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病院と家庭が連携したASD児への協働DTT

· 約32分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事では、発達障害・自閉スペクトラム症(ASD)・ADHD・学習障害(LD)に関する最新の学術研究を横断的に紹介しており、内容は大きく①脳・行動レベルのメカニズム解明(GraphSAGEを用いたASD児P300脳波分類、メチルフェニデートによるADHD児の脳ネットワーク安定化、感覚処理と反復行動をつなぐ不安メカニズム、ASDとFXSの早期コミュニケーション差、ASD児の自閉特性・行動問題・パーソナリティのネットワーク構造、ADHD児の実行機能プロフィールと性差)、②介入・支援プログラムの効果検証(LD生徒へのプロアクティブ・コーピング介入、ADHD児向け乗馬×作業療法ASTride、病院と家庭が連携したASD児への協働DTT)、③家族・学校・制度といった環境側の視点(自閉症児を育てる親のストレスと共同養育の実情、二次学校における自閉症生徒のメンタルヘルス支援とスクールリーダーの課題認識)にまたがっている。

学術研究関連アップデート

Graphsage model for robust P300 EEG classification in Autism spectrum disorder

自閉症スペクトラム症児のP300を高精度に読み取る「GraphSAGE+EEG」

どんな研究?

この研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子ども・人の脳波(EEG)から「P300」というイベント関連電位を高精度に判別するために、GraphSAGEというグラフニューラルネットワーク(GNN)モデルを使ったものです。P300は「注意が向いたとき」に現れやすい脳波成分で、共同注意訓練などのBCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)に重要なシグナルです。


何をやったのか?

  • 使用データ:

    BCIAUT_P300 データセット

    → ASD当事者を対象に行われた、P300ベースのBCI課題(共同注意トレーニング用)のEEGデータ

  • モデルの工夫:

    • EEGの各チャンネルを「ノード」
    • チャンネル間の機能的なつながりを「エッジ」と見なしてグラフ構造を構成
    • GraphSAGEで、各ノードの近傍情報を集約しながら特徴量を学習することで、
      • 空間的な関係(どの電極同士が連動しているか)

      • 時間的な変化(イベント前後の波形変化)

        を同時に捉える


主な結果

  • 7つのEEGセッションにわたって評価したところ、
    • P300 vs 非P300 の分類精度:平均 約98%
    • 既存の複数のディープラーニング手法よりも高性能
  • ⇒ GraphSAGEベースのアプローチは、
    • イベント関連電位(ERP)をデコードする上で非常に有望
    • ASD向けBCIの適応的なフィードバック・トレーニングシステムの構築に役立つ可能性

この研究が示す意味

  • 従来の「チャンネルごとの時系列解析」だけでなく、

    • 脳波チャンネル同士のネットワーク構造そのものを学習に組み込むことで、
    • ASD当事者のP300をよりロバストかつ高精度に検出できることを示した。
  • これは将来的に、

    • ASD児の注意トレーニングBCI
    • 共同注意や社会的スキル訓練のインタラクティブ環境

    を、脳波ベースで“その人に適応させる”技術の土台になりうる。


一文でまとめると

GraphSAGEでEEGチャンネル間のつながりをグラフとして学習することで、ASD児のP300シグナルをほぼ98%の精度で見分けられたという報告であり、ASD支援向けBCIの高性能・個別最適化に向けた重要なステップといえる研究です。

“We Try to Support Each Other, Stay Strong for Our Children”: Parents’ Experiences of Stress and Co-Parenting in Families Who Have a Child With Autism

自閉症児を育てる親はどのようにストレスに向き合い、支え合っているのか?

― 母親・父親の“共同養育”を深く掘り下げた質的研究**

自閉症(ASD)の診断を受けると、家族は医療・教育・支援制度の調整、生活リズムの変更、将来への不安など、さまざまな変化に直面します。本研究は、母親15名・父親5名への半構造化インタビューを通じて、親たちがどのようにストレスに対処し、どのように夫婦として支え合っているのかを丁寧に明らかにした質的調査です。

研究の目的

  • 自閉症児を育てる家庭で、

    母親と父親はどんな心理的負担・適応プロセスを経験するのか?

  • 夫婦としての共同養育(コペアレンティング)は

    どのように双方の適応を助けるのか?

  • 家族支援に必要なポイントは何か?

