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ADHDとネット問題を媒介する親子関係や親のトラウマ

· 約47分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事は、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害を中心とした発達障害領域における最新の国際研究を幅広く俯瞰し、「個人の特性だけでなく、家庭・医療・社会・文化・生物学的要因がどのように重なり合って発達や行動、生活の質に影響するのか」を多角的に示した研究紹介集である。具体的には、ADHDとネット問題を媒介する親子関係や親のトラウマ、文化適応された社会性支援プログラム、医療者向け自閉症教育、葉酸代謝や甲状腺ホルモンと神経発達の関連、ASDやADHDのスクリーニング・診断精度、脳ネットワークの違い、運動介入の効果、心理要因が関与する身体症状、チャレンジング行動の類型化と支援格差などを扱い、**「発達障害は単一の原因や単純な介入で理解・解決できるものではなく、エビデンスに基づいた個別化支援と、家族・医療・社会制度・文化を含む包括的な視点が不可欠である」**という共通したメッセージを浮かび上がらせている。

学術研究関連アップデート

Indirect and Conditional Associations Between ADHD and Risky Internet Use in Elementary School Children With Parent-child Conflict and Maternal Childhood Trauma

この論文は何を明らかにしようとしたのか?

ADHDのある子どもは、

  • ゲーム・SNSの使いすぎ
  • 年齢に不相応なネット利用
  • ルールを守れないオンライン行動

といった 「リスクの高いインターネット利用(RIU)」 を示しやすいことが知られています。

しかし著者らは、

ADHDだから直接ネット問題が起きるのではなく、

家庭内の関係性や親の過去の体験が間に入っているのではないか?

という問いを立てました。

特に注目したのは次の2点です。

  1. ADHD → 親子の葛藤 → リスクの高いネット利用
  2. その流れが、母親の幼少期トラウマによって強まるのか

研究方法(何をしたのか)

  • 対象:

    • 小学生 120名(6〜12歳)
      • ADHDの新規診断児:60名
      • 対照群:60名
  • 評価内容:

    • ADHDの有無
    • 親子の葛藤(口論・衝突・関係の緊張)
    • リスクの高いインターネット利用(RIU)
    • 母親の子ども時代のトラウマ体験
  • 統計手法:

    • 媒介(間に入る要因)」と
    • 調整(影響を強める要因)

    を同時に検討する高度な分析モデルを使用


主な結果(ここが重要)

① ADHDとネット問題は「直接」つながっていなかった

一見すると、

  • ADHDの子どもほど
  • RIUが多い

ように見えますが、

👉 親子の葛藤を考慮すると、

ADHDとRIUの直接的な関連は消えました。


② カギは「親子の葛藤」だった

  • ADHDがある → 親子の葛藤が増える
  • 親子の葛藤が多い → RIUが増える

つまり、

ADHD → 親子関係の悪化 → ネット問題

という 間接的な経路 が強く支持されました。


③ 母親のトラウマがあると、この流れがさらに強まる

この論文の最大の特徴です。

  • 母親が

    • 虐待
    • ネグレクト
    • 強い逆境体験

    を多く経験しているほど、

👉 ADHD → 親子葛藤 → RIU のつながりが強くなる

ことが示されました。

これは、

  • トラウマがあると
    • ストレス耐性が下がりやすい
    • 子どもの行動への反応が強くなりやすい

といった 世代間の影響 を示唆します。


この研究が示す重要なメッセージ

ネット問題は「子どもだけの問題」ではない

この論文は明確に、

子どものネット問題は、

家族関係と親の背景を切り離しては理解できない

という立場を取っています。


支援の方向性は「制限」より「関係性」

  • スマホを取り上げる
  • 利用時間を厳しく制限する

だけでは不十分で、

  • 親子関係の修復
  • 葛藤の減少
  • 親自身の心理的ケア(トラウマ配慮)

が、結果的にネット問題を減らす可能性があると示唆しています。


注意点(限界)

  • 横断研究(因果関係は確定できない)
  • サンプルサイズは中規模
  • 文化背景の違いには注意が必要

一文でまとめると

ADHD児のリスクの高いインターネット利用は、ADHDそのものよりも「親子の葛藤」を通じて説明され、その影響は母親の幼少期トラウマによって強められる可能性があり、ネット問題への対応にはトラウマ配慮を含む家族支援が重要であることを示した研究です。

Cultural Adaptation and Evaluation of the PEERS® Program for Autistic Young Adults in Iran: A Mixed-Methods Study

この論文は何を明らかにしようとしたのか?

PEERS®(対人関係スキルトレーニング) は、

自閉症のある思春期・若年成人向けに開発された、エビデンスのある社会性支援プログラムです。

ただし、PEERS®は主に欧米文化を前提に作られており、

文化や社会規範が大きく異なる国でも、そのまま有効なのか?

どのような調整が必要なのか?

という点は十分に検証されていませんでした。

本研究は、

イランという文化的・社会的文脈の中でPEERS®を適応・実施し、効果と体験を検討した初の混合研究です。


研究方法(何をしたのか)

対象

  • 自閉症のある若年成人男性 21名(18〜30歳)

  • 無作為に:

    • PEERS®介入群(16週間)
    • 待機対照群

    に割り付け


介入内容

  • 週1回・16週間のグループセッション
  • 本人向けセッション+保護者向けセッションを並行実施
  • 内容:
    • 会話の始め方
    • 友人関係の築き方
    • 対立の対処
    • 社会的ルールの理解 など

評価方法

定量評価(質問紙)

  • 社会的機能
  • 共感性
  • 孤独感
  • 社会的スキルの知識(TYASSK)
  • 葛藤・対人トラブル

開始前/終了直後/12か月後に評価

(すべてペルシャ語版)

定性評価

  • 本人・家族・支援者へのフォーカスグループインタビュー
  • プログラム体験や文化的課題を分析

主な結果(ここが重要)

① 大きな「全体差」は出なかったが、意味のある改善は確認された

  • 群間比較(介入群 vs 待機群)では、

    • 多くの指標で有意差は出なかった
  • しかし介入群内では:

    • 対人葛藤の減少
    • 社会的スキル知識(TYASSK)の有意な向上

    が確認され、

👉 これらは 12か月後も維持 されていました。


② 「スキルが身についた感覚」と「自信の向上」が語られた

定性分析では、参加者自身が:

