ASD児のアイコンタクトを支えるAI/ロボット介入の系統的レビュー
この記事は、発達障害・特別支援の領域で直近に公表/採択された研究を横断的に紹介しており、内容は大きく①支援・介入の実装研究(インクルーシブ保育での職員全体研修による環境改善、ASD児のアイコンタクトを支えるAI/ロボット介入の系統的レビュー、TBI後の家族支援がADHDの有無で効き方が変わるなど)、②発達特性のメカニズム解明(乳児期EEGからの興奮—抑制バランスと感覚反応性、感覚特性→実行機能→社会性という媒介モデル、白質結合と言語、ADHDの分子軸〔RXR–PPAR-γ〕や網膜OCTA所見、親子の口腔—腸内細菌叢と代謝の連動、代謝疾患がASD様に見える症例など)、③医療・制度・社会の課題設定(ADHD診療の優先課題を医療者合意で抽出したデルファイ研究、ASD特性のある被告の量刑判断の不透明さを扱う判例ノート、小児慢性疾患に対するサプリの有効性・安全性の系統的整理)に加え、④診断支援AIの技術研究(rs-fMRIのマルチアトラス融合で解釈性と精度を両立する手法や、転移学習+説明可能AIでデータセット間汎化を狙う枠組み)まで含めて、「現場で効く支援の作り方」と「生物学的理解・評価指標のアップデート」と「ケア体制や社会実装上の論点」をまとめて俯瞰できる構成になっています。
学術研究関連アップデート
Staff Training to Improve the Preschool Educational Environment for Children with Special Needs
この論文は、特別な支援が必要な幼児が通うインクルーシブな保育園・幼稚園において、職員全体への体系的な研修が教育環境の質をどの程度改善できるかを検証した研究です。近年、通常保育の質のばらつきや、**早期集中行動介入(EIBI)などの特別支援が十分に実施されていないという課題が指摘されており、本研究はその改善策として「職員全員を対象とした継続的トレーニング」に注目しました。3つの保育ユニットを対象に、①4時間のワークショップと②2週間ごとのコーチングを17週間実施し、教育環境の質をAPERS-P-SE(自閉症支援に特化した環境評価尺度)で評価した結果、2園で教育・学習環境の質が明確に向上しました。特に、子どもが自発的に関わりやすい「エヴォケーティブ(働きかけ的)な場面」**の質が大きく改善し、昼食時の子どもの反応率向上や、EIBIの実施の質向上も確認されました。全体として、個別の専門家だけでなく、園全体の職員が共通理解を持ち、日常の関わり方を改善することが、特別支援教育の質を高める有効な方法であることを示した研究であり、現場に即した実践的な示唆を提供しています。
The role of artificial intelligence interventions to improve eye contact for children with autism spectrum disorder: a systematic review
この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもにとって難しさが指摘されやすい「アイコンタクト(目を見る行動)」を、人工知能(AI)を用いた支援でどこまで改善できるのかを、これまでに発表された研究を体系的に整理したシステマティックレビューです。近年、ロボットやウェアラブル機器、VRなどAI技術を活用した介入が増えているものの、その効果や限界をまとめて評価した研究は限られていました。
著者らはPRISMAガイドラインに基づき、6つの主要データベースから文献を検索し、最終的に16本の研究を分析対象としました。対象となった介入の多くはロボット型支援(12研究)で、ほかにウェアラブルデバイス、VR、ゲーム型ソフトウェアなどが含まれていました。結果として、多くの研究でアイコンタクトの頻度や持続時間が増加する傾向が報告されており、特にロボットを用いた介入は有望な可能性が示されています。
一方で、**日常生活や別の場面でも効果が続くか(般化)**を検証した研究は約4割にとどまり、**保護者や本人が「役に立つ」「受け入れやすい」と感じているか(社会的妥当性)**を評価した研究も半数未満でした。また、サンプルサイズが小さい研究が多く、「アイコンタクト」をどう定義・測定するかにもばらつきがあるため、結果を一般化するには慎重さが必要だと指摘されています。