主な発見(テーマ分析より)

1. ストレスへの“向き合い方”は親ごとに異なる

  • 情報収集・専門家との連携を重視する親
  • 気持ちを整理する時間や個別の対処法が必要な親
  • 考え方や対処法の違いが、夫婦の間に摩擦を生むこともある

2. 夫婦関係は“適応”の大きな支えにも障壁にもなる

  • 協力し合うことで「チームとして乗り越える」感覚が強まる

  • しかし、疲労・役割偏り・コミュニケーション不足が

    相互のストレスや孤立感を悪化させる場合も

3. 家族を支える要因と妨げる要因が明確に

支えになるもの:

  • パートナーとの対等な協力
  • 周囲の社会的サポート(医療者・親族・コミュニティ)
  • 情報・専門サービスへのアクセス

妨げになるもの:

  • サービス利用の難しさ
  • 経済的負担や時間的余裕のなさ
  • 自身のメンタルヘルスの低下

4. 母親だけでなく父親も支援が必要であることが強調

  • 父親はしばしば**「サポートを求めない/求めづらい」傾向**があり、

    ニーズが見落とされがち

  • 母親は日常ケアの負荷と情報収集のハブとして過剰に負担を抱えやすい


研究の意義

この研究は、以下の点で実践的な価値があります:

  • 親個人だけでなく、夫婦関係そのものを支援対象として捉える必要性を示した

  • 支援プログラムは

    「子ども」「母親」「父親」「夫婦関係」

    の4つを包括する家族システムとして設計すべきであると提言

  • ストレスや適応のプロセスは性別や役割により異なるため、

    母親と父親に合わせた支援の仕組みが求められる


一文まとめ

自閉症児を育てる母親と父親は異なる形でストレスに直面しつつ、共同養育によって支え合いながら適応しており、家族全体を対象とした包括的支援(子ども・母親・父親・夫婦関係)が必要であることを示した質的研究です。

The effectiveness of proactive coping intervention for students with learning disabilities

学習障害(LD)学生のストレスと適応を改善する ― プロアクティブ・コーピング介入の有効性を検証した研究

学習障害(LD)のある学生は、学習面の困難だけでなく、学校生活での否定的体験や社会的・情緒的な課題により、心理的ストレスや不適応を抱えやすいとされています。こうしたストレスが積み重なると、長期的には不登校・自己肯定感の低下・社会的孤立など、二次的な問題に発展する可能性があります。

本研究は、ストレスへの先回り的な対処(プロアクティブ・コーピング)を高めるための介入プログラムを開発し、その効果を検証したものです。


研究の目的

  • LDのある学生に対し、

    プロアクティブ・コーピング(前向きな準備型対処)を高める介入は効果があるのか?

  • その結果、社会・情緒面の適応は改善するのか?


方法

  • 対象:ケララ州(インド)のLD学生200名から抽出

  • プロアクティブ・コーピングが低い60名を選び、

    介入群30名・統制群30名にランダム割り当て

  • 使用した評価尺度:

    • Proactive Coping Inventory for Adolescents
    • Adjustment Inventory for School Students
  • 統計手法:混合分散分析・反復測定ANOVA


主な結果

1. プロアクティブ・コーピングが有意に向上

介入を受けた学生は、

  • 未来の困難に備える力
  • 情報収集・計画・問題予測
  • 自己効力感

といった“前向きなストレス対処”が大幅に向上。


2. 社会・情緒面の適応も大きく改善

  • 学校生活でのストレスの減少

  • 対人関係の改善

  • 感情の安定

    など、統制群と比べて著しい改善が確認。


研究の意義と実践的示唆

  • LD学生において、ストレス対処スキルはトレーニングで向上できる

  • プロアクティブ・コーピングは、

    学業支援(リメディアル教育)と組み合わせることでさらに効果的

  • 個人の成長・自信・将来の適応力を高めるため、

    学校現場に広める価値が高い介入といえる


一文まとめ

学習障害(LD)の学生に対するプロアクティブ・コーピング介入は、ストレスへの前向きな対処力と社会・情緒面での適応を大きく改善し、学校支援プログラムに組み込むことで個々の成長を促す有効なアプローチである。

Methylphenidate stabilizes dynamic brain network organization during tasks probing attention and reward processing in stimulant-naïve children with ADHD