  • 人と話すことへの不安が減った
  • 社会的場面に挑戦する自信がついた
  • 他者との関係を前向きに捉えられるようになった

と感じていることが明らかになりました。


③ 実施上の課題は「文化」に強く関係していた

参加者・家族・支援者からは、次のような課題が指摘されました。

  • 自閉症への社会的理解がまだ低い
  • 宿題(ホームワーク)への抵抗感
  • セッション内容が密で消化が大変
  • イラン文化に特有の要因:
    • 間接的なコミュニケーションが重視される
    • 若者が社会的練習をする場が限られている

👉

「プログラムの質」ではなく、「文化的摩擦」が壁になっている

ことが示唆されました。


④ 満足度は高く「継続したい」という声が多い

  • 家族・参加者・支援者の満足度は高い

  • フォローアップセッションや

    継続プログラムへのニーズが強く示されました


この研究が示す重要なポイント

✔ エビデンスプログラムは「翻訳するだけ」では足りない

この研究は、

社会性支援は、

文化・社会規範・実生活の機会を踏まえて

再設計する必要がある

ことをはっきり示しています。


✔ 効果は「数値」だけでなく「体験」にも現れる

量的指標では小さな変化でも、

  • 自信
  • 主体性
  • 社会参加への意欲

といった 本人の内的変化 が重要であることを、

定性データが補完しています。


研究の限界

  • サンプルサイズが小さい
  • 男性のみが対象
  • 社会的機会が限られた環境での実施

一文でまとめると

PEERS®はイランの文化的文脈においても受け入れられ、社会的スキルの知識や対人葛藤の改善、自己効力感の向上といった意味のある変化をもたらしたが、その効果を最大化するには文化的配慮と社会的実践の場づくりが不可欠であることを示した、重要な文化適応研究です。

Advancing Healthcare Provision to Autistic Clients: A Systematic Review of Autism Focused Digitally Delivered Professional Education Programs (DDPE) for the Health Workforce

この論文は何を明らかにしようとしたのか?

自閉症のある人は、

  • 医療機関でうまく意思疎通できない
  • 感覚過敏や不安に配慮されにくい
  • 診断や治療が遅れる/適切でない

といった理由から、医療アクセスや健康アウトカムに大きな格差があることが知られています。

その背景の一つとして指摘されているのが、医療従事者(HCP)の自閉症に関する知識・経験不足です。

本研究は、

オンラインなどで提供される「自閉症に特化した医療者向け教育プログラム(DDPE)」は、

実際に役に立っているのか?

を体系的に整理・評価することを目的としたシステマティックレビューです。


研究方法(何をしたのか)

  • 文献検索で 1,068本 の論文を抽出
  • 厳密な選別を経て、23研究を最終分析対象に
  • 対象となった教育プログラム:
    • eラーニング
    • オンライン講義
    • モジュール型研修
    • ハイブリッド型研修 など
  • 評価したアウトカム:
    • 自閉症に関する知識
    • 自己効力感(対応できるという自信)
    • 実際の医療行動の変化(スクリーニング、診断など)
    • 受講者の受け入れやすさ・実施可能性

主な結果(ここが重要)

① デジタル教育は「知識」と「自信」を高める効果がある

  • 多くの研究で、

    • 自閉症に関する理解の向上
    • 「対応できそうだ」という自己効力感の向上

    が一貫して報告されていました。

👉

対面研修が難しい環境でも、デジタル教育は有効な手段になり得ることが示されています。


② 医療行動の変化については「限定的だが前向きな兆し」

  • 結果は一様ではないものの、

    • 自閉症スクリーニング率の向上
    • 診断評価をより適切に行えるようになった

    など、実践面での改善を示す研究も存在しました。

ただし、

👉

「知識が増えた=必ず行動が変わる」とは言い切れない

という慎重な結論が示されています。


③ プログラムの内容・形式は非常に多様

  • 配信方法(動画、対話型、ケース学習など)
  • 学習時間(短時間〜長期)
  • 対象職種(一般医、看護師、専門職など)

が大きく異なっており、

どの設計要素が最も効果的かは、まだ分からない

というのが現時点での結論です。


この研究が強調している重要な課題

✔ 研究の質と測定方法を高める必要がある

  • 実験的デザイン(ランダム化比較など)が少ない
  • 標準化された評価指標が不足
  • 長期的な影響(行動定着・患者アウトカム)が未検証

👉

今後は、より厳密な研究設計が必要だと指摘されています。


✔ 対象は「子ども」だけでは不十分

多くのDDPEは小児を中心に設計されていますが、

  • 自閉症のある 思春期・成人
  • 民族的マイノリティ
  • 精神科・救急・急性期医療に関わる医療者

を対象とした教育は、著しく不足していると述べられています。


✔ 当事者との「共同設計」がカギ

著者らは特に重要な点として、

自閉症当事者と協働して教育内容を作る(コ・プロダクション)こと

を強く推奨しています。

これは、

  • 現場で本当に役立つ知識
  • 医療体験の改善につながる視点

を取り入れるために不可欠だとされています。


この研究が示す全体像

デジタル教育は「格差是正の有力な手段」になり得る

  • 医療者教育の地域差・時間的制約を超えられる
  • 多職種に一斉に届けられる
  • 費用対効果が高い可能性

一方で、

👉

「作れば終わり」ではなく、設計・評価・当事者参加が不可欠

という現実的な課題も示されています。


一文でまとめると

自閉症に特化した医療者向けデジタル教育(DDPE)は、医療従事者の知識と自信を高める有望な手段であり、医療格差是正に寄与する可能性があるが、その効果を最大化するには、質の高い研究、成人期を含む対象拡大、そして自閉症当事者との共同設計が不可欠であることを示したシステマティックレビューです。

Can Leucovorin (Folinic Acid) Treat Autism Features?

この論文は何を扱っているのか?

この論文は、

ロイコボリン(葉酸の一種)は、自閉症の症状を治療できるのか?

という、近年注目を集めているテーマについて、

  • *現時点の科学的エビデンスを冷静に整理・評価した解説論文(エディトリアル)**です。

背景には、2025年に米国で

  • 「自閉症と脳内葉酸欠乏」
  • 「ロイコボリンを自閉症治療に使う可能性」

が政治的にも大きく報道された出来事があり、

過度な期待や誤解が広がることへの強い懸念が示されています。


ロイコボリンとは何か?

