ADHDを持つ人はミュラー=リヤー錯視とカニッツァ錯視にはより強く影響される一方で、エビングハウス錯視には影響されにくい
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この記事では、ADHD(注意欠如・多動症)の子どもと青年における視覚的錯視の知覚特性を扱った研究を紹介しています。ミュラー=リヤー錯視やカニッツァ錯視にはより強く影響される一方で、エビングハウス錯視には影響されにくいといった特異な反応が確認され、全体的にトップダウン的・統合的な視覚処理にわずかな違いがあることが示唆されました。視覚的錯視を用いた検証は、ADHDを含む発達性神経疾患における知覚や認知処理の理解・評価に役立つ可能性があることが強調されています。
学術研究関連アップデート
Perception of Visual Illusions in Children and Teenagers With ADHD
この論文は、ADHD(注意欠如・多動症)の子どもと青年が視覚的錯視をどのように知覚するかを検討した研究です。対象は6〜17歳のADHD児童75名と青年37名で、年齢・性別をマッチさせた定型発達群と比較しました。研究では、ミュラー=リヤー錯視、カニッツァ主観的輪郭、エビングハウス錯視など5種類・計103組の錯視画像を用いて評価しました。その結果、ADHD群はミュラー=リヤー錯視とカニッツァ錯視にはより強く影響される一方で、エビングハウス錯視には影響されにくいことが明らかになりました。他の錯視(同時対比・動く蛇錯視)では有意差は認められませんでした。反応時間に関しては、ADHD群と対照群で差はなく、全体として錯視刺激に対する反応はコントロール刺激より速い傾向が見られました。
👉 結論:ADHD児は、定型発達児と比べてわずかながら視覚処理のトップダウン的・全体的な統合能力に違いがあることが示唆されました。本研究は、視覚的錯視を利用することで、ADHDを含む発達性神経疾患における知覚特性や認知処理の特徴を理解・検出する手がかりを提供するものであり、今後の評価法や支援の発展に寄与する重要な知見を提示しています。