機械学習による性別を考慮したASDリスク予測モデル
本記事では、発達障害に関する最新の学術研究を紹介しています。内容は、自閉スペクトラム症(ASD)やADHDに関する脳機能・遺伝・予測因子・治療法に関する研究を中心に、妊娠中の母親の精神状態と子どもの発達の関係、腸内環境や栄養、CBDオイルなどの自然療法、性別やホルモンの影響、インクルーシブなスポーツ介入の効果、Webアクセシビリティに対する当事者視点の評価まで多岐にわたります。特に、脳ネットワークの異常や構造変異、ホルモン変動と認知機能の関連、機械学習による性別を考慮したASDリスク予測モデルなど、支援の個別化や予防的アプローチの可能性を示唆する研究が多く取り上げられています。
学術研究関連アップデート
The Interplay between Maternal Depression and ADHD Symptoms in Predicting Emotional and Attentional Functioning in Toddlerhood
👩👧 お母さんの「うつ」と「ADHD」が子どもの心と注意力にどう影響する?
この研究では、お母さんの「うつ症状」と「ADHD症状」が、赤ちゃんから2歳になるまでの子どもの感情や注意力の発達にどう影響するかを調べました。
🧪 どんな研究?
- 対象は妊娠中から2歳までの母子156組(男の子51%)
- お母さんの状態は:
- 妊娠中にADHDの傾向
- 妊娠中・産後3ヶ月・子どもが2歳時点でうつ症状
- 子どもが2歳のときに:
- うつのような症状を母親が報告
- *集中力(注意力)**を遊びの観察で測定
🔍 何が分かったの?
- お母さんが「ADHDの傾向」も「うつ症状」も強かった場合、2歳の子どもに以下の問題が多く見られました:
- 感情的に落ち込みやすい(うつ症状)
- 集中力が続きにくい
- 逆に、お母さんがうつ症状だけでも、ADHD傾向が弱い場合は子どもへの影響は小さかったです。
💡 結論
-
「お母さんの心の状態が赤ちゃんの発達に影響する」というのはよく知られていますが、
特にうつ症状とADHDの両方があると、子どもに強い影響が出ることがこの研究で明らかになりました。
-
特に子どもが感情面で不安定になったり、注意力が続かなくなるリスクが高まるため、
妊娠中や産後の早い段階からサポートすることが重要です。
🧸 一言まとめ
「お母さんのうつ+ADHD」は子どもの心と集中力の発達に大きく影響する――だからこそ、早期の支援が子どもの未来を守る鍵になります。
Atypical segregation of frontoparietal and sensorimotor networks is related to social and executive function impairments in children with ASD
🧠 自閉スペクトラム症の子どもに見られる「脳のつながり方の違い」と行動の関係
この研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもたちの脳内ネットワークのつながり方の特徴が、社会性の問題や実行機能(注意、計画、切り替えなど)の弱さとどう関係しているかを調べました。
🧪 どんな研究?
- 対象:ASDの子ども121人、定型発達の子ども84人
- *脳の状態は、じっとしているときのfMRI(安静時脳機能MRI)**で測定
- 特に注目したのは以下の2つの脳ネットワークのつながり方:
- 前頭頭頂ネットワーク(Frontoparietal network):思考や判断などを担当
- 感覚運動ネットワーク(Sensorimotor network):体の感覚や動きを担当
🔍 何が分かったの?
✅ ASDの子どもでは以下の「異常なつながり方」が確認されました:
-
前頭頭頂ネットワーク内のつながりが弱い(=underconnectivity)
→ 社会性や実行機能のスコアが低いことと関連
-
前頭頭頂ネットワークと感覚運動ネットワークの間のつながりが強すぎる(=overconnectivity)
→ 社会的な困難さと関連
なお、運 動機能のスコアとの関連は見られませんでした。
💡 結論
- ASDの子どもは、**「脳のつながり方」においてネットワーク間の境界がぼやけている(=分離がうまくいっていない)**傾向がある
- 特に、思考・判断に関わるネットワークの内部がバラバラで、他のネットワークとつながりすぎていると、社会性や実行機能に問題が出やすい
- 脳ネットワークの「つながり方の異常」を指標にすることで、ASDの理解や支援のヒントになるかもしれません
🧩 一言まとめ
ASDの子どもは、脳内ネットワークの“内と外のつながり方”に異常があり、それが社会性や実行機能の難しさと関係している――ということを示した研究です。
Cross-sectional mega-analysis of resting-state alterations associated with autism and attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents
自閉スペクトラム症とADHDにおける脳の機能的つながりの違い:大規模解析による検証
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)に共通する脳の特徴があるのか、それとも異なるのかを明らかにするため、**世界的にも最大規模となる1万人以上の子ども・青少年(6〜19歳)**を対象とした「横断的メガ解析(cross-sectional mega-analysis)」を実施したものです。
調査と解析のポイント
- 参加者総数:12,732人
- 自閉スペクトラム症(ASD)群:764人
- ADHD群:2,026人
- 定型発達(比較)群:複数(重複含む)
- 方法: 安静時機能的MRI(resting-state fMRI)を用いて、脳内ネットワークのつながり(機能的結合)を解析
- 対象: 診断名と「特性レベル(traits)」の両方を指標にした多角的な比較