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ADHD若者の「逃避・社会的補償」に根ざしたSNS依存の特徴

· 約35分
Tomohiro Hiratsuka
CEO of Easpe, Inc

このブログ記事全体では、2025年11月時点の発達障害・神経発達症をめぐる最新研究を横断的に紹介しています。具体的には、超希少な19q12関連ASDに対するエヌトレクチニブのドラッグ・リポジショニング候補を示したトランスクリプトーム研究、ADHD若者の「逃避・社会的補償」に根ざしたSNS依存の特徴、ASDにおけるオキシトシン/OTRシステム異常と今後の精密医療的アプローチ、フランス語DLD児の機能語使用プロファイル、MID/BIF児に集中する社会経済的不利とメンタルヘルス・ケア格差、ヘブライ語話者のディスレクシア発達経路と幼稚園期スキル(特に形態意識)の予測力、ASD成人と非ASD成人のアイコンタクト経験の質的比較、ASD・ADHD・チック症に共通する腸内細菌叢の組成変化、柔道クラスにおけるIDD参加者のインクルージョンを阻む・支える要因、中国版BeDevelによる乳幼児ASDの高精度スクリーニング検証、そしてASD成人のトラウマ・心理的苦痛・自殺関連行動の関連を示した大規模調査などを取り上げており、「診断・バイオマーカー・環境要因・支援実践」をつなぐ知見がコンパクトに整理されています。

学術研究関連アップデート

High-throughput transcriptomic screening reveals entrectinib as a repositioning opportunity in 19q12 autism spectrum disorder

この論文は、きわめて稀な「19q12関連ASD(ZNF536・TSHZ3の機能低下に関わる自閉スペクトラム症)」に対して、既存のがん薬エヌトレクチニブ(entrectinib)を“ドラッグ・リポジショニング”する可能性を示した研究です。研究チームはまず、患者由来の in vitro モデルで「19q12 ASDに特徴的なトランスクリプトーム指紋(遺伝子発現パターン)」=どのシグナル経路が異常にオン/オフになっているか、を詳細に同定しました。次に、さまざまな低分子薬を正常細胞(wild-type)に投与したときの遺伝子発現変化をハイスループットで測定し、「病気の指紋」と**“正反対の変化”を起こす薬=指紋を打ち消してくれる薬をスクリーニング。その結果、既に承認済みの分子標的薬エヌトレクチニブが、19q12 ASDの異常シグナルを“正常方向”に戻す潜在力を持つ候補として浮かび上がりました。さらに、この薬を実際に該当患者にオフラベル投与し、血液バイオマーカーと神経心理学的評価を行ったところ、血中の分子指標レベルでも「病気の指紋」が正常化に向かうことが確認されました。本研究は、①「病気ごとの遺伝子発現指紋」を作り、②正常細胞で薬の効果を機械的に照合することでリポジショニング候補を見つける**という、希少神経発達症に対する新しい創薬/治療探索のワークフローを提示しており、今後ほかの遺伝性ASDサブタイプにも応用可能なプラットフォームとして注目されます。

Problematic Social Media use in Individuals with ADHD: Associations with Screen Time, Motives, Content, and Psychosocial Functioning

ADHDの若者はなぜSNSにハマりやすいのか?

――利用動機・閲覧コンテンツ・心理社会的影響まで包括的に分析した最新研究

ADHDのある若者は、日常生活の中で**スマホ・SNSの使いすぎ(Problematic Social Media Use:PSMU)**が問題化しやすいと言われています。

この研究は、高校生・大学生を対象に

・SNSの使用時間

・SNS依存傾向

・利用目的

・閲覧コンテンツ

・心理社会的な困りごと

を詳細に調べ、ADHDのある若者と定型発達の若者を比較したものです。


■研究の対象と方法

  • ADHD群:100名(高校生・大学生)

    対照群:400名(同年齢)

  • 大規模な質問紙調査で

    • SNS依存(Social Media Disorder)

    • 利用動機

    • 見ているコンテンツ

    • 心身の不調(心理社会的問題)

    • 自尊心・対人関係の問題

      などを評価


■主な結果

1. ADHDの若者はSNS依存の割合が4〜5倍高い

  • 依存傾向:ADHD 15% vs 対照 3.3%
  • ADHD群は「SNSをやめられない」行動が顕著

2. SNSを使う“理由”がまったく違う

ADHD群:

  • 逃避(Escape)

  • 社会的補償(Social Compensation)

    → 現実での関係の難しさをSNSで埋め合わせる

対照群:

  • 娯楽(Entertainment)
  • 関係維持(Social Maintenance)