メチルフェニデートはADHD児の“脳ネットワークの安定性”を高め、注意・報酬課題のパフォーマンスを改善する:fMRIで検証した最新研究

この研究は、ADHD児がメチルフェニデート(MPH:リタリン・コンサータ)を服用したとき、脳のネットワークがどのように動的に変化し、行動の改善とどう結びつくのかを、fMRI を使って直接検証したものです。

特に注目したのは、脳ネットワークの

「柔軟性(flexibility)」=短い時間スケールでどれだけ構造が変化しやすいか

という指標です。

過度な柔軟性 → 注意の揺らぎ、不安定な認知状態

適度な安定性 → 集中しやすい、課題を維持できる

という背景から、MPHがこの柔軟性・安定性バランスにどんな影響を与えるかを調べています。


■ 研究の概要

  • 対象:刺激薬を服用したことのないADHD児(8〜12歳)

  • 条件:同じ子を

    • MPHを飲んだ状態

    • 飲んでいない状態

      で比較する「within-subject」デザイン

  • 実施課題

    1. 通常の Go/No-Go 課題(注意・抑制)
    2. 報酬あり Go/No-Go(報酬への反応性を含む)
  • 測定:fMRI で 脳ネットワークの“時間変動性(flexibility)” を分析


■ 主な結果

1. MPHは“全脳の柔軟性を減少(=安定化)させる”

MPH服用時は、脳ネットワークの再構成が

ゆっくり・安定的 になり、

ADHD特有の「注意の揺らぎ」が減少すると考えられる。


2. 脳がより“安定化”した子ほど、課題成績が改善した

  • 柔軟性がより大きく低下(=脳が安定化)した子ほど

    → Go/No-Go 課題でのパフォーマンス改善が大きい

脳ネットワークの安定化が、MPHの効果の鍵になっている可能性を示す。


■ なぜこれが重要なのか?

  • スティミュラント薬は、すべてのADHD児に等しく効くわけではない

  • この研究は、

    「どの子に薬が効きやすいのか?」を予測する脳指標

    を見つける第一歩になる

  • MPHが「注意の改善」をもたらす脳メカニズムについて

    “脳ネットワークの動的安定性” という新しい観点を提示


■ まとめ

メチルフェニデートは、ADHD児の脳ネットワークを“安定化”させることで、注意・報酬処理課題の成績を改善する。脳の柔軟性の変化量が、薬の効きやすさを示す指標になる可能性がある。

Horses and ADHD: the ASTride intervention for cognitive and emotional growth - Child and Adolescent Psychiatry and Mental Health

ADHD児に乗馬療法は効果があるのか?

ASTride(エストライド)プログラムが“実行機能・自己効力感・不安”を改善した最新研究**

本研究は、**馬を使った作業療法(Equine-Assisted Occupational Therapy)**と、注意スキルトレーニングを組み合わせた ASTride プログラムが、ADHDの子どもにどれほど効果があるかを科学的に検証したものです。

ADHD支援における動物介在療法の研究は増えてきていますが、

明確な評価指標を使い、時系列で効果を検証した研究は希少です。


■研究の概要

  • 参加者:ADHD診断のある子ども 50名(平均 9.5歳)

  • デザイン

    Interrupted Time-Series(ITS)※因果推論に強い準実験デザイン

    • 12週間待機 → 評価
    • 12週間のASTride → 再評価
    • その3ヶ月後に追跡評価
  • 実施者:資格を持った馬介在作業療法士

  • 評価者:介入に関与しないブラインドの作業療法士

測定指標

  • 実行機能:BRIEF(行動評価式実行機能検査)
  • 不安:SCARED
  • 自己効力感:NGSE
  • ホープ(希望感):Hope Scale

■主要な結果

1. 実行機能(Executive Function)が有意に改善

  • 注意の切り替え

  • 衝動の抑制

  • 計画・ワーキングメモリ

    などが改善。

乗馬はバランスや姿勢制御を必要とし、

前頭前野の働きを自然に引き出す点に一致する結果。


2. 不安レベルが有意に減少

  • 馬との関わりによる
    • 生理的リラックス

    • 自己調整感覚(身体の安定性)