総じてこのレビューは、AI、とくにロボット技術はASD児のアイコンタクト支援に一定の可能性を持つが、現時点ではエビデンスはまだ発展途上であると結論づけています。今後は、より大規模で方法論的に厳密な研究を通じて、効果の持続性・日常生活への広がり・本人や家族にとっての実用性まで含めて検証していく必要がある、という点がこの論文の重要なメッセージです。
Role of the retinoid X receptor–peroxisome proliferator-activated receptor-γ axis in adolescent attention-deficit hyperactivity disorder
この論文は、思春期のADHD(注意欠如・多動症)において、脳の発達や炎症調節に関わる分子システム「RXR–PPAR-γ軸」がどのように関与している可能性があるのかを、ヒトを対象に検討した研究です。RXR(レチノイドX受容体)とPPAR-γは、神経の可塑性(学習や適応)や神経炎症の制御に関与する核内受容体で、近年、ADHD様の認知機能障害との関連が動物研究で示唆されてきました。
研究では、ADHDのある思春期の若者104名と、年齢をそろえた定型発達の若者87名を比較しました。参加者は、作業記憶課題や**go/no-go課題(衝動抑制を測る課題)**を行い、あわせてADHD症状や情動調整の問題を評価する質問紙に回答しました。また、空腹時採血により、**血中のRXR-α、PPAR-γ、PPAR-γ共役因子(PGC-1α)**の濃度を測定しています。
その結果、ADHDのある思春期の若者では、RXR-αの血中濃度が有意に低いことが示されました。この差は、服薬の有無や症状の重さを調整しても残るもので、ADHDに特異的な生物学的特徴である可能性が示唆されます。一方で、PPAR-γやその共役因子のレベルには群間差は見られませんでした。さらに、RXR-αが低いほど、go/no-go課題での反応時間が遅い(=認知的制御が弱い)という関連も確認されました。
この研究の重要な点は、ADHDを「神経伝達物質(ドーパミンなど)」だけの問題としてではなく、より上位の遺伝子発現調節や神経炎症制御に関わる分子ネットワークの異常として捉える視点を、ヒトのデータで初めて示したことです。著者らは、RXR–PPAR-γ軸がADHDの認知特性とどう結びつくのか、脳内での仕組みを今後さらに詳しく調べる必要があると述べています。
一言でまとめると、この論文は
「思春期ADHDではRXR-αという分子の低下が見られ、これは衝動抑制などの認知機能と関連している可能性がある。ADHD理解と治療の新たな生物学的手がかりになり得る」
ことを示した研究です。
CoarseFuse: Graph-Coarsening-Based Multi-Atlas Functional Connectivity Fusion for Autism Spectrum Disorder Diagnosis
この論文は、**自閉スペクトラム症(ASD)を安静時fMRI(rs-fMRI)からより高精度かつ解釈しやすく判別するための、新しい脳ネットワーク解析手法「CoarseFuse」**を提案した研究です。ASDでは脳の機能的つながり(機能的結合)の違いが指摘されてきましたが、脳をどう分割するか(アトラスの選び方)によって結果が大きく変わるという課題があり、信頼できる画像バイオマーカーの確立が難しい状況でした。
CoarseFuseの特徴は、複数の脳アトラスを同時に使い、それらを「グラフ」として統合・圧縮する点にあります。まず、異なるアトラス間で「空間的に近い」「機能的に似ている」領域同士をつなげた**統合グラフ(supra-graph)**を構築します。次に、そのグラフを数式的に安定化・洗練(閉形式ラプラシアン更新)したうえで、**意味のある情報を保ったままノード数を大幅に削減(グラフ粗視化)**します。これにより、次元を約73%削減しつつ(450→120ノード)、脳ネットワークとしての解釈性を維持することができます。
この手法を、ASD研究で広く使われているABIDE Iデータセットに適用したところ、判別精度(Balanced Accuracy 82.1%)やF1スコア(82.0%)が、従来の単一アトラス法や単純な融合手法を上回る結果となりました。また、施設ごとに撮像条件が異なるデータを1施設ずつ除外して検証する厳しい条件でも、安定した性能を示しました。さらに、最終的に得られた「まとめられた脳領域(スーパーノード)」は、デフォルトモードネットワークやサリエンスネットワークなど、既知の脳ネットワークと対応しており、単なるブラックボックスではないことも確認されています。