  • 葉酸(ビタミンB9)の「活性型」
  • 通常の葉酸と違い、
    • 体内での変換酵素を必要とせず
    • 脳に入りやすい経路を持つ
  • がん治療の副作用軽減や貧血治療では、すでに承認・実績あり

👉

安全性がある程度知られている薬である一方、

自閉症への使用は承認されていない適応外使用です。


なぜ自閉症との関係が注目されたのか?

一部の自閉症児では、

  • 脳脊髄液中の葉酸が低い(脳葉酸欠乏:CFD)

  • 葉酸を脳に運ぶ受容体(FRα)を妨害する

    自己抗体(FRAA) が多い

ことが報告されてきました。

ロイコボリンは、

  • FRAAによって通常の経路が塞がれていても
  • 別ルートで脳に葉酸を届けられる

ため、

「特定の条件をもつ自閉症児には効くのではないか?」

という仮説が生まれました。


これまでの臨床研究では何が分かっているのか?

これまでに、

  • 二重盲検・ランダム化比較試験(RCT)4本
  • 合計 約280人の自閉症児

を対象に研究が行われています。

良い点(希望が持たれる部分)

  • 一部の研究で:

    • 言語能力
    • 社会的行動
    • 問題行動

    中〜大きな改善効果 が報告

  • FRAA陽性の子どもでは効果が大きい可能性

  • 重篤な副作用はほとんど報告されていない


しかし、重大な限界がある

著者らは強調しています。

  • 研究規模が 小さい

  • 対象が 偏っている

  • 他の治療(療育・抗精神病薬)と併用されている例が多く

    👉 ロイコボリン単独の効果が不明

  • 統計的に厳密に見ると:

    • 多くの結果は「補正後に有意でなくなる」
  • 標準的な自閉症評価尺度では

    一貫した改善が示されていない


結論:今の時点で言えること・言えないこと

言えること

  • ロイコボリンは

    一部の自閉症児(特にFRAA陽性)に有望かもしれない

  • 安全性について大きな警告は今のところない


言えないこと(ここが重要)

  • ❌ 自閉症の標準治療として使える
  • ❌ すべての自閉症児に効果がある
  • ❌ 日常診療で routinely 処方すべき

👉

科学的根拠はまだ「不十分」 です。


著者たちの強いメッセージ

  • FDA承認に必要な「十分な証拠」には達していない
  • 米国小児科学会(AAP)と同様に、

現時点で routine に勧めるべきではない

と明言しています。

また、

自閉症の人々は、これまで

根拠の乏しい治療で何度も傷ついてきた

という歴史を踏まえ、

希望と慎重さの両立を強く求めています。


今後に向けて

この論文は、ロイコボリンを完全に否定しているわけではありません。

むしろ、

  • FRAAなどの生物学的指標に基づく個別化治療
  • 大規模・多施設・長期の臨床試験

を通じて、

「効く人が本当にいるのか」「誰に・どの条件で効くのか」

を明らかにすべき段階だと結論づけています。


一文でまとめると

ロイコボリン(葉酸)は一部の自閉症児に効果を示す可能性があるが、現時点の研究規模と質では標準治療として推奨できる段階にはなく、過度な期待や早期の臨床使用は避け、厳密な大規模研究によって慎重に検証すべきであると結論づけた重要な総説論文です。

Diagnostic tests for autism spectrum disorder (ASD) in preschool children

この論文は「何を調べようとしているのか?」

この論文は、実際の研究結果をまとめたものではなく

「今後、どのような方法でASD診断ツールの正確さを評価するか」

を定めた **コクラン・レビューのプロトコル(研究計画書)**です。

つまり、

  • 「この検査が一番正確」と結論を出している論文ではなく
  • 信頼性の高い総合評価を行うための設計図

にあたります。


なぜこのレビューが重要なのか?

未就学児のASD診断では、

  • 行動や発達のばらつきが大きい
  • 言語発達や知的発達の差が診断に影響しやすい
  • ツールによって「診断されやすさ」が異なる

という問題があります。

そのため、

どの診断ツールが、どの条件で、どれくらい正確なのか

を客観的に整理することが、非常に重要です。


評価対象となる主なASD診断ツール

このレビューでは、世界的に広く使われている以下の検査が対象になります。

  • ADOS(自閉症診断観察スケジュール)
  • ADI-R(親への詳細な面接)
  • CARS(行動観察ベースの評価)
  • GARS
  • DISCO
  • 3di

👉

これらを 単独で使った場合、または

複数を組み合わせた場合 の診断精度を調べます。


何と比較して「正確さ」を判断するのか?

基準(ゴールドスタンダード)として使われるのは、

多職種チーム(医師・心理士・言語聴覚士など)による総合的な臨床判断

です。

つまり、

  • 実臨床での専門家の総合判断と比べて
  • 各検査がどれくらい一致するか

を評価します。


主な目的(Primary objectives)

① 各検査の診断精度を評価

  • 感度(ASDの子をどれくらい見逃さないか)
  • 特異度(ASDでない子を誤診しないか)
  • その他の診断精度指標

を整理します。


② 同じ研究内で複数ツールを比較

  • 同一の子どもに
    • ADOSとCARS

    • ADOSとADI-R

      などを使った場合、

      どちらがより正確かを比較します。


③ 複数ツールを組み合わせた場合の効果

  • 例:
    • ADOS+ADI-R
    • 観察+保護者面接

👉

単独より組み合わせの方が診断精度が高いのか?

を検討します。


副次的な目的(Secondary objectives)

次のような条件で、診断精度が変わるかも調べます。

  • 知的障害の有無
  • 言語レベルの違い
  • 医療機関・教育機関など「評価の場」
  • 前向き研究か、過去データか
  • DSMの診断基準の違い
  • 年齢(就学前の中でも何歳か)

👉

  • *「どの子に、どの検査が合いやすいか」**を明らかにする意図があります。

この論文から今すぐ分かること/分からないこと

分かること

  • 今後、ASD診断ツールの信頼性を

    非常に厳密な方法で評価する予定

  • 単一ツール至上主義ではなく

    組み合わせや文脈を重視する姿勢

分からないこと(まだ出ていない)

  • どの検査が一番正確か
  • 日本の臨床でどれを使うべきか

👉

それは 今後発表されるコクラン・レビュー本体で示されます。


一文でまとめると

この論文は、未就学児のASD診断で使われる主要な評価ツール(ADOS、ADI-R、CARSなど)が、専門家による総合診断と比べてどれほど正確なのか、また複数ツールを組み合わせることで精度が向上するのかを、厳密な方法で検証するためのコクラン・レビュー計画書であり、今後の診断ガイドラインに大きな影響を与える基盤となる研究である。

Chemosensing of an Autism Biomarker, Gamma-Aminobutyric Acid, by Electropolymerized Molecularly Imprinted Polymers

この研究は何をしたのか?