➡ ADHDの若者は、

“困難からの逃げ場”としてSNSを使っている傾向が強い


3. ADHD群はネガティブ・性的コンテンツの閲覧が多い

  • 暴力表現や攻撃的投稿

  • 性的コンテンツ

    などに触れる頻度が高かった。

これは衝動性・刺激追求傾向との関連が示唆される。


4. SNSの使い方は心理社会的問題の40〜46%を説明

SNS関連の指標で、以下の困難の多くが予測できた:

  • 心理的ストレス・身体症状(緊張・頭痛など)
  • 注意の問題

特にADHD群では

SNS使用と“心身の不調(psychosomatic problems)”の関連がより強かった

一方で、

  • 自尊心の低さ

  • 対人関係の問題

    には差が見られなかった。


■研究の示唆:ADHD向けSNS支援の必要性

この研究は、SNS問題への介入を考えるうえで重要な点を示している:

  • ADHDの若者は

    “逃避”や“社会的補償”を主目的にSNSを使う

    → 感情調整の支援が必要

  • 刺激の強いコンテンツに惹かれやすい

    → 保護者・支援者によるガイドが有効

  • SNS使用が心身の不調と強く結びつく

    → 使用量だけでなく“使い方の質”を整える支援が重要


■一文まとめ

ADHDのある高校生・大学生はSNS依存の割合が高く、逃避や社会的補償を目的に利用し、ネガティブ・性的コンテンツへの接触も多い。SNS使用は特に“心身の不調”と強く関連しており、ADHD特有の利用動機と行動パターンを踏まえた予防・支援が重要である。

An overview of oxytocin integrative mechanisms in autism spectrum disorder

*オキシトシンはASDの“鍵”になるのか?

―― 社会性を支えるOT/OTRシステムの統合メカニズムをまとめた最新レビュー**

オキシトシン(Oxytocin, OT)は、

社会行動・情動調整の中心的役割を担う神経ペプチドとして知られています。

ASDでは社会性やコミュニケーション領域の困難が見られるため、

長年「OTはASD治療の切り札になるのでは?」と注目されてきました。

このレビューは、近年の膨大な研究を整理し、

ASDにおけるOTシステムの異常と、それに基づく治療可能性を総合的に評価しています。


■本レビューの主張ポイント

1. ASDではOTシステムの“統合的な不調”が見られる

研究の蓄積から、ASDの一部では

・基礎OT濃度が低い

・OT受容体(OTR)の発現が変化

・OTR関連遺伝子の変異・エピジェネティック変化

などが確認されている。

➡ 社会性の困難につながる脳回路の発達に影響している可能性が高い。


2. しかし「OTを鼻から投与すれば治る」は成立しない

これまでの臨床試験では、一貫した効果が得られていない

理由は以下の通り:

  • 脳の必要部位に特異的に届かない(非特異的投与)
  • 神経回路レベルの発達異常はOT投与だけでは修正できない
  • 個人差(遺伝子・受容体発現・年齢)が非常に大きい

つまり、OT単体での“魔法の治療薬”にはならない


3. 今後期待される治療戦略は「OTを正しく使う」方向へ

本レビューは、OT研究が

「ただ投与する」→「回路特性に基づいて使う」

へと進化していることを指摘。

● 有望なアプローチ

  • 選択性の高いOTRアゴニストの開発

    → ターゲット回路を特異的に刺激

  • エピジェネティック介入でOTR発現を調整

    (例:メチル化異常の修正)

  • 行動療法 × OT の“併用”

    →「学習のしやすさ」をOTで高め、療育効果を増幅

OTは単独治療ではなく、“治療のブースター”として期待される段階へ。


4. ASD治療は“パーソナライズ化”が必須になる

レビューの結論:

  • ASDは多様で“OTが効くタイプ”と“効かないタイプ”がある

  • OT/OTR関連の**バイオマーカー(遺伝子・血中濃度・脳回路特性)**を使った層別化が必須

  • 将来の治療は、

    「どの子に、どのタイミングで、どの回路に」

    という精密医療型へ進むべき


■一文まとめ

ASDではオキシトシン/オキシトシン受容体システムの統合的な不調が社会性の障害に関わっているが、単なるOT投与は効果が不安定で、回路レベルの異常には不十分。今後はOTR選択的アゴニスト、エピジェネティック介入、行動療法との併用など、“個別化されたOT活用”が治療の鍵になる。

Impaired use of function words in European French-speaking children with developmental language disorder

*フランス語DLD児は“機能語の使い方”にどんな特徴がある?

