このブログ記事では、発達障害に関連する最新の研究を紹介しています。ADHDや自閉症を持つ子供たちに対する親や教師の視点、学校教育における支援の課題、行動管理の介入方法(DBRC)に関する調査が含まれており、さらに、自閉症に対する造血幹細胞治療や神経接続の異常に関する研究、誤診された自閉症成人の経験、アラビア語話者の音韻スキルに関する分析も取り上げられています。また、ADHDの自律神経調節、ディスレクシアの定義再評価、ADHDと閉塞性睡眠時無呼吸症候群の関係、不安に対する学校支援の必要性にも触れ、さまざまな発達障害に関する研究の進展を広範に紹介しています。
学術研究関連アップデート
Parent-reported Areas of Greatest Challenge for their ADHD and/or Autistic Children
この研究は、ADHDや自閉症を持つ子供たちの最も困難な行動について、親がどのように感じているかを理解することを目的としています。ニュージーランドの258人の親を対象に、子供の行動で最も家族生活に影響を与えるものについて尋ね、その回答を13のカテゴリーに分類しました。結果として、子供の困難な行動は、それぞれの診断に関連する特性に合致していましたが、ADHDと自閉症の両方を持つ子供の場合、自閉症に関連する課題がより大きく報告されました。感情の調整が難しいという問題は、全てのグループで共通して大きな課題とされました。また、年齢が高いほど、親が自閉症や内面化した課題を報告する可能性が高いことも示されました。この研究は、親の視点を考慮した、より効果的なサポートを提供するための指針となります。
Barriers to inclusive education of children with autism: Ghanaian teachers’ perspective
この研究は、ガーナにおける自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ子供たちのインクルーシブ教育(全ての子供たちを通常の学校に受け入れる教育)に対する障壁を、教師の視点から探っています。調査には、ガーナのグレーター・アクラ地域の17人の幼稚園教師が参加し、インタビューを通じてデータを収集しました。その結果、以下の主な障壁が特定されました:保護者の協力不足、教師のASDに関する知識不足、社会的・文化的および政治的問題、他の専門家との連携の欠如です。これらの要因がASDの子供たちに対するインクルーシブ教育の実践を妨げているため、教師への特別な研修やリソースの提供、そして幼稚園教師の訓練段階でのASDに関する啓発が推奨されています。
The effects of the Daily Behavior Report Cards (DBRC) on the disruptive behavior and specific goal behavior of elementary school children: a multiple baseline design study
この研究は、ドイツの小学校で行われたシングルケースデザインを用いて、デイリービヘイビアレポートカード(DBRC)の効果を調査しています。対象は、教師によって問題行動を示すと認識された2年生の生徒10名です。教師はDBRCの実施方法について訓練を受け、各生徒に特定の行動目標が設定されました。また、一般的な問題行動(GDB)と特定の目標行動(SGB)がDirect Behavior Rating(DBR)を使って評価されました。120日間にわたってDBRCを実施し、毎日モニタリングとフィードバックが行われた結果、問題行動の減少と目標行動の達成が確認されました。この研究は、DBRCが問題行動の軽減と行動目標の達成に効果的であることを示し、教育研究におけるシングルケースデザインの有用性も強調しています。
Hematopoietic Stem Cell Therapy in Improving Clinical Outcomes for Children with Autism Spectrum Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供に対する造血幹細胞(HSC)治療の有効性と副作用を調査した系統的レビューとメタ分析です。PubMed、EMBASE、Cochrane Libraryなどのデータベースを用いて無作為化比較試験(RCT)や臨床試験を検索し、最終的に6つの研究を分析対象としました。結果として、HSC治療は軽度の副作用(発熱、吐き気、痛みなど)を伴う比較的安全な治療法である一方、ASDの臨床症状の改善には有意な効果を示しませんでした。したがって、HSC治療の有効性を確認するためには、さらなる研究が必要であると結論づけています。
Contracted functional connectivity profiles in autism - Molecular Autism
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の脳ネットワーク組織における機能的接続の異常を調査し、特に短距離および長距離の接続に焦点を当てています。211名の男性(ASD診断者103名、健常者108名)を対象に、脳全体の接続距離(CD)を測定し、比較しました。その結果、ASD参加者は健常者に比べて長距離の接続が減少し、短距離の接続が増加していることが示されました。これらの変化は、前頭葉や側頭葉、頭頂葉などの異モーダルおよび傍辺縁系領域で顕著でした。また、CDの減少は年齢や症状の重症度に関係なく一貫しており、IQスコアとの正の相関が見られました。この研究は、ASDにおける短距離過剰接続と長距離接続不足のバランスの崩れを示す新たな証拠を提供しています。
The experiences of autistic adults who were previously diagnosed with borderline or emotionally unstable personality disorder: A phenomenological study
