−脳軸(MGBA)” が注目され、

腸内環境の改善が ASD 症状にも影響しうるのでは、という仮説が急速に広がっています。

そこで検討されているのが

“糞便微生物移植(FMT)” です。


■研究の目的

この臨床試験は、

ASD児にFMTを行ったとき、消化器症状とASD症状が改善するか

を前向きに検証することを目的としています。

特に、

  • 安全性(副作用)
  • GI症状改善
  • ASDの重症度への影響
  • 腸内細菌叢の変化

を詳しく調べます。


■研究方法

● 対象者

  • 年齢:2〜12歳
  • ASDの重症度:CARS ≥ 36(中等度〜重度)
  • N=30名

● 介入内容(FMT)

  • 投与経路:経鼻空腸チューブ(nasojejunal)
  • 回数:5日間で3回
  • 量:5 mL/kg

● 評価項目

一次アウトカム(主要評価)

  1. 消化器症状の改善
    • GSRS(Gastrointestinal Symptom Rating Scale)
  2. ASDの重症度
    • CARS(Childhood Autism Rating Scale)

二次アウトカム(副次評価)

  • SRS(Social Responsiveness Scale):社会性・コミュニケーション
  • ABC(Aberrant Behavior Checklist):問題行動
  • 腸内細菌叢の変化(mNGSによるメタゲノム解析)

■この試験の意義

  • FMTの安全性と有効性を、ASD児を対象に系統的に評価する数少ない前向き研究の1つ
  • 消化器症状がASD症状悪化の要因になりうるという仮説を検証
  • 腸内細菌プロファイルがどう変化し、どの菌が改善に寄与するかを科学的に解析

特に mNGS を用いたメタゲノム解析により、

どの細菌が ASD の症状改善と関連するのか?

どんな腸内環境が改善しやすいのか?

といった“微生物レベルのメカニズム”の理解も期待されています。


■一言まとめ

中等度〜重度ASD児30名に対し、5日間で3回のFMTを行い、GI症状とASD症状の改善、安全性、腸内細菌の変化を前向きに評価する臨床試験。

腸−脳軸をターゲットにした新しい治療の可能性を探る重要な研究プロトコルである。

Frontiers | An Exploration of the Neurodevelopmental Phenotype of Five Patients with 48,XXYY during Early Childhood Years


48,XXYY の乳幼児はどんな特徴を示すのか?

― 5名の詳細ケースから見えた「早期の神経発達プロファイル」と共通の合併症

論文名(掲載予定)

An Exploration of the Neurodevelopmental Phenotype of Five Patients with 48,XXYY during Early Childhood Years

研究機関:The Focus Foundation、George Washington University ほか

デザイン:症例シリーズ(男児5名)


■背景:48,XXYYとは何か?

48,XXYY は、

  • 男性に生じる性染色体数異常(SCA)
  • 発生率は 1/18,000〜50,000
  • 主な身体的特徴:
    • 低アンドロゲン・低ゴナド tropin(低ホルモン)
    • 眼間離開(hypertelorism)
    • くいちがった指(clinodactyly)
    • 扁平足
    • 橈尺骨癒合(radioulnar synostosis)
    • 高身長
    • 低緊張(hypotonia)

さらに過去の研究では、

ASD(自閉スペクトラム症)の発症リスク増加も疑われています。

神経発達面では、

  • 運動機能の遅れ
  • 言語発達の遅れ
  • 知的能力の低下
  • 口腔運動の弱さ

などが典型とされています。


■研究の目的

本研究は、

5名の48,XXYY男児を乳児期から追跡し、早期の神経発達特徴を詳細に比較する

ことを目的としています。


■方法

5名の男児を診断時から追跡し、

  • 神経発達評価
  • 口腔運動評価
  • 言語・発語評価
  • 理学療法評価
  • 遺伝・神経の医学的評価

などを組み合わせて詳細に調べました。


■主な結果(重要ポイント)