この研究は、

自閉スペクトラム症(ASD)と関連が示唆されている神経伝達物質「GABA(γ-アミノ酪酸)」を、血液中から高精度・高選択的に測定できる化学センサーを開発した

という内容です。

特に注目点は、

  • 分子インプリントポリマー(MIP)
  • 電気化学センサー
  • 将来的なポイント・オブ・ケア(POC)診断への応用

です。


なぜGABAなのか?

GABAは脳内で「抑制系」の働きを持つ神経伝達物質で、

  • ASDでは GABA系の異常 が多くの研究で示唆されている
  • 血中GABA濃度は ASD関連バイオマーカー候補の一つ

と考えられています。

ただし、

  • GABAは分子量が小さく
  • 血清中では他の物質と区別して測るのが難しい

という課題がありました。


分子インプリントポリマー(MIP)とは?

この研究のキモです。

MIPとは簡単に言うと、

特定の分子(ここではGABA)専用の「鍵穴」を人工的に作った高分子材料

です。

作り方のイメージ

  1. GABAを「型」として使う
  2. その周りにポリマーを形成
  3. あとでGABAだけを取り除く
  4. GABAだけがぴったりはまる空間が残る

👉 抗体の代わりになる「人工受容体」のようなものです。


研究の技術的ポイント(やや噛み砕き)

  • GABAと強く結合できる機能性モノマーを理論計算(DFT)で選定
  • 電解重合という方法で、電極表面にMIP膜を直接形成
  • 2種類の電極を使用:
    • 白金ディスク電極
    • インターデジテッド電極(IDEA)
  • 測定法として:
    • 差動パルスボルタンメトリー(DPV)
    • 電気化学インピーダンス分光法(EIS)

を比較し、EISが最も有効と判明


どれくらい正確に測れるのか?

白金ディスク電極(EIS)

  • 測定範囲:0.19〜1.6 μM
  • 検出限界(LOD):0.13 μM

インターデジテッド電極(EIS)

  • 測定範囲:8〜240 μM
  • 検出限界:0.39 μM

👉

臨床検体(血清)レベルで実用可能な感度


選択性は大丈夫?

  • GABAと構造が似た分子(アナログ)に対してもテスト
  • GABAを優先的に識別できることを確認
  • インプリントファクター(MIP特異性指標):2.7

実際の人の血液で使えたの?

はい。

  • ヒト血清サンプル中のGABA測定に成功
  • 実験室レベルだけでなく、臨床応用の可能性を実証

この研究の意味・インパクト

科学的意義

  • ASD関連バイオマーカーを

    抗体なし・低コスト・高耐久な方法で測定可能

  • 分子インプリント技術 × 電気化学の強力な組み合わせ

臨床・社会的意義

  • 将来的に:
    • 簡易検査
    • ポイント・オブ・ケア診断
    • 研究用途での客観的指標

への応用が期待される


注意点(重要)

  • GABAは「ASDの診断マーカー」と確定しているわけではない
  • この研究は:
    • 「ASDを診断できる」と主張しているのではなく
    • ASD研究で重要な分子を正確に測る技術を示した

という位置づけです。


一文でまとめると

この研究は、自閉スペクトラム症と関連が示唆される神経伝達物質GABAを、分子インプリントポリマーを用いた電気化学センサーで高感度・高選択的に測定する技術を開発し、ヒト血清中での実測にも成功したことで、将来的な臨床応用やASD研究に貢献する可能性を示したものである。

Sex-Specific Effects of Relative Fat Mass on Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: Insights from the 1999-2004 National Health and Nutrition Examination Survey


この研究は何を調べたの?

この研究は、

子どもの体脂肪のつき方(Relative Fat Mass:RFM)が、ADHDとどう関係しているのか

その関係が「男の子」と「女の子」で違うのか

を、大規模な疫学データを使って検討したものです。


Relative Fat Mass(RFM)って何?

RFMは、

  • 身長
  • ウエスト周囲径

から計算される、新しい体脂肪指標です。

従来よく使われてきたBMIよりも、

  • 実際の脂肪量や脂肪分布を反映しやすい
  • 心血管疾患や代謝疾患の予測に優れている

とされ、近年注目されています。


どんなデータを使ったの?

  • データ元:National Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)
  • 調査年:1999〜2004年
  • 対象:6〜14歳の子ども 5,089人
  • ADHD:医師に診断されたかどうか(保護者報告)

主な結果(ここが一番重要)

🔹 男の子の場合

  • 体脂肪が多いほど、ADHDの割合は低い
  • RFMが高い → ADHDである確率が下がる

👉 「やせている男の子ほどADHDが多い」傾向


🔹 女の子の場合

  • 体脂肪が多いほど、ADHDの割合は高い
  • RFMが高い → ADHDである確率が上がる

👉 「体脂肪が多い女の子ほどADHDが多い」傾向


🔹 この男女差は一貫していた

以下の条件で分けても、同じ傾向が確認されました:

  • 年齢
  • 医療保険の有無
  • 妊娠中の母親の喫煙
  • 出生体重

どう解釈すればいい?

この研究は、

  • ADHDと体脂肪の関係は一様ではない
  • 男女で“逆方向”の関連がある

ことを示しています。

考えられる背景としては:

  • ホルモンの違い
  • 脂肪分布(内臓脂肪 vs 皮下脂肪)
  • ADHD症状が食行動・活動量に与える影響の違い
  • 社会的・心理的要因の性差

などが考えられますが、因果関係までは分かりません


この研究の重要なポイント

  • 「肥満=ADHDリスクが高い」と単純には言えない

  • 性別を考慮しない議論は誤解を生む可能性

  • ADHD研究や予防・支援では

    👉 男女差を前提にした視点が必要


注意点(とても大事)

  • 横断研究なので

    「体脂肪がADHDを引き起こす」ことは証明していない

  • ADHDの診断は保護者申告ベース

  • RFMは有望だが、まだ新しい指標


一文でまとめると

この研究は、子どもの体脂肪量(RFM)とADHDの関係が男女で正反対であることを示し、男の子では体脂肪が少ないほどADHDが多く、女の子では体脂肪が多いほどADHDが多いという、性差を強く示唆する結果を報告している。

Frontiers | Effect of Maternal Isolated Hypothyroxinemia in the First Trimester on Offspring Neurodevelopment: A Prospective Cohort Study

この研究は何を調べたの?