    • 温かい非言語的な関わり

      が不安低減に寄与。


3. 自己効力感(Self-efficacy)が向上

  • 「自分にもできる」という感覚が強まる
  • 馬を扱う成功体験が積み重なり、自信を回復

4. 希望感(Hope)が向上

  • ADHD児が抱えがちな「どうせできない」という無力感が改善
  • 今後の行動や挑戦にポジティブな見通しが増す

■まとめ:ASTrideは認知+情緒の両面を改善する総合的介入

この研究は、ASTride(馬介在作業療法+注意スキルトレーニング)が

ADHD児の「実行機能」「不安」「自己効力感」「希望感」に広範な効果をもたらすことを初めて体系的に示しました。

特に注目すべき点:

  • 実行機能の改善 → 学校生活のパフォーマンス向上に直結
  • 不安の軽減 → 問題行動の減少につながりうる
  • 自己効力感・希望感の向上 → 長期的なレジリエンス形成に重要

薬物治療・行動療法に加わる“第三の選択肢”としての可能性を強く示す結果となっています。

Exploring Alexithymia, Uncertainty, Anxious Arousal, and Social Anxiety as Mediators of the Relationship Between Sensory Processing Differences and Restricted and Repetitive Behaviors in Autistic Adults

感覚の過敏さはなぜ反復行動につながるのか?

“アレキシサイミア・不確実性への耐性・自閉症特有の不安”の役割を詳しく解析した最新研究**

自閉スペクトラム症(ASD)では、

感覚処理の違い(SP differences)

反復・常同行動(Restricted and Repetitive Behaviors: RRB)

の関連はよく知られています。

しかし、

  • なぜ感覚の違いが反復行動につながるのか
  • その背後にどんな心理メカニズムが存在するのか
  • 自閉症当事者の“不安経験”は非自閉の不安尺度で正しく測れているのか

という点は十分に解明されていませんでした。

この研究は、自閉症成人426名を対象に、

感覚処理 → 反復行動 をつなぐ内的プロセスを、

自閉症特化の不安尺度を使いながら、詳細にモデル化した初の研究です。


■研究の目的

  • 感覚処理の違いが、

    • 反復的な身体行動(RMB)

    • 同一性へのこだわり(ISB)

      にどのように影響するかを明らかにする

  • その過程で働く心理要因(媒介変数)を詳細に検証する

検証された4つの心理要因

  1. アレキシサイミア(感情の気づき・言語化の困難)
  2. 不確実性への耐性の低さ(IU)
  3. 不安の身体的立ち上がり(anxious arousal)
  4. 社会不安

■主要な結果:2種類の反復行動には異なるメカニズムが働く

研究は、RMB(身体的反復行動)ISB(同一性へのこだわり行動) を別々に分析しました。

**### 1. Repetitive Motor Behaviors(RMB)

→ 身体的不安(anxious arousal)が中心的役割**

以下の間接経路が有意に確認された:

  • 感覚処理 → anxious arousal(身体的不安) → RMB
  • 感覚処理 → アレキシサイミア → 身体的不安 → RMB
  • 感覚処理 → 不確実性への耐性低下 → 身体的不安 → RMB
  • 感覚処理 → アレキシサイミア → 不確実性の低さ → 身体的不安 → RMB

感覚の過負荷 → 不安(身体症状)→ 身体反復行動(揺れ・手叩き等)

という構造が明確に確認された。


**### 2. Insistence on Sameness Behaviors(ISB)

→ 不確実性への耐性(IU)が中心**

有意な経路は:

  • 感覚処理 → IU(不確実性への耐性の低さ) → ISB
  • 感覚処理 → アレキシサイミア → IU → ISB

予測不能な環境に耐えられないため、同じ手順・同じ物・同じ順番を求める

というメカニズムが示された。


■3つの重要なポイント

① 反復行動は「困りごとの表出」であり、目的をもった対処行動である

  • RMBは感覚・身体的不安の“自己調整”
  • ISBは不確実性への耐性の低さから生じる“予測可能性の確保”

② 不安の構造は自閉症独自のものがある

一般尺度では測れない「身体不安」「予測不能性への苦痛」が重要であることが明確になった。

③ 支援は“反復行動そのもの”ではなく“背後の不安と感覚”にアプローチすべき

  • RMBには身体不安・過覚醒の調整
  • ISBには構造化・予測可能性・アンガーマネジメント
  • アレキシサイミア支援も重要(感情言語化が不安の調整に直結)