① 高頻度で “斜頸(torticollis)” が出現 — 特に右側が多い

5例中多数が、

姿勢性または先天性斜頸(右優位) を乳児期に呈していました。

② 全例で“低緊張(hypotonia)”が存在

  • 体幹
  • 上肢
  • 口腔運動(oral motor)

の筋緊張低下が共通して確認。

→ 48,XXYY における非常に典型的な神経筋症状。

③ 4名で頭囲増大(7か月時点で79パーセンタイル以上)

頭囲が大きい(macrocephaly 傾向)ことが多く見られた。

④ 生後12か月までに、全例で “運動と言語の遅れ” が明確

  • 座位・ハイハイ・歩行の遅れ
  • 喃語・初語の遅れ

という 乳児期早期からの顕著な遅れ が共通していた。

⑤ ASD症状は3歳未満では確認されなかった

ASDリスクは文献上指摘されているが、

乳幼児期の段階では ASD ではなく「運動と言語の発達遅滞」や「発達性ディスプラクシア」が前面に出る

ことが分かった。

⑥ “発達性ディスプラクシア” が18ヶ月頃までに明確に

特に:

  • 粗大運動 vs 微細運動のアンバランス
  • 表出言語 vs 受容言語のアンバランス

といった

「能力のばらつき」=ディスプラクシアの早期兆候が共通して見られた。


■結論(研究から分かること)

48,XXYY の乳幼児は以下の特徴を示しやすい:

  • 運動・言語の早期遅れ
  • 筋緊張低下(特に口腔運動)
  • 右優位の斜頸
  • 感染・呼吸・耳の問題(耳管機能不全など)
  • 発達性ディスプラクシアの早期兆候
  • 頭囲増大の傾向

ASD傾向は幼児期前半では必ずしも明確ではなく、

まず運動・口腔・言語の遅れが前景に出ることが鑑別上に重要。

本論文は、48,XXYYの早期介入・療育のポイントを具体的に示す貴重なケースシリーズといえる。


■ 一言まとめ

48,XXYYの乳幼児は、出生早期から運動・言語・口腔機能の遅れと低緊張、斜頸などの身体的特徴を示すことが多く、18ヶ月までに発達性ディスプラクシアの兆候も明確になる。ASD徴候は必ずしも早期には目立たず、まず運動・言語系の遅れが中心となることが本研究で示された。

Frontiers | Bayesian Semi-parametric Support Vector Machines Based on Multi-view Networks

*脳ネットワークを使った分類精度が劇的向上!

革新的“Bayesian SVM × マルチビュー fMRI”手法が登場**

論文名(掲載予定)

Bayesian Semi-parametric Support Vector Machines Based on Multi-view Networks

研究機関:Emory University / UT MD Anderson Cancer Center


■研究の背景:脳ネットワークは“宝の山”だが活用が難しい

精神疾患研究や認知研究では、

脳の機能的結合(Functional Connectivity: FC)

生物学的指標(バイオマーカー)として注目されています。

しかし、

  • FCは“数千〜数万の結合”を持つ超高次元データ

  • 既存の分類モデル(LASSO、ElasticNet、従来のSVM)は

    多くの情報を捨ててしまう/精度が上がらない

といった問題があり、

脳ネットワークをフルに使った高精度分類は困難でした。


**■ 本研究の貢献:

“高次元ネットワーク”をそのまま扱える 新しいBayesian SVM を開発**

著者らは、

✔Dirichlet過程(DP)× Laplace分布

を用いた

“ベイジアンSVMの新モデル” を開発。

ポイント:

1. ノード間結合ごとに“自動的に”スパース性を推定(無監督)

  • 全ての結合(edges)に一律の罰則をかけず、
  • データから自動的に“重要度に応じて”スパース化。

必要な結合だけ残しつつ、情報を捨てすぎない。

2. マルチビュー統合(resting + task fMRI)に対応

  • 安静時FCと課題時FCを統合して扱える
  • さらに**動的FC(時間で変化する結合)**にも拡張可能

→ 多面的な脳機能を組み合わせて学習できる。

3. 計算効率の高い Gibbs サンプラーを使用

実用的に動く高速MCMCアルゴリズムで実装。


■実データでの検証(HCP + ADHD)

