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ABAと神経多様性 介入の新しい方向性

· 約29分
Tomohiro Hiratsuka

本日のブログ記事では、自閉症スペクトラム障害(ASD)および注意欠陥・多動性障害(ADHD)に関連する最新の研究成果について紹介します。自閉症における非言語的コミュニケーションの違い、応用行動分析(ABA)と神経多様性の融合、英国とアイルランドにおけるABAとポジティブ行動支援(PBS)の関係、ICD-11における自閉症スペクトラム障害の診断の変更とその影響、ADHDと環境要因との相互作用、自閉症の若者の親による擁護活動、ADHDの子供の社会的機能、感情調節の問題、ADHDとアルコール問題の関連性、自閉症の生徒に対する性教育、ADHDを持つ成人の身体疾患の発生率についての研究を取り上げます。

学術研究関連アップデート

Interacting with autistic virtual characters: intrapersonal synchrony of nonverbal behavior affects participants’ perception

この論文は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ人々と持たない人々の間の非言語的コミュニケーションにおける時間的調整の違いを探究しています。研究の目的は、自閉症と非自閉症の観察者が仮想キャラクターの非言語的行動をどのように解釈するかを調査することで、コミュニケーションの効率における視線とジェスチャーの遅延(IaPS)の影響を定量化することでした。

研究結果からは、非自閉症行動を示す仮想キャラクターに対する反応時間が、自閉症行動を示すキャラクターに対する反応時間よりも速かったことが分かりました。これは、自閉症と非自閉症の観察者の両方において見られ、特に自閉症の観察者において顕著でした。

さらに、観察者の視線の分析から、非自閉症の個体は一貫してキャラクターの目を中心に情報を収集する傾向がありましたが、自閉症の個体はより多様な視線のパターンを示し、これが解読速度の違いに寄与していたことが示唆されました。一方で、仮想キャラクターに対する印象形成には、IaPSの条件の影響は見られませんでした。

研究は、自閉症の個体と非自閉症の個体の間の社会的相互作用の時間的ダイナミクスにおける相互の不一致が、自閉症の特徴である相互性の減少の背景にある可能性を示しています。これにより、自閉症の特徴が個人におけるものではなく、対人ダイナミクスに直接関連していることが明らかになりました。

この研究は、自閉症と非自閉症の個体間のコミュニケーションにおける微妙な違いを明らかにし、これらの違いがどのように社会的相互作用に影響を与えるかを理解する上で重要な洞察を提供しています。

Affirming Neurodiversity within Applied Behavior Analysis

この記事では、自閉症コミュニティからの応用行動分析(ABA)への批判が増加していることについて取り上げています。これらの批判は、研究の実践や関係者間の対話に大きな影響を与えています。記事は、ABA提供者が自閉症の人々の生活の質を向上させることを目指しているため、自閉症の人々の意見を謙虚に聞き、開かれた態度で受け入れることの重要性を強調しています。自閉症の人々は、自分自身の経験やコミュニティに関して比類のない専門知識を持っており、彼らの懸念は倫理的にも道徳的にも無視することはできません。

記事では、神経多様性の概念をABA分野がこれらの懸念に対応し、私たちが提供するサービスの最大の利害関係者である自閉症のクライアントと協力する方法として提案しています。この記事は、自閉症擁護者がABAに関して提起する主要な批判をまとめ、障害の社会モデルと神経多様性パラダイムについて議論し、ABAの分野が神経多様性を統合し、研究と実践を進化させるための実践的な指針を提案しています。ABAに対する批判を公然と認め、私たちがどのようにしてより良くできるかを認識することで、より包括的な社会と専門職を目指す実用的なステップを踏むことができると信じています。

A Discussion of Positive Behavior Support and Applied Behavior Analysis in the Context of Autism Spectrum Disorder in the UK and Ireland

この記事では、英国とアイルランドにおける自閉症スペクトラム障害(ASD)の文脈で、応用行動分析(ABA)とポジティブ行動支援(PBS)の関係について論じています。ABAはASDのための介入法ではありませんが、その方法論はASDを持つ個人を評価し支援するための多くの実証的に検証された介入法を提供しています。しかし、英国のNational Autistic Society(NAS)はABAについて、現在の英国でABA専門家によって残酷な罰則方法が使用されているという根拠のない主張をしています。