■まとめ

この研究は、

感覚処理の違い → 心理特性(不安・アレキシサイミアなど)→ 反復行動

という複雑な連鎖を、

自閉症成人データをもとに初めて精密に描き出しています。

  • 身体的不安 → 身体反復行動(RMB)
  • 不確実性への耐性の低さ → 同一性へのこだわり(ISB)

という“2つの別ルート”を示したことは、

ASD支援・心理療法・環境調整に大きな示唆を与える内容です。

Early Pragmatic Communication in Autism and Fragile X Syndrome

自閉症と脆弱X症候群の“ことばの使い方(語用論)”の違いを比較した早期研究

― 行動調整と共同注意に注目した自然場面でのコミュニケーション分析 ―**

  • *自閉スペクトラム症(ASD)脆弱X症候群(FXS)**は、いずれも

「語用論(=ことばの使い方)に関する難しさ」がみられる発達特性ですが、

その具体的な特徴は異なる可能性があります。

この研究は、**非常に幼い段階(spoken words が同程度)**の

ASD・FXS・定型発達(TD)の子どもを比較し、

自然なコミュニケーション場面で “どのように・何の目的で” コミュニケーションを使っているかを細かく分析したものです。


■研究の目的

  • ASDとFXSの早期語用論スキル(コミュニケーションの使い方)の違いを明らかにする
  • 特に以下の2つの機能を中心に比較
    1. 行動調整(Behavior Regulation)
      • 要求・拒否・助けを求めるなど
    2. 共同注意(Joint Attention)
      • 見てほしいものを指さす
      • 相手と注意を共有する
  • 語用論スキルと
    • 認知

    • 受容言語

    • 表出言語

    • 自閉症症状

      との関係も探る


■方法

  • ASD:10名 / FXS:10名 / TD:10名
  • 使用語彙数で3群をマッチング
  • Communication Complexity Scale を用いて自然場面のコミュニケーションを記録
  • 総コミュニケーション量・複雑さ・機能(行動調整 / 共同注意)を分析

■主要な結果(ポイントだけ)

1. ASD群は“共同注意”の使用が最も少なかった

  • ASD の子どもは
    • 相手と注意を共有したり、

    • 物事への興味を他者と「共有」する行動

      が少ない傾向(量的には低いが、統計的差は小規模サンプルのため有意ではない)

ASDの早期特徴として知られる「共同注意の難しさ」を裏付け


2. FXSでは「表出言語の力」と語用論機能が関連

  • FXS群では
    • 表出言語が強い子ほど、
      • 行動調整

      • 共同注意

        をより効果的に使えていた

        という傾向がみられた。

FXSの語用論の難しさは“言語能力の遅れ”により左右される傾向


3. TDおよびFXSでは「行動調整」と認知が関連

  • 認知能力が高いほど、要求や調整などの行動調整がより複雑になる傾向。

4. 群間で“統計的に有意な差”はつかなかった

  • サンプルサイズが小さい(10名ずつ)ため、

    記述的な差(傾向)の検出に留まる

しかし、

傾向としてASDとFXSで異なる語用論プロファイルが見えてきた

ことは臨床上重要。


■解釈・臨床的示唆

  • ASD:共同注意が特に弱い →

    早期支援では共同注意の機会づくりが重要

  • FXS:語用論スキルは言語能力に強く依存 →

    言語発達支援が語用論改善にも直結

  • ASDとFXSは似ているようで違う

    同じ「社会的コミュニケーションの困難」でも支援アプローチを分ける必要がある


■まとめ

本研究は、自閉症(ASD)と脆弱X症候群(FXS)の幼児を対象に、自然なコミュニケーション場面で「何のためにどのようにコミュニケーションを使っているか(語用論)」を比較したもので、ASDでは共同注意が少ない傾向、FXSでは語用論能力が表出言語の強さに影響される傾向が明らかになり、同じ“社会的コミュニケーションの難しさ”でも早期特徴や支援ニーズが異なることを示した重要な研究です。

Conceptual Intersections of Autistic Characteristics, Internalizing and Externalizing Behaviors, and Personality in Autistic Youth: A Network Analysis

自閉症特性・内在化/外在化問題・パーソナリティ特性はどう結びつく?