● HCP(Human Connectome Project)

知能(IQ)レベルの分類

● ADHDデータセット

ADHDか否かの分類

結果:既存手法を大幅に上回る分類精度

  • LASSO系

  • 従来のSVM

  • Parametric Bayesianモデル

    をすべて上回った。

特に、

*✔ 最も高い精度:

“安静時+タスク fMRI” を統合した multi-view モデル**

脳ネットワークは複数の視点を組み合わせることで真価を発揮することを実証。


■この研究の意義

✔ 高次元脳ネットワークでも“情報を捨てずに”学習できる

✔ マルチモダリティ脳データ(rest + task)を統合できる

✔ ADHD分類でも、IQ分類でも高精度を実証

✔ 精神疾患のバイオマーカー研究を一段進める技術的基盤に

著者らは、

“高次元ネットワーク分類において、Bayesian SVMの優位性を初めて確実に示した”

と述べており、

脳画像AI研究の新しい方向性を示す重要な論文と言える。


■一言まとめ

脳ネットワークを用いた分類の課題であった「高次元データの扱い」を、

革新的Bayesian SVMが解決。

安静時+タスクfMRIの“マルチビュー統合”により、

ADHD・IQ分類で最高精度を達成した。

脳画像AI・精神疾患バイオマーカー研究にとって、

今後のスタンダードになる可能性の高い手法を示した研究である。

Frontiers | Self-administered complementary and alternative methods of treating mental disorders among students in Wrocław: a cross-sectional study

*大学生の“セルフメンタルケア”の実態は?

— 運動・瞑想からハーブ・マリファナ・サイケデリクスまで**

論文名(掲載予定)

Self-administered complementary and alternative methods of treating mental disorders among students in Wrocław: a cross-sectional study

対象:ポーランド・ヴロツワフの大学生 493名

テーマ:メンタルヘルス支援におけるセルフケア/代替医療(CAM)の利用実態

研究デザイン:横断研究(質問紙)


■どんな研究?

大学生の間では、うつ症状や不安などのメンタルヘルス問題が増加しています。

しかし、費用/アクセス困難/スティグマのせいで専門ケアを受けづらい学生が多く、

代わりに CAM(補完代替医療)を自己流で使う動きが広がっています。

本研究は、学生がどんなセルフケアを行い、

それがメンタルヘルスにどう影響しているのかを調査したものです。


■主な結果(重要ポイント)

① CAMの利用率は驚異の 96.1%

学生のほぼ全員が何らかのCAMを使用。

人気の非薬物的CAM

  • 運動:81.4%
  • 瞑想:60.5%
  • ヨガ:39.1%

人気の薬物系CAM

  • レモンバーム(Melissa):53.0%
  • アシュワガンダ:24.8%
  • マリファナ:31.3%
  • ビタミン:22.5%
  • サイケデリクス(LSD/マジックマッシュなど):10.4%

② 46.5%が精神疾患の既往あり、うつ病が中心(74.7%)

  • 約半数が何らかの診断歴あり
  • 45.3%が精神科医に相談
  • 44.8%が抗うつ薬を使用経験

専門ケア経験者も同時にCAMを使う傾向強い


③ 専門ケアを避ける最大の理由は“費用”

  • 費用:80.7%
  • 予約の取りづらさ:35.7%
  • スティグマ:30.7%

CAM利用は“必要だから”という側面も


④ 自己流CAMの一部は、むしろ症状悪化・リスク上昇と関連

特に以下の利用者でより重度のうつ症状がみられた:

  • マリファナ
  • アシュワガンダ
  • セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)