PBSは、個人の生活環境を改善する方法として、品質の高い生活の提供と挑戦的な行動への解決策に焦点を当てています。ABAとPBSの間には、プロフェッショナルのトレーニングと認定の面で問題が存在し、PBSの実践者はABAの標準に準拠するべきだと主張されている一方で、PBSには認定プロトコルがなく、実践に対する法定のトレーニング要件も存在しません。

ABAは個々の行動を時間をかけて測定し、個別のケース実験設計を用いることで、個人のデータの集計に対してコントロールを示すことに焦点を当てています。PBSは、過去にABAで使用されたとされる厳しい手法や罰則的な介入に対して反対し、より人間中心のアプローチを目指しています。

この記事の結論部分では、PBSとABAの間には表面上小さな違いしかなく、それはABAの構成要素内の議論とほとんど変わらないことが指摘されています。PBSの提唱者たちは、より新しく、急速に成長しているアプローチであるPBSの魅力に引きつけられているかもしれませんが、同時に彼らはABAの原理の利用から得られた知識の恩恵を受けています。

要するに、この記事はABAとPBSの関係、特に英国とアイルランドにおける両者の現状と、その違いが実際の行動サービスにどのように影響を及ぼすかについて探求しています。また、ABAとPBSの間には共通の基盤が存在する一方で、両者の間にはまだ解決されていない問題が多く存在していることを示唆しています。

Autism spectrum disorder in ICD-11—a critical reflection of its possible impact on clinical practice and research

この研究では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断とその影響について、国際疾病分類(ICD-11)と精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)の比較が行われています。ICD-11のASDの定義は、DSM-5よりも多様な症状を可能としており、極めて多様な症状を包括していますが、これが診断の精度に影響を及ぼす可能性があると指摘されています。ICD-11では、ASDの診断基準がより主観的で曖昧になり、他の精神障害や自閉症様の特徴との区別が困難になるとされています。

ICD-11によるASDの概念化は、観察可能な行動や神経発達障害から、内面の経験やアイデンティティに重点を置く社会モデルに移行しているとされ、これが客観的な測定や診断の妥当性に疑問を投げかけています。また、ASDの診断においては、補償努力や症状の非顕示などの概念が導入されているものの、これらに関する定義や限定が不足していると指摘されています。

研究では、ICD-11によるASDの診断基準の拡大が、ASDの症状と他の精神障害や自閉症様特徴との区別を困難にし、診断の非特異性を高めることにつながる可能性があると述べられています。これにより、誤診のリスクが増加し、ASDに特有のサービスへのアクセスが制限されることが懸念されています。研究は、ASDの診断におけるより正確で客観的な基準の必要性を強調し、ASDのサブタイプやエンドフェノタイプの特定が次の重要なステップであるとしています。

Genotype-Environment Interaction in ADHD: Genetic Predisposition Determines the Extent to Which Environmental Influences Explain Variability in the Symptom Dimensions Hyperactivity and Inattention

この研究では、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状である多動性と不注意に関して、遺伝的素因と環境的影響の相互作用について調査されています。これまでの研究でADHDの個体差が高い遺伝率を持つことが示されていましたが、この研究では、これらの症状が遺伝と環境の複雑な相互作用によって影響されることが示唆されています。

研究では、16歳の双子2168組を対象に、彼らが完成した「Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)」と「Strength and Weaknesses of ADHD Symptoms and Normal Behavior(SWAN)」という2つの質問票から得られた項目レベルのスコアを分析しました。この分析によって、ADHD症状を測定するためのより長いサブスケールを形成するために、これら2つの質問票の項目を組み合わせることが可能かどうかを調査しました。

研究の結果、遺伝的素因を持つ双子では、多動性と不注意の症状における個体差の大部分を独特の環境的影響が説明するという強い相互作用が見られました。これは、遺伝的素因を持たない双子に比べて、遺伝的素因を持つ双子で多動性と不注意の症状に対する環境的影響がより大きいことを意味しています。