一言でまとめると、この論文は
「複数の脳アトラスを賢く統合・圧縮することで、ASDを高精度・高再現性・高解釈性で判別できる新しいrs-fMRI解析手法を示した」
研究です。将来的には、ASDの画像診断補助や、脳ネットワーク異常の理解を深める基盤技術としての活用が期待されます。
Optical coherence tomography angiography findings in ADHD
この論文は、注意欠如・多動症(ADHD)が脳だけでなく「眼(網膜)」にも構造的な変化を伴う可能性があるのかを、最新の眼科画像技術であるOCTアンギオグラフィ(OCTA)を用いて検討した研究です。ADHDは神経発達症として理解されていますが、近年では視覚処理や眼の構造・機能との関連にも注目が集まっています。
研究は成人ADHD患者50名と健常対照50名を比較するケースコントロール研究として行われました。年齢、性別、視力、眼圧、眼軸長、屈折などの基本的な眼科指標は両群で一致しており、眼科的条件の違いによる影響は排除されています。その上で、OCTAを用いて黄斑部の網膜厚、視神経周囲の網膜神経線維層(RNFL)、網膜血管密度を詳細に評価しました。
その結果、ADHD群では健常群と比べて、
- 黄斑部の網膜厚が薄い
- 視神経周囲RNFLが薄い
- 網膜血管の密度(血流)が全象限で低下している
ことが一貫して認められました。これらの差はいずれも統計的に有意であり、ADHDでは網膜の神経構造と微小血管の両方に変化が存在する可能性が示唆されます。
網膜は発生学的に中枢神経系(脳)の一部と考えられており、この研究は、ADHDにおける神経発達の違いが「眼に見える形」で反映されている可能性を支持する結果と言えます。将来的には、OCTやOCTAによる網膜評価が、**ADHDの理解を深める補助的な生物学的指標(バイオマーカー)**として役立つ可能性もあります。
一言でまとめると、この論文は、
「成人ADHDでは、網膜の神経構造と血管構造が健常者よりも低下しており、ADHDが脳だけでなく眼にも影響を及ぼす神経発達特性であることを示唆している」
ことを明らかにした研究です。
Top ten priorities identified by healthcare professionals to support the clinical care of individuals with attention-deficit/hyperactivity disorder: A Canadian Delphi study
この論文は、**ADHD(注意欠如・多動症)の臨床ケアをより良くするために、医療専門職が「今、何を最優先すべきだと考えているのか」**を明らかにした、カナダ全国規模のデルファイ研究です。研究者側の視点ではなく、現場の医師・心理職・医療専門職の合意形成に基づいて優先課題を整理している点が特徴です。
研究では、2022〜2024年にかけて、カナダの医療専門職96名が参加し、**3回のオンライン調査(デルファイ法)**を実施しました。デルファイ法とは、複数回の評価と再評価を通じて、専門家の意見を徐々に収束させていく方法です。最終的に、90%以上が「重要(4点以上)」と評価した項目を「合意された優先課題」として抽出しました。
その結果、ADHD支援におけるトップ10の優先課題が特定されました。中でも、100%の完全合意が得られた最重要項目は次の2つでした。
- ADHDに十分な専門性をもつ医療者にアクセスできること
- 診断・治療・心理社会的支援など、ADHD関連サービスにアクセスできること
つまり、医療者たちは「新しい治療法」以前に、そもそも適切な知識と経験をもつ専門家や支援サービスに、当事者がたどり着けない現状そのものが最大の問題だと認識していることが明確になりました。
トップ10全体を見ても、内容の約半数は専門家・専門サービスへのアクセス改善に集中しており、次いで多かったのが、
- ADHDの社会情緒的影響や併存症に関する研究
- 女性(特に見逃されやすい女児・女性)の診断に関する研究
- 医療者や学校現場へのADHD教育・啓発
といったテーマでした。これは、ADHDが単なる「注意の問題」ではなく、感情・対人関係・ジェンダー差・教育環境と深く結びついた生涯的課題であるという、現場の実感を反映しています。
結論として著者らは、カナダにおけるADHDケアの質を高めるためには、全国レベルで専門人材とサービスへのアクセスを改善する政策的取り組みが不可欠であり、それが当事者と家族の生活の質向上につながると述べています。