―― 機能語が診断の有力マーカーとなることを示した最新研究**

  • *機能語(Function Words:冠詞・前置詞・代名詞・助動詞など)**は、

文の意味を支える重要な要素で、DLD(発達性言語障害)の識別指標として知られています。

しかし、ヨーロピアンフレンチ(European French)を話す幼児では具体的なプロフィールが十分研究されていません。

本研究は、フランス語話者のDLD幼児73名と、

発達が典型的な幼児76名(文の長さをマッチング)を比較し、

どの機能語で違いが出るのかを詳細に分析したものです。


■研究のポイント

対象

  • DLD児 73名(39–84か月)

  • 定型発達児 76名(24–36か月)

    → 平均発話語数(MLU)が同じになるようにマッチング(平均 2.5語)

分析した機能語カテゴリー

  1. 冠詞

  2. 前置詞

  3. 指示代名詞

  4. 主語代名詞

  5. 法助動詞

  6. 助動詞

    (計6カテゴリー)


■主な結果

① 冠詞と前置詞は“ほぼ同程度”に使えている

  • DLD児でも、冠詞・前置詞は定型発達児と大きな差がなかった。

すべての機能語が弱いわけではないことを示す。


② 代名詞と助動詞に明確な弱さ

機能語の中でも **「文法的・動詞文脈に依存する語」**で顕著な違いが現れた。

  • 主語代名詞の使用が少ない
  • 機能語の分布が偏る(特定の語に頼る)
  • 助動詞・法助動詞の省略や一致エラーが多い

➡ 単なる発達の遅れではなく、文法処理そのものの困難が示唆される。


■DLDに特徴的な背後メカニズム

研究者は、これらの誤りパターンが次の能力の弱さに関連すると指摘:

  • ワーキングメモリの制約
  • 手続き記憶(文法ルールの習得)の弱さ
  • 言語の規則性への感受性の低さ(入力の統計学習の困難)

→ DLD児が文法構造を処理・保持する負荷に弱いことが明確に。


■臨床・教育的意義

  • 機能語の誤りや偏りは フランス語DLDの“鋭敏な診断指標” になり得る。
  • 特に 代名詞と助動詞の評価は重要。
  • 国際的なDLD研究において、言語ごとのプロファイル差を理解する上で価値が高い

■一文まとめ

フランス語を話すDLD幼児は冠詞や前置詞は定型発達児と同程度に使える一方、主語代名詞や助動詞など“動詞文脈に依存する機能語”で顕著な誤りや省略が見られ、これらはDLDの診断に有効なマーカーとなることが示された。

Broad perspective on socio-economic disadvantages in youth with mild to borderline intellectual disabilities in mental health care


*MID/BIFの子どもは“複合的な社会経済的不利”を抱えやすい

―― 専門ケア利用にも格差が生じることを示した大規模研究**

軽度知的障害(MID)や境界知的機能(BIF)の子どもは、メンタルヘルス問題(MHP)を抱えるリスクが高いことが知られています。

しかし、その背景にある**「社会経済的な不利」**がどのように関係しているのか、またどのように複合化しているのかは十分に理解されていません。

本研究は、オランダの統計データ×メンタルヘルス記録を用いて

1,742名のMID-BIF児(外来ケア利用者)と、5倍の対照群8,710名を比較した、きわめて大規模な調査です。


■研究の目的

  • MID/BIFの子どもがどの程度、社会経済的不利(SESリスク)にさらされているか確認
  • そのリスクがどれほど“累積”(複数重なる)しているかを分析
  • 症状タイプ(内在化/外在化/発達群)によってSESが異なるかを検証
  • 専門ケア利用とSESの関係を調べる

■主な結果

① MID/BIFの子どもは、社会経済的不利を抱える確率が有意に高い

家庭の特徴として以下が頻出:

  • ひとり親世帯
  • 親の学歴が低い
  • 社会保障給付に依存
  • 低所得
  • 公的住宅(subsidized housing)の利用

経済・教育・家庭構造の複合的な不利が顕著


② リスクは“単体”ではなく“重なりやすい”

  • *15.3%**のMID/BIF児が 5つのSESリスクに同時に晒されている

    (対照群は 6.7%

  • *6.7%**が 6カテゴリすべてに該当

    (対照群 3.6%

MID/BIFの子どもは、リスクが“蓄積・集中”しやすい


③ 症状タイプによってSESの不利の度合いが異なる

  • 内在化(不安・抑うつ)
  • 外在化(行動問題)

→ これらのグループの子どもは

発達症状メイン(ASD/ADHDなど)のグループよりも、SESの不利が強く見られた。


④ 予想外の結果:SESが高い家庭ほど“ケア量が多い”