この研究は、ADHD症状の個体差において、遺伝的素因と環境的影響の相互作用が重要な役割を果たしていることを示しており、特に多動性と不注意の症状に関しては、遺伝的素因を持つ個人において独特の環境的影響がより重要であることを強調しています。

Examining the associations among knowledge, empowerment, and advocacy among parents of transition-aged youth with autism

この研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子供を持つ親が、適切なサービスや支援を見つけ、子供の権利やニーズのために擁護する上で直面する課題について取り上げています。親がどのようにして子供のために擁護活動を行うかについては不確実性がありますが、この研究では、親の知識とエンパワーメント(自己実現感)が、個人的、仲間、システム的な擁護活動とどのように関連しているかを探求しています。

研究結果からは、単に知識を持つことよりも、エンパワーメントを感じることが擁護活動により大きな影響を与えることが明らかになりました。さらに、個人的な擁護が仲間による擁護を増やし、それがさらにシステム的な擁護につながるという相関関係も見られました。これらの結果は、研究者や専門家が親の擁護活動を増やすためのプログラムをより効果的に開発し、結果として自閉症の個人の生活の改善に寄与するための重要な知見を提供します。

Social functioning in children with ADHD: an examination of inhibition, self-control, and working memory as potential mediators

この研究は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持つ子供の社会的機能における行動抑制、自己制御、作業記憶の役割を調べています。ADHDの子供は、行動抑制、作業記憶、自己制御に顕著な障害を持ち、それが社会的問題に関連しているとされていますが、これらの神経認知的問題がどの程度社会的問題に影響を与えるかはまだ明確ではありません。

この研究では、ADHDの子供58人と通常発達(TD)の子供63人が自己制御、行動抑制、作業記憶のテストを受け、親と教師が子供の社会的機能を評価しました。結果から、作業記憶が教師による社会的機能評価とADHDの子供とTDの子供の間の関連を仲介することが分かりましたが、親による評価ではそのような関係は見られませんでした。行動抑制や自己制御は、親や教師による社会的機能評価と直接的な関連は見られませんでした。

これらの発見は、ADHDの子供の実行機能の困難が家庭と学校でどのように異なるか、またADHD関連の社会的困難を予測する特定の実行機能成分について重要な洞察を提供します。

Multimodal Assessment of Emotion Dysregulation in Children with and without ADHD and Disruptive Behavior Disorders

この研究では、注意欠陥・多動性障害(ADHD)のみ、ADHDと破壊行動障害(ADHD+DBD)を持つ子供、および通常発達(TD)の子供たちの感情調節の問題を多角的に評価しました。研究の目的は、感情調節、感情の反応性/揺らぎ、感情認識/理解、冷淡無情(CU)行動など、感情調整の特定の領域が診断分類とどのように関連しているかを探ることでした。

研究対象は若年層の子供たち(平均年齢5.47歳、約68.7%が男児、約81.4%がラテン系)で、親や教師の報告と行動観察を組み合わせたアプローチを用いました。結果から、すべての診断グループは、親や教師の報告に基づく感情調節、感情の反応性/揺らぎ、冷淡無情行動において互いに有意な差があることが示されました。ADHD+DBDグループは、ADHDのみのグループやTDグループに比べて、感情調節と感情の反応性/揺らぎが悪化し、冷淡無情行動のスコアが高いと報告されました。また、ADHD+DBDグループは、行動観察による感情調節、感情の反応性/揺らぎ、感情認識/理解の測定でTDグループよりも悪い成績を示しましたが、ADHDのみのグループとは有意な差はありませんでした。

多項ロジスティック回帰分析では、親や教師による報告された感情調節、感情の反応性/揺らぎ、冷淡無情行動が、観察された感情調節の測定を超えて診断状態と有意に関連していることが明らかになりました。このモデルは、ADHD+DBD(91.3%)とTD(95.9%)の子供を正確に分類しましたが、ADHDのみのグループの子供は45.7%の割合でのみ正しく識別されました。

この研究の結論は、感情調節の測定がADHD+DBDの子供を正確に識別するのに役立つ可能性があることを示唆していますが、ADHDのみの子供には必ずしも当てはまらないということです。