―― 自閉スペクトラム症の子ども・青年434名を対象にしたネットワーク分析**

この研究は、

「自閉症の子どもが示す行動や気質は、互いにどう影響しあっているのか?」

という臨床現場で非常に重要な問いに、ネットワーク分析という方法で体系的に迫ったものです。

自閉症特性(社交の難しさ・行動の繰り返し等)、

内在化問題(不安・抑うつ)、

外在化問題(攻撃性・多動)、

そしてパーソナリティ(ビッグファイブ)を

“1つのシステムとして” 同時に扱う研究はこれまでほとんどありませんでした。


■研究の目的

  • 自閉スペクトラム症の子ども・青年の

    自閉症特性 × 内在化/外在化問題 × パーソナリティ特性の相互作用

    を、包括的に可視化すること。


■方法

  • *ASD児・青年 434名(6〜18歳)**の保護者が質問票に回答
  • 測定内容:
    • 自閉症特性:SRS-2、RBS-R
    • 内在化/外在化問題:CBCL
    • パーソナリティ(ビッグファイブ):HiPIC
  • 相互の関連をネットワーク分析で評価

■主要な発見(ポイント)

1. パーソナリティと問題行動は“強く結びついている”

  • 外在化問題 ←→ 低い向社会性(Benevolence)
  • 内在化問題 ←→ 低い情緒安定性(Emotional Stability)

行動問題の背景に“気質的・パーソナリティ的特徴”が深く関与している

という強い示唆。


2. 自閉症特性はこれらと“やや距離がある存在”として現れた

  • 社会的コミュニケーション特性や反復行動などの

    “自閉症のコア特性”は、問題行動やパーソナリティとは直接の結びつきが弱い

自閉症そのものと、内在化/外在化問題は別物として扱う必要がある


3. ASD児の内在化・外在化問題は“自閉症特性だけでは説明できない”

  • むしろ、
    • 不安・抑うつ → 情緒安定性

    • 攻撃性・衝動性 → 向社会性

      といったパーソナリティの影響が強い


■臨床的示唆

●診断・支援は「自閉症特性だけ」では不十分

  • ASDの子どもに見える問題行動は

    自閉症特性の延長ではないケースも多い

    → 別途、“パーソナリティ由来の困りごと”として理解する必要

●個別支援には“パーソナリティ×問題行動×ASD特性”の同時把握が重要

  • 例:
    • 情緒安定性が低い → 不安・抑うつへの支援を強化
    • 向社会性が低い → 衝動性・攻撃性に対する支援を重点化

●包括的・統合的アプローチが有効

  • ASD特性
  • パーソナリティ
  • 不安・抑うつ・外在化問題

これらを“別々に”ではなく

相互に影響しあう1つのシステムとして理解することが、最適な支援につながる。


■まとめ

この研究は、自閉症の子ども・青年434名を対象に、自閉症特性・内在化/外在化問題・パーソナリティ特性の相互関係をネットワーク分析で可視化し、内在化/外在化問題は自閉症特性よりもパーソナリティ特性(情緒安定性・向社会性)と強く関連することを示した。つまり、ASD児の行動や情緒面の課題は“自閉症そのもの”だけでは説明できず、気質・性格との組み合わせで理解する必要があり、臨床ではこれらを総合的に扱う統合的支援モデルが重要であると結論づけている。

Sex Differences and Executive Function Profiles in Childhood Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: Evidence from Digital Neurocognitive Assessment


子どもの ADHD に“男女差”はどれくらいある?

―― デジタル認知検査で明らかになった実行機能の共通点と多様性**

この研究は、7〜12歳の ADHD 児208名を対象に、デジタル認知検査バッテリー(CNS Vital Signs)を用いて、

① 男女差がどれほど存在するか

② ADHDの実行機能(EF)プロフィールがどれほど多様か

を総合的に検証したものです。


■背景と目的

ADHD は男児の方が診断率が高いことから「男の子の障害」とみなされがちですが、

本当に EF(集中・柔軟性・ワーキングメモリなど)に性差はあるのか?

という疑問は十分に検証されていません。

また、ADHDの子どもの EF は、性別・診断サブタイプとは別に、

どのような“タイプ”に分けられるのか?