この研究は、

妊娠初期(第1三半期)に母親の甲状腺ホルモン(T4)だけが低い状態

――「孤立性低サイロキシン血症(IH)」が、子どもの発達にどんな影響を与えるのか

を、前向きコホート研究で検討したものです。


「孤立性低サイロキシン血症(IH)」とは?

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン)は正常
  • 遊離T4(甲状腺ホルモン)は低い
  • 自覚症状がなく、見逃されやすい状態

👉 妊娠初期は、胎児の脳が母親の甲状腺ホルモンに強く依存する時期です。


研究デザイン

  • 対象:母子100組
    • IH群:50組
    • 正常甲状腺機能群:50組
  • 母親:妊娠初期に甲状腺ホルモンを測定
  • 子ども:発達・行動・社会性を複数の標準尺度で評価

主な結果(重要ポイント)

① 全体的な発達指数(DQ)が低下

  • IHの母親から生まれた子どもは

    知的発達指数が有意に低い

  • 特に影響が大きかったのは👇

② 言語発達への影響が最も大きい

  • 言語領域でのDQ低下が最も顕著
  • 「話す・理解する」発達に影響が出やすい可能性

③ ADHD関連の行動特性が増加

IH曝露児では、

  • 衝動性・多動性スコアが上昇
  • 多動指数も有意に上昇

👉 注意欠如・多動症(ADHD)関連症状が出やすい傾向


④ ASD(自閉スペクトラム症)関連指標も上昇

  • 社会的気づき
  • 社会的コミュニケーション
  • SRS総スコア

がいずれも有意に高く、

👉 ASD特性のスクリーニング指標が高くなる関連が示されました。


重要な解釈ポイント

  • これは診断を意味するものではない

  • あくまで

    発達指標・スクリーニングスコアとの関連

  • ただし、

    • 知的発達

    • 言語

    • 注意・多動

    • 社会性

      という複数領域に一貫した影響が見られた点は重要


この研究が示す意味

  • 妊娠初期の「軽度で気づかれにくい甲状腺ホルモン低下」でも

    👉 子どもの神経発達に影響しうる

  • TSHだけでなく、T4の評価も重要

  • 妊娠初期の内分泌管理が

    👉 ADHD・ASDリスクの一因になり得る可能性


注意点(限界)

  • 単施設・比較的小規模
  • 観察研究のため因果関係は断定できない
  • 文化・医療体制の違いによる一般化には注意

一文でまとめると

妊娠初期に母親の甲状腺ホルモン(T4)が低い状態は、子どもの知的・言語発達の低下や、ADHD・ASD関連特性の上昇と関連しており、軽度でも見逃されがちな内分泌異常が神経発達に重要である可能性を示した研究である。

Frontiers | Early screening of childhood ASD at primary care hospitals in western China:A multi-center study in Chengdu, Sichuan Province


この研究は何を調べたのか?

この研究は、

中国・西部地域(四川省成都市)のプライマリケア病院において、

複数のASDスクリーニング方法を実際に使ったとき、

どの方法がどれくらい有効なのか

を検証した大規模・多施設のリアルワールド研究です。

背景として、中国西部では

  • ASDの有病率が上昇している一方で
  • 地域レベルの早期スクリーニング体制が十分に整っていない

という課題があります。


研究の概要(かなり大規模)

  • 対象:18〜48か月の子ども 14,298人
  • 実施施設:成都市の一次医療機関(20施設)
  • 使用したスクリーニングツール(4種類):
    1. AWS(自閉症警告サイン)
    2. SB(社会的行動観察)
    3. CHAT-23(中国版CHAT)
    4. ABC(Autism Behavior Checklist)
  • スクリーニング後、陽性児は三次医療機関で確定診断

主な結果①:スクリーニング陽性率はツールで大きく違う

陽性率(高い順)

  • AWS:3.1%
  • SB:2.7%
  • CHAT-23:2.18%
  • ABC:1.0%

👉

「拾い上げやすさ」はツールによってかなり異なることがわかります。


主な結果②:最終的にASDと診断された割合

  • フォローアップ完了児のうち

    👉 ASDの検出率は0.79%

これは、地域レベルの一次医療としては現実的かつ妥当な数値と考えられます。


主な結果③:実は「当たりやすい」ツールは別だった

  • *陽性だった子が本当にASDだった確率(PPV)**は以下の通り:
  • ABC:94.6%
  • SB:92.0%
  • AWS:87.1%
  • CHAT-23:84.7%

👉

ABCは陽性数は少ないが、当たる確率が非常に高い

=「精度重視」のスクリーニングに向いている。


主な結果④:どの要因が最終診断と強く関係していたか?

多変量解析の結果:

  • 最も強力だった要因
    • ABCスコア
    • 子どもの年齢
  • 次に関連があったもの
    • AWS
    • CHAT-23
  • 有意ではなかったもの
    • SB
    • 性別

👉

「年齢」と「ABC」が、現場で最も信頼できる指標であることが示されました。


この研究の重要なポイント

✔ 単一ツールより「段階的・組み合わせ型」が現実的

  • ABC:精度は高いが拾い漏れやすい
  • AWS / CHAT-23:拾い上げには有効

👉

複数ツールを段階的に使うスクリーニング戦略が、

一次医療の現場では最も実用的。


✔ プライマリケアでもASD早期発見は可能

  • 専門医が少ない地域でも
  • 適切なツールと連携体制があれば

👉

公衆衛生レベルでのASD早期発見が十分に実現可能であることを示しています。


この研究が示す意味

  • ASD早期発見は「専門機関だけの仕事」ではない

  • 一次医療での役割は非常に大きい

  • 特に資源が限られた地域では

    👉 統合的・階層的スクリーニングが鍵


注意点(限界)

  • 成都市という特定地域のデータ
  • 文化・医療制度の違いによる一般化には注意
  • スクリーニングは診断そのものではない

一文でまとめると

中国・成都市の一次医療機関における大規模研究から、ABCスコアと子どもの年齢がASD診断と最も強く関連し、AWSやCHAT-23を組み合わせた段階的スクリーニングが、現実的かつ有効な早期発見戦略であることが示された。

Frontiers | Differential connectivity between core hubs underlying demanding executive functions in schizophrenia compared to autism and control adults

この研究は何を明らかにしようとしたのか?