Attention-deficit/hyperactivity disorder is associated with more alcohol problems and less substance-free reinforcement: A behavioral economics daily diary study of college student drinkers

この研究は、行動経済学の理論に基づき、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持つ若者が高リスクな飲酒行動を示す可能性について調査しています。ADHDを持つ若者は、アルコールに対する高い要求(需要)を持ち、同時に楽しく価値のある非物質関連の活動への関与が低下していると考えられます。

この研究では、ADHDを持つ(51人)と持たない(50人)の大学生飲酒者(合計101人、18歳から22歳)が14日間連続して日記を記入し、そのデータ(合計1,414件の日記エントリー)を分析しました。目的は、(a) ADHDと平均日々のアルコール需要、非物質関連の楽しさ、目標指向行動に対する応答依存的なポジティブな強化(RCPR)の関連、(b) 同時発生する日々のアルコール需要、非物質関連の強化、RCPRと日々のアルコール使用およびアルコール関連の負の結果の関連、(c) これらの日内関連におけるADHDの調節効果を調査することでした。

結果から、ADHDは日々のアルコール関連の負の結果が多く、日々の非物質関連の楽しさやRCPRが少ないことと有意に関連していました。ADHDの有無にかかわらず、行動経済学的リスク要因とアルコール使用および負の結果との間には有意な関連がありましたが、効果は個人内および個人間で異なりました。ADHDによる個人内関連の調節効果はありませんでした。

この研究の結果は、ADHDを持つ飲酒者に特有の障害領域を明らかにし、ADHDと危険な飲酒に関する理論を進展させています。

Sex Education for Students with Autism Spectrum Disorder as Perceived by Their Families and Teachers in Saudi Arabia

この研究は、サウジアラビアにおける自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ生徒の性教育について、その家族と教師の視点を調査しています。質的アプローチを用いて、4人の教師と3つの家族(合計7人の参加者)から半構造化インタビューによってデータを収集し、テーマ分析法を用いて分析しました。インタビューからは、特にハラスメント、身体認識の発達、個人衛生に関する問題が際立っていました。

データから、ASDの生徒に対する性教育に関連する複数の課題が明らかになりました。これには、カリキュラム関連の課題、教師関連の課題、家族関連の課題が含まれます。最終的に、この研究はASDの生徒に対する性教育を確立するためのいくつかの推奨事項を提案しています。これには、実践に関連する標準化されたカリキュラムの開発、教師と家族のトレーニング、家族メンバーの関与、およびこの主題に関して教師と家族間のオープンな対話を促進することが含まれます。この情報は、ASDの生徒に対する性教育の確立、および家族や教師の開発を目指したターゲットとした介入の設計に利用することができます。

Prevalence of Somatic Diseases in Adults With Attention Deficit Hyperactivity Disorder in Japan is Highest in People Aged ≥40 Years With Mental Disorders: A Cross-sectional Study of a Japanese Health Insurance Claims Database

この研究は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と身体疾患との関連について調査し、特にADHDがある成人とない成人で、精神障害の有無によって身体疾患の発生率がどのように異なるかを比較しました。この横断研究は、2020年10月から2021年9月の間に日本の健康保険請求データベースを使用し、ADHDの診断と治療を受けている成人(ADHDグループ)と、ADHDのない年齢と性別が一致した対照群を対象に行われました。

研究の結果、ADHDグループは、非アルコール性脂肪肝疾患/非アルコール性ステアトヘパタイティス(NAFLD/NASH)、糖尿病合併症、痛風および高尿酸血症などの身体疾患の発生率が対照群に比べて有意に高かったことが分かりました。さらに、精神障害の有無による層別分析では、2型糖尿病(T2DM)、高血圧、および脂質異常症に関して、精神障害がある場合の発生率が1以上、ない場合が1未満であることが示されました。40歳以上の参加者では、心血管疾患(CVD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アトピー性皮膚炎を除くすべての身体疾患の発生率が有意に高かったことが明らかになりました。

結論として、ADHDを持つ成人、特に40歳以上および精神障害を持つ成人では、慢性疾患を含むいくつかの身体疾患の発生率が高いことが示されました。