一言でまとめるとこの論文は、
「ADHD支援で最も不足しているのは知見ではなく、“適切な専門家と支援につながれる仕組み”であり、医療者自身がそれを最大の優先課題だと一致して認識している」
ことを明確に示した研究です。
Frontiers | Case Report: Hyperprolinemia Type II in a Child with Autism Spectrum Disorder and ALDH4A1 Gene Variant in a Consanguineous Family
この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)と非常によく似た発達像を示した、まれな先天性代謝疾患「高プロリン血症Ⅱ型(Hyperprolinemia type II:HPII)」の症例報告です。ASDの診断の背景に、遺伝性代謝異常が隠れている可能性を示した点が重要な意義を持ちます。
報告されたのは、サウジアラビア出身の就学前女児で、近親婚の両親から生まれました。幼少期から全般的な発達の遅れがあり、臨床的には自閉スペクトラム症と診断され、行動上の問題も認められていました。一見すると「典型的なASD症例」に見える経過でした。
しかし、詳細な検査を行ったところ、血液および尿中のプロリン(アミノ酸)が著しく高値であることが判明し、プロリン代謝異常が疑われました。さらに**全エクソーム解析(遺伝子検査)**により、ALDH4A1遺伝子にホモ接合の変異が見つかりました。この遺伝子は、高プロリン血症Ⅱ型(HPII)という常染色体劣性遺伝の代謝疾患と関連しています。
家族の遺伝子検査では、両親や兄弟はそれぞれ**保因者(ヘテロ接合または関連する型)**であることが確認され、近親婚家系における遺伝的背景も明らかになりました。なお、この変異は「意義不明(VUS)」と分類されていますが、臨床症状と代謝異常が一致していることから、病態との関連が強く示唆されています。
この症例が示す最も重要なポイントは、
HPIIの症状(発達遅滞、行動問題、自閉的特徴)が、ASDと非常によく重なるという点です。つまり、表面的にはASDに見えても、背景に治療や管理の可能性がある代謝性疾患が存在する場合があるということです。
著者らは結論として、
- 発達障害やASDと診断された子どもにおいても、特に重度・非典型例や近親婚家系では、代謝検査や遺伝子検査を検討すべきである
- ASDは一つの疾患ではなく、多様な生物学的背景をもつ「症候群的な診断」である
ことを強調しています。
一言でまとめるとこの論文は、
「自閉スペクトラム症と診断された子どもの中には、稀な代謝・遺伝性疾患が隠れていることがあり、包括的な評価が診断と支援の質を大きく左右する」
という重要な臨床的メッセージを伝える症例報告です。
Frontiers | Sensory processing atypicalities and social responsiveness in autism spectrum disorder: the mediation of executive function
この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)の子どもに見られる「感覚の特性(感覚過敏・鈍感など)」が、どのように社会性の困難さにつながるのかを、その間にある**実行機能(とくに感情や行動のコントロール)**という視点から明らかにしようとした研究です。
研究には、7〜14歳のASDのある子ども・青年88名が参加し、保護者による質問紙を用いて、①社会性(SRS)、②実行機能(BRIEF-2)、③**感覚処理特性(SP-2)を評価しました。そして、「感覚の特性 → 実行機能 → 社会性」という関係が成り立つのかを媒介分析(メディエーション分析)**で検討しています。
その結果、重要なことが分かりました。
- *感覚刺激を避けやすい特性(sensory avoiding)**や、**刺激に気づきにくい特性(sensory registration)**は、それ自体が直接社会性を低下させているというよりも、実行機能、とくに「感情調整(emotional regulation)」や「行動調整(behavioral regulation)」を通して社会性に影響していることが示されたのです。
具体的には、
-