  • 経済的に恵まれている家庭の方が

    より専門的な、量の多いメンタルヘルスケアを利用していた。

  • 一方で 経済的に困難な家庭の子どもは、ケア量が少なかった。

「必要度」ではなく「アクセス格差」がケア利用を左右していることを示す。


■結論

MID/BIFの子どもは、複数の社会経済的不利が重なる環境に置かれており、

そのことがメンタルヘルス問題と強く関連している。

さらに、

  • 不利な家庭ほど専門ケアにアクセスしにくい
  • 恵まれた家庭ほどケアを十分活用できている

という構造的格差が明らかになった。


■研究の示唆

この研究は、

“社会経済的困難 × 知的発達 × メンタルヘルス” の三つの課題が複合的に絡み合う構図を示し、

  • 家族支援・地域支援の強化
  • アクセス格差を縮める制度設計
  • 早期支援や予防介入の拡大

の必要性を強く示唆しています。


■一文まとめ

軽度知的障害・境界知的機能の子どもは、複数の社会経済的不利が重なりやすく、メンタルヘルス問題と強く結びついている一方で、困難な家庭ほど専門ケアを利用できない“構造的格差”が存在することが示された。

Kindergarten predictors of dyslexia pathways in Hebrew: a 5-year longitudinal study

*ヘブライ語の子ども515名を5年間追跡

――“持続・改善・後発”ディスレクシアは幼稚園のどんな力で予測できるのか?**

ディスレクシアは「ずっと続く障害」と考えられがちですが、研究では

①持続するタイプ(persistent)

②改善するタイプ(resolving)

③後から現れるタイプ(late-emerging)

という3つの発達パターンが確認されています。

しかし、

どのタイプがどんな幼稚園期のスキルで予測できるのか?

特に、ヘブライ語のような形態(morphology)が重要な言語ではどうなのか?

という点は十分に研究されていませんでした。


■研究デザイン

  • 参加者:ヘブライ語を話す子ども 515名

  • 調査期間:幼稚園 → 小1 → 小4 の 5年間縦断追跡

  • ディスレクシア判定

    小1と小4の 語読み流暢性(16%以下=ディスレクシア、25%以上=典型)による「二重基準」

  • 幼稚園で測定したスキル

    • 音韻意識
    • 文字知識
    • RAN(Rapid Automatized Naming/素早い呼称)
    • 形態意識(Morphological awareness/語の構造の理解)

■発見された3つのディスレクシアの軌跡

1. 持続ディスレクシア(35%)

小1でも小4でもディスレクシア。

2. 改善ディスレクシア(33%)

小1でディスレクシアだが、小4では典型の範囲に改善。

3. 後発ディスレクシア(32%)

小1では典型だったが、小4でディスレクシアに。

3タイプがほぼ同じ割合で存在したことはヘブライ語特有の傾向を反映している可能性。


■幼稚園期のどのスキルが、どのタイプを予測したのか?

*● 全パターンで共通:

「文字知識の弱さ」がディスレクシアを強く予測**

文字の知識は全タイプに影響 → 普遍的な重要指標


● 持続ディスレクシアを予測したもの

  • 音韻意識の弱さ
  • RAN(呼称の遅さ)

もっとも“典型的な”ディスレクシアパターンを説明


● 改善ディスレクシアを予測したもの

  • 音韻意識の弱さ

    (RANは影響しない → 改善可能性が高い指標)


● 後発ディスレクシア(late-emerging)を予測したもの

  • 形態意識(morphological awareness)の弱さ)

初学年では問題なくても、

語構造の理解が必要になる中学年以降に読みに困難が表面化することを示す。

この点は、

ヘブライ語(語根とパターンを重視する言語)の特性を反映した非常に重要な発見。


■研究の意義

  • 形態意識が“後発ディスレクシア”の独自の予測因子であることを初めて示した。
  • ヘブライ語のように「語構造」が重要な言語では、早期スクリーニングに形態意識を必ず含めるべき。
  • ディスレクシアは“単一の発達軌跡ではない”ことが強調され、個別化された支援計画が必要。

■一文まとめ

ヘブライ語の子どもを5年間追跡した研究により、ディスレクシアには持続・改善・後発の3タイプがあり、幼稚園期の文字知識が全タイプの共通予測因子である一方、形態意識の弱さが“後発ディスレクシア”を独自に予測することが明らかになった。

Autistic eye contact? A hermeneutic phenomenological multicenter study of the similarities and differences in eye-contact experiences between adults with and without autism

*ASD成人は“どのように”アイコンタクトを感じているのか?