ASDと統合失調症(SCZ)は、ともに

  • 注意・ワーキングメモリ
  • 認知の切り替え
  • 計画・抑制

といった実行機能の困難を示し、臨床的にも区別が難しいことがあります。

この研究は、

「同じように実行機能が苦手に見えても、

その脳内ネットワークの使い方は本当に同じなのか?」

という問いに対して、

  • *脳活動(活性化)と脳領域間のつながり(機能的結合)**の両面から検証しています。

研究の方法(何をした?)

  • 対象:
    • 統合失調症(SCZ)成人男性:15名
    • ASD成人男性:15名
    • 定型発達コントロール:15名
  • 条件:
    • 年齢・教育歴・利き手などを厳密にマッチ
  • 課題:
    • n-back課題(ワーキングメモリを強く使う実行機能課題)
  • 計測:
    • 3テスラfMRI

注目した脳ネットワーク

  • 前頭頭頂ネットワーク(FPN)
    • DLPFC(背外側前頭前野)
    • IPS(頭頂間溝)
  • サリエンスネットワーク(SN)
    • 島皮質(insula)

主な結果①:脳の「活動量」自体は大きく違わない

  • SCZでは、IPSの活動がコントロールより高い
  • ただし、
    • SCZとASDの間では、活動量の差はほぼ見られなかった

👉

「どのくらい脳が活動するか」だけを見ると、

ASDとSCZは似て見える


主な結果②:決定的な違いは「つながり方」にあった

ここがこの研究の核心です。

統合失調症(SCZ)では:

  • DLPFC ↔ IPS(FPN内)の結合が過剰
  • 島皮質 ↔ IPS(FPNとSNの結合)が過剰
  • 特に左半球で顕著

👉

実行機能ネットワークが「過剰につながりすぎている」状態


ASDでは:

  • SCZほどの過剰結合は見られない
  • コントロールに近い結合パターン

👉

ASDの実行機能困難は、SCZとは異なる神経基盤


この研究が示す重要なポイント

✔ ASDとSCZは「似ているようで、脳の使い方は違う」

  • 行動レベル:
    • 両者とも実行機能が苦手
  • 脳ネットワークレベル:
    • SCZ:過剰同期・過剰結合
    • ASD:過剰ではないが効率の問題

👉

困難の「見え方」が似ていても、原因は別物


✔ 統合失調症は「実行機能ネットワークの再構成障害」

研究者は、SCZにおける所見を

実行機能ネットワークそのものが

根本的に再編成されている(fundamental change)

と解釈しています。

これは、

  • 思考の過剰連結
  • 情報の取捨選択困難
  • 妄想・混乱

といった精神病的症状とも整合的です。


臨床・研究への示唆

  • 実行機能障害を理由に

    ASDとSCZを同一視するのは危険

  • 診断・研究・支援では:

    • 行動評価だけでなく
    • 脳ネットワークの質的違いを意識する必要がある
  • 将来的には:

    • fMRI結合パターンが鑑別診断の補助指標になる可能性

限界(注意点)

  • サンプルサイズは小さい(各15名)
  • 男性のみ
  • 横断研究(発達変化は不明)

一文でまとめると

統合失調症と自閉スペクトラム症は、ともに実行機能の困難を示すが、統合失調症では前頭頭頂ネットワークとサリエンスネットワークの結合が過剰に高まるという質的に異なる脳内結合異常が見られ、両者の神経基盤が明確に異なることを示した研究である。

Frontiers | A Multilevel Meta-Analysis of the Effects of Exercise Interventions on Inhibitory Control in Children with ADHD

この研究は何を調べたのか?

ADHDの中核的な認知特性の一つが、

抑制制御(inhibitory control)――

「衝動を止める」「やってはいけない行動を抑える」「注意を切り替える」力の弱さです。

薬物療法以外の選択肢として**運動(エクササイズ)**が注目されていますが、

  • 本当に効果はあるのか?
  • どのくらいの大きさの効果なのか?
  • 運動の頻度・時間・期間で効果は変わるのか?

について、定量的に整理した研究は限られていました。

この論文は、ランダム化比較試験(RCT)だけを集めたメタ分析によって、

「運動がADHD児の抑制制御に与える効果」を厳密に検証しています。


研究方法(何をした?)

  • 対象研究:

    • RCT 11本
    • 参加者合計:512人(ADHD児)
  • 比較:

    • 運動介入群 vs 非介入/対照群
  • 分析手法:

    • 三層ランダム効果モデル(three-level meta-analysis)
      • 同一研究内の複数効果量も適切に処理
  • 追加分析:

    • 性別比

    • 運動頻度

    • 1回あたりの運動時間

    • 介入期間

      → **効果の違い(モデレーター)**を検討

  • エビデンス評価:

    • GRADEで証拠の質を判定

主な結果(ここが重要)

① 運動は「抑制制御」を中〜大きく改善する

  • 全体の効果量:
    • SMD = 0.71(中〜大効果)
  • 統計的に非常に有意(p < 0.001)
  • 研究間のばらつき:
    • ほぼなし(I² = 0%)

👉

「運動をすると、抑制力が明確に良くなる」

という結果が、一貫して示されました。


② 改善は「運動した子ども」にだけ見られた

  • 運動群:
    • 大きな改善(SMD ≈ 0.98)
  • 対照群:
    • ほぼ変化なし

👉

時間経過や練習効果ではなく、

運動そのものの効果である可能性が高い。


③ 運動のやり方による差は見つからなかった

  • 運動頻度(週何回)
  • 1回の時間
  • 介入期間
  • 男女比

いずれも、効果の大きさに有意な影響なし

👉

特定の「黄金パターン」は示されなかったが、

比較的幅広い運動介入で効果が出ていると解釈できます。


④ 出版バイアスは確認されなかった

  • 「良い結果だけが発表されている」可能性は低い
  • 感度分析でも結果は安定

ただし重要な注意点(限界)