感覚回避 → 社会性の低さの関係は、
👉 感情調整が完全に媒介していました
(=感覚過敏そのものより、「感情を落ち着かせにくいこと」が社会性の困難につながる)
-
感覚鈍麻 → 社会性の低さの関係は、
👉 感情調整が一部媒介
-
*行動調整(衝動抑制・行動コントロール)**も、
👉 感覚回避・感覚鈍麻の両方と社会性を部分的につないでいました
これらの結果は、年齢・性別・知能の影響を統計的に調整しても成り立つことが確認されています。
この研究が示す大きなポイントは、
ASDの社会性の困難さは、「感覚の問題」だけでも、「実行機能の弱さ」だけでも説明できず、両者が連鎖的につながっているという点です。特に、感覚の負担が高い → 感情や行動のコントロールが難しくなる → 社会的やりとりがうまくいかなくなる、という理解の枠組みが支持されました。
結論として著者らは、
ASDの社会性支援では、感覚配慮だけでなく、感情調整や行動調整といった実行機能への支援を組み合わせることが重要であると述べています。
一言でまとめるとこの論文は、
「ASDの子どもにおける社会性の困難さは、感覚特性が“感情・行動のコントロールの難しさ”を通して影響しており、実行機能がその“橋渡し役”になっている」
ことを、データに基づいて示した研究です。
Frontiers | Exploring Behavioral Dynamics: An In-Depth Analysis of adult Students with Disabilities
この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)、脳性まひ、ダウン症など多様な障害のある子ども・若者が、家庭や学校でどのような行動特性や対人関係の特徴を示すのかを、きょうだい・保護者・教師の視点から深く掘り下げた質的研究です。数値データでは捉えにくい「日常のふるまい」や「関係性の中での感情の動き」に焦点を当てています。
研究はインド・ケーララ州マラプラムにある支援団体で行われ、教師5名と、20名の障害のある子ども・若者の保護者に対して半構造化インタビューを実施しました。対象となった障害は、ASD、脳性まひ、脳の発達不全、ダウン症など多岐にわたります。収集した語りは、テーマ分析(thematic analysis)によって段階的に整理され、最終的に47のコードから9つの主要テーマが抽出されました。
明らかになった主な行動・情緒面のテーマは以下の通りです。
- 内向性:集団より一人を好む、他者との関わりを避ける傾向
- コミュニケーションの困難:言語・非言語の意思疎通の難しさ
- 攻撃性:衝動的な怒りや行動として表れることがある
- 愛着行動:特定の人への強い依存や不安定な距離感
- 感情理解・感情意識:自分や他者の感情を理解・表現する難しさ
- 道徳性:善悪の理解や社会的ルールの捉え方の特徴
- 共感性:他者の気持ちへの反応の仕方の個人差
- 嫉妬:きょうだい関係などで顕在化しやすい感情
- 不適切な性的行動:発達や理解のズレから生じる問題行動
著者らは、これらの行動が「問題行動」として一括りにされがちである一方、背景には愛着の不安定さ、感情調整の難しさ、社会的理解のズレがあることを強調しています。特に、家庭内(きょうだい関係)と学校環境の双方での人間関係が、行動の現れ方に大きく影響していることが示されました。
結論として本研究は、障害のある子ども・若者を支援する際には、
- 行動の表面だけでなく感情や愛着の質
- 回避・依存といった対人スタイル
- 情動知能(感情理解・調整力)
を総合的に捉える必要があると述べています。教育・福祉の現場では、単なる行動修正ではなく、感情的安全性と社会的理解を育てる支援が、社会性や心の健康を高める鍵になると示唆しています。
一言でまとめるとこの論文は、
「障害のある子ども・若者の行動は、愛着・感情・人間関係の中で形づくられており、周囲の理解と情緒的支援が社会的適応を左右する」
ことを、当事者を取り巻く人々の語りから丁寧に描き出した研究です。
Frontiers | Parents-Child multiple sites of Microbial and Metabolic Signatures in Autism Spectrum Disorder
この論文は、自閉スペクトラム症(ASD)のある子どもとその親を含む家族単位に着目し、口腔(口の中)と腸内のマイクロバイオータ(細菌叢)および代謝物の特徴が、どのように共有・変化しているのかを調べた研究です。ASD研究では腸内細菌への関心が高まっていますが、本研究はさらに一歩進み、**親子間での微生物の「水平伝播(家族内での共有)」と、口腔―腸連関(oral–gut axis)**に注目しています。