―― 非ASD成人15名との比較で見えてきた4つのテーマ**

目線は、対人コミュニケーションの中心的な要素です。しかし研究では、「正しい目の合わせ方」には文化的・個人差が大きく、絶対的基準は存在しないことがわかっています。

一方、ASDの特徴として「アイコンタクトの違い」が重視されるにもかかわらず、

“当事者がどのようにアイコンタクトを経験しているのか”

“非ASDの人とどこが似ていて、どこが違うのか”**

を直接比較した研究はほとんどありませんでした。

本研究は、ヨーロッパ複数拠点での質的インタビュー(15名のASD成人/15名の非ASD成人)をもとに、

眼差しに関する主観的経験の構造を初めて詳細に記述したものです。


■研究方法のポイント

  • 対象:成人ASD 15名、非ASD成人 15名
  • 方法
    • 1対1の深層インタビュー
    • Multisite Qualitative Analysis(MSQA)
    • PRICEモデルにより「テーマの飽和」を確認
  • 目的:
    • ASDと非ASDの両者が眼差しをどう理解し、どう感じ、どう扱おうとしているかを比較

■抽出された4つの主要テーマ

1. アイコンタクトへの“考え方・価値観”

ASD・非ASDともに、

  • 文化・文脈に依存する

  • 人によって「ちょうどいい量」が違う

    といった認識は共有していた。

ただしASD成人では、

  • 「社会が求める基準が分からず負担」

  • 「ルールに従わなければならない」

    という“義務感”を語る傾向が強かった。


2. アイコンタクト中の“身体的・情緒的経験”

ASD成人では、

  • 圧迫感や不快感、痛みに近いストレス

  • 視線を合わせると情報が多すぎて疲労する

    など、感覚的な負担や過覚醒を訴えるケースが多かった。

一方、非ASD成人は

  • 軽いぎこちなさ

  • 気まずさ

    程度で、身体的負担はほとんどなかった。


3. アプローチ(対処法)

ASD成人は、

  • 眉間を見る、口元を見るなど「代替視点」

  • 視線を合わせる時間を調節する

  • 視線タスクを“認知的に管理”する

    といった、努力的な工夫を多く用いていた。

非ASD成人では、

  • 基本的に「自動的・無意識的」に調整

  • “気まずい時だけ”注意を払う程度

    と、処理負荷が小さい。


4. アイコンタクトに関する“ニーズ”

ASD成人は、

  • 視線の強制を減らす社会的理解

  • 「見てない=聞いてない」ではないという認識の共有

  • コミュニケーション場面での柔軟性

    を求めていた。

非ASD成人も、

  • 「適切な目線は人により違う」

    という理解を示す一方で、

    ASD成人ほど切実なニーズは語られなかった。


■研究の意義

  • ASDのアイコンタクトの“問題”を、

    当事者の主観的な感覚・負荷・解釈という観点から可視化した初めての研究

  • 非ASD成人との比較により、

    どこが共通で、どこが特異なのかが明確に整理された

  • ASDのアイコンタクト支援/ソーシャルスキルトレーニングにおいて

    • 「視線を増やす」だけの指導では不十分

    • 感覚的負担や自己調整戦略の理解が不可欠

      という臨床的示唆を提供


■一文まとめ

ASD成人は“視線そのものが感覚的・情緒的負担になる”という特徴をもち、そのために努力的な対処を必要とする一方、非ASD成人はより自動的・軽負荷で視線を扱っており、両者のアイコンタクト経験には共通点と明確な違いがあることが質的研究によって示された。

神経発達症(NDD)の腸内細菌はどう違う?

*神経発達症(NDD)の腸内細菌はどう違う?

ASD・ADHD・チック症を横断した最新メタ分析のポイント**

自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、チック症(TD)では、

腸内環境の違いが症状に関わる可能性がこれまで多く指摘されてきました。

しかし、研究ごとに結果がバラバラで、

「何が本当に共通の特徴なのか?」は明確ではありません。

この研究は、2025年4月までの既存研究を体系的に統合し、

腸内細菌の“多様性”と“菌構成の偏り(組成)”の違いをメタ分析で検証したものです。


■主な発見:多様性は同じ、組成は“明確に違う”

1. α多様性(菌の豊かさ・種類数)→ 有意差なし

NDD群と健常群で

  • 細菌の種類数(リッチネス)
  • 多様性指数

いずれも差は見られなかった

「菌の数」ではなく「菌のバランス」が違うという示唆。


2. β多様性(菌構成のパターン)は明確に異なる

  • ASD
  • ADHD
  • チック症(TD)

それぞれが健常群とは異なる微生物コミュニティ構造を持っていた。

神経発達症ごとに“腸内プロファイル”が異なる可能性。


■菌の種類で見えた特徴(家族レベル・属レベル)