エビデンスの質は「低い」

GRADE評価では Low quality(低い) と判定されました。

理由は主に:

  • 盲検化(ブラインド)が困難
  • 事前登録されていない試験が多い
  • サンプルサイズが比較的小さい

👉

「効果はありそうだが、まだ確定とは言えない」

という位置づけです。


この研究が示す実践的な意味

  • 運動は:

    • 薬に代わる“魔法の治療”ではない

    • しかし、

      • 抑制力
      • 衝動コントロール
      • 実行機能の土台

      を支える有力な補助的介入

  • 学校・家庭・支援現場で:

    • 比較的安全
    • 低コスト
    • 副作用が少ない

という点で、取り入れる価値は高い


一文でまとめると

運動介入は、ADHDのある子どもの抑制制御を中〜大きく改善する可能性があり、効果は運動の頻度や時間に大きく左右されない一方、研究の質には課題が残るため、今後はより高品質な試験による検証が必要であることを示したメタ分析である。

Frontiers | Psychological Factors Contributing to Vocal Cord Dysfunction in Pediatric Population Pre-Pandemic and During Pandemic

この研究は何を調べたのか?

声帯機能障害(Vocal Cord Dysfunction:VCD) は、

息を吸うときに声帯がうまく開かず、呼吸が苦しくなる状態で、

  • 喘息と非常によく似た症状を示す
  • しかし治療や対応は大きく異なる
  • 心理的ストレスや不安が強く関与することが多い

にもかかわらず、見逃されやすい疾患です。

本研究は、

  1. COVID-19パンデミック前後で、小児VCDの発生・診断状況は変化したか
  2. VCDと特に関連の強い心理的要因は何か

を明らかにすることを目的に行われました。


研究方法(何をした?)

  • 研究デザイン:後ろ向きカルテレビュー
  • 期間:
    • パンデミック前:2017年1月〜2019年半ば
    • パンデミック中:2019年末〜2022年7月
  • 対象:
    • 74,022人の小児患者
  • 評価項目:
    • VCDの診断頻度
    • 年齢・性別・人種
    • 併存疾患(喘息、逆流性食道炎など)
    • 心理的診断(不安、抑うつ、ADHD、パニックなど)

主な結果(ここが重要)

① パンデミック中に「VCDの診断は減少」した

  • VCDの診断率:
    • パンデミック前:0.7%
    • パンデミック中:0.3%
  • 統計的に有意な減少

👉

これは「VCDが減った」というよりも、

  • 受診控え
  • 専門検査の制限
  • 喘息として扱われてしまった

などによる過小診断の可能性が高いと考えられています。


② VCDのある子どもは「心理的問題を併せ持つ割合が高い」

VCD児は、非VCD児と比べて:

  • 不安障害:8.5% vs 2.3%
  • 抑うつ:1.5% vs 0.2%
  • パニック発作:0.8% vs 0.1%

と、明らかに心理的併存症が多いことが示されました。


③ VCD児に特徴的なプロフィール

VCDと診断された子どもは:

  • 年齢が高め(中央値14歳)
  • 女子が多い(約70%)
  • 喘息・アレルギー性鼻炎・胃食道逆流症を併存しやすい

👉

身体的要因 × 心理的要因が重なりやすい集団であることが分かります。


④ パンデミック中、心理診断自体もやや減少

  • 不安・抑うつ・ADHDの診断率は全体的に低下

  • これも、

    • 医療アクセス制限
    • 心理評価機会の減少

    による影響が示唆されています。


この研究が伝えている重要なメッセージ

✔ VCDは「心と体が強く結びついた疾患」

この論文は一貫して、

VCDは純粋な呼吸器疾患ではなく、

心理・身体・環境が相互に影響する“生物心理社会モデル”で理解すべき

と示しています。


✔ 喘息が治らない子どもでは「VCD」を疑う視点が重要

  • 吸入薬が効かない
  • ストレスで悪化する
  • 検査で喘息の所見が弱い

場合には、心理評価や多職種連携が不可欠。


限界(注意点)

  • 単一施設研究
  • 診断はカルテ記載ベース
  • 心理評価の深さには限界あり

一文でまとめると

小児の声帯機能障害(VCD)は、不安や抑うつなどの心理的要因と強く関連する生物心理社会的疾患であり、COVID-19パンデミック中に診断率が低下したのは医療アクセス制限による過小診断の可能性が高く、喘息様症状を示す子どもでは心理面を含めた多職種評価が重要であることを示した研究です。

Treatment of Challenging Behaviour in Children and Youth With an Intellectual Disability With or Without Autism

この研究は何を調べたのか?

知的障害(ID)や自閉症(ASD)のある子ども・若者では、

  • 自傷行為
  • 攻撃的・破壊的な行動

といった「チャレンジング行動」が、定型発達の子どもよりも高い頻度で見られます。

しかし現実には、

  • どんな支援や治療が実際に使われているのか
  • 誰が、どの支援にアクセスできているのか

についての実態は、あまり整理されていませんでした。

この研究は、

知的障害(自閉症の有無を含む)のある子ども・若者に対して

実際に使われている「行動への対応方法」と、

それを左右する要因は何か

を、保護者の報告から明らかにすることを目的としています。


研究方法(何をした?)

  • 対象:
    • カナダの保護者372名
    • 子ども・若者の年齢:4〜20歳(平均11.4歳)
  • 方法:
    • 保護者向け質問紙調査(GO4KIDDS)
  • 調べた内容:
    • 自傷行為・攻撃的行動への対応として
      • どんな方法を使っているか
        • 家庭内の工夫(非公式な方法)
        • 専門的な行動支援プログラム
        • 薬物療法
    • 年齢、診断、生活スキルなどが治療選択にどう影響するか

主な結果(ここが重要)

① 一番多く使われていたのは「家庭内の工夫」

  • 最も多かった対応:
    • 保護者による非公式な行動・教育的工夫
      • 声かけ
      • 環境調整
      • しつけ・教え方の工夫 など
  • 一方で、
    • 専門家による正式な行動支援プログラム
      • 最も利用率が低かった