研究では、ASD児23名とその親17名、および非ASD児18名とその親16名から、口腔サンプルと便サンプルを採取し、微生物解析(マイクロバイオーム)と代謝物解析(メタボローム)を統合的に実施しました。その結果、ASD家族では、口腔内の細菌多様性が高く、腸内細菌の構成が大きく変化していることが分かりました。特に、腸内環境の指標としてよく使われるFirmicutes/Bacteroidetes比が低下しており、ASD家族では腸内バランスが非ASD家族とは異なる状態にあることが示されました。
細菌レベルでは、ASD児の腸内でPrevotella_9が増加していることが特徴的でした。また、Caulobacter や Serratiaといった細菌が、口腔と腸の両方で連動して変化しており、口から腸まで一貫した「ディスバイオシス(腸内細菌の乱れ)」パターンが存在する可能性が示唆されました。
代謝物の解析では、グルタチオン代謝やL-ラムノース分解経路など、重要な代謝経路に異常が見られました。ASD児では、グルタミンやAla-Glyといった代謝物が低下しており、一方で**glycylproline(ジペプチド)はASD家族を判別する指標として高い精度(AUC=0.91)**を示しました。さらに、特定の腸内細菌(Holdemanella)と脂質代謝物との間に強い相関が見られ、細菌変化と代謝異常が密接に結びついていることが示されています。
結論として本研究は、ASD家族では、口腔から腸にかけて特徴的な細菌叢と代謝の変化が見られ、それらが親子間で共有されている可能性を示しました。これは、ASDの背景にある生物学的要因として、家族内で受け継がれる微生物環境や代謝状態が関与している可能性を示唆するものです。
一言でまとめるとこの論文は、
「ASDは個人だけの問題ではなく、家族全体で共有される口腔―腸マイクロバイオータと代謝の特徴と結びついている可能性がある」
ことを、微生物と代謝の両面から示した研究です。今後、家族単位での腸内環境介入や予防・支援の可能性を考えるうえで、重要な基礎的知見を提供しています。
Frontiers | Death penalty versus indefinite imprisonment in Japan: a case note of two court judgments involving autism spectrum disorder and autistic traits
この論文は、日本において自閉スペクトラム症(ASD)または自閉的特性をもつ被告人が重大犯罪を犯した場合に、なぜ「死刑」と「無期懲役」という異なる判決が下されたのかを検討した**判例研究(ケースノート)**です。世界精神医学会(WPA)は、精神疾患や知的・発達障害のある人への死刑適用を強く非難していますが、日本ではASDの診断や特性が認められていても死刑判決が確定するケースが存在します。
本論文では、医療専門職であり、ASDまたは自閉的特性を有していた2名の被告が複数殺人を犯した日本の裁判例を取り上げています。両事件とも、精神鑑定によりASD特性の存在は一定程度認められていましたが、一方は死刑、もう一方は無期懲役という大きく異なる結論に至りました。著者らは、判決文や鑑定内容を比較し、司法判断がどのような点を重視して分岐したのかを分析しています。
分析の結果、判決の分かれ目となったのは、ASD特性そのものよりも、「反省・後悔の表出」「感情理解」「更生可能性」に関する評価であったことが浮かび上がりました。しかし、これらの要素は、ASDの特性(感情表出の乏しさ、言語化の困難さ、対人理解の偏りなど)によって外見上は否定的に見えやすいにもかかわらず、評価基準が明確に標準化されていないまま用いられている点が問題として指摘されています。つまり、「反省があるか」「更生できるか」といった主観的判断が、死刑か無期懲役かを左右している可能性があるのです。
著者らは結論として、ASDや自閉的特性をもつ被告人の責任能力や更生可能性を評価する際には、精神医学的知見をより一貫性・透明性のある形で司法に反映させる必要があると主張しています。特に、ASD特性による行動様式や感情表現の違いが、不利に解釈されないよう、客観的でエビデンスに基づいた評価枠組みの整備が不可欠だと強調しています。
一言でまとめるとこの論文は、
