米国で増加したMedicaid Fraud、不正請求・誤診・制度の悪用が氾濫
本記事では、まず米国で自閉症診断とABA療育に対するMedicaid支出が急増する裏で、不正請求・誤診・制度悪用が広がっている社会問題を取り上げた論説を紹介し、その後の学術研究アップデートでは、英国のオフィスワーカー220名を対象に「自己報告によるディスレクシア特性」が職場での記憶・言語・処理速度・実行機能など多領域の主観的認知的困難を予測することを示した調査研究を取り上げている。これらは、発達障害領域における制度的課題と、成人期の特性が職場での認知パフォーマンスにどう反映されるかという学術的知見の双方を扱った内容となっている。
社会関連アップデート
Opinion | Why Is Autism Exploding? Welfare Fraud Is One Reason
この論説は、米国で自閉症診断とABA療法に対するMedicaid(公的医療保険)支出が急増する一方、その裏で大規模な不正請求・誤診・制度悪用が横行している実態を明らかにしたものです。専門性のない業者が大量参入し、キックバックで子どもを集め、実際には提供されていない療育を高額で請求したり、資格のないスタッフが療法を行ったりする例が多発し、低所得層の子どもが本来の基準を満たさないまま自閉症と診断されるケースも指摘されます。各州の監査では「1日24時間以上のサービスを請求」「昼寝や遊び時間を療法として請求」などの不正が発覚し、Medicaid支出は数十倍に膨れあがりました。効果検証が行われないため、支援が必要な子どもが適切な支援を受けられない一方、誤診で教育機会を失う子もいます。筆者はこれを米国の“社会福祉産業の構造問題”と捉え、政治的忌避により制度改革が進まず、税金が浪費される状況が続いていると批判しています。
学術研究関連アップデート
Self-reported Dyslexia Traits Predict Workplace Subjective Cognitive Complaints in Office-Based Professionals
■ 研究テーマ:ディスレクシア特性は、職場での“認知的困りごと”を予測するのか?(英国オフィスワーカー220名)
この研究は、英国のオフィス職で働く成人220名を対象に、
- ディスレクシア特性(自己報告)
- 職場で感じる認知的な困難(主観的コグニティブ・コンプレイント:記憶・言語・処理速度など)
の関係を調べたオンライン調査です。
■ 研究の目的
成人期のディスレクシア(識字・言語処理の困難)は広く存在すると推定される一方、
「職場での認知上の困りごとと、ディスレクシア特性はどの程度関連するのか?」
は、ほとんど研究されていませんでした。
■ 方法(オンライン調査)
調査対象:
- 英国のオフィスワーカー220名(英語を第一または第二言語とする人)
測定したもの:
- ディスレクシア特性(自己報告尺度)
- 主観的な認知的困りごと(6領域)
- 記憶
- 言語
- 実行機能
- 処理速度
- 認知コントロール
- 名前の記憶
- 統計では、年齢・言語背景・メンタルヘルス・ADHD症状 を統制
■ 主な結果
1. ディスレクシア特性は、すべての認知的困りごとを有意に予測した
つまり:
ディスレクシアの傾向が強いほど、職場で“認知的な困りごと”を感じやすい
という明確な関連が示された。
対象領域は 全6領域で有意(記憶・言語・EF・処理速度・コントロール・名前記憶)。
2. ADHD症状も多くの領域で困りごとと関連
ADHD症状は:
- 言語・名前記憶を除く全領域で認知的困りごとを予測
- 一方、ディスレクシアとは異なるパターンで影響
→ ディスレクシアとADHDでは、職場で困りやすい認知領域が異なる可能性。
3. 年齢・メンタルヘルスも困難の増加と関連
- 年齢が高いほど、一部領域で困りごとが増える傾向
- メンタルヘルス(ストレスや不調)も認知的困りごとと強く関係
■ この研究が示すこと
-
ディスレクシア特性を“自己報告”するだけでも、職場での認知的困難の予測に役立つ
-
認知の困りごとは読み書きに限らず、
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記憶
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処理速度
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実行機能
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言語
など幅広い領域に及ぶ
-
-
ADHDとは異なる困難プロファイルを持つ可能性が高い
→ 支援は「ディスレクシア=読み書きの支援」に限らず、広い認知領域を考慮すべき
■ 実務・企業・支援への含意
- ディスレクシアのある職員への支援は、読み書きだけでなく、記憶・情報処理・タスク管理なども含めた認知的支援が適切
- 職場の合理的配慮(例:情報の視覚化、タスク分割、読み上げツール等)が有効
- “困りごとを言語化しにくい”場合でも、自己報告特性を把握するだけで支援ニーズ予測に役立つ
■ 一言まとめ
ディスレクシア特性が強い成人は、職場で幅広い認知的困難(記憶・処理速度・実行機能など)を抱えやすいことが示された研究。
ADHDと異なる困難パターンを示す可能性があり、
職場支援は読み書きの補助だけでなく、より広範な認知的サポートが求められることを示唆している。
