強みに基づく新たなASD評価手法(SASSI)
この記事は、2025年3月時点の最新の学術研究を中心に、自閉スペクトラム症(ASD)や発達障害に関する診断・支援・教育・家族介入・神経科学的理解の進展をわかりやすくまとめたものである。特に、教師のインクルーシブ教育に対する態度、AIを活 用したASD診断の高度化、脳刺激による社会的困難の軽減効果、ADHDとASD併存の神経指標、きょうだい支援の重要性、「複数の自閉症」という新しい視点、感情調整の支援、アンジェルマン症候群におけるASD特性、家族介入研究の動向、そして強みに基づく新たなASD評価手法(SASSI)など、個別化・多様化・当事者尊重に向かう支援と研究の潮流を幅広く紹介している。
学術研究関連アップデート
Preschool and primary school teachers’ attitude towards inclusive education for students with autism spectrum disorders in Ethiopian public schools: multicenter cross-sectional study - BMC Neurology
この研究は、エチオピアの首都アディスアベバにある公立の幼稚園および小学校の教師たちが、自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもを通常学級に受け入れることに対してどのような態度を持っているかを調べたものです。
🔍 研究の背景と目的
- 自閉症の子どもが通常の学校に通うケースが増えている中で、教師の理解と受け入れ態度がその子どもたちの学びやすさに大きく影響する。
- しかし、アフリカの文脈では、教師がどの程度自閉症に理解を示しているのか、明らかになっていない部分が多い。
- この研究では、教師の知識や経験が、ASDのある子どもの受け入れ態度にどう影響するかを分析した。
🧪 研究方法
- アディスアベバの**416名の教師(幼稚園・小学校)**からアンケートを収集(2023年9月〜12月)。
- データを統計的に分析し、態度・知識・経験の関係を調査。
📊 主な結果
- ASDに関する十分な知識を持っていた教師は全体の35.5% にとどまった。
- 教師の平均的な態度スコアは3.4(やや前向きな傾向)。
- 特別支援が必要な子どもとの経験がある教師は、6倍も肯定的な態度を持つ傾向があった。
- ASDの子どもを「行動や感情面で扱いづらい」と感じている教師は、肯定的な態度を持つ可能性が大幅に低かった(94%低い)。
- 肯定的な態度を持つ教師の方が、ASDに関する知識も高い傾向があった。
✅ 結論と提言
- 教師のASDに対する態度は、全体的にはやや前向きだが、知識や経験の差が大きく影響している。
- よって、教師へのASDに関する研修や、実際の支援経験の機会を増やすことが重要。
- 特に、ASDのある子どもへの誤解や偏見をなくし、行動面への理解を深める教育的アプローチが求められる。
📝 まとめ(かんたん解説)
✔ エチオピアの幼稚園・小学校の教師のうち、ASDへの知識があるのは約3割
✔ 経験がある教師ほど、インクルーシブ教育に前向き
✔ ASDの子の行動を「問題」と見なす教師は、受け入れに否定的
✔ 教師の研修や現場経験の機会を増やすことで、受け入れ態度の改善が期待される
この研究は、教育現場におけるASD理解の促進とインクルーシブ教育の実現に向けた重要なヒントを与えてくれます。
Improving Detection of Autism Spectrum Disorder (ASD) by Using mRMR Feature Selection and Genetic Optimization Based CES Model for Computing Autism Severity Score
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断精度を高めるために、新しいAIベースのスコアリングモデルを提案したものです。従来の診断ツール(例:Q-CHAT-10やAQ-10)は、あらかじめ決められた採点方式に基づいており、症状の多様性や個人差を十分に反映できない課題がありました。
🔍 研究の新しいアプローチ
研究チームは以下の技術を組み合わせて、新しいASD重症度スコア「GOCES(Genetic Optimization-Based CES Score)」を開発しました:
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mRMR(最小冗長・最大関連)アルゴリズム
→ Q-CHAT-10やAQ-10のデータから、特に重要な行動特性だけを抽出するために使用。
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遺伝的アルゴリズム(GA)
→ AIによって、スコアリングモデル(後述)の最適なパラメータを自動で探索・調整。
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CES(Constant Elasticity of Substitution)モデル
→ 複数の特徴量(行動項目)の貢献度を柔軟に調整可能な数式モデルを使用。これにより、固定スコア方式では表現しきれない「症状の重みづけ」を実現。