この研究は、自閉症と誤診された境界性人格障害(BPD)を持つ10人の自閉症成人に対するインタビューを通じて、彼らの経験 を探ったものです。多くの自閉症の人々が、誤ってBPDと診断され、BPDの治療を受けることがありましたが、これが彼らに有害であり、特に「マスキング」を促進する治療は自殺リスクを高める可能性があることが指摘されました。BPDの診断を受けたことで、医療専門家に信念を無視され、適切な自閉症診断へのアクセスが難しくなった一方で、自閉症と診断された後は、精神的健康が改善し、自身の違いが受け入れられるようになったことが報告されました。ただし、自閉症に対する社会的なスティグマは残っているものの、BPDに関連するスティグマよりは軽く、自閉症のスティグマは能力に関するもの、BPDのスティグマは他人に害を及ぼす恐れがあるというものでした。この研究は、誤診された自閉症成人の声を通じて、メンタルヘルスサービスの改善を促す重要性を示しています。
Non-Word Repetition in Arabic-speaking children with and without Autism Spectrum Disorder (ASD): A closer look into accuracy and error patterns
この研究は、パレスチナ・アラビア語を話す自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供と定型発達(TLD)の子供における音韻スキルを評価するために、非語反復(NWR)課題を使用した初めての研究です。5〜11歳の142人の子供(ASDグループ67人、TLDグループ75人)が参加し、1〜4音節からなる18の非語を使用してNWR課題が行われました。分析の結果、非語の長さがパフォーマンスに大きな影響を与え、音韻の複雑さはあまり影響しないことが示されました。全体的に、ASDグループの72%は年齢相応のNWRパフォーマンスを示しましたが、28%は音韻障害のリスクがあるパフォーマンスを示しました。最も一般的なエラーパターンは子音の置換でした。これにより、ASDの子供たちは全体的に遅れがあるものの、質的には似た音韻発達パターンを持つことが明らかになり、言語評価の重要性が強調されました。
Autonomic regulation and comorbid symptoms in children with attention deficit hyperactivity disorder
この研究では、注意欠陥多動性障害(ADHD)を持つ子供の迷走神経媒介心拍変動(vmHRV)と共存症状(内向化症状、行動問題、無感情・無情な特性)がどのように関連しているかを調査しました。対象となったのは、ADHDの薬物治療歴がない6〜11歳の100名の子供で、vmHRVは休息時および報酬遅延課題中に測定されました。また、皮膚電気反応(SCR)を通じて交感神経の反応性も評価されました。
結果として、無感情・無情な特性が高い子供は、安静時および課題中のHRVスコアが高く、より良好な自己調整能力がある可能性が示されました。行動問題はSCRスコアと正の関連を示しました。この研究は、ADHDの自律神経調節において、無感情・無情な特性が重要な役割を果たす可能性を示唆しています。
Dyslexia in the 21st century: revisiting the consensus definition
この論文は、2002年に国際ディスレクシア協会(IDA)が採用したディスレクシアの定義を、科学的な進展や変化するニーズに照らして再評価しています。この特集号では、研究、政策、実践における定義の長所と限界が議論され、特にディスレクシアの神経生物学的基盤の必要性や、識字障害とメンタルヘルスの交差、コンテキストが定義に与える影響についての検討が行われました。また、この定義が教育者、政策立案者、家族といった異なる層にどのように役立っているかも考察されています。IDAが2002年の定義の再検討に取り組む中で、今後の研究や識別、介入、擁護活動に役立つ見解を提供しています。
Frontiers | Polysomnographic Insights into the Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Obstructive Sleep Apnea Connection in Children
この論文は、注意欠陥多動性障害(ADHD)と閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の関係を、子供におけるポリソムノグラフィー(PSG)を用いて調査したものです。4歳から18歳の子供を対象に、OSAとADHDの診断を持つ4つのグループを比較しました。結果として、ADHDのみを持つ子供は不眠症の診断が多かったものの、睡眠効率はOSAのみを持つ子供よりも良好で、他のグループと有意な差は見られませんでした。ADHDとOSAの両方を持つ子供では、PSGに特有の睡眠障害は見られず、OSAによって説明されるものでした。結論として、ADHDを持つ子供にはOSAのスクリーニングが重要であり、独自の睡眠指標の開発が必要であることが示唆されています。
Understanding anxiety‐related problems of children with ASD in school settings
この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供における不安関連の問題に対する特別支援教育やメンタルヘルスの専門家の知識を、分離不安(SA)、不確実性(U)、パフォーマンス不安(PA)、不安覚醒(AA)の4つのカテゴリーで調査しました。アメリカ国内の318名の参加者(特別支援教育教師199名、スクールカウンセラー97名、スクール心理士22名)が対象となりました。結果として、特別支援教育教師とスクールカウンセラーは、ASDの子供や通常発達の子供の不安症状を特定するための訓練と専門知識が、スクール心理士に比べて有意に少ないことが示されました。また、スクールカウンセラーは、ASDの子供の不安を特定し治療する知識が特に不足していることがわかりました。特に、不確実性が不安によるものなのかASDの特性によるものなのかを判断するのが難しいという問題が浮き彫りになりました。研究結果から、学校での支援が重要であることが示唆されました。