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プロンプトとは?成功体験は多く、失敗体験は少ないトレーニング方法!【プロンプト実践編】【応用行動分析学・ABA】

· 約15分
Tomohiro Hiratsuka

本記事は、プロンプト基礎知識編、プロンプトトレーニング設計編に続く3部目である実践編です。3つのアプローチそれぞれに関して具体的な実践方法をご紹介します。

はじめに

本記事は、プロンプト基礎知識編、プロンプトトレーニング設計編に続く3部目である実践編です。3つのアプローチそれぞれに関して具体的な実践方法をご紹介します。

https://www.easpe.com/blog/article/15

https://www.easpe.com/blog/article/16

最小-最大プロンプトの実践方法

最小最大プロンプトは、3〜5のプロンプトレベルを定め、プロンプトレベルの小さいものから順に適応していく方法です。ここからは最小最大プロンプトに関して具体的な実施ステップをご紹介します。

1.注意と刺激を確立する

まずは目標行動のトレーニングを開始するにあたり、設計編で決めた合図やサイン、先行刺激を使用して、児童の注意の獲得と先行刺激の確立を行います。

児童に注意を向けてもらう方法としては、直接対象刺激や合図を提供することで得られる場合もありますが、別途注意を向けてもらうように工夫する必要がある場合もあります。

工夫が必要な場合には、アイコンタクトや使用するものに触れさせるなどのアプローチが有効です。いずれの場合にせよ児童の注意がこちらに向いているタイミングで先行刺激と合図を提供します。

1.先生がたかしに「ちょっと見て」、と声をかける 2.たかしが先生の方を見る 3.先生が、たかしに鯨のイラストを見せる 4.生がたかしに、イラストを指差しながら「これなんだ?」と聞く

2.反応待機

刺激と合図を提供した後で、計画した時に決めた時間だけ児童の反応を待ちます。

3.反応への対応

決めた反応時間を待った後、児童の行動に合わせて、それぞれに対応します。

主な対応パターンは以下の通りです。

対象行動やスキルを使用できた場合

  1. 目標行動に対して強化子を提供する
  2. 出来たことを伝える(例:そうだね鯨だね。すごい自分で手洗い出来たね)

対象行動やスキルの使用ができなかった場合

  1. 誤った反応を中断させる

  2. 次のレベルのプロンプトを提供する

  3. 対象行動やスキルが使用できるレベルまでプロンプトを順次使用する

  4. 目標行動に対して強化子を提供する

そもそも反応がない場合

  1. 次のレベルのプロンプトを提供する

  2. 対象行動やスキルが使用できるまでプロンプトを順次使用する

  3. 目標行動に対して強化子を提供する

4.データ収集

基本的なトレーニングは1〜3のステップに準じて実施し、各トレーニングセッションごとにモニタリングデータを収集していきます。

このアプローチを使用する場合に児童の反応としては、以下の5種類の反応があるためそれぞれに関して、取集していくことが必要です。

プロンプトなしでの正反応 自立レベル(プロンプトなし)で対象行動やスキルの使用が出来た

プロンプトありでの正反応 自立レベル以外のプロンプトを用いた時に、対象行動やスキルの使用ができた

プロンプトなしでの誤反応 プロンプトを使用しなかった場合に、対象行動やスキルを誤って使用するまたは別な行動をする

プロンプトありでの誤反応 プロンプトを使用した場合に、対象行動やスキルを誤って使用するまたは別な行動をする

無反応 正誤問わずなんの反応も帰ってこない

また個別スキルと連鎖スキルの場合には収集方法が異なります。連鎖スキルの場合には、連鎖スキルのうちどの程度できるようになっているのか把握するようにするため、割合を求めます。

個別スキルの場合のデータ収集例

連鎖スキルの場合のデータ収集例

5.トラブルシューティング

プロンプトを用いたトレーニングを実施するにあたり、データ収集をしてあまり効果が生じていないようなデータが得られる場合には下記のケースに応じて対応する必要があります。

コントロールプロンプトなのに対象行動が発生しない

  • より介入度の強いプロンプトに変更する

中間レベルでの誤反応が頻発する

  • プロンプトレベルの階層を増やす

  • 別のプロンプトを使用する

  • タスク難易度の再検討

プロンプト待ちが発生する

  • プロンプトあり、なし場合の正反応への強化を変更する
  • プロンプトありの正反応への強化をなくす

どのレベルでもうまくいかない

  • より強力な強化子を見つける

段階的ガイダンスの実践方法

1.注意と刺激を確立する

ここは最小最大プロンプトとほぼ同様です。以下に簡単な例を紹介します。

たかしが外で遊んで室内に戻ってきた時に、先生はそばに寄って名前を呼ぶ 刺激への注意の確立先生はたかしの手を見て、「汚れちゃったね」と声をかける 先生はたかしに、「手を洗いましょう」と声をかける