「ASD特性をもつ被告人に対する日本の量刑判断では、医学的理解よりも主観的な『反省』や『更生可能性』評価が大きく影響しており、その不透明さが死刑適用の是非という重大な問題につながっている」
ことを、具体的な判例を通して明らかにした研究です。司法と精神医学のより健全な連携の必要性を強く問いかける内容となっています。
Frontiers | Dietary and Complementary Oral Supplements for the Management of Chronic Diseases in Children: A Systematic Review
この論文は、小児期の慢性疾患に対して、薬物療法以外の選択肢として用いられている「食事由来・経口サプリメント」が本当に有効で安全なのかを、既存研究を体系的に整理したシステマティックレビューです。近年、慢性疾患をもつ子どもの家族が補完・代替的なアプローチを求めるケースが増えている一方で、その科学的根拠は分野ごとにばらつきがあり、全体像は明確ではありません。
著者らは、2005〜2025年に発表された研究を対象にPRISMAガイドラインに沿って文献検索を行い、18歳未満の小児・青年の慢性疾患に対する経口サプリメントの効果と安全性を検討した13研究を抽出しました。対象疾患には、自閉スペクトラム症(ASD)、機能性消化管障害、嚢胞性線維症(CF)、1型糖尿病(T1D)、気管支肺異形成(BPD)、若年性特発性関節炎などが含まれています。
評価されたサプリメントは、プロバイオティクス、オメガ3・6脂肪酸、ビタミン類、ミネラル(亜鉛・マグネシウムなど)、グルタチオン、Kre-Celazine®、およびキレート剤のDMSAなど多岐にわたりました。その結果、多くのサプリメントで、腸内細菌叢の変化、炎症マーカーの調整、生理指標の改善といった生物学的な作用(バイオアクティビティ)は確認されました。しかし、症状改善などの臨床的効果は一貫せず、特定のサブグループに限られる場合が多いことが示されました。
安全性については、プロバイオティクス、多価不飽和脂肪酸、マグネシウム、亜鉛、ビタミンAなどは概ね良好と評価されました。一方で、重金属排出を目的とするDMSAキレート療法については、副作用やリスクが大きく、安全性に深刻な懸念があると明確に指摘されています。
著者らは結論として、食事・経口サプリメントは小児慢性疾患における「補助的介入」として一定の可能性はあるものの、現時点では標準治療として広く推奨できる段階にはないと述べています。今後は、大規模・多施設での長期研究、評価指標の標準化、そして「誰に効くのか」を見極めるバイオマーカーの探索が不可欠であると強調しています。
一言でまとめるとこの論文は、
「小児慢性疾患に対するサプリメントは生物学的な作用は示すものの、臨床的有効性は限定的で、科学的根拠に基づいた慎重な活用が必要である」
という現時点での到達点を、分野横断的に整理したレビューです。
Frontiers | Deep Transfer Learning and Explainable AI Framework for Autism Spectrum Disorder Detection Across Multiple Datasets
この論文は、複数の異なるデータセットをまたいで自閉スペクトラム症(ASD)を高精度に検出するために、深層学習(Deep Learning)と転移学習(Transfer Learning)、さらに説明可能AI(Explainable AI)を組み合わせた枠組みを提案した研究です。ASD検出モデルは、国や年齢層、質問内容が異なると性能が落ちやすいという課題があり、本研究はその汎用性を高めることを目的としています。
まず著者は、サウジアラビアの幼児ASDスクリーニングデータセットを用いて、複数の機械学習モデル(従来型ML、LSTM、Attention付きLSTMなど)と深層ニューラルネットワーク(DNN)を比較しました。データにはASD例が少ないという偏りがあったため、**SMOTE(少数クラスを人工的に増やす手法)**でクラス不均衡を補正しています。その結果、正則化やドロップアウトを組み込んだDNNが最も高い性能を示しました。
次に、このDNNで学習した知識を転移学習として活用し、別の2つのASD関連データセットに適用しました。ここでは、新しいデータセットで大量の学習データを用意しなくても、精度が向上することが確認されました。つまり、ある集団で学んだASDの特徴が、**別の国・別の条件のデータにも一定
