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アセスメントツールってなんで重要?〜生活能力編〜【詳解】

· 約15分

前回は、アセスメントツールの中でも知能検査と発達検査に絞って詳解しました。

はじめに

前回は、アセスメントツールの中でも知能検査と発達検査に絞って詳解しました。

https://www.easpe.com/blog/article/46

今回は生活能力についてのアセスメントツールに関して種類、違い、どんな情報が得られるのかなどを詳解していきます!

生活能力とは

生活能力は適応機能とも呼ばれ、意思伝達、自己管理、家庭生活、社会的・対人的技能など社会の中で日常生活を送るのに必要な幅広い能力のことを指します。

生活能力のアセスメントって重要?

生活能力をアセスメントすることにより、児童本人の生活状況や支援の必要性がより明らかになります。

適応機能のアセスメントツールは質問項目が詳細で、氏名や住所を正しく言えるか、体調不良を訴えられるか、電子レンジが使えるか、おつりの計算ができるか、他人との距離を適切に保てるか、スポーツやゲームのルールを守れるか、など幅広い分野の質問からレベルを把握することができます。

これによって、支援の必要性の判断をより客観的に行うことが可能になり、今後獲得する必要のあるスキルが明確になります。

実際、個別支援計画を立てる際に役立ったり、定期的に実施すると適応機能の状態の変化を継続的に追うことができ、有効な支援ができているかどうかの判断の目安にもなります。

それでは生活能力を測るアセスメントツール3つについて説明します。

生活能力(適応行動)の主なアセスメントツール

  1. 日本版ヴァインランド適応行動尺度Ⅱ
  2. 新版S-M社会生活能力検査
  3. ASA旭出式社会適応スキル検査
日本版ヴァインランド適応行動尺度Ⅱ新版S-M社会生活能力検査ASA旭出式社会適応スキル検査
検査形式面接調査フォーム質問紙形式質問紙形式
検査官大学院等で心理検査・心理測定を履修した者大学院等で心理検査・心理測定を履修した者大学院等で心理検査・心理測定を履修した者
対象年齢0~92歳乳幼児~中学生幼児~高校生
検査対象制限なし社会生活能力の発達につまずきがあると思われる子ども社会適応に心配があり、支援や評価が必要な子ども
回答者保護者・近親者および評価対象者をよく知る者子どもの様子をよく知る大人子どもの様子をよく知る大人
所要時間20~60分10~15分20~30分
費用1~2万記載なし記載なし
購入先日本文化科学社日本文化科学社日本文化科学社

施設に検査に必要な資格を持つ職員がいない場合には、検査を導入している精神科や心療内科、大学の相談室、民間のカウンセリングルームなどで受けることができます。

また発達障害者支援センターでも、実施している機関について問い合わせをすることもできます。

http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%9B%B8%E8%AB%87%E7%AA%93%E5%8F%A3%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1/

また費用に関しても、各施設ごとに料金設定が異なるため受診する病院やセンターなどに問い合わせが必要となります。

それでは、それぞれのアセスメントツールについて詳解していきます。

参照:特定非営利活動法人 アスペ・エルデの会「発達障害児者支援とアセスメントに関するガイドライン」日本文化科学社

日本版ヴァインランド適応行動尺度Ⅱ

生活能力全般を検査する標準化されたアセスメントツールとしてはもっとも国際的に用いられているものの一つです。

コミュニケーション、日常生活スキル、社会性、運動スキル、不適応行動の5つの領域で構成され、それぞれの領域には下位領域があります。「運動スキル」領域は、評価対象者が6歳までの場合に実施します。また、下位領域である「読み書き」領域は評価対象者が3歳以上、「家事」領域は1歳以上から実施可能です。

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引用:日本文化科学社

面接は、評価対象者の日常を良く知っている成人に実施されます。回答者は多くの場合、保護者や家族となりますが、評価対象者が保護者やその他の家族と同居していない場合は、施設職員その他の支援者が回答することもできます。

面接形式は、典型的な面接者が質問項目を書いてあるとおり順番に読みながら質問していくのではなく、半構造化面接と呼ばれる、なるべく自然な形で全体的な話題から詳細な情報へと移行する会話形式が取られています。