● 家族(Family)レベル

  • Peptostreptococcaceae が増加

腸内炎症や代謝異常と関連する報告があるグループ。


● 属(Genus)レベル

減少していた菌

  • Escherichia/Shigella(−0.39)

  • Roseburia(−0.39)

    → Roseburia は短鎖脂肪酸(特に酪酸)をつくる“善玉菌”

増加していた菌

  • Eubacterium(+0.33)

→ 代謝・免疫に関わるが、種によって役割が大きく異なる多様なグループ。


■結果の意味するところ

  • 「菌の数」ではなく、「構成の偏り」がNDDに関連する可能性

  • とくに

    • 酪酸産生菌(Roseburiaなど)の減少

    • 特定の代謝系菌の増加

      が症状との関係性を示唆。

  • ASD・ADHD・チック症で

    腸内細菌の“パターン”が異なる点も重要

→ 今後、**疾患タイプ別の“腸内マーカー”**が見つかる可能性も。


■制約と今後の課題

  • 研究間の手法がバラバラで“異質性”が高い
  • サンプルサイズが小さい研究が多い
  • 結果の一部は確定的ではない

より大規模で、標準化された腸内細菌研究が必須


■一文まとめ

神経発達症では腸内細菌の“種類数”は健常群と変わらないものの、菌構成のパターンが明確に異なり、とくに Peptostreptococcaceae の増加、Escherichia/Shigella と Roseburia の減少が共通特徴として示された。ただし研究のばらつきが大きく、今後の大規模・標準化研究が求められる。

Barriers to Overcome When Including Participants With Intellectual Developmental Disorders in Judo Classes

*柔道クラスにIDDのある参加者を受け入れるには?

―― 柔道指導者21名への国際質的研究が示す“現場の本音と必要な支援”**

スポーツは、知的発達症(IDD)のある人にとって

身体能力・自己効力感・社会参加を高める重要な場ですが、

実際に一般の柔道クラスへ参加するには多くの障壁があります。

この研究は、

スロベニア・ポルトガル・フランス/仏領ポリネシアの柔道指導者21名

質的インタビューを行い、柔道教師が抱く

  • 行動信念(「何が良い/悪いか」)
  • 統制信念(「できる/できないと感じる要因」)
  • 規範信念(「周囲にどう見られるか」)

を、**計画的行動理論(Theory of Planned Behavior)**にもとづいて分析しました。


■柔道指導者が語った “インクルージョンを支える要因”

指導者が「うまく受け入れられる」と感じるポジティブ要因は以下の通り:

✔ 1. 人的サポートの追加

  • 補助スタッフの配置
  • 家族・介助者の同席

マンツーマンや小集団の支援が効果的


✔ 2. クラス規模の縮小

  • 大人数では安全管理や個別支援が難しい
  • 小規模だと「目が行き届く」ことで inclusion が成立

✔ 3. 障害特性に関する事前情報

  • 参加者の特性・配慮点・コミュニケーション方法を事前に知ることで

    不安や誤解が減る


✔ 4. 障害のある子ども・大人を教えた経験

  • 経験があると「できる」という自己効力感が高まる
  • 未経験だと不安から「難しい」と判断しがち

✔ 5. グループ内の雰囲気(文化的・社会的サポート)

  • 仲間が協力的であること

  • 「助け合い」がクラス文化として根付いていること

    集団が受け入れる姿勢が成功の重要要因


■指導者の “難しさ” や “負のコントロール信念”

逆に、 inclusion を阻む因子は:

  • クラスが大きすぎて個別対応ができない
  • 特性理解が十分でないと安全確保が困難
  • 専門知識・研修が不足している
  • 教師自身が「やれる自信がない」と感じてしまう
  • 周囲の保護者の理解不足

→ 物理的な工夫だけでなく、教師の心理的・知識的な障壁が大きいことが明らかに。


■研究が示す結論

インクルージョンに必要なのは「調整+教育+態度の変化」

  • IDDのある参加者を柔道クラスに含めるには

    指導者への専門研修、補助スタッフ、適切な環境設定が不可欠

  • さらに、教師自身の

    “できる”という自己効力感(self-efficacy)を高める支援

    が inclusion 成功の鍵。

  • 単に「障害者を受け入れる」だけでは不十分で、

    柔道指導の文化や態度そのものの変容が求められる


■一文まとめ

柔道指導者21名への質的研究により、IDDのある参加者を柔道クラスに包摂するには、人的支援、少人数構成、障害特性の事前理解、指導者の経験と研修、そして受容的な集団文化が重要であり、物理的・教育的・態度的な多層的支援が必要であることが明らかになった。

Level 2 Screening for Autism Spectrum Disorder in Young Children: Cross‐Cultural Adaptation and Validation of the Behaviour Development Screening for Toddlers (BeDevel) in China


*柔道クラスにIDDのある参加者を受け入れるには?