2.反応待機

刺激と合図を提供した後で、計画した時に決めた時間だけ児童の反応を待ちます。

3.反応への対応

決めた反応時間を待った後、児童の行動に合わせて、それぞれに対応します。主な対応パターンは以下の通りです。

初回合図の後に反応がない場合

  • 連鎖タスクを開始するためだけに必要な量と種類のプロンプトを提供する
  • 児童が連鎖タスクを開始したら、プロンプトの強度や量を減少させていく

連鎖タスクを途中でやめてしまう場合

  • 直ちに、連鎖タスクをするのに十分な量と適切な種類のプロンプトを提供し連鎖タスクができるように促す

対象行動やスキルが誤って使用される場合

  • 直ちに誤った使い方を中断し、連鎖タスクを正しく行うために必要な量と適切な種類のプロンプトを提供する。

身体プロンプトに抵抗する場合

  • 動かさず児童の手を握りってじっとする
  • 抵抗が治ったら、連鎖タスクを完了できるように適切な量と種類のプロンプトを提供しながら、動かす。

連鎖スキルの個別ステップが適切に完了した時

  • 口頭で褒めたり喜んだり社会的強化子を提供する

連鎖タスクが完了した時

  • 連鎖タスクが適切に完了したことに対して強化子を提供する

連鎖タスクの最後のステップで抵抗が生じる場合

  • 強化子は提供しない
  • 児童が落ち着くまで、対象行動やスキルを教えようとしない
  • 連鎖タスクの最初からやり直す

4.データ収集

こちらも最小最大の場合と同様に、データ収集を行います。

対象となるデータは、プロンプトなしで完了した連鎖タスク、プロンプトありで完了した連鎖タスク、抵抗を伴って完了した連鎖タスクの3種類です。

段階的ガイダンスのデータ収集例

同時プロンプトの実践方法

1.注意と刺激の確立

こちらも上記二つとやることは同じです。

2.導入セッションの実施

導入セッションでは、児童の反応を待たずにすぐさまコントロールプロンプトを使用します。

児童の注意を確立して、刺激を提示し、合図を出したあとすぐにコントロールプロンプトを提示します。

先生は、たかしの名前を呼ぶ 先生は、「いぬ」と書かれたフラッシュカードをたかしに見せる 先生はたかしに、「これなんて読む?」ときく 先生は、「いぬ」と言う(児童が音声模倣ができまた先生の言葉をいつもほぼ完璧に模倣できる場合、コントロールプロンプトと言える)

導入セッションにおいて、コントロールプロントを使用して児童が対象行動やスキルを使用できた場合には、強化子を与えまた何ができたのか分かるように伝えます。

すご〜い、よく読めたね!「い・ぬ」って読むんだね

一方児童がスキルを使用しない反応しないような場合、つまりプロンプトエラーが発生してしまった場合には、その反応を無視して次の導入セッションに移ります。

3.確認セッションの実施

確認セッションの場合にはプロンプトを提示した後で児童の反応を決めた時間だけ待ちます。

児童が対象行動やスキルを使用できた場合には、強化子を与え何ができたのか分かるように説明します。

一方対象行動やスキルが使用できなかったまたは反応がないといった場合には、それらの反応を無視して次の確認セッションに移行します。

4.データ収集

データ収集を行います。導入セッション、確認セッションのいずれにおいてもデータ収集を行い、プロンプトが対象行動やスキルを使用するに十分なものか、また強化子は有効に機能しているかどうか確認します。

導入セッションのデータ収集例

導入セッションにおいてデータ収集をした場合に仮に誤反応が25%を超えてしまったら、コントロールプロンプトを変更する必要があります。 確認セッションの場合もデータ収集の形式は同じです。

5.トラブルシューティング

プロンプト、アプローチを変更する必要があるケース

  • 5連続の確認セッションにおいて誤反応の割合が25%を超える
  • 導入セッションの正反応率が100%

別な強化子を使う必要があるケース

  • 3連続の確認セッションにおいて無反応率が25%を超える

連鎖タスクのステップを変更する必要があるケース

  • 連鎖タスクの工程をスキップしてしまう

まとめ

以上がプロンプトのを実際に実践していく上での具体的なステップになります。

どのアプローチを採用しても、最初にやることは同じですがデータの収集はそれぞれ見方が違います。

もしプロンプトを用いたトレーニングで進捗が見られない場合にはそれぞれのアプローチにあるトラブルシューティングを試してみるか、そもそも行動の定義が正確にできているか、児童にマッチした課題やプロンプトになっているのかという点を検討するのが有効です。