この半構造化面接方式によって、評価対象者のより正確な情報を回答者から引き出せる柔軟な面接であると言われています。

適用範囲は0歳~92歳と幅広く、面接時間は20~60分とされていますが、半構造化面接方式をとっていること、評価対象者の年齢や特性、回答者の個人差や状態などによって面接時間はそれより長くなることもあります。

新版S-M社会生活能力検査

社会生活に必要な基本的な生活能力のおおよその発達レベルを見るための検査です。

社会生活能力を構成する6領域(身辺自立、移動、作業、意志交換、集団参加、自己統制)から129項目で構成され、質問項目は発達年齢段階ごとに分かれています。

回答結果をもとに社会生活年齢(SA)と社会生活指数(SQ)が算出できます。(例:身辺自立は6歳0か月、集団参加は5歳6か月など)

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引用:日本文化科学社

子どもの日常生活の様子をよく知る保護者や兄姉、担任などが回答をします。各項目に書かれている事項が、「日常生活の中でできている/機会があればできると思われる」場合には〇、「まだできない/たまにできてもよくできない/これまで機会がなかったが、やらせてもできない」場合には×をつけます。それぞれの子どもの生活年齢に該当する年齢段階から始め、15~20分で回答することができます。

適用年齢は乳幼児~中学生ですが、結果の処理もシンプルであり、短時間で結果の算出やプロフィールの作成が可能です。

ASA旭出式社会適応スキル検査

社会自立の基礎となる社会適応スキルを評価します。ASAには「基本版プロフィール」と「臨床版プロフィール」があり、「基本版プロフィール」において発達の遅れが認められた場合、「臨床版プロフィール」を用いてより詳しく検査することができます。

「基本的プロフィール」では、全検査スキルと4つのスキルについて、同じくらいの年齢の子どもたちと比べたときにどのくらいのレベルであるか(7段階)や相当年齢を見ることができます。また、4つのスキルを構成する32の下位領域の発達が、平均以上であるかどうかがわかります。

「臨床版プロフィール」では、32の下位領域における個人内差を把握することができます。

4つのスキルは、言語/日常生活/社会生活/対人関係から構成されています。

言語スキルは基礎的な言語理解・表現、読み書きに関するものです。例えば「指示を理解する 」「質問に答える」「読む」などの9下位領域からなっています。

日常生活スキルは身の回りのことに関するものです。例えば「身だしなみ」「健康管理 」「家の掃除や片づけ」などの5下位領域が設けられています。

社会生活スキルは地域社会で必要となるものです。例えば「家の中で安全に過ごす」「電話・ファックス・メールの使用」「困難な状況での対応 」「情報の収集 」などの9下位領域が設けられています。

対人関係スキルは人との関わりにおいて必要なものです。「他人への関心と共感 」「会話・コミュニケーション 」「交友関係」などの9下位領域が設けられています。

子どもの様子をよく知っている保護者や担当教員・指導員が、項目を読んで出来るか出来ないかを回答します。

全192項目で、回答にかかる時間は20~30分です。子どもの発達や障害に詳しい心理士などが採点し、手引きの換算表を利用しながら基本版プロフィールや臨床版プロフィールを作成し、解釈にあたります。

まとめ

アセスメントツールで得られる生活能力の数値はあくまでも、現在身につけている実生活の処理能力の程度を示すものであり、今後の発達を予測するものではありません。

また生活能力に関するアセスメントツールは基本的に作られた時代の状況を元に作られています。そのため、改訂されていないアセスメントツールの場合、時代に合わない、またはチェックできない項目があります。

例えば、道具の使用などにおいては、現在では主流となっているスマホやタブレットの操作まで含む項目がない場合もあります。

児童の実態をより的確に把握するためには、他のアセスメントツール、聞き取りや観察を組みあわせて情報を取捨選択していくことが重要です。

弊社ではアセスメントから個別支援計画の作成、モニタリングまでまとめて管理できるサービスを提供しています。

試してみたい方はこちらからぜひお申し込みください。

https://www.easpe.com/

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