マリファナ使用者の特徴

  • ADHD学生で多い
  • ヨガ実践者に多い
  • サイケデリクス受容とも関連

→ CAMは“効果的”とは限らずリスク要因にもなり得る。


⑤ CAMユーザーは新しい治療にも前向き

  • マリファナ/瞑想/サイケデリクス利用者は

    ケタミン療法・サイロシビン療法(psilocybin)への受容性が高い

  • 特にヨガ実践者は ケタミン に好意的

→ “代替的アプローチ”に心理的抵抗が低い層と言える。


■この研究が示すこと

✔ 大学生は費用やアクセスの壁から、自己流のCAMに頼りがち

✔ 運動や瞑想はよく使われるが、薬物系CAMはメンタル悪化と関連する場合がある

✔ CAMユーザーの特徴を理解し、教育と安全管理が必要

✔ 代替療法への興味が高い層に、科学的に安全な情報提供が求められる


■一言まとめ

大学生の9割以上が何らかの代替医療(CAM)を利用しており、

特に運動・瞑想・ハーブ・マリファナなどが広く使われている。

しかし、薬物系CAMは重度うつ症状や依存リスクと関連する側面もあり、

セルフケアの普及には教育とガイドラインが不可欠である。

専門ケアを受けやすい環境づくりも急務である。


Frontiers | Effectiveness of a Gamified Educational Application on Attention and Academic Performance in Children with ADHD: An 8-Week Randomized Controlled Trial


*ゲーム性を持つ学習アプリで注意力と学力は伸びる?

— ADHD児80人を対象にした8週間のRCTが示す効果**

論文名(掲載予定)

Effectiveness of a Gamified Educational Application on Attention and Academic Performance in Children with ADHD: An 8-Week Randomized Controlled Trial

対象:6–12歳のADHD児 80名(IQ 95–105)

デザイン:ランダム化比較試験(RCT)

介入期間:8週間


■どんな研究?

ADHD児の学習支援として、「報酬・レベルアップなどのゲーム要素」を取り入れた学習アプリが注目されています。

しかし、厳密なRCTで実証された効果はまだ少ないのが現状。

本研究では、

  • ゲーミフィケーション付きアプリ vs.
  • 内容は同じだがゲーム要素のないアプリ(コントロール)

の2群を比較し、注意機能と学力がどれだけ改善するかを調べました。


■研究方法

● 介入:

両群とも

  • 計算

  • 読解

  • 音韻(言語)

    の同じ課題を学習。

違いはゲーム要素の有無

  • 実験群:即時フィードバック、報酬、レベル制、チャレンジ
  • 対照群:上記要素なし

● 評価項目(前後比較)

  • 視覚・聴覚反応時間
  • 持続性注意(CPT)
  • 読解・作文・数学の標準学力テスト

■主な結果(重要ポイント)

8週間後、実験群は対照群と比較して有意に大きな改善を示した。

① 注意機能の向上(反応時間の短縮)

  • 視覚反応時間:−110 ms

  • 聴覚反応時間:−95 ms

  • 持続性注意(CPT):−120 ms

    Cohen’s d = 0.70–0.85(中〜大効果)

ゲーム要素が集中力と反応の速さを強く改善


② 学力の向上も顕著

  • 読解:+20.0点
  • 書字:+15.4点
  • 数学:+13.7点

→ 注意の改善が学習成果に直接つながったと解釈できる。


③ 学習時間は両群で同じ

  • 「たくさん勉強したから良くなった」のではなく

    ゲーム性が行動(集中・継続)を引き出したと考えられる。


④ 8週間後の追跡調査あり(結果はまだ未報告)