という点も重要な研究課題です。


■方法

  • ADHD 児 208名(7–12歳)
  • 測定:CNS Vital Signs(10領域の実行機能・注意・速度など)
  • 解析:
    • 性差の検定(分散分析 + ベイズ推定)
    • EFプロファイルのクラスタリング(k-means)
    • 年齢を共変量に調整

■主要な結果(ポイント)

1. 男女差は“ほとんど存在しない”

複数の EF 指標を総合的に比較したところ:

  • 男女差は全体として有意ではない(p = .74)
  • 有意差が出たのは 2つの速度系領域のみ
    • 心理運動速度(Psychomotor Speed):男児がやや速い
    • 運動速度(Motor Speed):男児がやや速い

しかし、効果量(d = 0.48〜0.66)は中程度で、

認知の中核となる注意・柔軟性・記憶などには性差は確認されず、ベイズ推定でもほぼ“男女は同じ”と支持された


2. ADHD児の実行機能は“3つの重症度プロファイル”に分類される

クラスタリング分析により:

  • EFが全般的に低い群
  • 一部弱いが中程度の群
  • 比較的良好な群

という “重症度ベースの3タイプ” に分類された。

重要なのは:

  • 性別とは無関係
  • DSM-5のタイプ分類(不注意型 / 多動衝動型 / 混合型)とも無関係

ADHDの認知プロファイルは性別でも診断タイプでもなく、“実行機能の重症度”で整理できる


3. ADHD支援では“性差よりも個別のEFプロフィール”が重要

本研究の結論として:

  • ADHD児の男女はほとんど同じ認知構造を持つことが確認された

  • 性差を前提としたアセスメントや支援より、

    個別の認知プロファイルに応じた介入が必要

  • ADHDは「カテゴリー」ではなく

    認知機能の次元で理解する方が有用

という臨床的示唆が導かれている。


■まとめ

この研究は、7〜12歳のADHD児208名をデジタル認知検査で評価し、男女差と実行機能(EF)プロファイルを詳細に検証した結果、EF全体における男女差はほとんど存在せず、わずかに速度系のスコアが男児で高い程度であることを明らかにした。また、ADHD児のEFは性別やDSM-5のタイプとは無関係に“重症度に基づく3つのプロフィール”に分類され、個別の認知プロファイルに基づいた支援が重要であることを示している。ADHDの認知的理解と介入において、性差よりも「実行機能の個別性」を重視すべきであるという重要な示唆を与える研究である。

Frontiers | Hospital-Family Collaborative DTT Intervention to Reduce the Parenting Stress through Improving Core Symptoms and Family Functioning in Children with Autism Spectrum Disorder: A Randomized Controlled Trial

病院 × 家庭の協働DTTでASD児の発達と家族機能が向上

―― 親のストレスも改善した実証的プログラム(RCT)**

このランダム化比較試験(RCT)は、**離散試行訓練(DTT)**を病院と家庭で連携して実施する新しい「協働DTTプログラム」が、

ASD児の発達・家族機能・親ストレスにどのような効果をもたらすかを検証したものです。

通常の病院DTTでは家庭での効果が伸びにくいという課題に対し、キングの目標達成理論を基盤に、親が家庭で継続的に介入できる体制を整えた点が特徴です。


■研究デザイン

  • 1〜6歳のASD児 84名
  • 実験群(42名):1ヶ月の病院DTT → 3ヶ月の家庭DTT(親が指導を継続)
  • 対照群(42名):通常の病院DTTのみ
  • 評価指標:
    • GESELL発達尺度
    • Parenting Stress Index(PSI-SF)
    • Family Assessment Device(FAD)
    • 親のDTT知識・スキル評価

■主要な結果(ポイント)

1. 協働DTTは、発達・家族機能・親のスキルの向上で通常DTTを上回る

介入方法・期間ともにGESELL、FAD、親スキルに大きな影響があり(全て p<0.001)、

協働DTTが明確に高い改善効果を示した


2. 親ストレスの改善は段階的に起こる

部分相関分析により、

親ストレスが改善するメカニズムが2段階であることが判明:

① 病院フェーズ(1ヶ月)

「適応(adaptation)」に関する項目の改善がストレス低減に寄与

  • GESELL:適応行動
  • FAD:情動反応
  • 親のDTT知識の向上

子どもと親が“介入のペースに慣れる”ことがストレス減の第一歩

② 家庭フェーズ(3ヶ月)

「具体的な行動(behavior)」の改善がストレス減につながる

  • GESELL:粗大運動・微細運動・社会性
  • FAD:問題解決能力

家庭で子どもの行動変化を実感できることが、親ストレス改善の本丸


3. 親ストレスが極めて高い家庭には特徴的なリスク因子が存在

親ストレスの重度化には次が独立して関連:

  • 家族機能の問題(問題解決、情動反応、情動的関わり)
  • 子どもが男児であること
  • 言語障害の併存
  • ADHDの併存

ASD+言語障害・ADHDの併存児の家庭は特に支援強化が必要


■結論

本研究は、

病院と家庭が協働して行うDTTが、子どもの発達だけでなく、親のストレスや家族機能まで改善することを明確に示した最初期のRCTの一つです。

特に重要な示唆は:

  • 親が「家庭で継続できる」構造を作ることが最大の鍵
  • 病院だけではなく、親を“介入の主体”に引き上げることが効果を高める
  • 家庭内での子どもの行動変化こそが、親ストレス軽減に直結

という点です。


■紹介兼要約

このRCTは、病院と家庭をつなぐ新しい「協働DTTプログラム」が、1〜6歳のASD児84名において、通常のDTTよりも大きく発達スコア・家族機能・親の介入スキルを改善し、さらに病院フェーズでは“適応の向上”、家庭フェーズでは“行動の改善”を通して親ストレスを段階的に軽減することを示した。特に家族機能の問題や併存症(言語障害・ADHD)はストレス増大の独立因子であり、家庭内で継続できる介入体制の重要性を裏付ける研究である。

Frontiers | A qualitative examination of the role of school leadership teams in secondary school mental health policy and practice for autistic students

二次学校のメンタルヘルス支援は“リーダーの理解と制度”で決まる

―― 英国SLTが語る、自閉症支援の現実と課題(質的研究)**

本研究は、イングランドの主流二次学校(中等教育)における学校リーダー(School Leadership Teams: SLTs)が、自閉症の生徒のメンタルヘルス支援をどのように理解し、運営しているかを深く探った質的調査です。

学校でのメンタルヘルス重視が高まっている一方で、制度が形骸化したり、画一的な支援しか提供されていない現状があり、現場の意思決定を担うSLTの声を体系的に扱った研究はこれまでほとんどありませんでした。


■研究方法

  • 22名のSLTメンバー(英国6地域の公立中等学校)
  • 共同制作チームによりデザインされた半構造化インタビュー
  • *Reflexive Thematic Analysis(熟慮的テーマ分析)**でテーマを抽出

■主要なテーマ(4点)

1. SLTの“自閉症観”が支援の質を左右する

  • 自閉症を“困難中心”に捉える学校もあれば
  • 強み・環境要因への理解を持つ学校もある

学校文化の違いがメンタルヘルス支援の成否に直結


2. 「ワンサイズ・フィット・オール」なメンタルヘルス政策の限界

  • 一般生徒向けの支援モデルをそのままASD生徒に適用してしまう

  • 感覚配慮・コミュニケーション・柔軟な調整などが欠けがち

    自閉症特性に合わない“汎用支援”が多い


3. 制度的・構造的な障壁をSLT自身も乗り越えられない

  • 予算・人員不足
  • 他機関との連携の弱さ
  • 学校システムが「即時対応」中心で長期的支援が難しい

学校内だけの努力では改善できない“構造の壁”が存在


4. 生徒・家族・外部サービスとの“参加型の協働”が必要

  • ASD生徒や家族の声が政策に十分反映されていない
  • CAMHS(児童青年メンタルヘルスサービス)など外部との協力も不十分
  • SLTは「もっと多様なステークホルダーと深く協働したい」と回答

持続可能なメンタルヘルス支援には“学校外を含めた共創”が必須


■結論

本研究は、二次学校における自閉症生徒のメンタルヘルス支援が、学校リーダーの理解・制度・文化・外部との連携といった“システム全体”に大きく依存していることを明らかにしました。

特に、一律支援の限界と、ASDに特化した視点の不足が大きな課題として浮き彫りとなっています。


■まとめ

この質的研究は、イングランドの公立中等学校の学校リーダー22名へのインタビューを通じて、自閉症生徒のメンタルヘルス支援が画一的政策、制度的障壁、ASD理解の不足によって制約されている実態を明らかにした。特に、一般のメンタルヘルス施策を自閉症児にそのまま適用する「ワンサイズ・フィット・オール」の限界や、予算・連携不足といった構造的障壁が支援を難しくしている点、そして持続可能な支援には生徒・家族・外部サービスを巻き込む“協働的アプローチ”が不可欠であることを示している。

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