―― 柔道指導者21名への国際質的研究が示す“現場の本音と必要な支援”**

スポーツは、知的発達症(IDD)のある人にとって

身体能力・自己効力感・社会参加を高める重要な場ですが、

実際に一般の柔道クラスへ参加するには多くの障壁があります。

この研究は、

スロベニア・ポルトガル・フランス/仏領ポリネシアの柔道指導者21名

質的インタビューを行い、柔道教師が抱く

  • 行動信念(「何が良い/悪いか」)
  • 統制信念(「できる/できないと感じる要因」)
  • 規範信念(「周囲にどう見られるか」)

を、**計画的行動理論(Theory of Planned Behavior)**にもとづいて分析しました。


■柔道指導者が語った “インクルージョンを支える要因”

指導者が「うまく受け入れられる」と感じるポジティブ要因は以下の通り:

✔ 1. 人的サポートの追加

  • 補助スタッフの配置
  • 家族・介助者の同席

マンツーマンや小集団の支援が効果的


✔ 2. クラス規模の縮小

  • 大人数では安全管理や個別支援が難しい
  • 小規模だと「目が行き届く」ことで inclusion が成立

✔ 3. 障害特性に関する事前情報

  • 参加者の特性・配慮点・コミュニケーション方法を事前に知ることで

    不安や誤解が減る


✔ 4. 障害のある子ども・大人を教えた経験

  • 経験があると「できる」という自己効力感が高まる
  • 未経験だと不安から「難しい」と判断しがち

✔ 5. グループ内の雰囲気(文化的・社会的サポート)

  • 仲間が協力的であること

  • 「助け合い」がクラス文化として根付いていること

    集団が受け入れる姿勢が成功の重要要因


■指導者の “難しさ” や “負のコントロール信念”

逆に、 inclusion を阻む因子は:

  • クラスが大きすぎて個別対応ができない
  • 特性理解が十分でないと安全確保が困難
  • 専門知識・研修が不足している
  • 教師自身が「やれる自信がない」と感じてしまう
  • 周囲の保護者の理解不足

→ 物理的な工夫だけでなく、教師の心理的・知識的な障壁が大きいことが明らかに。


■研究が示す結論

インクルージョンに必要なのは「調整+教育+態度の変化」

  • IDDのある参加者を柔道クラスに含めるには

    指導者への専門研修、補助スタッフ、適切な環境設定が不可欠

  • さらに、教師自身の

    “できる”という自己効力感(self-efficacy)を高める支援

    が inclusion 成功の鍵。

  • 単に「障害者を受け入れる」だけでは不十分で、

    柔道指導の文化や態度そのものの変容が求められる


■一文まとめ

柔道指導者21名への質的研究により、IDDのある参加者を柔道クラスに包摂するには、人的支援、少人数構成、障害特性の事前理解、指導者の経験と研修、そして受容的な集団文化が重要であり、物理的・教育的・態度的な多層的支援が必要であることが明らかになった。

Traumatic Experiences, Psychological Distress and Suicide‐Related Behaviors in Autistic Adults

*BeDevelの中国版が正式に高精度スクリーニングツールとして認証

―― 乳幼児ASDのLevel 2スクリーニングに有効と確認された大規模検証研究**

自閉スペクトラム症(ASD)の早期発見には、生後9か月〜3歳頃の「Level 2 スクリーニング(要精査群の絞り込み)」が非常に重要です。

韓国で開発された BeDevel は、既存のスクリーン(M-CHATなど)が抱えていた

  • 文化差への弱さ
  • 感度不足
  • 項目の偏り

といった問題を補う“より精密な多領域スクリーニングツール”として注目されてきました。

本研究ではその中国語版(C-BeDevel)を作成し、542名の乳幼児を対象に大規模検証を行い、信頼性・妥当性・臨床診断との一致度などを詳細に評価しました。


■研究の方法

● 翻訳・逆翻訳+委員会による文化調整

  • 開発者チームと連携し、言語的・文化的適応を実施
  • 行動表現や親の解釈が文化で変わる部分を丁寧に調整

● 対象:542名(9〜42か月)