👉

エビデンスがある支援ほど、実際には届きにくい状況が示されました。


② 年齢が上がるほど「薬」が使われやすい

  • 年齢が高い子ども・若者ほど:
    • 自傷行為
    • 攻撃的・破壊的行動

に対して、薬物療法を受けている割合が高い

👉

年齢とともに行動が重度化・長期化し、

「他に選択肢がなく薬に頼らざるを得ない」構造も示唆されます。


③ 自閉症の診断があると「専門的支援」にアクセスしやすい

  • 知的障害+自閉症のある子どもは、
    • 知的障害のみの子どもよりも
      • 専門的な行動支援プログラム

      • 自傷行為への薬物療法

        を受けている可能性が高かった

👉

診断名によって、受けられる支援に差が出ていることが示されました。


④ 生活スキルが高い子ほど、薬が使われていたという意外な結果

  • 日常生活スキル(適応行動)が比較的高い子どもほど、
    • 自傷行為に対して薬が処方されている傾向

👉

「できることが多い=行動の影響範囲が広く、危険性が高く評価されやすい」

可能性も考えられます。


この研究が示している大きな問題意識

✔ 支援は「必要性」ではなく「条件」で決まってしまっている

  • 行動の重さだけでなく、
    • 年齢
    • 診断名(ASDの有無)
    • 家庭で対応できる余力

によって、受けられる支援が左右されている現実が浮き彫りになりました。


✔ エビデンスのある行動支援が届いていない

著者らは、

家庭の努力に頼りすぎており、

科学的に効果が示されている行動支援へのアクセスが不十分

であることを強く指摘しています。


実践・制度への示唆

  • 保護者任せにしない支援体制の構築
  • 専門的行動支援プログラムへのアクセス改善
  • 診断名に左右されない支援の公平性
  • 薬物療法だけに偏らない選択肢の拡充

が必要だと結論づけています。


研究の限界(注意点)

  • 保護者報告に基づく調査
  • カナダの制度・文化背景に依存
  • 行動の重症度そのものの客観評価は限定的

一文でまとめると

知的障害(自閉症の有無を含む)のある子ども・若者のチャレンジング行動への対応は、家庭内の非公式な工夫に大きく依存しており、専門的でエビデンスのある行動支援は十分に活用されていない現状があり、年齢や診断名によって支援へのアクセスに差が生じていることを示した実態調査研究です。

Latent Profile Analysis of Challenging Behaviour in Individuals With Intellectual Disabilities: Examining Associated Factors and Life Satisfaction


この研究は何を明らかにしようとしたのか?

知的障害のある人に見られる

チャレンジング行動(Challenging Behaviour:CB)

(例:激しい混乱、破壊行動、暴力など)は、

  • 周囲の支援の難しさだけでなく
  • 本人の生活満足度(Life Satisfaction)を下げる

ことが知られています。

しかし、これまでの研究では、

  • 「困った行動がある/ない」
  • 「多い/少ない」

といった単純な捉え方が中心で、

どんなタイプの行動パターンが存在し

それぞれに、どんな背景要因や生活への影響があるのか

は十分に整理されていませんでした。

この研究は、韓国に住む知的障害のある人を対象に

  • チャレンジング行動を「いくつかのタイプ(プロファイル)」に分類し
  • それぞれに関連する要因と
  • 生活満足度との関係

を明らかにすることを目的としています。


研究方法(何をした?)

  • 対象:
    • 韓国の知的障害のある人 1,984名
  • 方法:
    • 潜在プロファイル分析(Latent Profile Analysis)
      • 行動の出方のパターンから、自然にグループ分けする統計手法
  • 併せて分析した要因:
    • 年齢・性別・就労状況
    • 障害の重さ
    • 知的能力
    • コミュニケーション能力
    • 日常生活動作(ADL)
  • 生活満足度:
    • 代理回答(支援者・家族による評価)

主な結果(ここが重要)

① チャレンジング行動は「4つのタイプ」に分けられた

研究の結果、次の4つの行動プロファイルが見つかりました。

  1. 安定行動群(Stable Behaviour Group)
    • 目立ったチャレンジング行動が少ない
  2. 広範型チャレンジング行動群(Pervasive CB Group)
    • さまざまな困った行動が頻繁に見られる
  3. 破壊・混乱行動群(Disruptive Behaviour Group)
    • 騒ぐ、混乱させる、破壊的な行動が中心
  4. 暴力行動群(Violent Behaviour Group)
    • 他者への攻撃や暴力的行動が目立つ

👉

「困った行動」と一括りにはできず、明確に異なるタイプが存在することが示されました。


② 行動タイプには、はっきりした背景要因がある

以下の要因が、どの行動プロファイルに属するかと有意に関連していました。

  • 個人要因:
    • 年齢
    • 性別
    • 就労の有無
  • 障害・機能面:
    • 知的能力
    • コミュニケーション能力
    • 日常生活動作(ADL)
    • 障害の重さ

👉

チャレンジング行動は「性格の問題」ではなく、

発達・生活・環境と深く結びついた現象であることが確認されました。


③ 生活満足度が最も低かったのは「暴力行動群」

  • 暴力行動群に属する人は、
    • 他の3群に比べて
    • 生活満足度が最も低い

傾向が見られました。

👉

行動の深刻さが、そのまま

本人の生活の質(QOL)に強く影響していることを示しています。


この研究が示す重要なメッセージ

✔ チャレンジング行動は「一律対応」ではいけない

この研究の最大のポイントは、

困った行動には、異なるタイプがあり

それぞれに必要な支援は異なる

という点です。


✔ 行動の「背景」を見ることが、生活の質を高める鍵

  • 行動だけを止めるのではなく
  • その人の
    • 能力
    • 生活状況
    • 社会参加(就労など)

を踏まえた個別化された支援が必要だと示唆しています。


実践・支援への示唆

  • 支援計画では:
    • 「どの行動タイプか」を見極める
    • 暴力行動群には特に重点的な支援を行う
  • 目標は:
    • 行動を抑えることだけでなく
    • 本人の生活満足度を高めること

研究の限界(注意点)

  • 横断研究のため因果関係は不明
  • 生活満足度は代理評価
  • 韓国の社会・制度背景に依存

一文でまとめると

知的障害のある人のチャレンジング行動は4つの異なるタイプに分けられ、とくに暴力的行動を示す人では生活満足度が低く、年齢・就労・知的能力・生活機能などを踏まえた個別化支援が、生活の質を高めるために不可欠であることを示した研究です。

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