→ 長期保持の効果は今後の報告待ち。


■この研究が示すこと

✔ ゲーミフィケーションはADHD児の“注意力”改善に効果的

✔ その注意改善は“学力の向上”にも直結

✔ 内容が同じでも、報酬・レベルアップなどのゲーム設計が大きな差を生む

✔ 自宅でできる学習支援としてのポテンシャルが高い


■一言まとめ

報酬・レベルアップなど「ゲーム性」を持たせた学習アプリは、

ADHD児の注意力・反応速度・学力を非ゲーミファイド版よりも大きく改善する。

教育アプリを作るなら、

“学習内容”だけでなく“ゲームデザイン”が決定的に重要であることを示すエビデンスといえる。

Journal of Occupational and Organizational Psychology | Wiley Online Library

*自閉スペクトラム症の従業員は「柔軟な働き方」を望むが交渉しづらい

— フレックス(flexibility i-deals)へのアクセス格差を示した最新研究**

論文名Access to flexibility I-deals: The case of autistic individuals

著者:Sophie Hennekam, Eline Jammaers, Bruno Felix

掲載:Journal of Occupational and Organizational Psychology(2025)


■この研究は何を調べた?

企業内で、従業員が個別に交渉して得る働き方の調整(i-deals:Idiosyncratic Deals)があります。

特に「柔軟な勤務時間」「リモートワーク」「静かな作業環境の確保」などは、

自閉スペクトラム症(Autistic)従業員にとって非常に重要。

しかし──

「自閉スペクトラム症の従業員は、この柔軟性 i-deals をどれくらい取得できているのか?」

を明確に示す研究はほとんどありません。

本研究は

  • 300件の質的アンケート

  • 12件のインタビュー

    を用いて、この問題を深く掘り下げました。


■主な結果:柔軟性は強く望まれるが、交渉がとても難しい

1.自閉スペクトラム症の従業員は「特に柔軟性のi-deals」を望んでいる

例:

  • 作業スケジュールの調整
  • 部分的なリモートワーク
  • 作業環境の変更(静音、光刺激の調整)

2.しかし、実際には交渉するのが難しく、「アクセス格差」が大きい

理由には以下が影響:

  • 自己主張や交渉行動が求められる(特に苦手な領域)
  • 上司の理解不足や障害に対するスティグマ
  • パワーバランスの非対称(言い出せない・不利になりやすい)
  • 組織文化や人事制度が、形式的には平等でも実際に不平等を生む

欲しいが、もらえない。求めても、通りにくい。


■i-dealsは“平等”を高めるどころか、逆に不平等を広げる可能性も

研究者は、クリティカル障害学やエイブルズム(健常者中心主義)の視点を使い、

以下の「暗い側面(dark side)」に光を当てた。

● 個別交渉方式だからこそ、不平等が強まる

  • 交渉が得意な人だけが得をする
  • 障害のある従業員は、必要な配慮を得るまでのハードルが高い
  • 会社側の裁量次第で差が生まれやすい

つまり、

個別の柔軟性は、善意だけでは平等にならず、構造的に不均衡を生む。


■柔軟性へのアクセスは、多層(マルチレベル)要因で決まる

アクセス難の背景には、以下が重層的に影響:

  • 個人レベル:自己 advocacy(要望の伝達)の困難さ
  • 上司レベル:理解・態度・偏見
  • 組織レベル:制度、文化、仕事の標準化
  • 社会レベル:障害観、エイブルズム、スティグマ

→ だからこそ、一箇所の改善では足りない。


■研究が提案する解決策:個別交渉ではなく「集団的柔軟性」を

論文は、「個別の交渉に依存しない仕組み」が必要だと主張。

◎ 例:

  • 全社員に標準的に利用できるフレックス制度
  • 作業環境調整が“デフォルトで選べる”仕組み
  • 上司の裁量に依らない、透明性ある制度設計
  • 制度を“使うこと”がネガティブに見られない文化づくり

“自分で交渉しなくても手に入る柔軟性”

が最もインクルーシブ。


■一言まとめ

自閉スペクトラム症の従業員は柔軟な働き方を強く望んでいるが、

交渉に不利な構造により、実際にはアクセスしにくい。

個別交渉(i-deals)依存の仕組みでは不平等が拡大し、

組織全体で柔軟性を標準化する“集団的柔軟性”が必要である。

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