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自閉スペクトラム症(ASD)の子を持つ親のPTSD症状に対する社会的支援の役割をヨルダンで検証した研究

· 約3分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

本記事では、自閉スペクトラム症(ASD)の子を持つ親のPTSD症状に対する社会的支援の役割をヨルダンで検証した研究を紹介しています。母親は父親よりPTSD症状が高く、特に支援が少ない母親で顕著でした。一方、支援が多い父親は症状が最も低く、社会的支援が性別とPTSD症状の関係を緩和することが明らかになりました。結果は、ASD家庭のメンタルヘルス支援において、母親を中心とした支援ネットワークの構築や地域資源活用の重要性を示しています。

学術研究関連アップデート

Perceived social support as a moderator of posttraumatic stress in parents of children with autism spectrum disorder

本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを持つ親の心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状と、知覚される社会的支援(perceived social support)との関係を、特に親の性別差に着目して検討したものです。対象はヨルダン中部のASD治療センター10か所から募集された、アラビア語話者の母親71名・父親71名(計142名)。標準化されたPTSD症状尺度と社会的支援尺度、加えて家族・子どもに関する情報を収集しました。

平均PTSDスコアは42.08と、臨床的リスク閾値(33点)を大きく上回り、母親は父親より有意に高いPTSD症状を報告しました。また、社会的支援が低い親や、重度ASDの子どもを育てる親ではPTSD症状がより重い傾向が見られました。階層的重回帰分析の結果、社会的支援は親の性別とPTSD症状の関連を有意に緩和しており、特に「支援が少ない母親」が最も高いPTSD症状を示し、「支援が多い父親」が最も低い症状を示しました。このモデルはPTSD症状の分散の61%を説明しています。

著者らは、ASD児の親のメンタルヘルス支援において、母親を中心とした社会的支援ネットワークの強化がPTSD症状の軽減に有効であると指摘しており、家族支援プログラムや地域資源の活用が重要であると結論づけています。