  • ASD:191名
  • 発達遅滞(DD):103名
  • 定型発達(TD):248名

● 評価指標

  • 内的一貫性(Cronbach’s α)
  • 臨床診断との一致度(κ係数)
  • 感度・特異度・PPV・NPV
  • 他の既存診断ツールとの一致率

■主な結果

*1. 信頼性:Cronbach’s α=0.872〜0.93

→ すべての年齢帯で高い一貫性**

BeDevel-I/Pの下位尺度・合計点は

α=0.8以上の“非常に良い”レベルを維持。


2. 臨床診断との一致度(κ):0.064〜0.722

年齢帯や項目によって幅があるものの、

多くの領域で中〜高程度の一致を示した。


3. スクリーニング精度が非常に高い

  • 感度:0.853〜0.962(非常に高い)
  • 特異度:0.429〜1.000
  • PPV:0.758〜1.000
  • NPV:0.700〜0.974

→ ASDを「見逃さない」点で特に優秀。

低月齢でも高感度を維持できている点は、早期発見の実務上とても重要。


4. 他の診断ツールとの一致率も高い(κ=0.432〜0.973)

60%以上の一致率を示し、

既存の信頼できる診断ツールと整合性があることも確認。


■結論:Level 2 スクリーニングとして強く推奨できる

研究チームは最終的に、

中国版BeDevel(C-BeDevel)は、

臨床・母子保健センターで使用できる高精度のASD Level 2スクリーナーである

と結論づけています。


■一文まとめ

BeDevelの中国語版は、9〜42か月の乳幼児を対象に高感度・高信頼性を示し、既存の診断ツールとも高い一致度を持つことから、ASDのLevel 2スクリーニング(要精査者の抽出)に非常に有効なツールであることが実証された。

Traumatic Experiences, Psychological Distress and Suicide‐Related Behaviors in Autistic Adults


*ASD成人は“トラウマ後の自殺リスク”が特に高い

―― 424名の自閉成人を対象に、自傷・自殺企図・自殺計画との関連を大規模分析**

自閉スペクトラム症(ASD)の成人は、非自閉の成人よりも、

  • *トラウマ、心理的苦痛、自殺関連行動(Self-harm, Suicide-related behaviors)**のリスクが大幅に高いと知られています。

この研究は、

  • ASD成人 424名

  • 非ASD成人 345名

    を対象に匿名ネット調査を行い、

“トラウマ経験”が自傷行動・自殺企図・自殺計画・日常生活に影響する精神疾患とどう関係するかを詳細に分析しました。


■研究の核心ポイント

1. トラウマを調整しても、ASDは自殺関連行動の独立したリスク因子

トラウマや年齢・性別などを統計的に調整しても、

ASDそのものが強いリスク因子であることが確認されました。

ASDの人は非ASDの人に比べて:

  • 自傷行為のリスク:2.71倍

  • 自殺未遂のリスク:2.45倍

  • 自殺計画のリスク:2.00倍

  • 日常生活を妨げる精神疾患のリスク:3.58倍

    (いずれも p < 0.01)

ASDは“トラウマがなくても”自殺関連行動のリスクが高い


2. ASD成人では「幼少期の被害経験」が最も強く関連していた

ヒートマップ分析により、

  • *● 幼少期の被害(暴力・いじめ・虐待)**が
  • 自傷
  • 自殺計画
  • 日常生活に影響する精神疾患

と特に強く共起していることが明らかに。

“子どもの頃の被害経験”が、ASD成人の長期的メンタルヘルスに深刻な影響を残す


3. ASD成人は“ストレス対処に物質使用で頼る傾向は高くなかった”

意外にも、

  • ASD群は「ストレス対処としての物質使用(薬・アルコール)」は

    非ASD群と統計的に差がなかった(OR 0.78, p = .18)

物質使用よりも、自傷や精神疾患として表出する特徴がある


■研究が示す重要な示唆

1. ASD成人に対する自殺予防は、トラウマ予防と回復支援が鍵

研究者は以下を強調:

  • 幼少期の暴力・いじめ・虐待の予防
  • 被害後の適切な支援(カウンセリング・安全確保)
  • 安全配慮(safeguarding)や合理的配慮による環境整備

2. ASD特有の困難(感覚過敏、対人ストレス、過集中、社会的孤立)の理解が不可欠

トラウマ後の反応が強くなりやすい点にも配慮が必要。


3. 自殺リスク評価は“ASD特有の心理特性”に合わせた方法が求められる

  • 文字通りの解釈傾向
  • 感情の認識・表出が難しい(アレキシサイミア)
  • 気づかれにくい“マスクされる”苦痛

などがリスク把握を難しくさせる。


■一文まとめ

424名のASD成人を対象にした大規模調査で、ASDはトラウマを調整しても自傷・自殺企図・自殺計画・重大な精神疾患の独立したリスク因子であることが判明し、特に“幼少期の被害経験”が強い関連を持つことから、ASD成人の自殺予防にはトラウマ防止と回復支援、ASD特性に配慮したメンタルヘルス支援が不可欠であると示された。

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